サードプレイスとはどんな場所? 意味、条件、問題、機能について【海外と日本の違い】

ファーストプレイス、セカンドプレイス、さらにサードプレイスという言葉があります。都市社会学の観点から見て、生活において必要とされる場所をサードプレイスと呼ぶのです。

  • セカンドプレイス、サードプレイスの意味
  • 条件
  • 問題
  • サードプレイスの背景
  • サードプレイスになり得る場所

などについて解説しましょう。

1.サードプレイスの意味とは?

サードプレイスとは、家庭(第1の場)でも職場(第2の場)でもない第3のとびきり居心地の良い場所です。ストレスの多い現代社会においてリラックスできる居心地の良い場所、その場所をサードプレイスと呼びます。

サードプレイスには、特定の条件があるのも特徴です。

サードプレイスのキーワードは「スロー」

サードプレイスを表現するとき引き合いに出されるのはイギリスのパブやフランスのカフェで、ここから引き出されるサードプレイスのキーワードは、スローです。

社会学者のオルデンバーグが「The Great Good Place」を出版した同年の1989年、イタリアでは「スロー・フード運動」が展開され、「スロー・フード宣言」が採択されているのです。

オルデンバーグは、「スロー・フード」の潮流に着目し、フランスのカフェやイギリスのパブに代表される「西欧の飲食施設」を比較考察しました。ヨーロッパのカフェやパブにあって、アメリカの飲食施設にないもの、それはゆとりや活気、コミュニティだったのです。これらがあることで、その場所は憩いの場となり、多くの人が集います。

ファーストプレイス、セカンドプレイスとは?

ファーストプレイス 第一の居場所である家
セカンドプレイス 職場や学校など、自宅以外で長い時間過ごす場所
サードプレイス
  • 自宅に帰る前に軽い息抜きができる場所
  • リフレッシュや新たなやる気を生む交流のある場所

サードプレイスの提唱者

サードプレイスの提唱者は、1932年生まれでアメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグです。西フロリダ大学社会学部名誉教授でもあり、州立マンケート大学(現・ミネソタ州立大学マンケート校)で英語と社会科の学士号、ミネソタ大学で社会学の修士号および博士号を取得しています。

なぜアメリカでサードプレイスが必要になったのか?

アメリカでなぜサードプレイスが必要になったのでしょう。それは、オルデンバーグがアメリカ社会を観察したときのある気付きから始まりました。

アメリカは自動車依存型の都市社会であって、家庭(第 1の場)と職場(第2の場)を往復するだけの状態になっていたのです。オルデンバーグは、こうしたストレスの多い現代社会を生き抜くには、潤滑油の役割を果たす場所が必要だと考えました。

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2.サードプレイスの特徴と利点

サードプレイスの特徴は、

  • 中立性
  • 社会的平等性の担保
  • 会話が中心に存在する
  • 利便性がある
  • 常連の存在
  • 目立たない
  • 遊び心がある
  • 感情の共有

などです。言い換えると多様で異質な人々が自分の社会的立場を気にせず気軽に集まり交流できる場と表現できるでしょう。リラックスして気軽に交流できるのがサードプレイスの特徴でありメリットです。

サードプレイスになり得る場所

サードプレイスとなり得る場所には、

  • フランスの「カフェ」
  • イギリスの「パブ」
  • イタリアの「エスプレッソ・バー」

などがあります。たとえばコーヒー店のスターバックスは、サードプレイスを意識して展開されています。そのほか公園や路上など公共空間もサードプレイスになり得る場所でしょう。

3.日本のサードプレイス ~本・カフェ・コミュニティ~

サードプレイスは海外だけでなく、日本でも必要なものです。会社帰りの人が寄り道をしてから家に帰る、というケースからも分かるでしょう。

しかし、日本ではサードプレイスは浸透しにくいといわれているのです。海外との違いや日本におけるサードプレイス、そして日本人にとって居心地のいい場所、日本におけるサードプレイスの意義について解説します。

