定年退職は何歳から?【年齢引き上げは義務?】再雇用の進め方

定年退職とは、従業員が事前に決められた一定の年齢で退職する制度のこと。今回は、定年退職の年齢や継続雇用制度、定年年齢を引き上げるメリット・デメリット、また企業の状況などを解説します。

1.定年退職とは?

定年退職とは、従業員が一定の年齢に到達したことを退職の理由にする制度です。定年退職の年齢は60歳以上と決まっています。実際に退職するタイミングは企業が任意で決定できるため、定年年齢になった日、定年年齢になった月の末、定年年齢になった年度末などさまざまです。

一般的に、正社員は契約期間の定めがない無期労働契約を締結しますが、定年制がある場合、厳密には無期労働契約となりません。定年退職制度を導入する際は、就業規則や雇用契約書に明記する必要があります。

定年退職の種類

定年退職には、一般的な「定年退職制」と「定年解雇制」の2種類があります。

  • 定年退職制:一定の年齢に達すると、労働者の意思表示にかかわらず自動で労働契約が終了する制度
  • 定年解雇制:一定の年齢に到達した時点でそれが解雇事由となる。基本は、労働者の意思表示に応じて労働契約を終了する制度

自動的に退職となるか、意思表示によって雇用契約が終了するかに違いがあります。

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2.定年退職の年齢は何歳から?

定年年齢は最低60歳からで、企業が任意で決定できます。60歳未満を定年とすると、法律違反となり無効になります。厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」によると、職種に関わらず一律に定年制を定めている企業の、定年年齢階級は以下のとおりです。

出典:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況
※「第 15 表 一律定年制を定めている企業における定年年齢階級別企業割合」を元に作成

調査によると、約7割の企業が定年年齢を60歳としています。また65歳以上を定年年齢としている企業の割合は24.5%にのぼり、平成17年以降の調査年において過去最高となっているのです。

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3.定年退職と高年齢者雇用安定法の関係

高年齢者の職業の安定などを目的とした「高年齢者雇用安定法」は、少子高齢化や高年齢者の働き方の多様化に伴い、度々改正が行われています。

2004年の改正では、それまで努力義務だった高年齢者雇用確保措置が義務化され、企業は下記いずれかの策を講じることが求められました。

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定年退職年齢の引き上げ

定年退職年齢を65歳まで引き上げる措置です。年金支給開始年齢の後ろ倒しにともない、高年齢者の無収入期間を無くすために、定年退職年齢も徐々に引き上げられてきました。

その後の2021年には、70歳までの就業機会を確保するための改正が行われ、定年年齢を70歳まで引き上げるか、70歳まで継続して雇用することが努力義務となっています。

継続雇用制度の導入

継続雇用制度とは、従業員が定年を迎えた場合でも、本人が希望すれば雇用を継続する制度のこと。例外を除いて、希望者は定年後も雇用関係を継続できます。なお、継続雇用制度には、「再雇用制度」と「勤務延長制度」の2種類があるのです。

再雇用制度

  • 定年で一度退職させた後、再び雇用契約を結ぶ制度
  • 一般的に定年前とは異なる雇用契約を結ぶ
  • 現行の制度では、65歳までの雇用確保は義務で、70歳までは努力義務となっている

勤務延長制度

  • 定年に到達後も雇用を継続する制度
  • 労働条件を変えずに勤務期間を延長する
  • 代わりとなる人材を確保するのが難しい場合に適用されることが多い制度

定年制の廃止

2021年の改正では、65歳から70歳への定年退職年齢の引き上げが、高年齢者就業確保措置のひとつとなりました。下記に該当する事業主は、①〜⑤いずれかの措置を講じるよう努めなければなりません。

対象となる事業主

  • 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
  • 65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主

対象となる措置

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
    ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

出典:厚生労働省『パンフレット(簡易版):高年齢者雇用安定法改正の概要

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4.継続雇用制度とは?

