若者雇用促進法とは|対象者、内容などわかりやすく解説

若者雇用促進法とは若者が適職を選択するための支援や能力開発、向上などの措置を講じて若者の雇用を促進する法律です。若者雇用促進法の詳細について見ていきましょう。

1.若者雇用促進法とは?

若者雇用促進法とは、若者がスキルアップして適切な職に就けるよう措置を講じるための法律で、正式には「青少年の雇用の促進等に関する法律」といいます。

以前から若者の雇用に関する法律として存在していたのは「勤労青少年福祉法」。しかし、昭和45年の交付当時と現在とでは若者を取り巻く環境が大きく異なってきました。

「若者雇用促進法」は「勤労青少年福祉法」を改正する形で、平成27年9月18日に交付され、同年の10月1日に施行となったのです。

若者雇用促進法は、青少年の雇用促進などを図りながら能力を有効に発揮できる環境を整備するために施行された法律です

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2.若者雇用促進法の目的

若者雇用促進法の目的は、若者自らが自分に合った仕事を選択でき、かつスキルアップや開発を進められるようにすること。

若者雇用促進法制定の背景には青少年の離職や少子化に伴う深刻な労働力人口の減少があります。

厚生労働省が発表した「新規学卒者の離職状況」によると、離職率は大卒でも36.6%(平成16年)。就職後3年以内での離職者はかなりの数に上ることが分かりました。

こうした若者の雇用実態に対処して雇用の促進を図り、能力開発・向上を総合的に行うことが若者雇用促進法の目的なのです。

学歴による差はあるものの、1990年代の後半から徐々に就職後3年以内の離職率が高まっているといわれています

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3.若者雇用促進法の特徴3つ

若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)には、3つの特徴があります。

  1. 3類型に基づく情報の提供
  2. 特定の求人を受け付けない
  3. ユースエール認定制度

①3類型に基づく情報の提供

まずひとつは3類型に基づく情報の提供です。3類型とは以下の状況を指します。

募集・採用に関する状況

  • 過去3年間の新卒採用者数や離職者数(男女別人数)
  • 平均勤続年数

職業能力の開発・向上に関する状況

  • 研修や自己啓発支援、メンター制度の有無とその内容
  • キャリアコンサルティング制度や社内検定等の有無とその内容

企業における雇用管理に関する状況

前年度の実績(月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業取得対象者数と取得数)

②特定の求人を受け付けない

若者雇用促進法では、ハローワークにて労働関連法に違反した事業所からの新卒求人をある程度の期間受け付けないような仕組みを設けています。いわゆるブラック企業を若者が選択することがないように配慮した制度です。

求人の不受理対象となるのは以下の通りですので、覚えておきましょう。

  • 労働基準法と最低賃金法に関する規定について違反があった: 違法な長時間労働を繰り返している、最低賃金割れの是正勧告を受けたなど
  • 男女雇用機会均等法と育児介護休業法に関する規定について違反があった:出産等を理由とする不利益取扱いやセクシャルハラスメントの是正勧告に従わないなど

③ユースエール認定制度

若者雇用促進法には、若者の採用や育成を積極的に行うなど優良な姿勢を示した企業を認定する「ユースエール認定制度」が設けられています。厚生労働大臣が認定したユースエール認定企業になると、企業には以下のようなメリットを享受できます。

  • ハローワークなどで積極的にPRできるため、若者からの応募増が期待できる
  • 認定企業限定の就職面接会に参加できる
  • 若者の採用・育成を支援する関係助成金の加算措置がある
  • 日本政策金融公庫による融資制度がある

若者雇用促進法の施行により、企業は事業規模を問わず若者からの求めに応じて職場情報を提供する義務があります

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4.若者雇用促進法のメリット

若者雇用促進法にはどのようなメリットがあるのでしょうか。新卒者と企業、それぞれのメリットを見ていきます。

新卒者のメリット

まず、若者雇用促進法の施行による新卒者にとってのメリットです。

情報収集

若者雇用促進法により企業は求めに応じて、適切な情報公開を行わなくてはなりません。新卒者は、平均勤続年数や有給休暇の平均取得日数などを事前に知った上で就活に臨めるのです。

