管理職の「罰ゲーム化」を防ぐには、責任に見合う権限・処遇と、業務を支える体制の見直しが必要です。部下の相談に応じ、評価をまとめ、自分の実務もこなす。管理職には負担が重なってしまい、研修の追加だけで対応するのは難しいのが実情です。
今回、部長〜係長・主任クラスの管理職層100名に実施した独自調査では、管理職になってから離職を考えたことがある人が70%にのぼりました。「業務量が増えた」は68%、「負担軽減の取り組みが不足している」は78%です。
「管理職を打診しても断られる」「管理職が疲弊しているが、何から手をつければよいかわからない」。そんな悩みを抱える方は、ぜひ参考にしてください。
- 負担の実態(業務量、プレイヤー業務、指導の難しさなど)
- 昇進辞退や離職の意向など、組織リスクとして押さえたいデータ
- 管理職から切り出せる業務と、管理職に残すべき判断の分担例
- 中小企業でも始められる見直しの第一歩と、早期に気づくためのシグナル
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目次
1.「罰ゲーム化する管理職」とは?
管理職の罰ゲーム化とは、責任や業務が重くなる一方で、権限・処遇・支援が追いつかず、管理職を引き受けることが割に合わないと感じられる状況です。
この問題を扱ったのが、パーソル総合研究所の小林祐児氏による書籍『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』です。小林氏は、現場の管理職に負荷が集中する構造と、その見直しを論じています。
※出典:パーソル総合研究所の著者講演レポート
本記事の独自調査(詳細は2章)では、現職の部長・課長・係長/主任クラス100名の27%が、もう一度選べるなら管理職になりたくないと回答。
管理職になってから離職を考えた経験がある人は70%(現在33%、過去37%)でした。現在担っている役割を、本人がどう受け止めているかに目を向ける必要があります。
2.管理職が罰ゲーム化する構造的要因【独自調査データ】
管理職の負担は、仕事の量だけでは捉えきれません。部下への指導、自身の実務、個々の事情に応じた対応など、異なる仕事が重なっています。ここでは、構造的な背景と調査で得られた実感を、4つの観点から整理します。
【調査概要】
| 調査主体 | カオナビ人事用語集 |
|---|---|
| 調査方法 | インターネット調査 |
| 調査期間 | 2026年8月 |
| 調査対象 | 部長クラス25名、課長クラス26名、係長・主任クラス49名(計100名) |
※係長・主任クラスを含む回答者100名を、本記事では「管理職層」と表記します。
※回答者の実感や意向を尋ねた調査です。日本の管理職全体の状況、実際の昇進辞退率・離職率、施策の効果を示すものではありません。
独自調査は2026年8月にオンラインで実施しました。本調査の回答者は100名で、部長クラス25名、課長クラス26名、係長・主任クラス49名です。本記事では、この100名を「管理職」と表記しています。
調査データの割合は回答者の実感を示しており、日本の管理職全体の状況や、負担が生じる因果関係を確定するものではありません。自社で何を確認すべきかを考える材料としてご覧ください。
組織のフラット化と働き方改革のしわ寄せ
組織の階層を減らす際には、管理職が受け持つ人数や仕事も点検が必要です。リクルートワークス研究所が掲載した小林祐児氏への取材記事では、組織のフラット化にともなう管理職の役割増加や、部下の仕事を引き取る負担が指摘されています。
※出典:管理職が「罰ゲーム化」した10の要因
独自調査でも、管理職になる前より業務量が増えた人は68%。「部下の残業制限の影響で自分の仕事が増えた」という問いに肯定的に回答した人は49%でした。
独自調査の自由回答にも、「組合員である部下は残業の上限があって、その仕事を引き取ることがあった」という声があります。
この回答から、働き方改革そのものが問題だとはいえません。確認したいのは、労働時間を短くする際に、仕事の総量や分担も変えたかどうかです。
