SESC/証券取引等監視委員会とは?【インサイダー調査】

証券取引等監視委員会とは、金融庁に属する組織です。ここでは、証券取引等監視委員会について解説します。

1.証券取引等監視委員会とは?

証券取引等監視委員会とは、1992年に当時の大蔵省に設置された組織で、現在は金融庁に属しています。米国の証券取引委員会の名前から、SESCとも呼ばれています。

証券取引等監視委員会の目的は、

  • 証券取引
  • 金融先物取引

などの公正確保です。

金融商品取引法など各種法令に基づき、

  • 違法取引や虚偽記載などの事案の調査、告発
  • 取引業者への立入検査や取引審査、行政処分の勧告
  • 裁判所への申立てや行政当局への建議

など担っています。

証券等監視委員会の創設目的

証券等監視委員会の創設目的は、

  • 市場の公正性と透明性の維持
  • 投資家保護の強化

です。

1991年、

  • バブル崩壊による企業への損失補填から生まれた巨額損失
  • 相場操縦疑惑
  • 暴力団との不適切取引

などの問題が次々に発覚しました。そこで、1992年に証券会社の経営を健全にするため、証券等監視委員会が設立されました。

証券取引等監視委員会の英語表記

証券取引等監視委員会を英語で表記すると、 Securities and Exchange Surveillance Commissionとなります。

英語の頭文字をとって、SECSと呼ぶことがあります。

証券取引等監視委員会のモデルである米国SEC

証券取引等監視委員会のモデルは、米国SEC、米国証券取引委員会です。米国証券取引員会は、1934年に設立された独立の連邦政府機関です。

米国証券取引委員会は、「米国資本市場・証券市場で投資家を保護すること」を責務とし、

  • 投資家保護
  • 公正な証券取引

を目的としています。

米国証券取引委員会は、司法に準じた権限を保有する独立した機関です。

  • インサイダー取引
  • 相場操縦

といった不公正取引に対して処分を行う権限を有しています。

日本のSECSと米国SECの違い

日本のSECSと米国SECには、大きな違いがあります。

日本の証券取引等監視委員会は、

  • 金融庁の傘下にある
  • 各種法令違反に対して処分を行うなど特段の権限を有していない

という組織です。

一方、米国証券取引委員会は、

  • 司法に準じた権限を保有している
  • 違反者に対して処分を行うことができる

という組織です。

日本の証券取引等監視委員会でも、

  • 独立した機関であること
  • 権限を有して徹底した投資家保護策の実施

が求められています。

証券取引等監視委員会の沿革

証券取引等監視委員会の沿革は以下のとおりです。

  • 1991年、「答申の中に「自由、公正で透明、健全な証券市場」の実現に向けて行政部門から独立した検査、監視機関を設けるべきといった提言が盛り込まれる
  • 1992年7月、証券取引等監視委員会が発足
  • 1998年、証券取引等監視委員会が大蔵省から金融監督庁に移管したのち、12月には金融監督庁と共に金融再生委員会に移管
  • 組織改編により証券取引等監視委員会は金融監督庁に移管
  • 組織改編により証券取引等監視委員会は内閣府の外局として設置された金融庁に移管

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2.証券取引等監視委員会の2つの特徴

証券取引等監視委員会にはふたつの特徴があります。

ここでは、

  • 独立性の重視
  • 強制調査権の付与

といった特徴をあげて解説します。

独立性の重視

証券取引等監視委員会の特徴のひとつは、独立性の重視です。証券取引等監視委員会は金融庁の傘下にある組織です。
委員長は、

  • 衆議院・参議院の同意を得る
  • 内閣総理大臣が任命する

といった手続きを経て決定されます。

また、

  • 任期は3年
  • 在任中に罷免されない
  • 政権交代があっても任期中は辞職にならない

といった独立性を保っています。

強制調査権の付与

証券取引等監視委員会のもうひとつの特徴は、強制調査権の付与です。
証券取引等監視委員会には、警察が持っている警察権・逮捕権といった権限はありません。

しかし、市場の公平性や透明性を監視する立場として、

  • 裁判所の令状による家宅捜索
  • 証券市場における犯則事件の調査
  • 金融業者に対する検査
  • 検察庁への告発

といった強制調査権などが付与されています。

強制調査権とは?

強制調査権とは、捜査機関が行う捜査目的の強制処分です。強制調査権には、

  • 被疑者に対する逮捕、身体捜索、勾留、鑑定留置身体捜索、証人尋問などの対人的強制捜査
  • 捜索、差押え、検証、領置、鑑定処分などの対物的強制捜査
    があります。

強制処分は、法律で特別の定めがある場合に限られる強制処分法定主義を採用しています。

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3.証券取引等監視委員会の6つの役割

証券取引等監視委員会が担うむっつの役割があります。ここでは、6つの役割についてのポイントをそれぞれ解説します。

証券モニタリング

証券取引等監視委員会のひとつ目の役割は、証券モニタリングです。証券モニタリングは、平成28事務年度から始まりました。証券モニタリングは、全ての?商業者などが対象です。

?融庁関連部局などとの連携をはかりながら、

  • 法令
  • 証券モニタリング基本方針

などを踏まえることでオン・オフ一体のモニタリングを行っています。

市場分析審査

証券取引等監視委員会のふたつ目の役割は、市場分析審査です。

市場分析審査の目的とは、

  • 不公正ファイナンスへの対応
  • 包括的、機動的な市場監視の実現

です。

そのために市場分析審査では、

  • 金融市場、資本市場の動向についての幅広い情報収集
  • 個別取引や市場動向の背景に存在する問題分析

などを実施しています。

取引調査

証券取引等監視委員会の3つ目の役割は、取引調査です。

取引調査は、

  • 取引調査
  • 国際取引調査

のふたつに分類されています。

取引調査

取引調査とは、

  • インサイダー取引
  • 相場操縦
  • 上場企業によるデータ偽装不祥事

といった不公正取引を行った者に対する調査です。

違法と認められた場合には内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、課徴金納付命令の発出を求める勧告を実施します。

