ゼロサムとは?【ゼロサムゲーム・思考の意味は?】プラスサム

ゼロサムとは、「プラスマイナスゼロ」と同じ概念のこと。ここではゼロサムゲームやプラスサムゲーム、ゼロサムゲームで勝つ心得やゼロサム思考などを解説します。

1.ゼロサムとは?

ゼロサムとは、「合計するとゼロになる」こと。語源は英語の「zero-sum」で、「zero」は「ゼロ」、「sum」は「合計・総和」という意味です。「一方の利益が他方の損失になること」とも言い換えられ、「プラスマイナスゼロ」と同じ概念です。

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2.ゼロサムゲーム

ゼロサムゲームとは、参加したプレーヤーの利得合計がゼロになるもので、ゲームの類型のひとつ。一者の利益がもう一方の利益の損失と同じになり、全体の損得がつねにゼロになります。

非ゼロサムゲーム

非ゼロサムゲームとは、参加者の得点(利益)と失点(損失)の合計・総和(サム)が「0」(ゼロ)にならないゲームのこと。ゲーム理論と呼ばれる経済理論のひとつです。

外国為替取引の場合、一方の為替レートが上がれば、もう一方のレートは必ず下がるためゼロサムゲームになります。

対して株式の取引は短期ではゼロサムだといわれているのです。しかし長期的には市場全体が拡大することもあり、この場合、非ゼロサムゲームとなります。

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3.ゼロサムゲームの具体例

ゼロサムゲームの具体例を紹介しましょう。2国間の異なる通貨を交換する外国為替取引は、為替変動を短期間でみると一方が上がるともう一方は下がるため、ゼロサムゲームです。

競馬や競艇は、勝ち負けの金額と主催者の取り分を合わせるとプラスマイナスゼロになるため、ゼロサムゲームになります。将棋も自分の持ち駒が増えれば相手の持ち駒が減り、両者の持ち駒増減の合計がゼロになるため、ゼロサムゲームです。

非ゼロサムゲームの例

株式投資は、金融市場における非ゼロサムゲームの代表的な例といえます。

株価が上がっている時は投資家全体の利益が増大している状態です。反対に下がっているときは、全体が損失を被っている状態となります。利益と損失が必ず同時に生まれるゼロサムゲームには当てはまらない、典型的な非ゼロサムゲームといえるでしょう。

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4.ゼロサムゲームで勝つ心得

ゼロサムゲームで勝つ心得は、下記のとおりです。

  1. 引き際を見極める
  2. 負の感情を引きずらない

ゼロサムゲームで勝っているときは気分が高揚しやすく、さらにお金をつぎ込んでしまいます。しかし気づいたら大きく負けているときもあるため、ゲームの引き際を見極めるのは重要です。

また気持ちが落ち込んでいるときは賢明な判断ができません。負の感情に引きずられないよう、気持ちをリセットしていきましょう。

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5.ゼロサムゲームの弊害

ゼロサムゲームには弊害があります。たとえば、下記のようなものです。

  • 社内で社長や役員などのポストをめぐってリーダー同士が争い、足を引っ張り合う
  • チーム内で、資料や役立つ情報の共有を拒否する

これは同僚の評価が高まった結果、自分の昇進やボーナス査定がマイナスになるのではと負の思考が働くからです。またライバル企業同士が機能や品質で差別化が難しいため過当競争におちいり、価格競争によって利益率の悪化が生じる場合もあります。

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6.ゼロサムゲームからの脱却方法

ゼロサムゲームからの脱却方法として挙げられるのは下記の2つです。それぞれについて解説しましょう。

  1. 競争から棲み分けへ
  2. 競争から共創へ

①競争から棲み分けへ

ライバルと競争するのではなく棲み分ける、いわゆるニッチ戦略(市場のすき間を狙い、小さな市場で相対的に優位なシェアを得て収益を生み出す戦略)を取る方法です。

ニッチ戦略では選んだ事業分野でナンバーワン、さらにオンリーワンになることが望ましいとされています。

ライバル企業にとって、「市場がニッチ過ぎて収益性の向上が望めない」「原料となる資源が特殊で入手しづらい」場合、他社との直接的な競争を避けられるからです。

②競争から共創へ

共創とは、利益の総取りではなく同業他社とも調和しながら成長する方法のこと。敵対関係より協調したほうが利益につながる場合、ライバル社が同質化戦略を取る必要性がなくなり、ともに支え合う関係を築けます。

