助成金とは? 助成金制度、支給要件、申請方法、注意点など

助成金とは、企業に対して国や自治体から支給されるお金のこと。金融機関のような審査はなく、一定の要件を満たせば受給できるのです。こうした助成金について解説しましょう。

1.助成金とは?

助成金とは、法人あるいは個人の事業主を支援するため国や自治体が支給するお金のこと。昨今、コロナ禍や天災被害の影響で業績不振に陥った事業主への助成金が導入されました。

銀行といった金融機関が行う融資と異なり、返済の必要はありません。また審査もなく、一定の要件を満たせば受給可能です。

助成金は主に厚生労働省が管理している雇用関係の助成金と、主に経済産業省が管理している研究開発型の助成金にわかれます。

雇用関係の対象は新規雇用や定年延長など、研究開発型の対象は開発費や市場調査費などです。助成金の種類は3,000種類以上といわれています。

助成金の支給目的

助成金の支給目的は、資金を提供して雇用や職場環境などの問題解決を支援すること。たとえば「景気が悪くなって雇用が確保できなくなった」「働き方改革でテレワークを導入したいが、費用が足りない」企業が支援対象に挙げられます。

補助金・給付金との違い

補助金と給付金の違いについて解説しましょう。

  • 補助金:主に経済産業省が管理している給付制度。目的は新規の事業やサービス、政策の促進で、一定の要件を満たしていれば企業だけでなく個人でも受け取れる。しかし予算に上限があるため必ず受けられるとは限らない
  • 給付金:「特定の状態」にある企業や個人に対して国や自治体が支給するもの。特定の状態には病気やケガ、失業や被災などが挙げられる

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2.助成金の支給要件

どの助成金を受給する際も、まずは下記の要件をすべて満たさなければなりません。ここでは、助成金の支給要件について説明します。

  1. 雇用保険適用事業所の事業主
  2. 支給のための審査協力
  3. 適正な労務管理

①雇用保険適用事業所の事業主

雇用保険適用事業所の事業主でなければ受給できません。助成金は企業が国に対して支払っている雇用保険料から支払われるため、助成金を受給するには企業が雇用保険に加入しているのが必須要件となるのです。

ただし雇用保険適用事業所でも、一定期間にて労働保険料を滞納している企業の場合、助成金を受給できない可能性が高まります。

②支給のための審査協力

助成金を申請した企業には、管轄労働局による調査が行われます。書類提出で済む場合もあれば、実地調査が必要な場合もありますので、いつでも対応できるよう体制を整えておきましょう。調査項目は以下のとおりです。

  • 支給または不支給の審査に必要な書類を整備・保管している
  • 管轄労働局の指示にしたがって、支給または不支給の審査に必要な書類を提出する
  • 管轄労働局が行う実地調査を受け入れる

③適正な労務管理

助成金を受給する際、労務管理も調査されます。たとえば必要な届出をすべて提出しているか、未払いの賃金がないかなどです。

過去3年間の記録を確認し、書類に不備があると不正受給が疑われます。過去に不正受給をした、あるいは不正受給を行おうとした経歴があった企業は、助成金を受給できない可能性が高まるのです。

たとえば新規雇用に関する助成金にて、雇用直後に社員を解雇したことが発覚すると、受給は難しくなります。

支給されない要件

以下の要件のいずれかを満たしている事業主は、助成金を受給できません。

  • 平成31年4月1日以降に雇用関係助成金を申請し、不正受給による不支給決定や支給決定の取り消しを受け、そこから5年を経過していない事業主
  • 平成31年4月1日以降に申請した雇用関係助成金で、申請事業主もしくはほか事業主の役員として不正受給を行う、もしくはそれに関与した役員などがいる
  • 支給申請日の属する年度前のいずれかで、雇用保険料を納めていない事業主
  • 支給申請日の前日から1年前の日から支給申請日の前の日までに、労働関係法令に違反した事業主
  • 性風俗関連営業や接待をともなう飲食の営業を行う事業主
  • 暴力団とかかわりのある事業主または役員などがいる場合
  • 破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れのある団体に事業主または役員などが属している場合
  • 事業主が支給申請日もしくは支給決定日の時点で、倒産している場合

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3.事業者が活用できる助成金制度

企業が利用できる厚生労働省の助成金制度は数十種類にもおよぶのです。ここでは10種類の助成金の詳細について説明します。

  1. 雇用調整助成金
  2. 業務改善助成金
  3. 人材確保等支援助成金
  4. 働き方改革推進支援助成金
  5. 産業保健関係助成金
  6. 産業雇用安定助成金
  7. 労働移動支援助成金(再就職支援コース)
  8. 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
  9. トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
  10. キャリアアップ助成金(正社員化コース)