高年齢者就業確保措置の1つであり、定年を迎えた後も雇用を継続する制度のこと。前述したように、雇用継続制度には「再雇用制度」と「勤務延長制度」の2種類があります。各制度の内容とメリット・デメリットを見ていきます。

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再雇用制度

定年年齢で一度退職扱いにした後、再び雇用契約を結ぶ制度です。正規雇用とは限らず、契約社員や嘱託社員など雇用形態はさまざまあります。

契約方法も、1年ごとの更新や、定年退職後65歳まで継続して雇用するなど、企業によって異なるのです。いずれにしても、企業にとっては65歳までの雇用確保が義務であり、70歳までは努力義務といえます。再雇用制度のメリット、デメリットは以下のとおりです。

メリット

  • 採用コスト、教育コストが削減できる
  • 正規雇用とは限らないため人件費の負担が減る
  • 人手不足に対応できる

デメリット

  • 労働管理や評価制度が複雑になる
  • 業務内容や条件が適切でないと訴えられるリスクがある
  • 従業員にとっては、給与や待遇が下がる恐れがある

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勤務延長制度

定年退職年齢に到達したあとも、勤務期間を延長して雇用を継続する制度のこと。期間のみ延長し、労働条件などは変わりません。なお、退職金は延長した勤務期間が終了した後の支給になります。

勤務延長制度は、特殊な技能や、すぐに代わりとなる人材が確保できない業務を担当していた従業員などを対象として、特例としての適用が多い制度です。勤務延長制のメリット、デメリットは以下のとおりです。

メリット

  • 事業やサービスの滞りを防げる
  • 他社への流出を避けられる

デメリット

  • 雇用にかかるコストを維持する必要がある

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5.定年退職年齢を引き上げるメリット

定年退職年齢を引き上げるメリットを企業側・従業員側から解説します。

企業側のメリット

企業側のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 労働力が確保できる
  • 長年のスキルや経験を生かしてもらえる
  • 少子高齢化により労働力の確保が難しくなった現代では、高年齢労働者も貴重な戦力
  • とくに、長年の技術・知識が必要な業務においては欠かせない存在になる
  • 労働力を確保するための新たなコストや教育にかかるコストも削減でき、さまざまなコスト削減につながる
  • 再雇用制度なら戦力をそのままに、人件費も抑えられる
  • 「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答した60歳以上の割合は、約4割にのぼり、高い就業意欲がある

従業員側のメリット

従業員側のメリットは、次の点です。

  • 金銭面で生活を安定させやすい
  • 生きがいにつながる
  • 年金だけで生活を賄うのは難しいとも言われる現代で収入を確保できる
  • 社会とのかかわりも持てるため生きがいや健康維持にもつながる
  • 内閣府「令和5年高齢者白書」によると、労働力人口比率における65〜74歳の割合は年々増加傾向にあり、65歳を過ぎても働ける環境が増えてきている

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6.定年退職年齢を引き上げるデメリット

メリットがある一方、定年退職年齢の引き上げには、それぞれ以下のようなデメリットも存在します。

企業側のデメリット

  • コストがかかる
  • 組織の新陳代謝が進まない
  • 特別な理由なく解雇できない
  • 雇用形態が変わりこれまでよりも人件費を抑えられたとしても、雇用継続した分の人件費はかかる
  • また、定年引き上げによるコストの影響で新規雇用をストップしなければならない可能性もあり、組織の新陳代謝が滞るリスクもある(若手の昇進機会が遅れる、新しい考えや仕組みが導入しにくくなる、など)
  • 65歳までの雇用確保は義務であるため、原則全員を雇用し続けなければならない
  • 定年引き上げにより雇用を継続する場合は、双方が納得できる形で条件を決めるための、労働者の体力・健康面への配慮が必要

従業員側のデメリット

次に、従業員側のデメリットです。

  • モチベーションの維持が難しい
  • 賃金が下がる可能性が高い
  • 体力的な負担がある
  • 年齢の上昇とともに、体力的な負担が大きくなるのは避けられない
  • 仕事内容や役割に変化があることで、これまで通りバリバリ働くのは難しいケースも(働く意欲を失ってしまう恐れもある)