たとえば、部下の残業を減らしても、報告資料の本数や納期を据え置けば、誰かが不足分を担います。管理職が引き取った仕事を洗い出し、廃止・簡略化・再配分を検討するところまで、組織の取り組みに含めましょう。
ハラスメントを懸念した指導の難しさ
独自調査では、ハラスメントを気にして部下への指導がしづらいと感じる人が67%でした。伝え方に迷い、必要なフィードバックを先延ばしにする状況は、自社でも確認したい論点です。
ただし、指導そのものが禁止されているわけではありません。厚生労働省の指針では、客観的に見て業務上必要で、程度も適切な指示・指導は、職場のパワーハラスメントに当たらないとされています。
※出典:厚生労働省のパワーハラスメント防止指針
組織としては、避けるべき言動を伝えるとともに、必要な指導をどう行うかを支えることが大切です。たとえば、確認できた事実、期待する行動、改善に向けた支援を整理する面談練習が考えられます。判断に迷った際、人事へ相談できる経路も用意しましょう。具体的な場面を持ち寄れる方が、管理職も相談しやすくなります。
プレイングマネージャー化
プレイングマネージャーには、チームの成果と、自分が担当する実務の両方が求められます。独自調査では、業務全体の5割以上をプレイヤー業務が占める人が66%でした。
たとえば、顧客への提案を抱えながら、部下の目標設定や育成面談も担当する場面を考えてみましょう。顧客対応を優先すれば面談の準備時間が減り、面談を確保すれば自分の実務が後ろにずれます。予定の組み方を工夫するだけでは、両方に必要な時間を確保できないこともあります。
見直すべきは、管理職個人の時間管理に加え、組織が求める成果の配分です。個人で達成すべき目標を据え置いたまま、育成や評価の役割を増やしていないかを確認します。
部下に仕事を任せる場合も、説明や確認の時間が必要です。「明日から任せる」で終わらせず、引き継ぐ仕事、期間、支援する人を決めましょう。その間の管理職の実務量まで調整して、チームを育てる時間をつくることが必要です。
多様なマネジメントとメンタルヘルスケア
管理する相手が変われば、仕事の任せ方や話し合う内容も変わります。独自調査では、年上の部下や多様な雇用形態のマネジメントに苦労していると答えた人が54%でした。両者をひとつの設問で聞いた結果であり、年上部下への対応だけを示す割合ではありません。
実務では、年齢だけで相手を捉えず、担当業務、勤務条件、本人が希望するキャリアを確認することが出発点になります。たとえば、同じ役割を期待していても、勤務時間や担当範囲が違えば、依頼内容や納期の調整が必要です。
部下のメンタルヘルスへの配慮も、管理職だけで抱え込まない仕組みにしたい領域です。日常の変化に気づき、相談を受けた後、必要に応じて人事や産業保健スタッフなどにつなげる経路を整理します。
部下を支える人自身にも、相談相手が必要です。管理職が困った際の窓口と、上位管理職が業務量を調整する役割を、あわせて決めておきましょう。

3.管理職の負担から考える組織リスク【独自調査データ】
管理職の負担は、後任を育てる体制や、現在の管理職が働き続けられる環境を考えるうえでも見過ごせません。ただし、調査結果を読む際には、次の3つを分ける必要があります。
- 昇進を辞退した人を見聞きした経験
- 自分がもう一度管理職を選ぶかという意向
- 管理職になってから離職を考えた経験
いずれも組織が状況を確かめる手掛かりですが、実際の昇進辞退率や離職率とは異なります。「何人が辞めるか」を予測するためではなく、本人や候補者との対話で何を聞くかを考えるために、数値を見ていきましょう。
昇進辞退の認知と管理職への意欲
自分のチーム・部署で、管理職のポストを辞退した人を見聞きした回答者は67%でした。内訳は、直接見た人が43%、聞いたことはあるが直接は見ていない人が24%です。昇進を打診された人の67%が辞退した、という意味ではありません。
別の設問では、もう一度選べるなら管理職になりたくないと答えた人が27%いました。
これは現職管理職の再選択意向であり、実際に昇進を辞退した人の理由を示すものではありません。
管理職になることで、どの仕事が増え、どの仕事が減るのか。どこまで判断でき、処遇はどう変わるのか。期待する役割だけでなく、働き方と支援も具体的に伝えたうえで、本人の希望や不安を聞くことが大切です。

