特例子会社とは? 障害者雇用枠との違い、認定要件、設立手順

障がい者雇用の促進と安定を図るために設立された特例子会社。今回は、障害者雇用枠との違いや認定要件、雇用のメリット・デメリット、設立手順などについてご紹介します。

1.特例子会社とは?

特例子会社とは、障害を持っている人の雇用を促進し安定を図るために、親会社によって設立された子会社のことを指します。一般的な会社と比較すると、従業員の障害や特性を支援するための就労環境が整っているのが特徴です。そのため、特例子会社では障害を持っている人もその程度に関わらず働くことができます。なお特例子会社として認定されるためには、定められたいくつかの要件を満たす必要があります。下記で詳しく説明していきましょう。

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2.特例子会社制度

特例子会社の設立は、障がい者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)で定められた制度です。障害を持っている人の雇用促進と安定を目指して、事業主が障がい者の雇用に対して特別に配慮した子会社を設立します。この特殊子会社制度は2009年4月に創設され、2020年6月における全国の特例子会社は544社となっています。

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3.特例子会社と障害者雇用枠との違い

特例子会社と障害者雇用枠では、職場における障がい者のための施設や設備、支援のための制度、従業員に占める障がい者の割合に大きな違いがあります。特殊子会社は障がい者のための施設や設備、制度が整っており、従業員に占める障がい者の割合が高いことが特徴です。それに対して障害者雇用枠は、障がい者のための環境が特例子会社ほど整っておらず、従業員に占める障がい者の割合も低いです。

通勤可能な地域に特例子会社がない人におすすめ

障がい者向けの環境が整っている特例子会社への就労を望んでいても、自宅から遠いため通勤が難しい場合があります。特殊子会社は増加傾向にありますが、障害者雇用枠のある会社が自宅から近い場合は、特例子会社よりも働きやすいといえるでしょう。

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4.特例子会社の認定要件

特殊子会社を設立するためには、下記の要件を満たす必要があります。

親会社の場合

  • 子会社の意思決定機関を支配している
  • 子会社と頻繁な人の交流がある

子会社の場合

  • 親会社が意思決定機関を支配している
  • 親会社と頻繁な人の交流がある
  • 株式会社である
  • 5人以上の障がい者を雇用し、障がい者が全雇用者の20%以上を占める
  • 障がい者の雇用管理をきちんと行うことができる
  • 障がい者雇用の促進と安定が達成されている

法定雇用率について

法定雇用率とは、会社の授業員全体に占めるべき障がい者の割合を指します。事業主は障がい者をこの割合以上に雇用することを障害者雇用促進法によって義務づけられています。2021年3月1日より0.1%ずつ引き上げられ、民間企業では2.3%、国や地方自治体では2.6%、都道府県などの教育委員会では2.5%となりました。

対象事業主の範囲

民間企業の法定雇用率は、以前は2.2%だったため、従業員を45.5人以上雇用している事業主は障がい者を1人以上雇用する義務がありました。しかし2021年3月1日から法定雇用率が2.3%に引き上げられたため、対象となる事業主の範囲が変更されたのです。現在、43.3人以上の雇用者がいる事業主は障がい者を1人以上雇用する義務があります。

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5.特例子会社の雇用状況

特例子会社を設立する企業と雇われている障がい者数は、増加傾向にあります。厚生労働省による2021年1月発表の「令和2年障害者雇用状況の集計結果」によると、特例子会社を設立している企業は前年度より25社多く542社、また特例子会社に雇用されている障がい者は前年度より2,144人増え、38,918.5人となっています。

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6.特例子会社に多い業種

特例子会社の業務内容については、特別なものは少ないといえます。高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査によると、最も多い業務内容は、一般的な郵便や会計などの事務作業で約60%を占めています。次に多い業務内容は運搬や清掃、包装などで約54%です。これらが、特殊子会社で就労する障がい者の業務内容の大半を占めています。

特例子会社一覧

厚生労働省では特殊子会社一覧を発表しており、その詳細を確認することができます。2020年6月1日時点では、全国で544社、一番多い東京都で168社あります。一覧には特殊子会社と親会社の名前と所在地、認定年月日が記載されています。

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7.特例子会社における雇用者のメリット

特例子会社における雇用者のメリットとして、独立した組織設計できることが挙げられます。ここからは、雇用者のメリットについて詳しく説明していきます。

独立した組織設計

特例子会社における雇用者のメリットとして挙げられるのは、親会社とは独立した組織設計を行えるという点です。たとえば、就業規則や給与規定を定めるときには、障がい者雇用に合わせて設計できます。障害によって勤務時間が調整できるフレキシブルな勤務体系や、通院のための特別休暇制度を設けることなどが可能となります。

設備投資の効率化が図れる

障がい者のための就労環境の整備や備品の設置などをまとめてできることもメリットです。たとえば、身体に障害を持つ方のために手すりを設置したり、トイレの使い勝手をよくすることは大切ですが、その都度設備の工事を行ったり備品を購入したりすると、費用や日数がかかりすぎてしまいます。特例子会社を設置すれば、そのリスクが回避できます。

職場定着率の向上

特例子会社の雇用者は、障がい者だけではなく従業員全体の職場定着率を向上させることができます。特例子会社では就労環境の整備に配慮され、障がい者とともに働くことで、ほかの従業員も仕事に対する意欲を高く保つことが可能となります。それによって、従業員の職場定着率が上がり、会社の生産性の向上も期待できるでしょう。

