バックキャスティング(思考)とは?|フォアキャスティング

バックキャスティングとは、未来像から現在にさかのぼって考える思考法のことです。ここではバックキャスティングの活用シーンやフォアキャスティングとの違い、メリットや欠点などについて解説します。

1.バックキャスティングとは?

バックキャスティングとは、目標とする「未来の姿」を描き、そこから「いま何をすべきなのか」を考える思考法のこと。現状にとらわれない発想が生まれやすくなるため、不確実性の高いテーマや課題に対して具体策を考えるのに有効な手法として注目されています。

活用シーン

バックキャスティングはビジネスシーンだけでなく教育やスポーツ、個人の目標達成などさまざまな分野で活用できます。最近では、「SDGs(持続可能な開発目標)」の目標を未来に定めて現在の行動を決める、バックキャスティングの思考が使われています。

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2.バックキャスティング思考とは?

将来の理想像から逆算して実現手段を考える手法のこと。ここではバックキャスティング思考が生まれた背景について説明します。

生まれた背景

バックキャスティング思考は1970年代に環境問題をきっかけとして誕生しました。

地球規模の環境悪化に危機感を抱いた研究者が警鐘を鳴らし「この先も末永く人類が生存し続ける地球とはどのような姿なのかを定めて、開発や経済活動はその状態を維持できる範囲に抑えよう」と考えたのがはじまりといわれています。

SDGsによって再認知

その後もバックキャスティング思考はエネルギー政策や環境問題の領域で活用され、2015年のSDGs採択で再び広く認知されるようになりました。

「私たちの世界は2030年にこういう状態になっている必要がある。そこに向けて各々が具体的なやり方を探していこう」とするのがSDGsにおけるバックキャスティング思考です。

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3.バックキャスティングによく似た言葉「フォアキャスティング」

バックキャスティングによく似た言葉として「フォアキャスティング」があります。フォアキャスティングとは、過去の実績やデータにもとづいて現実的に実現可能なものを積み上げ、未来の目標に近づける思考法のこと。

たとえば「我が社の商品は女性からの評判がよいから、女性ユーザー向けの企画を増やそう」のように、過去や現在から未来を導き出す方法です。

メリット・デメリット

過去や現在を分析して目標を立てるフォアキャスティングには、「周囲から理解を得やすい」「実現性が高い」などのメリットがあります。しかしその時点で分析できる範囲の改善しか行えないため、大きな目標を設定するのには不向きです。

使い分け方

バックキャスティングとフォアキャスティングにはそれぞれ異なるメリットがあるので、目的に応じて使いわけましょう。中長期的な成長を設計したり、革新的なアイデアを探したりする場合、バックキャスティングを使用します。

一方、現状改善のアイデアを発案したいときや短期的な業績予測をしたいときには、フォアキャスティングが適しています。

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4.バックキャスティングのメリット

バックキャスティングには「正解が不明瞭な問題にアプローチしやすい」「新たな発見が期待できる」などのメリットがあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 正解が不明瞭な問題にアプローチしやすい
  2. より広い視野で捉えられる
  3. 新たな発見が期待できる

①正解が不明瞭な問題にアプローチしやすい

バックキャスティングでは未来の理想像を目標にします。フォアキャスティングは現在の延長線上に未来を想定するため、意図的な変化を必要とするテーマには不向きです。

バックキャスティングでは過去の実績や経験を問いません。そのため壮大で不確実性の高い目標や、明確な正解が存在しないテーマ、誰も答えを持っていない不確実な問題などに適しています。

②より広い視野で捉えられる

フォアキャスティングでは過去の経験や実績から成功性が低いとわかり諦めていたアプローチでも、バックキャスティングでは新たな選択肢となります。

ゴールから逆算して可能性を探すバックキャスティングと経験実績から順序立てるフォアキャスティング、2つを使いわければより広い視野で考えられるでしょう。

③新たな発見が期待できる

正解が存在しない問題や、複数の答えがある課題でバックキャスティングを活用すれば、単一ではない自由な発想が生まれるのです。それが目標達成に向けた意識向上や技術革新につながる可能性もあります。

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5.バックキャスティングの欠点

バックキャスティングには広い視野で物事を捉え、新たな発見を期待できるメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。バックキャスティングが持つ2つの欠点について説明しましょう。

短期的な問題には不向き

短期的な課題を逆算して考えるとかえって効率が悪くなるため、バックキャスティングは短期的な問題には向いていません。バックキャスティングでは現状を考慮せず未来の目標に向かうため、短期的な問題にはフォアキャスティングのほうが適しています。

失敗のリスクが高い

バックキャスティングでは現状を度外視して理想を追いかけます。フォアキャスティングに比べると無理な選択をする場合も多いため、成功率の低下や失敗リスクの増加につながりやすいのです。

またつねに実現可能とは限らないため、アクションが現実離れしないよう注意しなければなりません。

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6.バックキャスティングのやり方(フレームワーク)

バックキャスティングのプロセスは4つあります。バックキャスティングのやり方を4段階にわけて説明しましょう。

STEP.1
未来のあるべき姿を設定
バックキャスティングでははじめに「いつ」「どのような姿になっているのが理想か」を設定します。

ここでは現在のリソースや過去の実績を一切気にせず、できるだけ具体的な未来像を設定しましょう。ここで設定した未来のビジョンをこの先のステップでも忘れないことが重要です。