若年者が離職する理由の上位に挙げられるのは、「入社前の想像と実際の状況が異なる」ですが、これにより入社前の想像と実態との間に生じやすい乖離を防ぎます。また、早期離職の回避も可能です。

適切な企業にのみ応募できる

若者雇用促進法によって新卒者は、若者の採用を積極的に進めている企業を見分けることができます。「求人詐欺」という言葉にある通り、実態と異なる賃金や残業時間を広告して労働者を使い捨てる悪質な企業は少なからず存在するもの。

若者雇用促進法では、こういった企業への応募を防ぎます。よって若年者は、一定の情報提供項目を公開していたりユースエールに認定されたりした優良企業だけに応募できるのです。

企業のメリット

続いて、若者雇用促進法の施行による企業にとってのメリットです。

支援や優遇

前述の通り、ユースエール認定を受けると、助成金や融資などで優遇されます。具体的には以下のような助成制度です。

  • キャリアアップ助成金
  • 人材開発支援助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 特定求職者雇用開発助成金

ユースエール認定を受けた企業は、働き方改革推進支援資金を利用する際、基準利率から-0.65%での融資を受けることも可能です。

良い人材に巡り会いやすい

ユースエール認定に向けて取り組むと、新卒者から信頼のおける企業と思われやすくなります。

ユースエール認定企業は、全国各地の都道府県労働局やハローワークが実施する就職面接会で積極的に案内を受けられるため、より多くの就職希望者とコンタクトを取る機会が増えます。結果としてより良い人材に巡り会いやすくなるのです。

雇用の促進を図る「若者雇用促進法」のメリットは多岐にわたります。若者を職場に定着させ、生産性の向上も図れるでしょう

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5.若者雇用促進法の詳細

ここでは若者雇用促進法の詳細について掘り下げます。

  1. 基本
  2. 関係者が持つ責務など
  3. 事業主などの指針
  4. 若者を雇用するうえでの基本
  5. 特定の求人を受け付けない
  6. 適切に情報を提供する
  7. ユースエール認定制度(若者の雇用管理の状況が優良な中小企業の認定制度)
  8. ジョブ・カードの活用
  9. 地域若者サポートステーション
  10. 中退者の就職を支援

①基本

若者雇用促進法の基本的理念(法第2条・第3条)は、「すべての青少年が将来の経済および社会を担うものとして意欲や能力に応じた職業生活を営むとともに、有為な職業人として健やかに成長するよう配慮されるもの」となっています。

また、青少年である労働者は将来の経済および社会を担うものとしての自覚を持ち、自ら進んで有為な職業人として成長するよう努めなければならないと規定しているのです。

②関係者が持つ責務など

若者雇用促進法による関係者の責務・連携(法第4条~第6条)では、「若者が適切に職業選択を行い就職の機会を得るためには、国や地方公共団体(特定地方公共団体を含む)、事業主を含む関係者のほか、職業紹介事業者や募集受託者、募集情報提供事業者などその他の関係者も適切な支援を行う必要がある」と明記されています。

本項目では全関係者の責務や連携、協力について規定しています。

③事業主などの指針

前述した事業主や特定地方公共団体ら各関係者が、定められた責務を全うできるよう事業主等指針(法第7条)で、我が国の雇用慣行や若者の雇用失業情勢等を考慮して、具体的に実施する事項を規定しています。

事業主などが採用や募集において行う措置

事業主などが青少年の募集や採用にあたって行うべき措置は、全部で8項目です。

  • 青少年が適切に職業選択を行い安定的に働くことができるための項目を遵守する(労働条件の明示など)
  • 固定残業代を採用する場合は計算方法や基本給額などを明示する
  • 学校卒業見込者などについて当初明示した条件に含まれない内容の追加は不適切
  • 採用内定の取消しは極力避ける
  • 既卒者についても卒業後少なくとも3年間は新卒募集の採用枠に応募できるよう努める

