【5分で理解】トライアル雇用とは? 制度のしくみや手順、メリット・デメリットなど

厚生労働省とハローワークが主体となり、2003年4月よりトライアル雇用助成金制度がスタートしました。現在、多くの企業が人材確保に力を入れ、求人数が増加する一方で、希望通りの就業が果たせない労働者や就業希望者も少なくありません。

トライアル雇用助成金制度は、企業と労働者の間に生ずる雇用のミスマッチを解消するための支援策の一つです。

  • トライアル雇用の概要
  • 助成金制度の目的や手順
  • 注意点

などについて解説します。

1.トライアル雇用とは?

トライアル雇用とは求職者の採用に当たり、正規雇用としての適正を見極める目的として、一定期間(原則3か月)の試用期間を設けた上で採用すること。企業と求職者の相互理解を促進し、雇用を創出しようとするものです。

ハローワークからの紹介でトライアル雇用を行った場合、最長3か月間、対象企業に助成金が支給される、トライアル雇用助成金制度があります。

2.トライアル雇用制度の目的

トライアル雇用助成金制度の目的は、

  • 経験や知識の不足によって就職が難しい求職者に対し、早期就職のチャンスを与える
  • 正規に雇い入れる前に求職者の適正を見極めるチャンスを受け入れる企業に与える

求職者は就職先を見つけやすくなるだけでなく、トライアル雇用期間中に、新しい技能や知識を身に付けることができます。企業は、求職者の業務遂行能力など職務に対する適性を、期間中に見極めることができるのです。

トライアル雇用助成金とは?

トライアル雇用助成金制度は、雇用する対象者によって種類が分けられています。

  • 一般トライアルコース:安定就業を希望する未経験者を試行的に雇い入れる場合に適用
  • 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース:障害者を試行的・段階的に雇い入れる場合に適用

コースの種類によって、トライアル雇用の期間や支給額が異なるので、注意しましょう。

3.トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)とは?

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は対象者を雇い入れた日から原則として最長3か月間支給されます。支給対象者1人当たりの上限は月額4万円で、助成金は対象期間中の月額合計が一括で支給されます。

また支給対象者による期間中の離職や、トライアル雇用から正規雇用への切り替えなどによって、

  • トライアル雇用期間中の就労が1か月に満たない月がある
  • 休暇や休業があった

場合は就労した日数から計算した額が支給されます。

トライアル雇用の流れ

厚生労働省『トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内』https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000161178.pdf

ハローワークから紹介を受けた求職者をトライアル雇用として雇い入れ、トライアル雇用助成金を受給するには、以下の手続きが必要です。

  • トライアル雇用開始から2週間以内に、実施計画書をハローワークに提出
  • その際、雇用契約などの労働条件が確認できる書類の添付が必要
  • トライアル雇用終了日翌日~2か月以内に、支給申請書をハローワークもしくは労働局に提出
  • その後、支給対象者の条件に応じた助成額が支給

労働者が母子家庭、父子家庭、または35歳未満の場合

支給対象者が、

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 若者雇用促進法に基づき優良企業として認定された事業主が35歳未満の求職者をトライアル雇用で雇い入れる

といった場合は1人当たりの助成金支給額が月額最大5万円となり、支給期間は最長で3か月間です。

受給に必要な手続きは、通常のトライアル雇用助成金と同様ですが、トライアル雇用期間終了後に最大で1人当たり15万円が一括で支給されます。

若者雇用促進法に基づく認定事業主の場合

若年雇用促進法とは、若者の雇用促進を図ることを目的に、事業者に環境整備や適職選択、職業能力の開発向上を促すために施行された法律のこと。

この法律に基づき認定を受けた事業者が35歳未満の希望者にトライアル雇用を行うと、対象者1人当たりの支給額は最大月額5万円となります。期間は最長で3か月です。

また、若者の採用や育成に積極的で雇用管理が優良と認められた場合、ユースエール認定企業になり、さまざまな優遇措置を受けることができます。

4.トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の応募条件、手続きの手順

トライアル雇用助成金を受給するには、支給を受ける事業主、トライアル雇用を希望する求職者共に、応募条件が定められています。

特に事業主は、20以上の応募条件を満たすことが求められますのでよく確認しましょう。条件の詳細や、手続きを行うためのステップについて解説します。

何歳まで?職歴は? トライアル雇用の該当者

トライアル雇用を希望する求職者には、原則として年齢制限はありません。次のいずれかに該当することが必要となります。

  1. 紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望する
  2. 紹介日時点で、学校卒業後3年以内で、卒業後、安定した職業に就いていない(期間の定めのない労働契約を締結し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等であること)
  3. 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
  4. 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている( パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと)
  5. 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
  6. 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する(生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、 中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者)
参考 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク

