三方よしとは?【意味を簡単に】読み方、英語、語源、企業

三方よしとは「売り手」と「買い手」がともに満足し、さらに「社会貢献」もできるのがよい商売であるという考え方のことです。ここでは三方よしの語源や企業の事例について解説します。

1.三方よしとは?

三方よしとは、CSRの先駆けともいえる概念のこと。事業活動において売り手と買い手が満足するのは当然、さらに世間に貢献できてこそよい商売だという考えです。

日本は欧米に比べてCSRの歴史が浅いといわれています。しかし伊藤忠商事はじめ、さまざまな会社が300年以上も昔からこの「三方よし」の経営理念を取り入れてきました。

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三方よしの読み方

三方よしは「さんぼうよし」もしくは「さんぽうよし」と読みます。

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2.三方よしの意味とは?

三方よしの考えはいつの時代、どのような背景のもと生まれたのでしょうか。ここでは三方よしの語源やそれぞれの意味について説明します。

三方よしの語源

三方よしという表現自体は後世に作られたものですが、そのルーツは、江戸時代から明治時代にかけて全国規模で活動していた近江商人の行商スタイルにさかのぼる、といわれています。

伊藤忠商事の創業者、初代伊藤忠兵衛は、近江商人の先達に対して「商売は菩薩の業(行)、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの」と表現しています。

自社と顧客だけでなく、社会の利益につながる商いこそが大切だとする考えです。自らの利益のみを追求せず、相手、さらには社会全体の幸せを願う「三方よし」は、現代においても多くの企業が経営理念の根幹としています。

三方とは

三方よしの「三方」は、次の3つを表しています。

  1. 売り手
  2. 買い手
  3. 世間

営利企業といわれるように企業は、一般的に営利を目的としており、自社および顧客の利益を追求するために活動します。顧客第一として「売り手よし」を心がけている会社も多いでしょう。

しかし「自社だけが儲かればよい」という経営では、長期的に存続する企業になれません。そこで重要なのが、売り手と買い手、さらに社会の幸せを願う「三方よし」の考えです。

売り手

商人、つまり販売者や事業者のこと。商品やサービスを買い手に売り、世間からは評価される対象となります。

多くの経営者はまずこの「売り手よし」を目指して経営を進めます。自社が存続するためには利益を得て、従業員に給与を支払わなければならないからです。

もちろん、利益を追求すれば会社が存続できるわけでもありません。自社の利益ばかりを追求した結果、利益を生み出せても一過性になる可能性も高いからです。

世間の評価には商品の良し悪しだけでなく、企業理念や志の部分も影響します。そこで登場するのが、次に説明する「買い手よし」の考えです。

買い手

売り手から商品やサービスを購入して受け取る顧客のこと。「買い手よし」とは自社の消費やサービスが消費者やユーザーにとっての利益につながっている、顧客の満足度を高められたという状況を指します。

顧客が何に価値を感じるか、答えはひとつではありません。高級レストランとファストフードショップでは、まったく異なるターゲティングが行われます。

「質」を求める顧客と「安さ」を求める顧客に、等しく価値を感じてもらえません。「買い手よし」の実現には、ターゲティングをしたうえで顧客を選別することが重要です。

世間

競合他社を含む社会全体のこと。商品やサービスの売買が盛んになると、世の中は大きく発展します。さらにたくさんの商品やサービスが必要となり、それを提供するための人が雇われ、雇用という社会貢献が生まれるのです。

たとえば環境を無視して有害物質を出し続ける会社は、短期的に見れば利益が得られるかもしれません。しかし長期的に見れば社会や周囲からの反発が大きくなり、存続が難しくなる可能性もあります。

買い手からの信頼を得て買い手の生活が豊かになり、さらに世の中がよくなっていく考えが「世間よし」です。

「売り手、買い手、世間」の三方よしの意味

すべての立場にとって利益のあるビジネスのこと。以下すべてを満たした状態が「売り手、買い手、世間」の三方よしです。

  • 売り手:提供する価値に見合った十分な利益を出せる
  • 買い手:ユーザーや顧客が自社商品に対して満足してくれる
  • 世間:売り手(自社)と買い手(顧客)以外にもよい影響を与えている

