職住近接とは? 注目される背景、メリットやデメリット、企業が取り入れる方法、具体的な事例について

「職住近接」とは、職場から自宅までの距離が近い状況のことです。近年注目される職住近接について解説しましょう。

1.職住近接とは?

職住近接とは、自宅と職場の距離が近いこと。職住近接は、都市部で問題になっている満員電車問題や長時間通勤問題から、近年注目されるようになりました。純粋な自宅から職場までの距離だけでなく、通勤時間の短さも含まれます。

職場までアクセスしやすくなって通勤時間が短くなれば、職と住の均衡が取りやすくなり、ゆとりを持った生活が送れるでしょう。

職住近接の類義語

職住近接の類義語は、都心回帰(地価の低下により都市部に移住する人々が増えること)。職住近接は通勤時間の短縮やワークライフバランスの向上を目的としますが、都心回帰は利便性の優先が目的となるのです。

都心回帰により中心部の人口の回復・増加が見られています。「歩いて生活できるライフスタイル」に憧れを持つ人も少なくありません。

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2.職住近接が注目される背景

毎朝早起きをして満員電車に揺られて通勤し、仕事終わりの疲れた身体で自宅まで長時間電車に揺られ、帰宅すればもう夜も遅くなっており帰宅後何もできない、という人も少なくありません。

そんな生活を続けていれば、身体だけでなくストレスも溜め込んでしまい、精神的にも疲弊してしまいます。このような現状から職住近接が注目されているのです。

日本は本来「職住分離」のスタイルだった

日本は本来、職住近接とは正反対の生活スタイルでした。高度経済成長時代に都心部の開発が進められたころから、都市部に移り住む人が増加。都心の地価が高騰したため、郊外への鉄道路線やニュータウンなどの開発が行われました。

その結果、郊外に住む人が増えて職住分離のライフスタイルが主流となったのです。近年、地価が下がり始めて都市部へ移り住む人が増えたため、職住近接が注目されてきています。

ライフスタイルの変化

ライフスタイルの変化も、職住近接が注目されている要因になっているのです。「QOL(クオリティオブライフ)」の向上や、育児や介護しやすい環境を求め、職場との通勤時間を短縮する職住近接に注目が集まっています。

ここでは下記5点について説明しましょう。

  1. QOLの向上
  2. 都市部への回帰
  3. 共働き世代の増加
  4. 地方の活性化
  5. 都市圏での通勤ラッシュ

①QOLの向上

QOLとは、生活の質や人生の質およびその満足度を意味する言葉です。満員電車や長時間通勤による時間拘束が減れば、通勤のストレスが解消されて時間に余裕ができるため、プライベートに当てる時間が増えるでしょう。

増えた時間を有意義に使うと満足度のアップにつながるので、職住近接を検討する人が増えているのです。

②都市部への回帰

都市部では次々と流行の飲食店やショッピングモールが増え、都市部だけで遊びや生活ができるようになっています。都市部の地価が下がったため、郊外から都市部へ移り住む人も増えているのです。

また都市部のように歩いて生活できるライフスタイルに憧れる人が増えてきている点も、職住近接が注目されている要因といえます。

③共働き世代の増加

共働き世帯の増加も、職住近接が注目される要因のひとつです。勤務先と自宅が離れていると、帰宅が遅くなり家事や子育てにあてる時間が取りにくくなります。

一昔前なら専業主婦として妻が家事をこなし、夫は外で仕事をして帰ってくるといったスタイルが主流でした。しかし現在、共働き世帯が増え、通勤時間が短くて済む職住近接の職場を求める人が多く見られるのです。

④地方の活性化

ライフスタイルの変化だけでなく、地方の活性化も職住近接が増えてきている要因となります。地方都市では地方活性化策として、近隣で効率的に用事を済ませられるコンパクトシティ化が進められているのです。

コンパクトシティ化は地方都市のみならず新興住宅地や被災地の復興などにも取り入れられており、都心部以外でも職住近接が実現しやすくなっています。

⑤都市圏での通勤ラッシュ

通勤時間の長さは、会社にとっても問題視されているのです。通勤時間が長い従業員は、睡眠時間が短くなり、朝の通勤ラッシュに追われて会社に着くころには心身共に疲弊しています。

これでは仕事の生産性が落ち、ストレスも溜め込んでしまうでしょう。そのため近距離に住む従業員への手当や家賃補助など、職住近接を推進する会社が増えています。

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3.職住近接のメリット

職住近接には、「交通費の支給が抑えられる」「採用時のアピール材料」「離職率の低下」といったメリットがあります。また従業員側にも、「通勤時間の短縮」「ワークライフバランスの維持」といった点がメリットとなるでしょう。

ここでは会社側と従業員側、両面から職住近接のメリットを説明します。

企業

交通費の支給が抑えられる

職住近接で働く従業員が増えるほど、会社が支払う交通費は下がります。この交通費差額分を福利厚生で還元するケースも少なくありません。

そうすると従業員のモチベーションが向上するため、生産性の向上や離職率の低下が望めます。たとえば、会社から一定距離内に住んでいれば家賃補助や奨励金を出すといった方法です。

離職率の低下

職住近接は、従業員の離職率低下にもつながります。通勤時間が長ければ、睡眠不足や運動不足など体への影響が大きくなるもの。時間に余裕が生まれなければストレスを発散しにくく、心への影響も出てくるでしょう。

満員電車に乗るのが苦痛で出勤が憂鬱になる人も少なくありません。離職率の低下を防ぐためにも、職住近接を後押しする取り組みが必要でしょう。

従業員

採用時のアピール材料

企業が従業員を判断する材料は、学歴やスキル、人柄や通勤時間となります。通勤時間が長ければその分、支給する交通費が高くなるのです。さらに早朝出勤や遅番での出勤など緊急時の対応ができないのでは、という懸念が生まれます。

