「ChatGPTで文章生成」止まりが55%──人事×AI活用の実態調査

人事部門での生成AI活用、55%が「文章生成」止まり。しかし「壁打ち」や「データ分析」にまで使いこなす層との間には、明確な差がありました。

この記事のポイント
従業員50名以上の企業の人事・総務・経営企画担当者100名を対象に実施したアンケート調査の結果を紹介します。「AIに何をさせているか」「失敗経験とルール整備の関係」「レベル別の障壁の違い」まで、データで読み解きます。

AI活用レベルの分布「半数以上がLevel 1以下」

55%
「文章生成」止まり以下
(L0+L1)
45%
データ分析以上
(L2+L3+L4)
12%
業務自動化まで到達
(L4)
AI活用レベル分布(SA, n=100)
L0: ほぼ活用していない
17%
L1: 文章生成に活用
38%
L2: データ分析の補助に活用
27%
L3: 意思決定の支援に活用
6%
L4: 業務プロセスに組み込み自動化
12%

最も多いのはL1(文章生成)の38%。L0と合わせると過半数がまだ入り口にいます。一方で、L2以上に進んでいる層も45%おり、二極化の構造が見えてきます。

使用ツールランキング(MA, n=100)
ChatGPT(OpenAI)
62%
Gemini(Google)
59%
Microsoft Copilot
37%
Claude(Anthropic)
11%
Perplexity
7%
社内専用の生成AIツール
6%
NotionAI
4%
使用していない
13%

ChatGPTとGeminiが6割前後で拮抗し、Microsoft Copilotが37%で続きます。企業規模別に見ると、AI活用レベルには明確な傾向がありました。

企業規模 n L2以上の割合
50〜99名 9 11% ※n≦15のため傾向の示唆として
100〜299名 16 25%
300〜999名 25 48%
1,000〜4,999名 29 52%
5,000名以上 21 62%

300名が1つの目安となりそうです。ただし5,000名以上でもL0が29%おり、大企業=進んでいるとは限りません。


AIに何をさせているか。プロンプト内容で見えるレベルの差

プロンプト内容(MA, n=100)
文章の作成・添削・要約
56%
労働法規や制度・ルールの確認
41%
制度設計や企画のアイデア出し・壁打ち
40%
面接や1on1の質問・スクリプト作成
34%
データ分析やアンケート結果の傾向把握
30%
PC作業の補助(マクロ・関数作成等)
30%
業界動向や他社事例の調査
21%
従業員対応・マネジメントに関する相談
20%
活用していない
13%

全体では「文章の作成・添削・要約」が56%でトップ。しかし、AI活用レベル別にクロス集計すると、プロンプト内容に大きな差が現れます。

プロンプト内容 L1(n=38) L2以上(n=45)
文章の作成・添削 76% 56% ▼-20pt
壁打ち・アイデア出し 34% 60% ▲+26pt
データ分析・傾向把握 16% 53% ▲+37pt
業界動向・他社事例調査 11% 36% ▲+25pt
マネジメント相談 11% 33% ▲+22pt

L1は「文章を書かせる」が76%で突出。L2以上は「壁打ち」60%、「データ分析」53%と用途が多様化しています。AIに何をさせるかの多様性が、レベルの差を生んでいることがデータから読み取れます。

佐々木さん

「面談ログを要約して、フィードバックレポートの骨子を作って→評価のばらつきの可視化に活かした」

山田さん

「新卒採用時のエントリーシートの読み込みにAI → 大幅な業務効率化」

「次のステップに進めない理由」。レベルが上がると壁の質が変わる

障壁(MA, n=100)
セキュリティポリシー・情報漏洩リスクへの懸念
58%
社内ルール・ガイドラインが未整備
42%
自分自身のAIスキルが不足
38%
AIの出力精度に不安
27%
部門内に推進者がいない
26%
経営層の理解・承認が得られない
13%
予算がない
13%
業務フローに組み込む方法がわからない
13%
特に障壁はない
8%
導入しても浸透しないと思う
7%
18%
専任の推進者がいる
27%
推進者がいない

全体では「セキュリティリスク」が58%で最大の壁。しかし、AI活用レベル別に見ると壁の質が異なります。

障壁 L1(n=38) L2以上(n=45)
セキュリティリスク 55% 73%
ルール未整備 42% 51%
AIスキル不足 42% 38%
業務フロー組込不明 11% 20%
浸透しないと思う 8% 2%

