終身雇用とは? 制度、メリット・デメリットをわかりやすく

終身雇用とは、企業が正規雇用従業員を定年まで雇用し続けること。しかし昨今、終身雇用に変化が生じてきているのです。ここではそんな終身雇用の定義や、その目的や成果主義との違い、メリットとデメリットについて解説します。

1.終身雇用とは?

終身雇用とは、企業が正規雇用従業員を定年まで雇用する制度のことで、年齢や勤続年数などを考慮して賃金や役職を決定する年功序列型とともに、日本の雇用制度の特徴といわれているのです。

基本的に従業員は、入社してから定年まで同じ企業に籍を置くことを前提としているため、安定した収入と雇用を継続できる仕組みとして考えられています。

終身雇用を英語でいうと?

終身雇用を英語でいうと「lifetime employment system」「lifelong employment system」です。

終身雇用とは、正規雇用労働者を定年まで雇用し続ける制度のことで、定年まで雇うことを前提としたものです

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2.終身雇用の目的

大きな目的は、従業員に入社から定年まで在籍してもらって、長期的な目線から人材を育成すること。そして従業員は、「安定した雇用と収入」というメリットを享受する、つまり定年まで収入を得られるという「保証」を得られるのです。

企業は、優れた従業員に働いてもらうため、従業員の安心感にもつながる「終身雇用」を打ち出したと考えられます。

終身雇用の目的は、長期的な人材育成です。それにより従業員は、安定した雇用と収入を得られます

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3.成果主義との違い

成果主義とは、仕事の成果や過程に対する評価によって給与や昇格を定めていく人事制度のこと。結果のみを評価する実績主義と混同される場合が多いですが、成果に至るまでの過程も考慮に入れて評価されるという点で異なるのです。

年齢や勤続年数などから待遇が決定されるのではなく、成果や過程が昇給や昇格に結び付くため、従業員のモチベーションアップや生産性向上に深く関わるとされています。

成果主義は年齢や勤続年数に紐付けず、業務における成果や過程を評価する制度です

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4.終身雇用の現状

終身雇用の現状はどうなっているのでしょう。詳しくご紹介しましょう。

終身雇用に対する発言

2019年4月に経団連の中西宏明氏が、5月にはトヨタ自動車の豊田章男氏が、それぞれ「終身雇用」の崩壊を示唆する発言を行い、話題になりました。

終身雇用はこれまで、企業が従業員に対して経済や精神の安定を与えていたと考えられていたのです。しかし、安定感がありながらもやりがいは感じられず、転職を通してキャリアアップを目指す動きが近年増加。

バブル崩壊以降、終身雇用はいずれ崩壊すると考えられていましたが、経済界のトップが発言したことで一層注目が集まったのです。

終身雇用は必要ないと答えたのは54.3%

総合転職エージェントのワークポートは、全国の転職希望者405人を対象に終身雇用についてのアンケート調査を実施(2019年5月29日~6月5日)。終身雇用制度は必要と思うか質問したところ、54.3%が「いいえ」、45.7%が「はい」と回答しました。

「必要ない」と回答した人の意見の中には、「能力よりも年功序列での評価になりやすく、そのデメリットが大きすぎる」「副業や転職、キャリアの方向性を自分で自由に変えられる仕組みの方が現代的」などがありました。

日本において深く浸透してきた終身雇用制度ですが、自己実現に向けた働き方が広まってきた背景もあり、制度に対して否定的な意見も増えています

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5.終身雇用と年功序列

終身雇用とともに語られる年功序列は、社員の年齢や勤めた年数という要素を考慮して、賃金や組織における役職が決定していく仕組み、またその人事制度を意味します。

年功序列制度のベースにあるのは、勤続年数や年齢が高くなればなるほど能力や知識、経験などが積み重なり、職務上の重要度が高まるといった前提です。

長く働くうち、自動的に一定の役職に就任できる点はメリットと考えられてきました。そしてその安定的な雇用制度が、戦後の日本経済の発展を支えてきたともいえるでしょう。

年功序列は終身雇用とセットのような仕組みです。長く働くうちに一定の役職に就任できる点がメリットだと考えられてきました

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6.終身雇用のメリット

そんな終身雇用が持つメリットとは何でしょうか。具体的に見ていきましょう。

従業員のメリット

まず、従業員側のメリットです。

安定した収入と雇用

終身雇用制度が機能すると、入社から定年まで安定した給与と雇用を得られるという「保証」が与えられます。また長く勤めるため、会社に対する帰属意識や忠誠心が強まるでしょう。

企業のメリット

企業側のメリットは何でしょうか。

長い目で見た人材育成

従業員が長期的に在籍するため、じっくりと人材育成に取り組めます。また、社内の教育システムに勤続年数の経過をベースとしたパフォーマンスデータも蓄積されるため、改善や今後の計画立案がスムーズになるでしょう。

人材の確保

終身雇用制度によって帰属意識や忠誠心が芽生え、長きにわたり企業に在籍する従業員が増えれば、離職率が下がります。つまり企業は、十分な人材を確保できるため、安定した体制で企業活動が実施できるのです。

従業員同士の連帯感も強まるため、組織力の向上も見込めるでしょう。

終身雇用制度では、従業員側には安定した収入と雇用が、企業側には人材育成や体制基盤の強化などがもたらされます

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7.終身雇用のデメリット

一方で、終身雇用制度にはデメリットもあると考えられているのです。

従業員のデメリット

まずは従業員側から見たデメリットです。

努力を怠りやすい

終身雇用制度の場合、従業員は長期的に企業に在籍する前提となるため、入社から定年まで安定して勤められます。

一方、努力して成果を出さなくても企業に在籍できてしまうという考えも起こりやすいのです。結果、十分なパフォーマンスを発揮しなくてもよい、という意識が従業員に芽生えてしまうでしょう。

企業のデメリット

続いて、企業側のデメリットです。

人件費の高騰

終身雇用制度の多くは、年功序列とともに運用されるため、企業は従業員の年齢が上がるにつれて給与を多く支払う状況になります。つまり従業員の能力や経験に関係なく、人件費が高騰してしまいやすいのです。

このような問題から、現代において終身雇用はデメリットのほうが強調される傾向になってきました。

終身雇用制度には数多くのメリットがあります。しかしその反面、従業員の怠慢や年功序列による人件費の高騰といったデメリットもあるのです

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8.終身雇用の今後とは?

日本企業において長らく浸透してきた終身雇用制度ですが、時代の移り変わりや経済状況の変化、昨今話題の働き方改革の流れに合わせて、制度の見直しも注目されているのです。ここではその代表的なものについてご紹介しましょう。

ハイブリッド型

日本総研理事の山田久氏は、「終身雇用に基づく雇用制度は、右肩上がりの経済成長を前提とする仕組みだった」「バブル崩壊後の経済の長期的な低迷の中で崩れていくのは当然の成り行きであった」と説明しています。

山田氏は日本型雇用の長所を活かしつつ、欧米型のメリットを採り入れる「ハイブリッド型」の雇用システムを提案しました。

終身雇用のデメリットを取り上げながらも、雇用の安定を壊してしまっては福祉や教育、経済などすべてに大きな影響を与えかねないと提唱しているのです。

日本従来の雇用制度と欧米型の仕組みを組み合わせたハイブリッド型の雇用制度は今後ますます注目されるでしょう