シンギュラリティ(技術的特異点)とは? 意味、影響、いつ起きるか、実現の可能性、否定的な意見について【2045年問題とは?】

人工知能が人類を超える日を意味するシンギュラリティが、ここのところ頻繁に議論のテーブルに上がるようになりました。

  • シンギュラリティとはどのような意味を持つ言葉なのか
  • シンギュラリティが与える影響
  • シンギュラリティは一体、いつ起こるのか
  • 実現の可能性や実現に対しての否定的な意見

などについて幅広く説明します。

1.シンギュラリティ(技術的特異点)とは?

シンギュラリティとはAIが人類の知能を超える技術的特異点(転換点)や、AIがもたらす世界の変化を示す言葉未来学上の概念のこと。

レイ・カーツワイルによってシンギュラリティの概念が収穫加速の法則と結びつけられ、一般化された影響を受けて、現在では2045年に技術的特異点に到達するという説が最も有力とされています。

シンギュラリティが注目を浴びるようになった要因は2010年代に起こった、

  • 深層学習、すなわちディープラーニングの飛躍的な発達
  • ビッグデータの集積

などによる「第3次人工知能ブーム」。

日本でも野村総合研究所がイギリスの工学博士M.オズボーン他との共同研究の中で「10~20年後、国内の労働人口の約49%が人工知能やロボットで代替可能になる」という報告結果を発表しました。

これにより、雇用が一気に消失するのではないかとの危機感が生まれ、シンギュラリティに注目が集まったのです。

コンピューターや人工知能の進化は想定を超えており、神経の動きをシミュレーションしたニューロコンピューターでの脳内神経細胞再現化などはすでに現実のものとなっています。

コンピューター内のニューロン数が人類の脳の数を超える、すなわち「機械が人類の脳を超える」状態になるのは時間の問題といわれているのです。

人工知能が人類の脳を超えるとき、すなわちシンギュラリティが実現する時代がやってくるのはそう遠くないようですね。

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2.シンギュラリティはいつ起こる?【2045年問題】

シンギュラリティはいつ起こるかという問いには、いくつかの答えがあります。一つは、カーツワイル氏が予想した2045年頃。最も知られている説であることから、シンギュラリティは「2045年問題」とも呼ばれています。

しかしシンギュラリティの起こる時期について、2045年以外にもいくつか説があります。

たとえば、

  • 2030年よりも早い
  • 2040年
  • 2030年頃

といったもの。2040年の説を唱えているのは、スチュアート・アームストロングです。2012年に開催された「シンギュラリティ・サミット」で調査結果を発表し、有識者の間で実現年の中央値が2040年であることが明確にされました。

2030年よりも早いと予想したのはヴィンジ氏で、2030年頃と予想しているのは、スーパーコンピューターの開発を行っているベンチャー企業PEZY Computingの齊藤元章氏や神戸大学名誉教授の松田卓也氏です。

2030年頃にシンギュラリティが実現する前段階には、「プレ・シンギュラリティ」という社会的変革が起こると予想しています。

レイ・カーツワイルの主張

レイ・カーツワイルは、

  • 2030年代にはコンピューターの計算能力が現存するすべての人類の生物学的な知能の総容量と同等の量に達する
  • 2045年には1000ドルのコンピューターの計算能力が、10ペタFLOPSの人類の脳の100億倍になる

と、シンギュラリティに達する知能水準が十分に育まれていると予測しています。

レイ・カーツワイルがいう2045年とは、

  • 「汎用人工知能(AGI)が人類史上初めて出現する年」
  • 「汎用人工知能(AGI)が人類史上初めて人間よりも賢くなる年」

ということではありません。レイ・カーツワイルは、この2つの状況は2029年にすでに起こると考えています。またレイ・カーツワイルは、人類の進化の最上級の理想系としてシンギュラリティを迎えるとするならば、

  • 人類の知性が機械の知性と完全に融合する
  • 人類がポスト・ヒューマンに進化する

といった予想もしているのです。

レイ・カーツワイルの発言

レイ・カーツワイルは、2017年12月29日にEテレに出演し、そこで、「自らを改良し続ける人工知能が生まれること。それが(端的にいうと)シンギュラリティだ」という発言をしました。