管理職自身の離職を考えた経験と継続意向
管理職になってから離職を考えた経験がある人は70%でした。内訳は、現在考えている人が33%、過去に考えたことがある人が37%です。70%が今すぐ離職したいと考えているわけではなく、実際に離職した割合でもありません。
「管理職の負担が現在のまま変わらないとしたら、3年後も管理職を続けていると思うか」という問いでは、続けていない側の回答が16%、わからないが30%でした。ここでも、管理職を続けないことと、会社を辞めることは分けて考える必要があります。
人事が確かめたいのは、本人が何を変えてほしいと考えているかです。役割を続けたいが業務量を減らしたいのか、専門業務に戻りたいのか、ほかの課題があるのかで、必要な対応は変わります。
継続意向を聞くだけで終えず、調整できる仕事や支援を話し合い、その後に状況を確認する機会まで設けましょう。
4.組織として取り組むべき対策

負担を軽減するために効果的だと思う施策を聞くと、報酬・手当の引き上げが61%で最多でした。次いで、業務範囲・権限の見直しが50%、研修・コーチングの充実が45%でした(複数回答)。
これは、実施後の効果を測った結果ではなく、回答者が期待する支援です。報酬への要望を受け止めながら、仕事の範囲や支援体制も点検する必要があります。
ここからは、役割・権限・処遇、人的な支援、テクノロジーの3つに分け、組織で取り組む方法を考えます。
役割・権限・処遇の見直しと業務の切り出し
まず、管理職に任せる役割と、その役割を果たすための権限・処遇を並べて確認します。独自調査の自由回答にも「権限が少ない為に部下からの業務上の相談を逐一上司に報告、指示を仰がなければならない。 そのタイムロスで売上が落ちると自分の責任になる。権限と責任両方欲しい。」という声がありました。
たとえば、チームの納期に責任を持つ一方で、案件の優先順位や応援要員を決められない場合です。本人に改善を求める前に、管理職が決めてよい範囲と、上位者の判断が必要な範囲を明らかにしましょう。
独自調査の自由回答では、「不具合に関して、何度も違う場で説明を求められ、その都度資料作成などで工数を使う半面、不具合対策の実務もやらねばならない」という声もありました。説明そのものは必要な仕事ですが、同じ内容を場を変えて繰り返す負担まで管理職が引き受けている場合、実務に充てる時間を圧迫します。
業務の棚卸しでは、次のように「減らす仕事」と「残す判断」をセットで整理すると、分担を具体化できます。
| 見直す業務の例 | 分担の例 | 管理職が担う判断の例 |
|---|---|---|
| 評価日程の調整・提出状況の確認 | 人事が共通の進捗を管理 | 部下の成果の確認と評価面談 |
| 定例会議向けのデータ転記 | 共通データからの集計に切り替え | 差異の背景と対応方針の判断 |
| 採用面接の日程調整 | 採用担当が窓口を担当 | 配属先として確認すべき要件の整理 |
これは分担を考えるための例です。移管先の人員や業務量も確認し、別の担当者へ負担が集中しない形を検討します。
処遇についても、担当人数や責任、期待する成果に見合っているかを人事・経営で点検しましょう。報酬の見直しと、本人が使える時間・裁量の見直しを、同じ検討の場で扱うことが大切です。
研修・コーチング支援と評価指標の見直し
独自調査で、管理職としての研修や支援が十分だと感じる人は36%でした。負担軽減の取り組みについては、不十分が37%、ほとんど・まったく行われていないが計41%。あわせて78%が、取り組みの不足を感じています。
研修やコーチングを用意する際は、現場のどの困りごとを支援するのかを明確にします。評価面談に悩むなら、実際のケースを使った練習と事前相談。部下への任せ方に悩むなら、任せる業務の選定や進め方を一緒に考える機会が候補になります。
受講時間や相談時間を確保できるよう、通常業務の調整も必要です。管理職同士で事例を共有する場や、上位管理職による定期的な相談の機会も組み合わせましょう。
さらに、人材育成を求めるなら、その取り組みを管理職の評価でどう扱うかも確認します。たとえば、部下が新たに担えるようになった業務や、育成計画の進み具合を話し合う方法があります。職務やチームの条件に合った観点を定め、短期の売上だけで管理職の貢献を判断しない設計を検討しましょう。