トライアル雇用助成金を申請できる事業主

一方事業主の条件は26項目に及び、過去に不正受給や保険料の滞納などがないことや、事業内容についても審査の対象となるのです。要件の一部を紹介しましょう。

「雇用する対象者との関係性についての要件一例」

  • 対象者に係る紹介日前に、当該対象者を雇用することを約していない事業主
  • トライアル雇用を行った事業所の事業主又は取締役の3親等以内の親族以外の対象者を雇い入れた事業主
  • トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年間に、当該トライアル雇用に係る対象者を雇用したことがない事業主

すでに対象者を雇用することが決まっている、近親者のトライアル雇用、同一人物の再トライアル雇用などを行わないことが前提となります。

「トライアル雇用の運用について要件一例」

  • トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年間に、トライアル雇用を行った事業所において、トライアル雇用を実施した後に常用雇用へ移行しなかったトライアル雇用労働者の数にトライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書が提出されていない者の数を加えた数が3人を超え、常用雇用へ移行した数を上回っている事業主以外の事業主
  • 基準期間に、トライアル雇用に係る事業所において、雇用保険被保険者を事業主都合で離職させたことがある事業主以外の事業主

過去、トライアル雇用を運用した際、トライアル雇用からの正規採用者が少ない場合や、事業主の都合で対象者を離職させたことがある事業所は、トライアル雇用助成金の申請ができなくなります。

その他の要件については、都道府県労働局あるいはハローワークへ問い合わせて確認しましょう。

参考 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク

申請方法

トライアル雇用助成金の申請には、

  • トライアル雇用開始後:「トライアル雇用実施計画書様式」(3様式)
  • トライアル雇用期間終了後:「結果報告書兼支給申請様式」(3様式)

をハローワークに提出する必要があります。様式は厚生労働省のURLからダウンロード可能です。

参考 トライアル雇用助成金の申請様式ダウンロード厚生労働省

5.トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)が減額になる条件

トライアル雇用助成金は条件に合致すると減額されます。その条件は2つ。一体どんなものでしょう。

トライアル雇用が減額になるケース2つ

トライアル雇用期間が1か月に満たない月があるケース

トライアル雇用期間中に支給対象者が離職したり、常用雇用に切り替わったりした場合です。離職理由については、

  • 支給対象者に故意の過失がある場合
  • 本人都合による退職や死亡の場合
  • 天災などのやむを得ない理由によって事業が継続できなくなり解雇に至った場合

に限って、減額対象となります。加えて、常用雇用に切り替わった時点にてトライアル雇用は終了するため、この場合もトライアル雇用としての就労日数に応じた額に減額されるのです。

休暇や休業があった場合

それぞれ減額対象になるかどうかは、所定の計算式に当てはめて計算します。

計算方法

助成金の支給額は、支給対象期間中の月ごとに計算します。計算式は、支給対象者が1か月間に実際に就労した日数を支給対象者が当該1か月間に就労を予定していた日数で割ったもの。

これが75%以上の場合、全額支給されます。75%未満の場合には、パーセンテージに応じて、下表のように支給額が変わるのです。

厚生労働省『トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)』https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html

6.トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)とは?

障害者を試行的に雇い入れる場合に適用されるのが、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)です。こちらもハローワークまたは民間の職業紹介事業者等からの紹介が前提となります。

目的は試行的な雇用を通して障害者と企業のマッチングを図り、継続的な雇用を創出すること。

トライアル雇用期間は、障害の種類によって異なります。3~12か月間に、支給対象者1人につき、月額最大4万円~8万円が支給されます。

障害者トライアル雇用の対象者

対象となるのは心身の機能に障害があるために、長期的に職業に就くことが困難なすべての障害者です。障害の原因や種類は問いませんが、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望している
  • 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
  • 紹介日の前日時点で、離職している期間が6か月を超えている
  • 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
参考 障害者トライアル雇用」のご案内厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク

申請の条件

障害者トライアル雇用助成金を申請する条件は、

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等からの紹介による雇い入れである
  • 雇用保険被保険者資格取得の届出をしている

その他にも、支給に必要ないくつかの要件がありますので、「各雇用関係助成金に共通の要件等」を確認しましょう

参考 各雇用関係助成金に共通の要件等厚生労働省

助成金の支給額

対象が精神障害者の場合、1人当たり月額最大8万円が3か月間、さらに月額最大4万円が3か月間支給され、精神障害者以外の場合は、1人当たり月額最大4万円が3か月間支給されます。

