ピボットとは?【ビジネスでの意味を簡単に】ピボットする

ピボットとは、方向転換や路線変更などを意味する言葉のこと。ビジネスの世界では事業戦略に行き詰まりを感じたとき、ピボットを行えば経営を大きく変えられると考えられています。

ここでは、

  • ピボットとは何か
  • ピボットのビジネス的な意味
  • ピボットの成功事例
  • ピボットピラミッド
  • ピボットの実施に際しての注意点

などについて見ていきます。

1.(ビジネス用語としての)ピボットとは?

ビジネス用語として用いられるピボットとは企業経営の方向転換や路線変更のこと。

単なる「方向転換」という意味の中でも、

  • 特に起業したての企業が事業戦略に行き詰まり、軌道修正を余儀なくされる
  • 全く異なるアイデアや企画に取り組む

といった内容を意味しているのです。また、このような経営判断そのものを「ピボット」と呼ぶケースもあります。

これらから、企業が(事業内容やビジネスモデルなどについて)方向転換することを「ピボットする」と表現することがあります。

pivotの本来の意味

pivotとは、先端が円錐形になっている回転軸のこと。このpivotを構造の中に取り入れている機器に、計測器や時計などがあります。

Excelのピボットテーブルとは?
Excelの機能に、ピボットテーブルがあります。これは、クイックソート機能でソートの基準データを意味します。
  • データからピボットを取り出す
  • データより大きなデータグループから小さなデータグループへの分割を繰り返す
  • 未整列部分を狭めていく

などの機能の基準データとなっています。

ピボットとは、英語で回転軸のこと。ビジネス用語では、企業経営の方向転換、路線変更のことを意味します

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2.ピボットするリスクとしないリスク

ピボットを別の角度から見ると、現在の企業戦略や市場ニーズといった両者の適合性を確認するプロセスといえます。

アクションを起こすと結果から、市場ニーズをつかんでいたか、市場ニーズとのズレがあったかが分かるもの。

そこでピボットを成功への道筋を探るプロセスだと考えれば、メリットは大きいでしょう。よって、数多くそして素早くピボットを行うことが成功への鍵と考えられているのです。

ピボットは、企業が自ら動き失敗することで、成功への道筋を探っていくための有意義なプロセスであると考えられています

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3.なぜシリコンバレーの起業家はピボットするのか?

アメリカのカリフォルニア州にあるシリコンバレーには、ITのベンチャー企業が多く集まっています。

ここでは、スタートアップ期にあるベンチャー企業が、

  • 暗礁に乗り上げそうな事業の展開を分析し、原因を追究する
  • 新たな事業展開の可能性のある市場を探求する

といった前向きな目的で、積極的にピボットを行う傾向があるようです。

ベンチャー企業のピボット戦略とは?

ピボット戦略の目的とは、企業の経営状況を客観的に分析し、提供しているサービスやプロダクトの方向転換を図ること。

ベンチャー企業にとって、競争相手の少ないニッチな市場を見つけることは生き残りの鍵となります。ピボットを活用すれば、マーケットそのものの変更を通して自社の存在意義を見つけることができるのです。

自社が生き残れるニッチな市場を見つけるために、前向きにピボットを活用しているベンチャー企業が多くあります

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4.企業のピボット成功事例

成長を遂げた先進企業も、最初から順風満帆だったわけではありません。起業した当初は事業路線を大幅に変更した経験を持つのです。ここでは、ピボットを企業の発展に生かしてビジネスを成功させた具体的事例を見ながら、ピボットの可能性を考えてみます。

  1. Instagram(インスタグラム)
  2. 任天堂
  3. mixi(ミクシィ)
  4. Amazon(アマゾン)
  5. Slack(スラック)

①Instagram(インスタグラム)

Instagram(インスタグラム)は、Facebook, Incが提供する無料の写真共有アプリケーション。Instagramの前身は、現在地や写真の共有が売りのソーシャルチェックアプリburbnです。

burbnを提供した当初、ユーザーが写真の共有を目的として利用していることが分かりました。そこでピボットによって位置情報機能を生かした写真共有アプリへと事業方針を転換。そしてできたInstagramは、社会現象にまでなっています。

②任天堂

任天堂は、家庭用ゲーム機を中心とした玩具の開発、製造、販売を行う日本を代表する企業。創業当初は、トランプや花札の製造、販売をメインとした企業でした。しかし、1970年代後半頃から家庭用のみならず業務用コンピュータゲームの開発を始めます。

これがいわゆるピボットになり、1985年発売の「スーパーマリオブラザーズ」は世界的なヒットを実現させました。現在任天堂は、世界的な娯楽産業としての地位を確立しています。

③mixi(ミクシィ)

mixi(ミクシィ)は、創業当初、ネット求人広告を主力事業としていました。mixiの名が広く知れ渡ったのは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を開始したこと。

しかしそれもつかの間で、SNSは米フェイスブックの人気に押され、mixiはi存続の危機に陥ります。しかし、ピボットを活用してスマホゲーム市場に参入。そして、見事な復活劇を見せたのです。

④Amazon(アマゾン)

