SECIモデルとは?【わかりやすく解説】企業事例、問題点

SECIモデルとは、組織内で知識を共有するためのフレームワークのことです。SECIモデルの特徴や運用における問題点や、企業の導入事例を解説します。

1.SECIモデルとは?

SECI(セキ)モデルとは、組織内で知識の集約と共有を行い、新たな活用方法を見つめるためのフレームワークです。

組織には、少なからず暗黙知(経験や直感、洞察やスキル、感覚など言葉にすることが難しい知識)が存在します。暗黙知を形式知(文章やマニュアル)として組織で共有すると、知識の拡散やスキルアップの促進に役立ちます。

SECIモデルを活用すると、暗黙知を形式知に変換、形式知を新しいノウハウとして共有、これらのノウハウをブラッシュアップするというナレッジマネジメントのプロセスを進めやすくなるのです。

ナレッジマネジメントとは?

ナレッジマネジメントとは、組織内の社員の知識(ナレッジ)を収集し、共有して生産性やイノベーションを促進する手法のこと。ナレッジマネジメントは、組織全体の学習と成長、また新規事業の開発などにつながります。

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2.SECIモデルにおける4つのプロセス

SECIモデルは下記4つのプロセスで構成されています。それぞれのプロセスの詳細を説明しましょう。

  1. 共同化プロセス:Socializaiton
  2. 表出化プロセス:Externalization
  3. 連結化プロセス:Combination
  4. 内面化プロセス:Internalization

①共同化プロセス:Socializaiton

社員同士がコミュニケーションや業務を通じて経験や知識、思考などを共有するプロセスです。たとえば先輩社員からの指導やメンタリング、チームでのミーティングなどを行うと、双方間で暗黙知を共有できます。

このプロセスにおいては「共有する」ことがもっとも重要です。また、これらの共有体験は、社員同士の信頼関係やメンターシップの強化にも寄与します。

②表出化プロセス:Externalization

個人が持つ暗黙知を形式的な言語や文書などに変換して表出化するプロセスです。個人が持つ知識やノウハウを組織内で共有するため、マニュアルや図表、報告書やプレゼンテーションなどの形式にまとめて表現します。

表出化をとおして暗黙知が論理的に整理されるため、他者にも理解しやすくなります。また文書化されたノウハウは、国外の拠点とも容易に共有を行えるのです。

③連結化プロセス:Combination

表出化プロセスで明らかになった知識を組み合わせ、新たな知識を創造するプロセスです。たとえばデータの分析や情報の統合、知識ベースの構築や自己流のアレンジなどがこれに当たります。

このプロセスによって異なる情報源や知識が結びつくと、新しいアイデアや洞察が生まれやすくなるため、組織の創造性やイノベーションの活性化を促進できるのです。

④内面化プロセス:Internalization

連結化プロセスによって新たに生み出された知識を個人が吸収し、自らの暗黙知として内部化するプロセスです。たとえば営業スキルのトレーニングを受けたあと、実務経験を通して得た知識やノウハウを自分のスキルとして吸収するものが該当します。

内面化プロセスが進むほど、個人の成長や組織全体のパフォーマンス向上などを促進するのです。

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3.SECIモデルにおける4つの場と具体例

SECIモデルには、下記4つの場があります。特徴と具体例を説明しましょう。

  1. 創発場
  2. 対話場
  3. システム場
  4. 実践場

①創発場

他者との交流においてアイデアや新しい知識が生まれる場のこと。たとえばチームやグループ内での意見交換、プロジェクト会議やランチミーティングなどが該当します。

創発場では、互いの意見を尊重し、批判や制約を排除することが大切です。また異なるバックグラウンドや視点を持つ社員同士で対話を行うと、新しいアイデアを生み出しやすくなります。

②対話場

個人が持つ暗黙知を言葉やコミュニケーションを通じて他者と共有する場のこと。対話を通じて、個人の暗黙知を具体的な言葉や表現で他者と共有すると、双方向の学びや成長を促進できます。

対話場はあらかじめセッティングされるのが一般的です。たとえばチームミーティング、グループディスカッション、社内研修などが該当します。

③システム場

連結化プロセスで組織内の形式知を集約し、整理する場のこと。連結化プロセスでは、各社員が持つ形式知を持ち寄れる環境が必要となります。具体的には、対面セッション、オンラインミーティング、社内チャットなどです。

これらのシステム場で集められた形式知を、ドキュメントやデータベースとして組織内で一元化しておくと、共有と活用がしやすくなります。

④実践場

結合化によって形成された新たな知識を、自らの経験や行動に取り入れる場のこと。通常業務、プロジェクトへの参加、配置転換などをとおして、形式知を実際の業務に取り入れられる職場環境が該当します。

頭で理解するだけでなく実践すると習得が早まり、個人のスキルや能力の向上を促進するのです。また実践によって新たな暗黙知が生まれる場合もあります。

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4.SECIモデル運用の問題点

SECIモデルは社員の知識や経験を組織の共有財産にできるものの、活用には問題点もあります。SECIモデル運用の具体的な問題点を説明しましょう。

  1. 表出化への抵抗
  2. 均一的な内面化が困難
  3. 活動のゴールが不明確
  4. 組織全体での運用が困難

①表出化への抵抗

組織には、自身の経験や知識を共有することに抵抗感を持つ社員が存在します。「彼らにとって共有するメリットがない」あるいは「自身のスキルや専門知識を隠して個人的な競争優位性を保ちたい」と考えるためです。