現代日本の問題とサードプレイスに対するニーズ

日本の大都市では、ファーストプレイスとセカンドプレイスの整備に力を入れています。再開発・再生された都市に誘導されて集まった市民の多くは、住宅とオフィスを往復するだけで 1日が終わってしまうような、心の豊かさや他者との交流に欠ける生活を送っているのです。

しかし近年の成熟社会においては、サードプレイスのニーズが把握され、都市再生事業などにおいては、居心地の良い高級飲食店も多数できています。

しかし、これらは高級ということで都市の魅力を高めますが、気軽に立ち寄れる居心地の良い場所ではなく、本来のサードプレイスとは異なるものといえるでしょう。

なぜ日本人はサードプレイスを持ちにくいのか?

ヨーロッパでは多くの人がサードプレイスを持っているのに比べ、日本人はサードプレイスを持ちにくいといわれています。

その理由は、

  1. ヨーロッパと考え方が異なる
  2. 飲食店の単価が高い
  3. スクラップ・アンド・ビルドを繰り返している

といった点が挙げられます。それぞれについて解説しましょう。

①ヨーロッパと考え方が異なる

日本人がサードプレイスを持ちにくい理由の一つが、ヨーロッパとの考え方の違いでしょう。

西欧では多くの人がカフェやパブに毎日のように立ち寄ります。つまり、多くの人が行きつけのサードプレイスを持っているのです。持たない人は、寂しい人といわれ社会的にも不名誉なこととされるほどです。

一方で日本ではサードプレイスを持っている人は少数派でしょう。サードプレイスのない人は、面白みのない・寂しい人などといわれることもありますが、多くは真面目で勤勉な人、といった良い意味で捉える傾向にあります。

日本は、サードプレイスを持たない風潮のほうが強いとすらいえる状況のため、なかなかサードプレイスが浸透しないのです。

②飲食店の単価が高い

日本でサードプレイスと位置付けられている飲食店は、数千円のランチやその倍もの価格のディナーなど単価の高い高級志向のお店が多いです。美しく快適に過ごせる場所ではあるものの、ゆったりとくつろげる空間とは言いにくいでしょう。

この単価が高く気軽に寄ることが難しいという状況も、日本でサードプレイスが根付かない理由とされています。

通いにくい場合、ファーストフード店など短時間の滞在を前提とした場所に行くしかありません。一方、西欧のカフェは1杯100円程度で。誰もが気軽に立ち寄れる、お金を気にせずゆったりくつろげるカフェとなっています。

③スクラップ・アンド・ビルドを繰り返している

日本では、都市再開発事業や都市再生事業において、古いものをリセットして新しいものをゼロから生む「スクラップ・アンド・ビルド」が繰り返されています。もちろん、低層建築物をリセットして高層化するハード面でのメリットは存在します。

しかし、地元民を相手に細々と営業していた街の飲食店がリセット(スクラップ)されて、高級飲食店に置換(ビルド)されると、

  • 客単価も客層も一変
  • 以前そこにあったコミュニティや都市景観などのソフト面の財産が失われる

といったことが起こるのです。イタリアなどでは、同じ場所で100年以上も営業を続けるカフェが数多く存在し、市民の憩いと交流の場として継承されています。歴史を大事に保存しながら、現代の価値観やセンスと融合しているのです。

日本人にとって「居心地の良い場所」とは?

日本人にとって「居心地の良い場所」とはどういった場所なのでしょうか?

参考 Urban Study Vol. 46「■都市にサード・プレイスを創る 【久繁 哲之介】」MINTO機構

都内在住20~29歳の男女を対象に東京都が行ったアンケートでは、

  • 自分の部屋が82%
  • 居酒屋(パブ)が20%
  • カラオケボックスが14%
  • カフェが12%

となっています。

一方で横浜市が市内在住の中学生・高校生を対象に行ったアンケートでは、

  • 自分や友人の家が82%
  • 公園、路上が14%
  • コンビニ、ファーストフード店が12%
  • カラオケ、ゲームセンターが10%

といった結果になりました。

2つのアンケート結果を見ると日本のサードプレイスには、

  • 性別による差(パブと回答したのは大半は男性で、カラオケ・カフェと回答したのは大半が女性)
  • 年齢や経済力による差

が見受けられ、自分もしくは友人の部屋以外に「居心地の良い場所」を挙げた者は、2つの調査共に半分以下にすぎない、といった特徴があるのです。ここから、日本人のほとんどがサードプレイスを持たないことが分かるでしょう。