現代では自社と顧客だけでなく、株主や従業員、地域住民など幅広いステークホルダーを含めて「三方よし」を考えます。しかし理想だとわかっていても「あちらを立てればこちらが立たず」となり、実現が難しい状況も多々。

そこで必要なのが、新たな考えや技術を取り入れて新たな価値を生み出し、社会に革新をもたらす「イノベーション」です。

三方よしを英語で言うと?

「三方よし」は英語で「Three way satisfaction」あるいは「Three side benefit」や「Benefits for all three sides」と表現されます。この後に「売り手、買い手、世間」を意味する「purchaser(売り手)、buyer(買い手)、society(世間)」と説明するのです。

また二者双方に利益のある様子を「win-win」と表現します。これに三者目の立場をくわえて「Triple win」と表現する場合もあるのです。

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3.三方よしを経営哲学とした近江商人とは

「売り手」「買い手」「世間」の三者を満足させる「三方よし」を経営哲学とした近江商人は、どのような人たちだったのでしょう。ここでは全国各地、時に海外にも進出していた近江商人の正体と、彼らが唱えた「商売十訓」について説明します。

近江商人とは

近江(現在の滋賀県)を本拠地として、全国各地へ行商に出かけていた商人のこと。起源は古く鎌倉、南北朝時代にまでさかのぼるといわれています。

「大坂商人」「伊勢商人」と並ぶ日本三大商人のひとつで「近江の千両天秤」と呼ばれるように、天秤棒ひとつから財を築き、豪商と呼ばれるまでに発展しました。

彼らは自分たちの足で各地の需要や価格差などの情報を仕入れ、全国規模の商品流通に貢献。現代では伊藤忠商事や丸紅、西武グループやトヨタ自動車、住友財閥など日本を代表する有名企業が、近江商人の流れを汲んでいます。

三方よし以外にもある、近江商人の商売十訓

近江商人は、商いにて「三方よし」以外にもさまざまな教訓を掲げてきました。いずれも現代の商い、CSRの概念に通用する商売の基本です。ここでは近江商人が経営の理念とした「商売十訓」について説明します。

  1. 商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり
  2. 店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何
  3. 売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる
  4. 資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし
  5. 無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ
  6. 良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり
  7. 紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ
  8. 正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ
  9. 今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ
  10. 商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ

①商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり

「三方よし」のもとにもなっている言葉です。商売は自分たちだけがよい思いをするものではなく、世のため、人のために奉仕することで、自分たちの利益が生まれると考えます。

世間や人のために価値を提供できているなら、その報酬として利益を追求すべきだと説いているのです。

②店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何

商いで大切なのは、店の外観や立地など、外から見えるイメージばかりではないとする考えです。どれだけ店が大きくてよい場所に建っていても、品質が悪ければ長続きしません。反対に多少の見た目が悪くてもよい商品を取り扱っていれば顧客はやってきます。

③売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる

いわゆるアフターサービスやアフターフォローができるお店には「ここに頼んでよかった」「また次もこの店で買いたい」と考えるリピーターがつきます。充実したアフターサービスは、口コミや紹介にて新たな顧客が誕生するきっかけにもなるのです。

④資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし

資金がなくても商売はできます。しかし信用がなければ商品は売れません。資金を集めることより、信頼関係を構築するほうが大切だと伝える教訓です。経営者は目先の利益ではなく、長い目で「何が利益につながるのか」を考える必要があるでしょう。

⑤無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ

商売は何でもかんでも流行のものを売ればよいわけではありません。顧客が望んでいないものを押し売りすることはもってのほか。本人も気付いていないニーズを提供することにこそ、商人の価値があるとする考えです。