L1の壁は「スキル不足(42%)」と「浸透しない(8%)」。つまり「使えない」。L2以上の壁は「セキュリティ(73%)」と「業務フロー組み込み(20%)」。つまり「使えるが、組織に埋め込めない」。レベルが上がると壁の質が変わることがわかります。


AI活用の失敗経験「半数が転んでいる」

52%
失敗あり+未遂
69%
AIバレ率
(文章生成経験者ベース)
69%
出力の誤りが
失敗1位
失敗内容(MA, n=52)
AIの出力の誤り・不適切な表現
69%
AI文章であることを指摘/されそうに
44%
機密情報・個人情報を入力してしまった
27%
ツールが業務に合わず使われなくなった
25%
確認作業が増えてかえって時間がかかった
15%
習得に想定以上の時間がかかった
12%
一部の人だけが使い浸透しなかった
12%
AIバレ経験(文章生成経験者のみ, n=77)
気づかれていると感じる
49%
気づかれていない
31%
指摘されたことがある
19%

AI活用者83名に限ると、63%が失敗またはヒヤリハットを経験しています。文章生成経験者77名のうち53名(69%)が「バレた」または「バレている気がする」と回答しました。

キーワード解説
ハルシネーション(Hallucination):生成AIが事実と異なる情報をもっともらしく出力する現象。人事領域では存在しない法令の条文や架空の判例を根拠として提示するケースが報告されており、本調査でも「出力の誤り」が失敗原因の1位(69%)となっています。

中村さん

「こちらの意見を忖度する傾向があり、悩ましい」

佐々木さん

「自分で文章を書かなくなり、言葉が出ない」

失敗を仕組みに変えた企業「転んだ企業ほどルールが進む」

グループ n ルール整備率
失敗あり/未遂 52 75%
失敗なし/未活用 48 19%

約4倍の差。失敗を経験した企業のほうが、ルール整備が進んでいます。

整備されているルール(MA, n=100)
入力してよい情報の範囲の定義
51%
AI出力のダブルチェック・レビュー体制
39%
利用ツールの指定・承認済みリスト
29%
定期的な勉強会・研修の実施
28%
AIを使用した旨の開示ルール
25%
プロンプトテンプレートの共有
20%
活用事例の社内共有の仕組み
17%
特にない
18%
「守り」と「攻め」のルール整備状況
先行する「守り」のルール
入力範囲の定義(51%)、ダブルチェック体制(39%)
遅れている「攻め」のナレッジ
プロンプト共有(20%)、事例共有(17%)
→ まず守りを固め、そこから攻めに転じるのが現実的な順序です。

まとめ:AI活用は「失敗を仕組みに変えられるか」が分岐点

調査結果から見えてきたのは、AI活用のレベルを分けるのは「ツールの性能」ではなく「何をさせるか」と「失敗をどう扱うか」だということです。

明日から取り組める3つのアクション

  1. 「壁打ち」用途を試す:「若手向けの新しい福利厚生のアイデアを5つ出して」「このサーベイ結果から課題を3つ抽出して」。文章生成から一歩踏み出すだけで、AIの活用領域は広がります。
  2. 入力してよい情報の範囲を「3行」で決めて共有する:「個人名NG」「売上数値NG」「制度の一般的な質問はOK」。完璧なガイドラインでなくていい。3行あるだけで、現場は安心して使い始められます。
  3. AI出力のダブルチェックを1人つける:失敗の69%は「出力の誤り」。AIの出力をそのまま使わず、もう1人が目を通すだけで防げる失敗が大半です。
80%
1年後
「活用を広げたい」
33%
ルール・ガイドラインなし

意欲は80%。だが33%がルールなし。意欲はあるが仕組みが追いついていない。「まず失敗してもいい環境を整え、失敗から学んだことをルールに変える」。このサイクルを回せるかどうかが、次のレベルへの分岐点になります。

調査概要
調査テーマ:人事×AI活用の実態
調査方法:ユニーリサーチによるインターネットリサーチ
調査期間:2026年6月
有効回答数:100名(スクリーニング回答584名)
回答者の企業規模:50〜99名 9%、100〜299名 16%、300〜999名 25%、1,000〜4,999名 29%、5,000名以上 21%
対象条件:従業員50名以上の企業に勤務する人事・総務・経営企画担当者(AI活用レベル不問)

関連記事

・人事×AI活用の最前線:座談会①最前線編

・人事×AI活用の失敗図鑑:座談会②失敗図鑑編