目的別に2種類のサードプレイス

サードプレイスは目的別に2種類に分類されます。それは、

  1. マイプレイス型
  2. 交流型

です。それぞれの特徴について解説しましょう。

①マイプレイス型

マイプレイス型は他人の目を気にせずに、一人でのんびり過ごせる場所のことです。

誰にも邪魔されずに一人で自由に時間を過ごすと、ストレスも解消しますしリラックスできます。ストレスの多い現代社会において、このような場所は重要でしょう。

具体例
  • カフェで本や雑誌を読む
  • パソコンやスマホを操作する

など誰とも話すことなく、誰からも何も言われずに自由に過ごせる状態になれる場所です。

日本のカフェは閉鎖的に使われるが、パリのカフェはオープン

日本とヨーロッパでは、カフェの捉え方に違いがあります。

  • ヨーロッパ:店前の公共空間は開放的で、市民同士のコミュニティを育む
  • 日本:喫茶店のように閉鎖的なマイ・スペースが好まれ、そこでは一人で過ごす人も多く、コミュニティは生まれがたい

どちらかというと日本ではカフェよりもカウンターのある店のほうが、コミュニティが生まれやすいといえるでしょう。

②交流型

交流型はさまざまな人々が気軽に交流できることを目的に設計された場所です。

たとえば、

  • 高齢者の居場所づくりを目的とした壁面アート制作
  • コミュニティカフェをつくる活動をNPOと大学生が協働しているサードプレイス

などがあります。

これらのサードプレイスでは、多くの人と交流できるため、

  • 癒やし
  • 自分を高める
  • さまざまな発見ができる

などさまざまなメリットが得られます。

具体例

交流型のサードプレイスとして、「3×3 Lab Future」「港南台タウンカフェ」があります。

3×3 Lab Future 大手町、丸の内、有楽町の知識や情報を利用し、ビジネスを創造することを目的とした場所
港南台タウンカフェ 横浜市の港南台駅近辺で、飲食や講座、展示、販売などを行いながら、多くの地域の人が気軽に集まれる拠点
キャッチフレーズは、「cafeから始まるおもしろまちづくり」
日本は「紹介型コミュニティ」

サードプレイスのメリットの一つに五感体験を得られるという点があります。西欧のカフェやパブではそこに集まった人同士が気軽に話しかけ合ったり、客同士がそこに通ううちに自然に会話を始めたりすることでコミュニケーションを取る自然発生的コミュニティが発生します。

日本のカフェではそういった自然発生的コミュニティは発生しにくいです。しかしカウンター席などでは知人の紹介や、お店側の人を介して知り合いになるという、紹介型コミュニティが発生します。

企業の取り組み事例と効果

サードプレイスの必要性を認識している企業も増えています。その中にはユニークな取り組みをしている企業もあるのです。

たとえば、

  • 夕方になると社員食堂の照明を少し落とし、ジャズが流れるお店のような雰囲気にする企業
  • 夜になると社員食堂がお酒の飲めるバーや居酒屋に変身する

などです。このような取り組みは部署を超えた社員の交流を促すことにもつながります。また社内にサードプレイスを設けているという点で評価されています。

ビジネスにおけるサードプレイスの意義

従来と比較すると時代の変化とともに一社だけの知識や技術、情報だけでは勝ち抜けなくなってきています。それに気付き始めた企業が、サードプレイスを利用し始めているのです。