国際取引調査

国際取引調査とは、

  • クロスボーダー取引
  • プロ投資家による不公正取引

に関する専門的な調査のことです。

違反行為が認められた場合には、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、課徴金納付命令の発出を求める勧告を実施します。

開示検査

証券取引等監視委員会の4つ目の役割は、開示検査です。開示検査とは、適正なディスクロージャーの確保を目的とした、上場会社などの開示書類の検査です。

具体的には、以下のような業務を行います。

  • 多様なチャネルによる情報収集
  • 上場企業の継続的監視
  • 有価証券届出書、有価証券報告書などの虚偽記載などが疑われる企業に対する検査の実施

犯則事件の調査

証券取引等監視委員会の5つ目の役割は、犯則事件の調査です。犯則事件の調査は、

  • 重大で悪質な違反行為の真相を解明
  • 違反行為の告発、刑事訴追

を目的としています。

犯則事件の調査には、

  • 犯則嫌疑者などに質問や所持物件の検査などを実施する任意調査
  • 裁判官が発する許可状で会社などの立ち入り、証拠を差押える強制調査

があります。

不法行為に対する禁止命令請求、告発

証券取引等監視委員会の6つ目の役割は、不法行為に対する禁止命令請求、告発です。

禁止命令請求、告発には、

  • 勧告
  • 建議
  • 告発
  • 裁判所への申立

があります。

勧告

勧告とは、検査・調査によって、課徴金の納付や開示書類の訂正などの対応が必要だという判断になったとき、

  • 内閣総理大臣
  • 金融庁長官

に対して、適切な命令・適切な行政処分を求める行為です。

建議

建議とは、法律・規制に関する見直しについての施策を金融庁長官などに対して求めることです。

不正行為は時代と共に変化します。建議は、

  • 現状に沿った既成の整備
  • 法の抜け穴を防ぐこと

を働きかけるきっかけになります。

告発

告発とは、検察官に告発することです。証券取引等監視委員会の中にある特別調査課が犯則事件を調査します。

場合によっては強制調査権という権限も行使しながら事案を解明し、法律違反が認められた場合に告発を行います。

裁判所への申立て

裁判所への申立てとは、金融商品取引法に関する重大違反行為があった場合、その違反について裁判所に禁止・停止命令の申立てを行うことです。

  • 無登録業者による営業行為
  • 虚偽報告

などで申立てが行われます。

証券取引等監視委員会が集めている情報

証券取引等監視委員会が集めている情報は以下のとおりです。

  • 相場操縦、インサイダー取引など不正取引
  • 有価証券報告書などの虚偽記載や無届募集などの発行体
  • 投資詐欺の疑いがある金融商品などの疑わしい商品やファンド
  • 不適切な勧誘など疑わしい年金運用
  • 配当の未払いや金融商品リスクの説明不足など金融商品取引業者など

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4.証券取引等監視委員会の立入検査

証券取引等監視委員会の立入検査について、

  • 立入検査の流れ
  • 立入検査時の注意点

なども含めて解説します。

証券取引等監視委員会の検査部門

証券取引等監視委員会にはふたつの部門があります。

  • 事業者の営業する実地に実際に立ち入って内部の臨店検査などを行う検査部門
  • 日常的に事業者の業務の監督を実施する監督部門

です。

  • 金融商品取引業者
  • 適格機関投資家等特例業務届出者
  • 金融商品仲介業者

などに対しては、検査部門が臨店検査を行います。

証券取引等監視委員会の立入検査の流れ

証券取引等監視委員会の立入検査の流れには3つのステップがあります。ここでは、ステップごとに解説します。

無予告

証券取引等監視委員会の立入検査の最初のステップは、無予告です。検査官が無予告で登録業者事務所を訪問します。

  • 資料
  • 電子メール

などすべてが検査の対象となります。

検査が入ることを知って慌てて資料やメールを破棄することは認められません。

臨店検査

証券取引等監視委員会の立入検査の二番目のステップは、臨店検査です。臨店検査は、

  • 通常は数週間
  • 長い場合は数カ月

行われます。

検査中には、

  • 問題点の指摘
  • 事実確認
  • 事業者の見解確認

などが実施されます。

検査後

証券取引等監視委員会の立入検査の三番目のステップは、検査後です。検査結果の検討を受けて、

  • SEC内部では、検査報告書(案)や勧告書(案)の作成
  • 事業者へは講評

が実施されます。

重大な法令違反等があった場合、

  • 処分勧告
  • 行政処分

などが行われます。

証券取引等監視委員会の立入検査時の注意点

証券取引等監視委員会の立入検査時には注意点があります。ここでは、ふたつの注意点をあげてそれぞれ解説します。

強制調査と受任義務

証券取引等監視委員会の立入検査時の注意点のひとつは、

  • 強制調査
  • 受任義務

です。

臨店検査には受任義務があります。

  • 時間がない
  • 担当者不在

といった理由は一切受け入れられません。臨店検査は断ることができません。

検査忌避

証券取引等監視委員会の立入検査時のもうひとつの注意点は、検査忌避です。立入検査が行われる際、

  • 資料を隠す
  • 虚偽資料を作成する

などに不正行為により検査を妨害することは許されません。

場合によっては、金融庁による刑事告発されるケースもあります。