現実社会の動きを見ると2016年頃から、

  • IoT
  • 人工知能

の実用化が始まったこともあり、レイ・カーツワイルが提唱した2045年問題に関する議論が活発化。収穫加速の法則自体の実証は続いています。

ヴァーナー・ヴィンジの主張

ヴァーナー・ヴィンジは、「シンギュラリティ」という言葉を広めた存在として有名なアメリカの数学者であり、SF作家です。

ヴァーナー・ヴィンジが1993年に発表したエッセイのタイトルは、『The Coming Technological Singularity: How to Survive in the Post-Human Era(来たるべき技術的特異点:ポスト人類時代をどのように生き延びるか)』 。

ヴァーナー・ヴィンジはエッセイの中で、

  • 30年以内に人間は超人間的知性を創造する方法を生み出す
  • しかし、その後すぐに人間の時代は終わるだろう

という主張を展開します。ただしここで描写されたシンギュラリティが実現した後の未来は、

  • 現在宣伝されているような高度な技術革新による明るい未来ではないこと
  • 人類と一切無関係に人工知能自体が指数関数的な成長を続けること
  • 人類は人工知能を認識すらできないこと

という世界観が中心となっているのです。

ヴァーナー・ヴィンジは著書の中で、シンギュラリティについて「機械が人類の役に立つふりをしなくなること」と定義しています。このことから、ヴァーナー・ヴィンジは、シンギュラリティに関してかなり悲観的な世界観を持っていたことが理解できるでしょう。

レイ・カーツワイルもヴァーナー・ヴィンジも、シンギュラリティの実現が近い未来に必ずや起こると予測しているのですね。

3.シンギュラリティの影響とは? 世界はどう変わる?

シンギュラリティの影響を受けると、世界はどう変わるのでしょう。3つの視点から説明します。

  1. 雇用:一部の仕事・職業が人工知能に置き換わる
  2. 社会制度:ベーシックインカム導入
  3. 体・健康:脳や臓器を人工物で代替

①雇用:一部の仕事・職業が人工知能に置き換わる

一部の仕事や職業が人工知能に置き換わることが予想されます。

たとえば、

  • 工場の生産ラインの管理が人間から人工知能に取って代わる
  • 人工知能による自動運転技術が、タクシードライバーやトラックドライバーに取って代わる
  • コンビニエンスストアやスーパーのレジ精算が、人工知能に取って代わる

など、ビジネスの世界から身近な生活にまで人工知能の活用が進む可能性が高くなっているのです。

このような状況では、

  • 従来雇用されていた人間が、必要なくなってしまう
  • コスト面がクリアできれば、人間の仕事は人工知能に明け渡されてしまう

といった可能性も出てくるでしょう。

  • 機械化にかかるコストと、それに人工知能が見合う働きをするかどうか
  • 人間の作業のようにきめ細やかで臨機応変な対応が人工知能にできるかどうか

といった議論もありますが、定型業務や単純労働といった部類の仕事は、人工知能の代替が早く進むと予想されているのです。

予測と人間側に必要な意識

実際、イギリスにあるオックスフォード大学と野村総合研究所の共同研究の結果によると、「日本で働いている人のうち、およそ49%の仕事は10年から20年後には人工知能に取って代わる」といった予測があります。

人工知能の脅威に立ち向かうには人類が新しい価値観を提供する存在になる、常にスキルをアップデートしていく努力を重ねるといった人間側の高い意識が必要になるでしょう。

②社会制度:ベーシックインカム導入

シンギュラリティの影響を受けると、社会制度面ではベーシックインカム導入が進むと考えられています。

ベーシックインカムとは、就労、資産の有無、年齢、性別などにかかわらず、無条件に最低限度の所得の支給を行う社会政策のこと。

  • 貧困問題、貧困格差の解決
  • 最低限度の所得の支給に関する審査管理コストの削減
  • 多様なライフスタイルの選択肢の提示

といったメリットがありますが、

  • 就労意識の低下
  • 所得支給に充てる莫大な財源

といった課題も持つ非常に難しい政策です。

ベーシックインカムが導入されたら?