①雇用調整助成金

経済上の何らかの理由により、事業活動をこのままの形で維持していくことが困難になった事業主が利用できる助成金です。

社員を一時的に休業させ、解雇せずに雇用の維持を図った場合、事業主が社員に支払った休業手当などの一部、またはすべてが国によって支給されます。昨今のコロナ禍の影響で利用される機会が増えた助成金のひとつです。

②業務改善助成金

企業内の最低賃金の引き上げを検討している中小企業や小規模の事業主を支援する助成金です。企業内の最低賃金を引き上げるには、業務改善を行って生産性を向上させなければなりません。

業務改善に必要な機械投資やコンサルティング導入費用、人材育成や教育訓練などで必要となった費用の一部を、業務改善助成金として支給します。

③人材確保等支援助成金

人材の確保やその後の定着に向けた「働きやすい職場作り」に対して積極的に取り組む事業主を対象とした助成金。この助成金には以下7種類のコースがあります。

  • 雇用管理制度助成コース
  • 人事評価改善等助成コース
  • 働き方改革支援コース
  • 設備改善等支援コース
  • 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
  • 介護福祉機器助成コース
  • 中小企業用団体助成コース

④働き方改革推進支援助成金

労働環境を改善するため、時間外労働の削減や賃金引上げを行った事業主へ支給される助成金です。2021年10月時点では「テレワークコース」と「職場意識改善特例コース」の2つがあります。

いずれも新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みを支援しているのです。「リモートワークを社内で普及させるための費用」「特別休暇を整備するための費用」の一部を支給します。

⑤産業保健関係助成金

社員の健康の維持を図るために行った事業について支給される助成金です。社員へ産業保健サービスを提供し、心と体の健康を守ることを目的としています。

また平成27年度から「ストレスチェック実施促進のための助成金(ストレスチェック助成金)」といった、内面のケアに関する助成金も新たに登場しました。2021年10月時点では以下4つが実施されています。

  • ストレスチェック助成金
  • 職場環境改善計画助成金
  • 心の健康づくり計画助成金
  • 小規模事業場産業医活動助成金

⑥産業雇用安定助成金

新型コロナウイルス感染拡大が原因となって、事業活動を今までの形で維持するのが困難になった事業主を対象とする助成金です。2021年2月から施行されました。目的は在籍している社員の雇用を守る対策として在籍型出向を積極的に行った事業主の支援です。

なおこの助成金は、出向元事業主と出向先事業主の双方に支給されます。

⑦労働移動支援助成金(再就職支援コース)

経営の継続が困難になり、離職を余儀なくされた社員の再就職を支援した企業に支給される助成金です。以下の再就職支援が助成の対象となっています。

  • 職業紹介事業者に委託して、再就職させた
  • 再就職支援の一部として、訓練を実施した
  • 再就職支援の一部として、グループワークを実施した
  • 離職が決定している社員に対して、求職活動のための休暇を与えた
  • 離職する社員が再就職するため訓練を、教育訓練施設に委託して実施した

なお実施した措置や対象になる社員の年齢や企業の規模に応じて、支給対象者1人あたりの支給額が変わります。

⑧労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)

離職後の社員を早期に雇用した事業主への助成金です。受給するには3つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 離職から3カ月以内の社員を、雇用保険に加入する無期雇用として雇い入れる
  • 雇い入れる社員が前職を離職する際、「再就職援助計画」もしくは「求職活動支援書」の対象となっている
  • 雇用していた事業主から再雇用される見込みがない

再就職援助計画や求職活動支援書は、事業規模の縮小といった理由で1カ月以内に30人以上の離職が見込まれるときに、事業者が作成して提出する書類です。つまりやむを得ない事情で離職した社員であると意味しています。

⑨トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

職業経験がない、あるいは不足している求職者を試験的に雇用した事業主に支給される助成金です。目的は求職者の適性や能力を見極めて常用雇用につなげること。給付対象期間は原則として3カ月間、対象者1人あたり月額4万円が支給されます。

ただし給付の対象となる求職者には、離職期間や離職の理由、年齢などの条件があるので注意しましょう。

⑩キャリアアップ助成金(正社員化コース)