事業主が職場定着のために行う措置

青少年の職場定着促進のため事業主が行うべき措置とは、研修などを実施してスキルアップの機会を設けること。

具体的にはOJTやOFF-JTの計画的実施やキャリアコンサルティングを受ける機会の確保、自発的職業訓練のための休暇付与やジョブ・カードを活用した支援などです。

事業主は、青少年の仕事に対する能力を高めながらその能力を有効に発揮できるようにし、職場定着を支援するための措置を講じなくてはなりません。

事業主以外の関係者が職場定着のために行う措置

特定地方公共団体や職業紹介事業者など事業主以外の関係者が、職場への定着を促進するために行うべき措置は以下の4項目です。

  • 青少年が適切に職業選択を行うことができるよう、提供する情報を分かりやすいものにし、サイト利用に関する相談や苦情に対しては適切に処理するための体制を整える
  • 求人申し込みを受理する際は、青少年雇用情報の全項目を情報提供するよう働きかける
  • 自らが運営するサイトに、可能な限りすべての情報が掲載されるよう取り組む
  • 職業紹介事業の取扱職種の範囲などの届出を行うことが望ましい(不受理とする求人をハローワークに準じるため)

④若者を雇用する上での基本

若者雇用促進法では、若者の適職選択ならびに職業能力の開発、向上を図るための施策の基本となるべき事項を示したものとして、青少年雇用対策基本方針(法第8条)を規定しています。

若者の就職活動時や離職後のトラブルを防止するには、労働法制に関する知識の理解を深めることが重要です。

⑤特定の求人を受け付けない

前述の通り若者雇用促進法では、残業代未払いや過重労働など労働関係法に違反するといった事情を持つ企業の求人情報をハローワーク側で受理しないよう、規定しています。

新卒採用時のトラブルは、若者にとってその後の職業生活に長期的な影響を及ぼす恐れがあります。

そのためハローワークは「求人の不受理(法第11条)」として、一定の労働関係法令違反があった事業を新卒者に紹介しないよう、そういった事業者からの新卒求人は一定期間受け付けないことを定めました。

⑥適切に情報を提供する

青少年雇用情報の提供(法第13条・第14条)では、応募者やハローワークから情報提供の申し込みがあった場合、速やかに情報を提供することが規定されています。

新規学校卒業者の募集・求人申し込みを行う事業主は、応募者や応募の検討を行っている者、特定地方公共団体などから求めがあった場合、青少年雇用情報を提供しなければなりません。なお情報提供項目は前述した以下の3類型です。

  • 募集・採用に関する状況
  • 職業能力の開発・向上に関する状況
  • 企業における雇用管理に関する状況

⑦ユースエール認定制度(若者の雇用管理の状況が優良な中小企業の認定制度)

若者雇用促進法では、若者を対象にした雇用管理の状況が優良な中小企業の認定制度(法第15条~第17条)を規定しています。

また、若者の採用や育成に積極的で、雇用管理の状況などが優良な中小企業は「ユースエール認定企業」として認定されます。本認定を受けるには後述する12の基準を満たす必要があります。

⑧ジョブ・カードの活用

若者雇用促進法では「ジョブ・カード」の普及促進(法第21条)が定められています。ジョブ・カードとは厚生労働大臣が定める職務経歴等記録書のことで、個人のキャリアアップや人材の円滑な就職などを促進する目的で誕生しました。

個人への相談支援の下、求職活動や職業能力開発など各場面で活用できるだけでなく、生涯を通じたキャリア・プランニングツールや職業能力証明のツールとしても活用できます。

⑨地域若者サポートステーション

「サポステ」と呼ばれる地域若者サポートステーション(法第23条・第24条)とは、若者たちとじっくり向き合いながら職場定着までを全面的にバックアップする厚生労働省委託の支援機関のこと。

仕事に就いておらず家事や通学もしていない15~39歳までの若者に対し、就職に向けてさまざまなサポートを実施しています。

たとえば、「働きたいがどうしたらよいか分からない」「応募しているがなかなかうまくいかない」など働くことに悩みを抱える若者に対して、地方公共団体と協働してサポートを行うのです。