⑥良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり

「よいもの」を売るのは商売の基本ですが、その「よいもの」を広告でさらに多くの人に知ってもらうことも「善い行い」です。

どれだけよい商品を取り扱っていても、それが顧客の手元に届かなければ意味がありません。「よいもの」を宣伝することは人のためになり、さらには社会貢献につながります。

⑦紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ

商品に付加価値をつければ、顧客はさらに喜びます。同じ商品を取り扱っている店でも、接客態度のよい店と悪い店とでは当然態度のよい店のほうが繁盛するでしょう。

近江商人は子どものいる家に薬のおまけとして紙風船をつけて、子どもを喜ばせていたという逸話も残っています。

⑧正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ

つねにセールをしているお店を信用できるでしょうか。安易な値下げは利益率を下げ、ブランドのイメージを低下させます。定価では誰も買ってくれないといった事態を引き起こすかもしれません。

安易に値下げを行うくらいなら、商品の価値を高める方法を考えたほうが賢明です。

⑨今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ

商売は毎日の積み重ねです。日頃からしっかり売上管理を行い、今日はどれだけの利益を得られたか、把握しておくことが重要です。自社の経営指標をつねに確認して、商売が本当にうまくまわっているのかを毎日振り返る必要があります。

⑩商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ

ビジネスでは景気の良し悪しにかかわらず、利益を出し続けなければなりません。不景気な時代だから売れない、競合他社が強力すぎて売れない、と嘆いても問題は解決しません。

どのような状況でも、儲けるためには何をしなければならないのか、顧客は何を望んでいるのかを考えなければならないのです。

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4.三方よしを実践している企業の事例

先に触れたとおり、現代でも多くの会社が「三方よし」を実践しています。この教訓は会社の規模や業界にかかわらず、すべての事業活動に通用する考えです。ここでは「三方よし」を実践している企業の事例について説明します。

伊藤忠商事

伊藤忠商事の創業者、初代伊藤忠兵衛も「三方よし」を唱えた近江商人の一人です。「売り手と買い手が満足するのは当然のこと。よい商売とはさらに社会に貢献する商売のことだ」という考えは、現代の企業活動にも受け継がれています。

2020年、伊藤忠グループでは28年ぶりに企業理念を改訂し、新たに「三方よし」を掲げました。この時代にあえて商売の原点に立ち返ることが、世界中で広がる「SDGs(持続可能な開発目標)」にも沿うものだと考えています。

ツカキグループ

着物やジュエリー、アパレルなどを手がけるファッション商社「ツカキグループ」では、1867年の創業以来150年以上ものあいだ「三方よし」を経営理念としています。

同社では「商いにおいては採算をきちんと合わせ、他者へ依存(借金)せず、節度ある経営哲学で自己を律することこそが企業の永続的成長につながる」と考えています。

誰もがチャンスを得られる環境をつくり、社内の活性化やモチベーション向上、さらには顧客の信頼が得られる商品の提供につなげてきました。

楽天市場(楽天)

EC業界を牽引してきた「楽天市場」は、店舗出店と顧客、楽天のどれかひとつでも欠ければエンパワーメントは実現できないと考えています。

ECモールの出店を行う企業には、成功事例から得たナレッジを共有して消費者のニーズに応える商品開発や販売活動をサポート。

消費者には幅広いジャンルをそろえ、店に行かなくても購買体験ができる環境を提供し、国内EC最大手と呼ばれるまでに成長しました。もちろんこの土台には、三方にとっての安心と安全を支えるための物流投資も行われています。

ホンダ

本田技研工業(ホンダ)の創業者でもある本田宗一郎氏は「三方よし」の理念を自社向けにアレンジして「売ってよし、買ってよし、つくってよし」の理念を掲げています。

この「つくってよし」には「仕入れ先や取引先、環境や地域社会にも貢献できるものをつくるべし」という意味が込められているのです。

またホンダでは商品やサービスを通じた「買う喜び」、信頼関係により誇りと喜びを持つ「売る喜び」、期待を上回る商品やサービスを作り出す「創る喜び」の3つを企業理念としています。まさに「三方よし」を現代に体現したものです。