障害者雇用ノウハウの蓄積

特例子会社では、障がい者の雇用に必要な豊富な知識や経験が蓄積されていくこともメリットです。特殊子会社の従業員は企業全体の障がい者雇用を推進する立場として、豊富な知識や経験にもとづき、親会社などにアドバイスをすることができるでしょう。それによって企業の雇用責任を果たすための重要な役割を担うことが可能となります。

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8.特例子会社における労働者のメリット

労働者にとって特例子会社に就労するメリットには、雇用機会の拡大などが挙げられます。ここからは、労働者のメリットについて詳しく説明していきます。

雇用機会の拡大

特例子会社が設立されることにより、障がい者が働きやすい環境が整った良質な雇用機会の拡大につながります。障がい者が自身の能力を存分に発揮できる職場で働くことができるというのは、大きなメリットといえるでしょう。

労働時間への配慮

特例子会社では、障がい者が働きやすいように労働時間に配慮した制度が導入されています。たとえば、障害者短時間勤務制度やフレックスタイム、半休制度といったフレキシブルな労働時間制度です。服薬や通院など、医療行為に関わる時間を確保するための通院休暇制度も、仕事を続けていくために必要な制度といえるでしょう。

能力向上の整備

特例子会社では労働者の能力向上のための環境や制度が整備されています。たとえば、業務の支援や指導を行う特別スタッフが配置されていたり、定期的な面談時間を設けて相談に乗ったりします。また職場での実習期間を設置したり、複数の業務を体験させたりすることで、自身の特性に合った仕事に就くことが可能となるのです。

職場環境の整備

障がい者が働きやすい職場環境が整備されていることも、特例子会社で働くメリットといえるでしょう。実際の取り組みとしては、設備のバリアフリー化や支援や指導スタッフの在籍、休憩室の設置などが挙げられます。柔軟な勤務形態や障害に配慮した作業内容の提供も、障がい者が働きやすい職場環境を作ることにつながっているのです。

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9.特例子会社における雇用者のデメリット

特例子会社における雇用者のデメリットには、障がい者の育成が難しいことなどが挙げられます。ここからは、雇用者にとってのデメリットについて説明していきます。

障がい者の育成

雇用者にとってのデメリットは、障がい者の育成が困難であることです。人材育成に関わる課題はどの企業でも関心が高く、特例子会社においても例外ではありません。特例子会社の従業員は出向者やベテラン社員が多いのが一般的で、障害を持っている社員のキャリアアップやモチベーション向上のための取り組みを担う人材確保が難しいことが問題となっています。

付加価値のある業務の確保が難しい

付加価値のある業務の確保が難しい点も雇用者にとってのデメリットです。特例子会社の業務は、通常は親会社や系列企業の業務を補助するものが多く、付加価値のある業務を生み出しにくいというのが現状です。これは社員の仕事へのモチベーションや向上心を低下させ、ひいては会社の生産性が上がらないことにもつながるでしょう。

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10.特例子会社における労働者のデメリット

特例子会社における労働者のデメリットには、キャリアアップが難しいこと、業務内容が限られることが挙げられます。

キャリアアップが難しい

労働者にとってのデメリットは、キャリアアップが難しい点です。特例子会社であっても、障がい者がキャリアアップできる仕組みが整っているとはいえません。障がい者が管理職や指導的立場を担うことは少ないのが現状です。また、身体障がい者に比べて、知的障がい者や精神障がい者が管理職に就くのは難しいとされています。

業務内容が限られる

もうひとつのデメリットとして挙げられるのが、業務内容が限られている点です。新規性のない決められた事務作業が多いため、専門的なスキルを習得するのが難しくなります。さらにキャリアアップや新しい業務にチャレンジができる機会が少ないため、仕事へのモチベーションを高く保つことができず、達成感が得にくいでしょう。

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11.特例子会社を設立する手順

特例子会社を設立するためには、5つの手順を踏む必要があります。最後に設立の手順についてそれぞれ詳しく説明していきます。

認定条件の確認

特例子会社を設立するためには、認定されるための要件を満たしているのかを確認しましょう。先述したように、親会社には2点、子会社には6点の認定要件があります。すべての認定要件を満たしていないと、ほかの手続きを進めても特例子会社として認められませんので、まずは要件をクリアできているか確認することが重要です。

計画書の作成

特例子会社設立計画を作成します。この計画書には、「設立の理念」「損益計画書や従業員数」「採用計画などの具体的な企業の内容」さらに「障がい者への支援体制」を書き入れます。この計画書は、特例子会社を設置することを役員に承認してもらうために作成するものです。わかりやすい設立計画書になるように心がけましょう。

就業規則などの作成

特例子会社の就業規則を作成します。親会社の就業規則を参考にしながら、特例子会社の実態に見合った独自の就業規則を作成することが可能です。就業規則では、「正社員や非正規社員の賃金」「労働時間や休日」「契約期間」「賃金制度」「評価制度」などについて、障がい者が働きやすいように配慮して定めるとよいでしょう。

募集・採用

従業員を確保するために、採用選考活動を行います。慣れない場合はハローワークの障がい者雇用担当者に問い合わせるのがよいでしょう。ハローワークでは、障がい者の採用から募集までの手順について、的確なアドバイスを受けることができます。それによって面接や実習を適切に行えるため、採用活動がスムーズに進むでしょう。

特例子会社認定申請

特例子会社認定を申請しましょう。認定申請時点では、下記の3つの要件を満たしていることが必要です。

  • 障がい者を5人以上雇用していること。雇用数が5人以上
  • 当該子会社の全従業員数の20%以上が障がい者であること
  • 重度身体障がい者、知的障がい者および精神障がい者が、雇用される障がい者の30%以上を占めていること