このような社員の参加を得るには、インセンティブの提供や、秘密主義を減らす文化を醸成する必要があります。

②均一的な内面化が困難

個人の経験や知識を均一的に内面化するのは容易ではありません。組織内では社員一人ひとりの能力や条件が異なるため、表出化された形式知を習得できるとは限らないからです。また習得までの時間にもそれぞれ差が出るでしょう。

組織全体の学習と成長を促進するには、知識の共有と内面化を継続的なビジョンとして位置付ける必要があります。

③活動のゴールが不明確

SECIモデルのプロセスは継続的に行う必要があるため、ゴールを明確に定義できません。業務が遂行される限り、暗黙知が集約されていくからです。また部門やチームによって集約される知識の専門性も異なるため、最適なゴールもそれぞれで変わってきます。

部署やチームごとに中間目標を立て、定期的に振り返る仕組みが必要です。

④組織全体での運用が困難

組織全体での知識共有を促進するには、情報が部門を超えて自由に閲覧できる環境が必要です。しかし組織の構造や文化、情報の秘密保持などの要因により、横断的な共有が行えないケースも見られます。

組織全体での協力やコミュニケーションを推進するには、リーダーシップのサポートや適切な情報システムの導入などが求められるのです。

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5.SECIモデル実践のポイント

SECIモデルの成功のためには、利点や課題以外の要点もおさえておく必要があります。SECIモデル実践のポイントを説明しましょう。

  1. メリットの周知
  2. スモールスタート
  3. 循環できる仕組みの構築
  4. 知識の共有を奨励する体制の整備
  5. ツールの導入と活用

①メリットの周知

SECIモデルのメリットを、組織の関係者に理解してもらうことが不可欠です。とりわけ豊富なノウハウを持ったベテラン社員が、積極的に参加してくれるように働きかける必要があります。

SECIモデルが組織の成長や問題解決にどのように貢献するか、どのように人事評価へつながるかなど、組織と社員にとってのメリットを具体的に周知しましょう。

②スモールスタート

SECIモデルを初めて運用する場合、スモールスタートするとよいでしょう。大規模な変革や導入を一度に行うと、途中で失敗するリスクが高まるからです。

効果が出やすい部署や少数の関係者で試験的に導入し、成功体験や事例などの実績をほかの部署や関係者に広めていきましょう。スモールスタートには、PDCAサイクルで短期間に改善を重ねやすいというメリットもあります。

③循環できる仕組みの構築

SECIモデルの効果を持続させるために、プロセスを循環的する仕組みが必要です。暗黙知は日々発生するため、共同化から内面化までのプロセスを繰り返します。

「知識を共有する方法」「得られた知識のフィードバックや可視化を行う方法」「内面化した結果の評価方法」などの策定が不可欠です。プロセスを改善しながら継続していけば、社員はより質の高い知識を習得していけます。

④知識の共有を奨励する体制の整備

知識の共有を奨励する体制を整備し、社員が共有に協力する組織文化を醸成することが大切です。とくに高度なノウハウを持つ社員が積極的に共有するほど、SECIモデルの成功に近づきます。

SECIモデルへの参加を評価してインセンティブや人事評価に反映させたり、業務量を調整して共同化や表出化にあてる時間を作ったりするなど、積極的な知識共有を促進する環境を整えましょう。

⑤ツールの導入と活用

適切なツールの活用は、SECIプロセスの効率化と成果を高めるために効果的です。

社内SNSや社内ポータルサイト、ビデオ会議や共同作業ツール(オンラインドキュメント編集ツールやファイル共有ツール)などを活用すれば、場所や時間に制約されず知識を共有できるでしょう。

ツールの導入に際しては、社員へのトレーニングやサポートを行うのも重要です。

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6.SECIモデルの企業事例

SECIモデルを採用して成功を収めている企業の事例を参考にすると、より効率的かつ効果的な運用が可能となります。SECIモデルを活用した企業の事例を紹介しましょう。

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(旧:富士ゼロックス)

富士ゼロックスは、製品開発の最終段階において、設計変更と開発期間の延長が多発するという課題を抱えていました。同社は課題を克服するため、各部門の技術者や設計者が互いの現場を訪問し、ノウハウを共有するというアプローチを採用。

さらにオンラインの情報共有システムを開発し、獲得された暗黙知の選別や編集を行って知識の共有を推進しました。この取り組みへ設計者500名、技術者4,100名が参加し、製品開発プロセスの効率化が実現しています。

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)

NTT東日本では、オフラインとオンラインの両方で、知識共有を強化する手法を取り入れました。オフラインでは、個人デスクを指定しない「ベースゾーン」「クリエイティブゾーン」「リフレッシュゾーン」などを設置し、社員同士の知識共有を促進。

オンラインでは、営業部に属する社員全員が個人ホームページを開設し、日々の活動記録を公開しました。さらに各部署でも同様にホームページを開設し、知識の共有が積極的に行ったのです。

このような取り組みの結果、連絡や伝達漏れが減り、ナレッジの属人化を抑制するといった効果が見られています。