所定労働日数とは?【有給は含まれる?】計算、労働時間

就業規則や雇用契約書には、所定労働日数が定められています。所定労働日数とはどのようなもので、なぜ定める必要があるのでしょうか。

所定労働日数の定義や実労働日数との違い、年次有給休暇は所定労働日数に含まれるのか、所定労働時間や割増賃金などを算出する際、どのように使用されるのかといったことを多角的に紹介しましょう。

1.所定労働日数とは?

所定労働日数とは、就業規則や労働契約にあらかじめ定められている労働日数のこと

所定労働日数には「年間所定労働日数」「月間所定労働日数」「月平均所定労働日数」があり、年間所定労働日数、月平均所定労働日数はそれぞれ、以下の計算式で算出できます。

  • 【年間所定労働日数=365日-年間休日(所定休日日数)】
  • 【月平均所定労働日数=年間所定労働日数 ÷ 12カ月】

たとえば年間休日が125日の場合、年間所定労働日数は365日-125日で240日。月平均所定労働日数は、240日÷12で20日となります。※うるう年は366日で計算します。

所定の意味

「所定」の意味は、「決まっていること」「決められていること」「定められていること」などを意味します。

実労働日数と違う理由

就業規則や労働契約に定められている所定労働日数は、実労働日数(社員一人ひとりが実際に働いた日数)とは異なるもの。有給休暇の取得や欠勤があると、所定労働日数よりも実労働日数は少なくなります。

たとえば年間所定労働日数が240日で、取得が義務付けられている年次有給休暇5日間を消化したとすると、実労働日数は235日となります。逆に休日出勤などをすることで、実労働日数が所定労働日数よりも多くなる場合もあるのです。

所定労働日数をはじめとした労働条件は、就業規則や労働契約などに明示し、社員に周知しなければなりません

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2.なぜ所定労働日数を設けるのか

所定労働日数は、割増賃金(残業代)を計算するときなどに使われます。

残業代を割り出すには、残業時間数のほか、月間所定労働時間や給料の時間単価(1時間当たりの賃金)を算出する必要があります。以下のような手順で計算していきましょう。

  • 月間所定労働時間=1日の所定労働時間×月間所定労働日数
  • 1時間当たりの賃金=(月給-諸手当)÷月間所定労働時間
  • 残業時間数をタイムカードなどで確認
  • 残業代=1時間当たりの賃金×残業時間×割増率

※諸手当とは家族手当・通勤手当・単身赴任手当など
※割増率は残業の種類によって異なる

所定労働日数を設定することで、法定時間外の残業代や深夜残業代、休日出勤手当などを計算できるようになります

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3.所定労働日数と年次有給休暇

労働基準法第39条は、どのような業種・業態の事業者でも一定の要件を満たしたすべての従業員に対して年次有給休暇を付与することを義務付けています。

さらに2019年4月1日からは、年次有給休暇のうち5日間を必ず取得させなければならないという義務が課せられました。付与の対象は正社員に限らず、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトなど全ての従業員です。

年次有給休暇を付与する一般的な要件として求められるのは、雇用日から6カ月間継続的に雇用され、かつ全労働日の8割以上出勤していることで、要件を満たせば10日間の有給休暇が付与されます。

なお付与日数は勤務年数に応じて増えていき、上限は20日間です。

休暇は所定労働日数に含まれる?

休暇とは、土日祝日や年末年始などの休日とは異なり、働く義務のある労働日が休みになること(労働義務を免除されること)。

そのため有給休暇や育児休業、看護休暇、介護休業などの「法定休暇」、就業規則などに基づき会社が任意で付与するリフレッシュ休暇や慶弔休暇などの「特別休暇」といったすべての休暇は、所定労働日数に含まれるのです。

所定労働日には賃金が支払われるため、休暇にも賃金の支払いが発生します。

週の労働日数がバラバラの場合

週の労働日数が定まらないアルバイトやパートタイム労働者でも、一定の要件を満たせば年次有給休暇が付与されます。

たとえば、週所定労働日数が4日・年間所定労働日数が169~216日の場合、勤続年数半年で7日間~6.5年以上で15日間。週所定労働日数が1日・年間所定労働日数が48日~72日の場合、勤続年数半年で1日間~6.5年以上で3日間付与されるのです。