⑩中退者の就職を支援

若者雇用促進法では中退者への職業指導(職業安定法第26条)も行っています。中退者への就職支援を強化するため、若者雇用促進法では学校とハローワークが連携して、職業指導などを行う対象に中退者を明記しているのです。

また、学校が届出により無料職業紹介事業を行う場合の職業紹介の対象範囲にも中退者が追加されています。若者雇用促進法によって、中退者にも仕事探しのチャンスが増えたため、職業訓練や資格取得などのバックアップも手厚くなりました。

ミスマッチによる離職を削減させ、より充実した職業人生を歩むためにつくられた若者雇用促進法。どう若者を雇用するかは企業にとって大きな課題です

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6.若者雇用促進法とユースエール認定制度

ここではユースエール認定制度についてさらに掘り下げます。

ユースエール認定制度の認定基準

若者の採用や育成に積極的で、雇用管理の状況などが優良な中小企業を認定する「ユースエール認定制度」は、12の基準を満たすことで厚生労働大臣から認定を受けることができます。

若者の雇用・育成に積極的な中小企業である

過去3年間に新卒者の内定取り消しを行っていない、過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないなど

職場環境の整備が模範的である

人材育成方針と教育訓練計画を策定している、直近3事業年度の新卒正社員離職率が20%以下など

青少年雇用情報を公表している

採用者数や離職者数、研修内容や社内検定等の有無を公表している

ユースエール認定制度で得られるメリット

ユースエール認定を受けると、さまざまなメリットを享受できます。

幅広くPRできる

ユースエール認定企業は、商品や広告などに認定マークを使うことができます。このマークには、認定を受けた年時が記載されているため、いつから認定基準を満たし続けている企業なのかが分かるようになっているのです。

またユースエール認定企業になると、「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」などの支援拠点で認定企業を積極的にPRできます。

さらに、若者の採用・育成に積極的な企業に関するポータルサイト「若者雇用促進総合サイト」に企業情報を掲載して幅広くアピールすることも可能です。

認定企業だけが参加できる説明会

数ある会社説明会の中には、ユースエール認定企業だけが参加できる説明会や就職面接会が存在しますが、ユースエール認定を受けることでこれらの説明会に参加できるのです。より良い人材を採用できる可能性が高まるのは、ユースエール認定のメリットでしょう。

各都道府県労働局・ハローワークが開催する就職面接会を積極的に案内してもらうことができるため、より多くの求職者と接する機会が増えます。これにより、適した人材の採用が期待できるでしょう。

助成金に加算

若者の採用や育成を支援するため、ユースエール認定企業が以下の各種助成金を活用する際、一定額の関係助成金が加算されます。

  • キャリアアップ助成金:非正規労働者に対して教育体制の整備や雇用待遇の改善を実施した企業
  • 人材開発支援助成金:人材育成のための体制を整えた企業(訓練関連、制度導入関連)
  • トライアル雇用助成金:経験やスキルから就職するのが難しいとされる者を一定期間働かせた企業
  • 特定求職者雇用開発助成金:就職が難しいとされる者を、特定機関の紹介のもと継続して雇用した企業

低金利での融資

ユースエール認定企業は、日本政策金融公庫(中小企業事業・国民生活事業)が実施する「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を利用する際、基準利率よりも低い金利で融資を受けることができます。

融資限度額は中小企業事業が7億2,000万円、国民生活事業は7,200万円。資金の用途として挙げられるのは、企業が新たに事業を行う際に必要となる設備投資費や運転資金などです。

加点評価

ユースエール認定企業は、一部公共調達において加点評価するよう国が定める指針「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」に示されました。

本取組指針では、公共調達においてワーク・ライフ・バランスなどを推進する企業をより幅広く評価する枠組みを導入しているのです。

価格以外の要素を評価した調達を行う際は、ユースエール認定企業に代表されるワーク・ライフ・バランスなど推進企業を評価する項目を設定し、当該企業の受注機会の増大を図ります。

少子高齢化や生産年齢人口の減少など働き手不足は近年における深刻な課題のひとつです。ユースエールの認定で若者の雇用促進を加速できるでしょう