協調戦略として挙げられるのは、下記のような方法です。またコーズマーケティングのように、ビジネスが社会貢献につながる方法もあります。

  • アライアンス
  • コラボレーション
  • コンソーシアム
  • ジョイントベンチャー
  • ネットワーキング
  • パートナーシップ

プラスサムゲーム

ゼロサムゲームからプラスサムゲームへの移行も可能です。プラスサムゲームとは、あるプレーヤーの利益が必ずしも他のプレーヤーの損失に結びつかないケースのこと。

相手と協調すると互いの利益が向上する可能性もあります。そこで競い合いながらも協調を図ることが重要になるのです。

一見ゼロサムゲームのように思える交渉でも、新たな視点から別の交渉条件を持ち込むと、プラスサムゲームに転じる可能性が高まります。

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7.ゼロサム思考は認知バイアスの1種

ゼロサム思考は認知バイアスの1種で、ビジネスや人事にも影響するといわれています。認知バイアスとは、自分の育った環境や経験などによって、さまざまな影響を受けてできた価値観や物事の見方、その認知の偏りのこと。

たとえば人事評価でいえば、過去の経歴で人を判断したり個人のスキルを拡大解釈したりといったものです。これは評価する側が持つ認知バイアスから思い込みが生じて、発生します。

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8.ゼロサム思考

物事の白黒をはっきりさせようとする考え方のこと。下記のようにも呼ばれます。

  • 二分割思考
  • 白黒思考
  • 0か100か思考

たとえば、「すべて完璧にできなければいけない」「少しでも欠点があれば成功できない」などがゼロサム思考です。

ゼロサム思考の考え方をする人には、「他人を良い人か悪い人だけで分類する」「物事がうまくいっている時は楽天的でも、挫折すると悲観主義になる」といった傾向があります。

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9.ゼロサム思考の改善法

ゼロサム思考の改善策には何があるのでしょう。下記について見ていきます。

  1. 経験と知識を増やす
  2. 前提を疑う習慣を持つ
  3. 複数の視点で考える
  4. 確率や統計に強くなる
  5. 得とは何か再考する

①経験と知識を増やす

ゼロサム思考を改善するためにも、多様な価値観に触れるとよいでしょう。多くの価値観があることを知っている人は、認知バイアスがかかっていても、物事を少し引いた立場で見ていけます。

せまい世界で限られた価値観だけと接していると、知らず知らずのうちにゼロサム思考や、ほかの認知バイアスがかかった考え方になってしまうので気をつけましょう。

②前提を疑う習慣を持つ

先入観だけで初対面の人や物事を決めつけてはいけません。前提に疑問を持ってみましょう。

たとえば自社の商品の売れ行きが落ち込んだ際、どう考えるでしょう。そこですぐに「ライバル社の影響が原因だ」と考えてしまう場合、認知バイアスにかかっている可能性があります。

こういったときは自分自身の思い込みや先入観、主観が混じっていないかじっくり検討しましょう。

③複数の視点で考える

自分の意見がつねに正しいと結論づけないよう気をつけましょう。自分の意見への反対意見があっても積極的に聞き入れ、多方面から検討するのです。

また自分にとってポジティブではない情報を集めることもゼロサム思考の改善に役立ちます。複数人の視点に触れることは、自分の認知バイアスに気づけるチャンス。他人の意見に同意できる点を探すのも重要です。

④確率や統計に強くなる

物事を確率や統計など具体的な数字で考えると、バイアス思考に気づけます。バイアス思考により、「何となくそう思う」といったあいまいな感覚におちいっても、確率や統計から考えると思い込みが間違っていると気づけるからです。

たとえば「当たりそうだから宝くじを買ってみよう」と思ったとしましょう。しかし宝くじの払い戻し率は50%を下回っています。このように具体的な数字を知れば、当たる確率が低いとわかるのです。

⑤得とは何か再考する

先入観を持たず、「得をする」とはどういうことか、もう一度考えてみましょう。

たとえばコロナ禍のマスクや消毒液などの買い占め騒動のように、今後が見とおせないとき、人はこれまで以上に短期的な視点におちいるもの。そして短期的な得にしか関心が向かなくなってしまいます。

他人を傷つけたりトラブルに発展したりしてまでも、それを購入することが本当に得なのでしょうか。長期的な視点を持ち、本当の得とは何かを再度考えてみると、ゼロサム思考を改善する糸口になります。

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10.ゼロサムに関連する用語、ゼロサム社会

ゼロサムに関する用語は、いくつかあります。ここでは、ゼロサム社会について解説しましょう。

ゼロサム社会とは、経済成長が停止して資源や富の総量が一定となり、ある者が利益を得ると誰かがその分だけ不利益をこうむる社会のこと。

アメリカの経済学者 L.C.サローの著書では、ゼロサム問題こそが最優先で解決されるべき経済問題のひとつであると強調しています。そのためにも分配の公正について社会の合意をつくり出さなければならないと主張しているのです。

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11.ゼロサムからウィンウィンへ

誰かが勝てば誰かが負けるゼロサムとよく比較される言葉に、ウィンウィンがあります。ウィンウィンとは「相手も自分も双方が勝ち」と言う意味を持ち、経済用語では取引をする双方に利益があるという意味として使われます。

たとえば同僚が出世した際、相手を祝福すると、双方で良好な関係を築けるでしょう。経済に限らず普段の人づきあいや日常の買い物、環境問題などでもウィンウィンな関係を築こうと心がけるのも重要です。