従来は、月額4万円を3か月支給する一律措置でしたが平成30年4月から精神障害者のトライアル雇用について助成内容が拡充し、最長で12カ月間のトライアル雇用が可能になったのです。

障害者トライアル雇用の流れと仕組み

厚生労働省『障害者トライアル雇用に関する助成内容を拡充しました』https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000200888.pdf

障害者トライアル雇用助成金を受給するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。

まず、ハローワークに障害者トライアル雇用の求人を申し込み、ハローワークから紹介を受けた求職者を障害者トライアル雇用として雇い入れた後、次の手続きを行うのです。

  • 障害者トライアル雇用開始から2週間以内に実施計画書をハローワークに提出
  • この際、雇用契約などの労働条件が確認できる書類の添付が必要
  • 障害者トライアル雇用終了日翌日~2か月以内に、支給申請書をハローワークもしくは労働局に提出
  • その後、対象者の条件に応じた助成額が支給

7.障害者短時間トライアルコースとは?

就業希望の障害者が週20時間以上の就業を難しいとする場合、障害者短時間トライアルコース制度を利用できます。対象となるのは、精神障害者と発達障害者です。

最長12か月までのトライアル期間中に、週の所定労働時間を10~20時間とし、職場への適応状況や体調などに応じて、最終的には20時間以上の就業を目指します。

雇い入れの条件、助成金の受給額

障害者短時間トライアルコースで障害者を雇い入れるには、次の2つの条件を満たす必要があります。

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れる
  • 3か月から12か月間の短時間トライアル雇用をする

支給対象者1人につき、月額最大4万円が支給されます。

8.トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)が減額になる条件

障害者トライアルコースも、一般トライアルコースと同様に、2つの場合において助成金が減額されることがあります。

助成金が減額になるケース

トライアル雇用期間が1か月に満たない月がある場合

トライアル雇用期間中に支給対象者が離職したり、常用雇用に切り替わったりしたときなど。離職理由については、

  • 支給対象者に故意の過失がある場合
  • 本人都合による退職や死亡の場合
  • 天災などのやむを得ない理由によって事業が継続できなくなり解雇に至った場合

が減額対象となります。加えて、継続雇用の労働者に移行した場合も、トライアル雇用期間中の就労日数に応じた額で減額となるのです。

さらに支給対象者が失踪した場合は、離職日がはっきり分からないため、給与を支払った最後の日までの期間中、実際に就労した日数に応じて額が支給されます。

休暇や休業があった場合

支給額は、所定の計算式に当てはめて計算します。

計算方法

助成金の支給額は、対象期間中の1か月の間に対象者が就労した日数が、予定していた日数に対してどれくらいの割合であったかによって決定されます。計算方法は次の通りです。

厚生労働省『障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース』https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000158465.pdf

A=支給対象者が1か月間に実際に就労した日数÷支給対象者が当該1か月間に就労を予定していた日数

Aが75%以上の場合、全額支給されます。75%未満の場合はパーセンテージに応じて、下表のように支給額が変わります。

厚生労働省『障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース』https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000158465.pdf

9.トライアル雇用を検討する際の注意点

職務に対する適性や順応力を時間をかけて見極めることができる特徴を持つトライアル雇用は、採用する企業にも採用される労働者にもメリットがあります。

しかしトライアル雇用が最後まで続いたからといって、必ずしも労働者が本採用されるとは限りません。企業側はトライアル期間をもって雇用契約を終了することも可能ですし、本採用の義務もないのです。

仮にトライアル雇用終了時に労働者が本採用を希望し、企業が本採用を見送る場合でも解雇にはなりません。しかし企業は、本採用に至らなかった理由を誠意をもって説明する必要があるでしょう。また、

  • 過去6か月の間に解雇を実施した企業
  • 不正行為などにより助成金の支給が取り消しになったことのある企業

は、トライアル雇用の対象になりませんので注意が必要です。

10.新卒採用からトライアル雇用にシフトした好事例

トライアル雇用制度を活用し、大きく成果を上げている企業の一例を紹介しましょう。千葉県にある社員80名ほどの製造業を営む企業では、新卒採用からトライアル雇用に切り替え、社員の定着率が向上したそうです。

トライアル期間により、採用する側とされる側が互いに納得した上で入社できます。その結果、退職者が減少し、さらに企業側も解雇を検討するようなケースが減るでしょう。