STEP.2
課題の洗い出し
続いて未来の姿になるためには何が足りないのか、何があれば未来の姿になれるのかを検討します。なぜその目標ができていないのか、次に必要なアクションは何かなどを細かく洗い出しましょう。

ここは現状と未来のギャップを埋める可能性、つまり課題解決に生かせる武器を探していく段階です。もし課題解決の方法を自分が持っていなければ、誰が持っているか、それを使って課題解決する方法があるかなども考えていきます。

STEP.3
アクション設定
課題の洗い出しが終わったら、次は未来の目標達成に向けた具体的なアクションをカテゴリごとに分類します。

一旦「いつやるか」のスケジュールは置いておきましょう。まずはアクションのカテゴリを以下3つの要素にわける方法がオススメです。

  • Technology(技術):情報機器やアプリケーションなど
  • System(仕組み):事業形態や会社制度など

Value(価値):個人の意識やマインドセットなど

STEP.4
スケジューリングと実行
具体的なアクションを設定したら、これをもとにスケジュールを組んで実行に移します。時間軸でアクション項目を配置していくうちに、足りないアクションや類似アクションが見えてくるでしょう。

これらを補足して必要な行動の過不足を明確にすればバックキャスティング計画の完成です。この計画をもとにひとつずつアクションを実行して、未来のあるべき姿に近づけていきます。

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7.バックキャスティングのポイント

バックキャスティングのポイントは3つです。

  1. 未来のあるべき姿を忘れないこと
  2. 目標設定のプロセスも重要
  3. 先に具体的な方法を考えない

①未来のあるべき姿を忘れないこと

バックキャスティングがうまくいかない理由のひとつとして挙げられるのが「未来から正確な逆算をしようとすること」。バックキャスティングで実現しようとしているのは、現在の延長線上にはない未来です。

未来から逆算して現在の正解を求めるのはできません。肝心なのは逆算することではなく「未来のあるべき姿を忘れないこと」です。

②目標設定のプロセスも重要

前述したバックキャスティングのやり方においてとくに重要なのが、最初に実行する「目標設定」のプロセスです。その目標は設定者が本当に望んでいる姿でしょうか。無意識のうちに本当の目標をはき違えていないでしょうか。

目標設定時はつい現状に鑑みて下方修正したくなります。しかし本来望む姿より浅いとこに目標を設定してしまうと、その後の課題抽出やスケジューリングにも齟齬が生じてしまいます。

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③先に具体的な方法を考えない

バックキャスティングでは「目標」と「やり方」を混同しないよう注意する必要があります。未来の目標を過去の積み重ねからイメージできる姿にしてしまうと、それはフォアキャスティングになり、バックキャスティングの意味が半減してしまいます。

また未来の目標を立てる際に具体的な方法まで考えてしまうと、目標達成に向けたワクワク感や必要性が感じられなくなり、結果として計画倒れに終わってしまう可能性も高いです。

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8.バックキャスティングの事例

世界中のさまざまな企業、団体がバックキャスティングの思考を活用しています。日々目まぐるしく変化する現代市場において、企業が生き残るためには既存の発想にとらわれない創造的な、柔軟な思考が必要なのです。

ここでは各企業が活用しているバックキャスティングの事例について説明します。

三菱電機

三菱電機では2007年、2021年時の目標達成を見据えた「環境ビジョン2021」を策定。本プロジェクトでは「低炭素社会の実現に向けた貢献」を重要事項として、3年ごとに環境計画を立案し、課題解決に向けた事業をいくつも軌道に乗せてきたのです。

さらに新たな中長期経営基本戦略として「KAITEKI Vision 30」を策定。これは2050年のあるべき姿に向けて改革を推進する、まさにバックキャスティング思考にもとづいた取り組みです。

オーラライト

スウェーデンの「オーラライト」は、バックキャスティング思考により、電球製造販売会社からライティングソリューションプロバイダーに変化しました。

「電球製造はやがてLEDにとって変わられてしまう」という課題から、バックキャスティングで「省エネ需要の高まりに対応できる企業の姿」を描いた事例です。

製品ラインアップの見直しや営業力の強化、製造からサービスへの転換を経て、ヨーロッパ全土の地位を確立するまでに成長しました。

海士町

バックキャスティングは企業だけでなくさまざまな組織で活用できます。島根県の沖合に浮かぶ中ノ島の海士町には、町人口の減少により島で唯一の高校が廃校になってしまうという危機が訪れていました。

そこで注目されたのが「離島だからできない」のではなく「離島だからこそできる教育の魅力化」。島の豊かな環境や人の温かさを売りにした「島留学」の提案により、島外からの入学数増加、UIターンの呼び寄せに成功したのです。

トヨタ

「トヨタ環境チャレンジ2050」は、2050年に新車の二酸化炭素排出総量を2020年比の90%に削減するという目標です。これには従来のガソリン車から抜本的な変更を目指すという意味が込められています。

このSDGsに対するバックキャスティングの発想は国内外で高く評価され、企業が環境問題に取り組む先駆けとなりました。