Uターン就職や地元での就職を希望する応募者は、地域情報に詳しい点をアピールできるでしょう。

通勤時間の短縮

通勤時間が長いと早く起きなければならず、帰宅時間も遅くなります。一人暮らしの従業員は、遅くに帰宅してから家事をしなければならず、肉体的にも負担がかかるでしょう。

家庭を持っている従業員は、家族と過ごす時間を通勤時間に費やしてしまいます。職住近接によって通勤時間を短縮できれば、従業員の負担も軽減でき、ストレスの解消にもつながります。

ワークライフバランスの維持

職住近接は、従業員のワークライフバランスの向上にもつながります。従業員は、会社のためだけに生きている訳ではありません。家族や趣味の時間といった生活に費やせる時間を求めているのです。

仕事と生活の両立のためにも通勤時間の長さは重要です。職住近接による通勤時間の短縮は、従業員にとって大きなメリットになるでしょう。

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4.職住近接のデメリット

メリットばかりに思える職住近接ですが、自宅と職場が近くになるために生じるデメリットもあるのです。人によっては、職場から近すぎる自宅は避けたいと考える人もいるでしょう。ここでは職住近接によるデメリットについて説明します。

企業

残業時間の増加

会社から自宅が近いため「出勤しやすい」「遅くまで残業していても問題ない」と捉えられやすくなるのです。

結果、「ほかの従業員より対応しやすい」「お願いしやすい」と頼られやすくなり、休日出勤や長時間の残業を強いられる場合があります。せっかく職場の近くに住んでいても、短縮された通勤時間分を労働に当てられては職住近接の意味がありません。

従業員

家賃の上昇

まだまだ大都市の中心部やオフィス街の家賃は郊外と比較すると高価です。所得に余裕のある人なら問題ないものの、東京の中心部では家賃もかなり高額になり、通勤時間は短縮できても家賃による出費が増えてしまいます。

都市部では郊外や地方のように地元密着の商店街なども少なく、生活費も郊外に比べて高くなってしまうでしょう。

プライベートとの切り替えができない

自宅から歩いていける職場は魅力的ですが、メリハリがつきにくくなります。

「自宅が近いので休憩時間に自宅に帰れる」「そのまま仕事に戻るのが億劫になる」「自宅周辺のため職場についても仕事のスイッチが入りにくい」など、モチベーションが低下し、生産性が下がってしまう場合もあるでしょう。

プライベートでも職場の人に出くわす可能性が高く、外出に気を遣う人も少なくありません。

子育て環境として不向き

大都市に住むことで通勤時間を短縮できても、子育ての面で不自由する場合が多く見られます。大都市には、安心して遊ばせられる公園や施設が十分にあるとはいえません。

車や歩行者も多い都会では子どもを連れて外出するだけでも、細心の注意が必要です。また保育園の希望倍率も高く、待機児童問題にも直面します。このような点は大都会の職住近接におけるデメリットでしょう。

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5.職住近接を企業が取り入れる方法

職住近接を企業が取り入れるには、どうすればよいのでしょう。ここでは会社が職住近接を取り入れる方法について説明します。

  1. 住宅手当を出す
  2. サテライトオフィスを購入
  3. シェアオフィスを借りる

①住宅手当を出す

職住近接のために都市部に住むと、家賃が上がって従業員の金銭的負担が増加しかねません。職場から数駅あるいは数km圏内に住む従業員には、住宅手当を支給するとよいでしょう。

近距離補助金として遠方から職場近くに引っ越す際の補助金や、住宅手当を支給するなどです。これにより従業員の金銭的負担を増やさず、通勤時間が削減できます。

②サテライトオフィスを購入

サテライトオフィス(本社と異なりかつ従業員の住居に近いところに設置する拠点)を構えると、従業員の負担を軽減できるでしょう。

それにより従業員は本社に通勤せず仕事できます。営業先や出向先からサテライトオフィスに寄って、そのまま直帰できる会社もあるようです。

③シェアオフィスを借りる

シェアオフィスとは、複数の会社が借りて共同で利用するオフィススペースのこと。

新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが推奨されている事情もあり、本社一拠点に集まって仕事をする状況は減りつつあります。従業員の自宅近くにシェアオフィスを借りて、従業員を分散させて仕事をする会社が増えてきているのです。

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6.職住近接の具体的な事例

コンパクトシティ化による職住近接は、日本だけでなく世界でも求められているライフスタイルだとされています。そこで日本の「青森県」「富山市」の事例と、スウェーデンの「イエテボリ市」の事例を紹介しましょう。

青森県

青森県青森市では、中心市街地の再開発と郊外のマンション開発抑制といった職住近接施策を実施しています。調査では職場までの通勤距離が30分未満の人は74%。大都市東京を含む関東の31%と比較するとその差は歴然です。

中心市街での持ち家比率も高い点から、職住近接が実現しやすいと分かるでしょう。

富山市

富山市では、公共交通を主軸とした拠点集中型の街作りを目指し、公共交通機関を拡充しています。車移動が主流となっているため、車移動ができない人にとって利便性が高いとはいえないからです。

そこで誰でも移動しやすい街づくりを目標とし、「中心部へアクセスしにくい」「通勤時間が長い」人のためサテライトオフィスを導入して、職住近接を積極的に進めています。

スウェーデン:イエテボリ市

スウェーデンのイエテボリ市では、スウェーデンで最も発達したトラム網を設置。トラムとは路面電車のことで、中心部から空港、郊外まで続いており、郊外では地下鉄のような線路も設置されているのです。

その結果、郊外に住む人でも職場や国内出張のための中央駅、海外出張のための空港までアクセスしやすくなりました。