年次有給休暇の取得は労働者の権利です。事業者は、要件をクリアした労働者に対して有給休暇を必ず付与しなければなりません

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4.所定労働日数の決め方、算出方法

年間所定労働日数は、1年間の日数から就業規則などで定められている年間休日(所定休日日数)を引くことで算出できます。

起算日に決まりはなく、暦通りに1月1日~12月31日、年度で区切って4月1日~3月31日としてもよく、会社の創立月から1年間と定めることも可能です。いずれの場合も下記の計算式で求められます。

  • 【年間所定労働日数=365日-年間休日(所定休日日数)】
  • 【月平均所定労働日数=年間所定労働日数 ÷ 12カ月】

月の所定労働日数は、1年365日(366日)から年間休日日数を引き、その値を12で割ることで算出できます

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5.所定労働日数と所定労働時間

所定労働日数は所定労働時間を算出する際に必要な数字です。所定労働時間との関係を見ていきましょう。

所定労働時間とは?

所定労働時間とは、労働基準法で定められている法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)の範囲内で、事業者(企業)が自由に設定できる労働時間のこと。具体的には、休憩時間を除いて、始業時間から終業時間までの時間をいいます。

この所定労働時間は、就業規則や雇用契約書などに明記しなければなりません。なお休憩時間は、労働時間が6時間~8時間で少なくとも45分、8時間を超える場合で少なくとも1時間とされているのです。

また、一般に所定労働時間を超えて労働した場合は時間外労働となり、残業手当などが支払われます。

給与と所定労働時間

月の所定労働日数(月平均所定労働日数)は、月間所定労働時間を算出するときに使用されます。

  • 【月間所定労働時間=月平均所定労働日数 × 1日の所定労働時間】

月平均所定労働日数を20日、1日の所定労働時間を8時間とすると、「20日×8時間=160時間」で月間所定労働時間は160時間になります。月給を月間所定労働時間で割ると時給が算出でき、時給から残業手当などの割増賃金が計算できます。

各手当の種類と割増率

時間外労働で発生する各手当の種類と割増率を見ていきましょう。

時間外手当の場合

時間外手当とは、「週40時間、1日8時間」の法定労働時間を超えて働いた場合に支払われる手当のことで、残業手当とも呼ばれます。時間外手当の割増率は1時間当たり25%以上で、下記の計算式にて算出できます。

  • 【時間外手当(残業手当)=1時間当たりの賃金×残業時間×1.25】

なお、時短勤務の人、週に働く日数が少ない人、定時が8時間より短いなど、週40時間に満たない場合、法定時間内残業が発生することも。しかしし法定時間内であれば、基本的に割増賃金は発生しません。

深夜手当の場合

深夜手当とは、22時~翌5時の間に労働した場合に支払われる手当のことで、割増率は1時間当たり25%以上です。法定時間外残業と深夜残業が重なる時間帯は、割増率を合算(25%+25%=50%)して計算します。

たとえば終業時間が18時で、深夜1時まで残業した場合、下記のように計算します。

  • 18時から22時までの法定時間外手当の計算:【時間外手当=1時間当たりの賃金 × 残業時間(4時間) × 1.25】
  • 22時から深夜1時までの法定時間外手当+深夜手当の計算:【時間外手当+深夜手当=1時間当たりの賃金 × 深夜労働時間(3時間) × 1.5】

休日出勤手当の場合

休日出勤手当とは、法定休日に休日出勤をした際に支払われる賃金のことで、割増率は35%以上です。

【休日出勤手当=1時間当たりの賃金 × 休日労働時間 × 1.35】

休日に労働した場合、1日の所定労働時間の8時間を超えても法定時間外労働の割増率25%は加算されません。しかし深夜労働が発生した場合は割増率25%が加算され、休日労働分の割増率35%+深夜労働の割増率25%で、割増率は60%となるのです。

1カ月60時間を超えて法定時間外労働を行った場合の割増率は50%です。さらに深夜労働が加わると、割増率は75%となります