シンギュラリティの実現によってベーシックインカムが導入された場合、

  1. 人工知能の発展によって、人類を労働から解放することによる恩恵
  2. 人工知能により人類の仕事が奪われるため生活保護を求める人が増加し、ベーシックインカムの導入が避けられない

という2つの反する側面が新たな課題となります。

人工知能が人類に、幸せをもたらすのかそれとも不幸をもたらすのかといった点について、結論は出ておらず、その見通しの不透明感が逆にシンギュラリティの不確実要素になっているのです。

③体・健康:脳や臓器を人工物で代替

シンギュラリティの影響によって臓器を人工物で代替する可能性が高まると考えられています。

シンギュラリティが加速度的に発達した場合、

  • 人類の脳がデジタル解析ができるコンピューターと同じようなものになる
  • データの保存、コピー、消去、各種データやソフトのインストールができるようになる

など、人類の脳が自由自在に操作可能になると想定されているのです。

こんなことは実際には起こらないと思う人もいるでしょう。しかし現実、脳波の活用でコンピューターをコントロールする技術はすでに開発されており、脳波で義手を動かす技術などに活用されているのです。

  • 人類の脳の構造の全容が明らかになる
  • デジタル技術により人類の脳が模倣される

そんな世界の実現はもうそこまで迫っており、すでに、人工関節や人工心臓などは医療の現場で用いられています。

臓器のすべてが不要になる話を非現実と片付けられなくなるかもしれません。また人類の臓器が人工物でも代用可能となった場合、人類は不老不死を手に入れる可能性があります。多臓器不全といった死因は将来、なくなってしまうかもしれないのです。

4.シンギュラリティの実現可能性

シンギュラリティの実現可能性を考えた場合、まず、シンギュラリティの提唱者たちが実現の要因として挙げている2つの法則、

  • ムーアの法則
  • 収穫加速の法則

を考える必要があります。

ムーアの法則

ムーアの法則とは、世界最大の半導体メーカーであるIntel創設者の一人であるゴードン・ムーア氏が1965年に唱えた法則で、基幹は、「半導体の集積密度は、18カ月~24カ月で倍増する」というものでした。

この法則が有効であるならば、

  • 半導体の性能は指数関数的に向上
  • 近未来にコンピューターが人類を凌駕する存在に取って代わる

という時代が必ずやってきます。しかし、この法則の根拠が半導体の微細加工技術にあることからも分かるように、現実にはこれ以上、微細化・細分化できないレベルになれば、ムーアの法則は自然と崩れてしまうといわれているのです。

しかし、ムーアの法則を半導体だけでなく、一般的なテクノロジーに応用して考えようとする動きが起こります。

その中の一人が、カーツワイル氏。カーツワイル氏は、ムーアの法則を一般テクノロジーからさらに思考範囲を広げて、すべての進化プロセスに適用し、そこから誕生したのが、「収穫加速の法則」でした。

収穫加速の法則

収穫加速の法則では、

  • イノベーション同士が結びつくことで、新たなイノベーションの創造スピードが加速する
  • 収穫加速が起こったその先に、シンギュラリティが実現する
  • 科学技術は線形で進歩するのではなく、エクスポネンシャル、すなわち指数関数的に進化する

と説いています。

シンギュラリティが提唱された背景などを理解して、実現可能性について根拠を持って考えていくべきでしょう。

5.シンギュラリティは来ない? 否定的な意見

シンギュラリティの実現について、

  • 現時点で、ディープラーニングの解析ができない
  • 事象について正当に判断できたか、できなかったか、分からない
  • 事象について正当に実現できなかった理由が分からない

という観点から、「シンギュラリティは実現不可能」という否定的な意見もあります。つまり、

  • 学習データで教え、判断させる
  • 間違ったらまた学習データで教え、判断させる

この繰り返しを続け、どの時点まで繰り返せば人類の頭脳レベルになったといえるのかが判断できないのです。

また、

  • 収穫加速の法則への数学的観点からの指摘
  • 生物学的な脳機能への理解不足という生物学的観点からの指摘
  • 理論の構築に先走り、都合のよい要素ばかりを選別したという指摘
  • 経済合理性での思慮不足であるという社会経済的観点からの指摘

といったものも、シンギュラリティに対する批判の根拠となっています。

シンギュラリティが実現するか否かについて、さまざまな観点から活発な議論が巻き起こることに期待したいですね。