非正規の社員や有期雇用社員の正社員化や処遇の改善を行った事業主に支給される助成金です。対象には、短時間社員や派遣社員も含まれます。

たとえば有期雇用社員を正社員に転換した場合、1人あたり57万円を支給。さらに事業所の生産性が一定以上に向上した際は、助成金の上限が72万円になるのです。

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4.助成金を活用するメリット

助成金を活用するメリットは、何でしょうか。それぞれについて解説します。

  1. 返済が不要
  2. 補助金より受け取りやすい
  3. 増額される場合も

①返済が不要

借金や銀行からの融資と異なり、支給された資金を返済する必要はありません。そもそも助成金は、「きちんと雇用保険料を納めている事業主に雇用や労働環境、生産性などの改善に必要な費用を支援する」ものです。

そのため資金が不足しやすい中小規模の事業主を主な対象としている助成金もあります。

②補助金より受け取りやすい

要件さえ満たせば助成金は受給できます。よって補助金よりも受給までの手順が少なく済むのです。補助金の場合、支給要件を満たしていても、その後プレゼンテーションをしたり、事業計画を提出したりとかなりの時間や手間を要します。

一方、助成金の場合、要件さえ満たしていれば、申請の際も許可が下りやすいです。また通年で申請が可能な点からも、申請から受給までがスムーズだといえます。

③増額される場合も

生産性の向上といった一定の要件を満たすと、金額が増額される助成金もあります。

たとえば助成金を申請している事業所のうち、生産性の伸び率が厚生労働省の定める「生産性要件」を満たしている場合、助成金の支給が増額されるのです。生産性要件が定められている助成金の一例は、以下のようになっています。

  • 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
  • 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース・介護福祉機器助成コース・人事評価改善等助成コース・雇用管理制度助成コース)
  • 業務改善助成金

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5.助成金の申請方法

助成金は取り組みを実施してから申請します。もちろん取り組みの結果や実績も提出しなければなりません。ここでは助成金を申請してから受給するまでの手順について説明します。

STEP.1
実施計画の申請
まず申請する助成金を決定し、支給要件に沿った実施計画を決定して提出します。実施計画とは、基本目標の達成に向けた具体的な事業計画のこと。提出する資料のテンプレートは、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
STEP.2
実施
実施計画を申請したら、計画を実施します。助成金には事業実施期間が定められているため、期間内に取り組みを実施しなければなりません。早めに実施を開始すると安心です。ただし厚生労働省が事業実施期間を延長する場合もあります。
STEP.3
支給申請
取り組みが完了したら申請に必要な書類をそろえます。必要な書類は助成金によって異なるため、厚生労働省のホームページを確認しましょう。申請にも期間があるので期限内に必ず申請します。
STEP.4
支給
助成金の成果目標を達成し、雇用保険に加入しているといった必須要件を満たしていればおおむね支給が決定し、金融機関に支給額が振り込まれます。ただし支給が決定したからといってすぐに入金されるわけではありません。助成金をあてにした資金繰りは避けましょう。

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6.助成金を申請する際の注意点

助成金を申請する際、期間や要件のほかに事業規模にも注意が必要です。ここでは助成金申請時の注意点について説明します。

  1. 助成金に共通の要件を満たしているか確認する
  2. 支給までの期間に注意する
  3. 中小企業事業主の範囲を確認する

①助成金に共通の要件を満たしているか確認する

以下の要件を最低限クリアしていなければ、どの助成金も受け取れません。

  • 雇用保険適用事業所の事業主になっており、労働保険の滞納がない
  • 審査に必要な書類を整備・保管している
  • 管轄労働局が行う実地調査を受け入れる
  • 期限内に申請を行う
  • 不正受給の実績がない
  • 暴力団や性風俗関連営業、接待をともなう飲食の営業を行っていない
  • 労務管理が法に則って行われている

②支給までの期間に注意する

先にも述べたとおり、助成金は申請してから支給されるまでにかなりの時間がかかります。たとえば雇用調整助成金なら平均1.5カ月から2カ月が目安です。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の場合、実施計画の申請から支給申請までで7カ月、支給申請から受給までで3カ月から8カ月。つまり実施計画の決定から受給までにおよそ1年かかるのです。

③中小企業事業主の範囲を確認する

なかには個人事業主を含む中小規模の事業主のみを対象としたものもあります。「社員の人数や資本(あるいは出資額)が一定以下」といった条件も見られるため、自社が対象となる事業主の要件に当てはまるか、事前に確認しましょう。

また申請できる事業主の規模が限定されていなくても、事業主の規模によって支給額が変わる場合もあります。