テクノロジーによる負荷軽減とカオナビAI機能
独自調査では、部下の評価・目標管理を負担に感じる人が63%でした(複数回答)。評価業務にAIやツールが使えるなら活用したい人は72%。利用経験や導入効果ではなく、活用への意向を示す結果です。
支援してほしい業務では、部下のスキル・適性の把握が53%、会議資料・報告書の作成が52%でした(複数回答)。この設問は、特定の製品の機能を評価したものではありません。自社で時間がかかる作業を確認し、対応する手段を選ぶことが先になります。
カオナビの「AI目標・評価アシスト」は、目標や評価に関する文章づくりを支援します。登録されたデータをもとに、目標へのアドバイス・添削、自己評価コメントの案の生成、評価者コメントの精査などを行います。
機能の詳細はこちら:カオナビ AI活用
「AIダッシュボード診断」は、ダッシュボード上の指標・グラフなどをもとに、組織の課題点や推奨アクションを提示する機能です。追加で確認したい指標の提案も受けられます。
いずれも、管理職の仕事全体を引き受けるものではありません。この記事で想定する活用は、文章の下準備やデータの確認にAIの支援を使い、本人との対話や判断に時間を使うことです。評価の最終判断は人が行います。「罰ゲーム化」についてもAIの診断結果で決めず、実際の業務や本人の話を確認しましょう。
導入時には、現在かかっている準備・確認の時間を記録しておくと、導入後にどの作業が減ったかを確かめられます。
評価コメント作成や組織課題の把握、AIで負担を減らせます
カオナビのAI機能(評価アシスト・ダッシュボード診断)が、管理職・人事の業務をどう支援するかをまとめた資料です。
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5.よくある質問
管理職の罰ゲーム化を防ぐ取り組みについて、着手時に考えたい疑問をまとめました。
Q. 中小企業では何から見直せばよい?
管理職に集中している業務の棚卸しから始めましょう。定例会議、資料作成、部下対応などを書き出し、かかる時間と、管理職本人の判断が必要かどうかを確認します。
人員に余裕がなければ、移管先を探す前に、やめる仕事や回数を減らせる仕事がないかを検討します。そのうえで、他部署や外部から得られる支援を選び、必要な権限も整理しましょう。
最初はひとつの部署・業務で試し、誰の負担がどう変わったかを確認すると、次に見直す範囲を決めやすくなります。
Q. 報酬を上げれば解消する?
報酬の見直しは重要な検討事項です。独自調査でも、効果的だと思う施策として報酬・手当の引き上げを選んだ人が61%で、最多でした(複数回答)。
ただし、この数値は報酬を上げれば負担が解消することを証明したものではありません。時間が足りない、責任を果たす権限がないといった課題も確認し、業務範囲・権限・支援とあわせて見直す必要があります。
Q. 罰ゲーム化を早期に把握するシグナルは?
確認する観点として、管理職のエンゲージメントスコア、残業、有休取得、昇進辞退の変化などが考えられます。いずれも本記事の実務上の提案であり、罰ゲーム化を判定する診断基準ではありません。
数値が変化したら、繁忙期や人員の増減などの背景と、本人の受け止めを確認します。「どの仕事が増えたか」「自分で決められず困ることは何か」「どんな支援があれば変わるか」を聞き、業務の棚卸しにつなげましょう。
6.まとめ|管理職の罰ゲーム化を防ぐために組織ができること
独自調査で、管理職として最もやりがいを感じることの最多は「チームで成果を出せたとき」の46%でした。管理職を支える目的は、そのやりがいにつながる仕事に時間を使えるようにすることです。
まずは自社の管理職と、見直したい業務や不足している支援をひとつ選びましょう。人事・経営も一緒に、役割・権限・処遇を点検し、具体的な変更につなげることが出発点になります。
目標・評価の文章作成や組織データの確認に時間がかかっている場合は、ツールの活用も選択肢です。カオナビの機能は、資料ダウンロードや、実際の画面を確認できるデモ・トライアルでご確認ください。