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7.定年退職にまつわる企業の状況

これまで高年齢者雇用安定法の改正により、企業は定年制の廃止や定年年齢の引き上げ、継続雇用制度の導入など、いくつかの対応が求められました。企業ではどのように対応しているのか、厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」のデータから見てみましょう。

定年制のある企業は約9割

令和4年就労条件総合調査によると定年制のある企業は約9割で、ほとんどの企業に定年制があるとわかります。

出典:厚生労働省『令和4年就労条件総合調査の概況』
※『第 14 表 定年制の有無、定年制の定め方別企業割合』を元に作成

とくに企業規模が大きいほど定年制があり、1,000人以上の企業規模では99%が定年制を定めています。産業別では、「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融業、保険業」「複合サービス事業」の3つにおいて100%。対して、定年制を設けている割合が最も少ない業種は宿泊業,飲食サービス業です。

継続雇用制度を導入している企業も約9割

定年制を定めている企業のうち、継続雇用制度で「勤務継続」もしくは「再雇用」を導入している企業の割合は94.2%。勤務延長制度のみを導入している企業は全体で約10%、多くは再雇用制度のみを導入しています。両制度を導入している企業も全体で20%ほどです。

出典:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況
※『第 16 表 一律定年制を定めている企業における勤務延長制度、再雇用制度の有無別企業割合』を元に作成

なお、継続雇用制度を導入している業種TOP3は以下です。

  1. 鉱業、採石業、砂利採取業 100.0%
  2. 建設業 95.9%
  3. 医療、福祉 93.6%

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8.定年退職年齢を引き上げる際のポイント

定年退職年齢を引き上げるにあたって、以下のポイントに気をつけましょう。

賃金制度や評価制度を見直す

65歳までの雇用継続そして70歳まで雇用する場合、最大で本来よりも10年分の人件費が増えます。最低賃金を守り、定年前の50〜70%に設定するケースが一般的です。

「同一労働同一賃金」の原則もあるため、不合理な差が出ないよう配慮しつつ、賃金制度を見直すことがポイントとなります。

また、賃金制度に関連して評価制度も見直すとよいでしょう。年功序列の評価制度では再雇用社員の評価が難しく、若手のモチベーションも下げてしまうためです。定年後に継続して働く従業員に対しても、柔軟に活用できる評価制度を構築するのもひとつの方法といえます。

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雇用契約や就業規則を変更する

定年退職年齢を引き上げる場合、従業員と交わす雇用契約書の雛形や就業規則の変更・周知といった対応が発生します。就業規則の変更は、労働基準監督署への届け出が必要で、就業規則変更届と労働組合の意見書を提出しましょう。

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9.定年退職手続きの進め方

定年退職に際して、対象となる従業員に辞令を作成し通知します。定年退職は自然退職とも呼ばれますが、後々のトラブルを防ぐためにも通知とあわせて「定年退職届」を提出してもらうとよいでしょう。そのほか、下記の手続きが必要です。

  • 社会保険の資格喪失手続き
  • 住民税の控除、普通徴収への切り替え
  • 財形貯蓄制度などの解約手続き
  • 最後の給与計算
  • 退職金の支給

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10.定年退職後に再雇用する場合の手続き

定年退職後、再雇用する際は以下手順で手続きを行います。

  1. 対象従業員への意思確認
  2. 雇用条件の決定
  3. 再雇用手続き
  4. 各種保険の手続き

定年退職した従業員に対して、まず再雇用に関する意思確認を行います。一般的には最長5年の有期労働契約を結ぶものの、1年契約で毎年更新制としても問題ありません。

再雇用制度の場合、雇用条件が変わるため、雇用条件を提示して双方が納得いく形で合意を取る必要があります。勤務延長制度と異なり、各種保険は「資格喪失届」と「資格取得届」を管轄の事務局へ提出します。雇用保険と労災保険はそのまま引き継ぎ可能です。