企業においてのサードプレイスの存在は、さまざまな関係者が知り合い、連携することで生産性を向上させる役割を持ちます。

  • 多様な人と連携し、新しい風を会社に吹き込んでくれる人材と巡り会う
  • さまざまな人との連携ができる

これらを可能とするのがサードプレイスなのです。サードプレイスを利用した異質性の取り込み、多様な人々との連携が企業ブランド構築の礎となるでしょう。

4.スタバは日本でサードプレイスになり得るか? 日本人のカフェの使い方とその条件

コーヒー好きの人や若い年代の人で、スターバックスを知らない人は少ないでしょう。スターバックスがサードプレイスを意識した店づくりをしていることは、よく知られていることです。

しかし日本ではカフェが西欧のようなサードプレイスにならないように、スターバックスも同じではないかという考えもあります。スターバックスは日本でサードプレイスになれるのでしょうか?サードプレイスとしてのスターバックスについて解説します。

スターバックスとは?

スターバックスコーヒー店は、1971年、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルで開業しました。その後現在のスターバックス会長兼CEOのハワード・シュルツがミラノを訪問。エスプレッソバーに感銘を受け、コーヒーバーの展開を考案し、1984年アメリカのシアトルに現在のスタイルのスターバックスを出店したのです。

その後店舗数は2003年度に北米で4500店舗以上になりました。日本でも現在では各地で目にするスターバックスですが、1996年に出店して以来、2003年には500店舗以上になっています。世界に展開するコーヒーチェーン店は、日本でも成功しているといえます。

サードプレイスの概念を意識した店づくり

スターバックスはサードプレイスを意識した店づくりをしているのが特徴です。

もともと、ミラノのエスプレッソ・バーの持つ雰囲気の良さや多くの人に愛されるエスプレッソ・バーに感銘を受け、このような場をアメリカにも広めたいと考えたのが始まりでした。ヨーロッパでは当たり前となっている「普段着の交流」をアメリカにも、とつくられたのがスターバックスなのです。

スターバックスは、家庭とも職場とも違うくつろぎの場であり、憩いの場であり、また社交の場でもあります。スターバックスはアメリカ人のサードプレイスの役割を担い、これからもサードプレイスとしてのニーズに対応できる店づくりをしていくでしょう。

スタバによるサードプレイスに関する新しい提案

年配者にはなかなかなじめないという声もあるスターバックスですが、スターバックスコーヒージャパンは、2016年3月から丸の内のスターバックスでサードプレイスの新しい提案として、「STARBUCKS EVENINGS」を始めました。

北米では2010年から始められているサービスで、内容を日本人向けにしたものです。お酒やオリジナルの食事を夕方から提供し、仕事帰りにスターバックスに立ち寄りリフレッシュしてもらうという居酒屋に似た取り組みです。

中高年には「喫茶室ルノアール」がサードプレイス

男性よりも女性、年齢層では若者から支持されているスターバックスは、日本に輸入された当初からサードプレイスとの位置付けにあったコーヒーチェーン店です。

一方、男性中高年齢層を主客層とする「喫茶店」は、不動産賃貸業的な「場所貸し」という位置付けにあります。中でも「喫茶室ルノアール」は、中高年のサードプレイスといえるでしょう。

「喫茶室ルノアール」は、

  • 食事をし終わった後でもゆっくりできる
  • チェーン店でありながら価格は地域によって異なる
  • 禁煙ではない
  • 個室もある

などの特徴を持ちます。サードプレイスとして市民に居心地の良さを提供しているのです。

スターバックスにはコミュニティが生まれる条件が揃っていない

オルデンバーグはカフェを「憩いと交流の場」と位置付け、西欧ではカフェが代表的なサードプレイスとなっています。

しかし日本では、同じような役割をカフェは果たしていません。日本ではカフェでくつろぐことはできても交流はなく一人だけの憩いの場、といった位置付けなのです。

そのため日本のスターバックスも同じ「一人だけの憩いの場」といった位置付けになるでしょう。また、西欧のカフェは店内だけではなく、店外での飲食ができますが、日本では飲食店前の公共空間の飲食が基本的には許されていない、といった点も西欧のカフェと異なります。