Amazon(アマゾン)にも不遇な時代があります。

イーベイの追撃を目的として、決済企業の買収やサザビーズとの提携などの手段でオークション事業に参入するも、うまくいきません。最後は、追随しようとしていたイーベイからオークション事業の買収を持ちかけられる始末でした。

しかし、その買収話を断り、オークション事業に関してピボットにトライ。その結果、Amazonマーケットプレイスを誕生させ、オークション事業を大きく成長させることに成功したのです。

⑤Slack(スラック)

Slack(スラック)の創業者は、スチュワート・バターフィールド。マルチ・プレーヤー・ゲームの会社を設立しましたが、ゲームは販売不振のため従業員の解雇にまで追い詰められます。

しかし、救いだったのは資金を使い切らない段階で、ピボットのチャンスをつかんだこと。

新しい事業を展開する資金的余力が残っていたため、ピボットによってゲームの開発作業を円滑に進めるためのコラボレーションツールというニッチ市場に目を向けることができたのです。

先進企業と呼ばれる企業も、ピボットのチャンスを生かしてビジネスを成功に導いたことがよく分かります

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5.リーンスタートアップにおけるピボット

リーンスタートアップにおけるピボットとは今までにない新しい製品やサービスを生み出すための手法や考え方のこと。

具体的に言えば、

  • 機能を必要最小限にしてリリースする
  • リリースサイクルを可能な限り短くする
  • ユーザーや顧客からの反応をフィードバックしながら、次の意思決定を科学的な分析や判断に基づいたものにする

最低限の機能を短期間でリリースしながら科学的にユーザーからの反応を分析することで、コンパクトにピボットを取り入れることができます。

プロダクトマーケットフィット(PMF)するまでピボット

プロダクトマーケットフィット(PMF)するまでのピボットとは、仮説検証後のピボットのことです。

MVP、すなわち「Minimum Viable Product(実用最小限の製品)」における検証の結果、製品やサービスがソリューションフィット、マーケットフィットしないと分かった場合にピボットするケースを指します。

リーンスタートアップにおけるピボット、プロダクトマーケットフィットするまでのピボットなど、さまざまなケースでピボットが活用されています

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6.ビジネスモデルをピボットする方法、具体例

ビジネスモデルそのものをピボットする方法があります。ここでは、2つの具体的な事例をもとにして、全く異なるビジネスモデルへと展開して成功を収めたケースを見てきます。ピボットがビジネスモデルそのものにも応用できることが分かるでしょう。

事例①ゲイ向けSNSからセレンディピティ・コマースへ

ゲイ向けSNSから、セレンディピティ・コマースへとビジネスモデルをピボットしたのが、Fab.com。ゲイ向けSNSを運営していたときのサービス名は、「Fabulis」です。

しかし、思ったように売り上げが伸びずに苦しむことになりました。そこで、注目したのがビジネスモデルのピボット。それによりデザイナー性の高い商品に特化したECサイトの運営にピボットしたのです。

ピボットの理由・経緯

Fab.comがピボットを行った経緯には、3つの要素があります。

  1. ゲイ向けの市場規模が小さく、このままいくと年間売上1,000万ドルを超えることは難しいと分かった
  2. マーケットの需要が大きく変化し、特に北米で同性愛者の権利改善によってサービスを必要としない人が増加した
  3. ゲイ向けSNSでデザイン性の高い商品が20日間で40,000ドル以上の売り上げにつながり、その半数近くがゲイ以外の購入であった

これらの流れがピボットの理由です。

事例②ゲームメーカーから写真共有サイトへ

ゲームメーカーから写真共有サイトへビジネスモデルをピボットしたのがFlickr。もともと、ロールプレイングゲームのメーカーとして知られていました。しかし、ゲームからビジネスモデルをピボット。これにより、写真共有サイトでユーザーのニーズをつかんだのです。

ピボットの理由・経緯

Flickrがピボットを行うきっかけとなったのは、ゲームに関するサービスの開発。開発中、写真共有ニーズの高さに気付き、新たに開発すべき課題のひとつが写真の共有技術だと認識したのです。

Flickrはこれをビジネスモデルのピボットと捉えます。そしてゲームから写真共有サービスへとピボットすることを選んだのです。

事例③寄付のプラットフォームからフラッシュマーケティングサイトへ

寄付のプラットフォームからフラッシュマーケティングサイトへとピボットを実施した企業があります。Grouponは、もともと「The Point」というサービス名の社会問題に対する寄付やボランティア活動のプラットフォームサービスを行う会社でした。

しかしそこからピボットし、フラッシュマーケティングサイトのサービス提供会社としての地位を確立したのです。

ピボットの理由・経緯

Grouponのピボットの経緯は2つ。

  1. 「The Point」の利用者急増により、ターゲットのフォーカスが不可能になるだけでなく、多国籍企業のボイコット活動の募集などにも利用されたり、サイトがハッカーのターゲットになったりしてしまった
  2. 共同購入のシステムは順調だったため、システムにフォーカスしながらクーポンを集めるサービスへと事業を転換した

これは、システムを維持しつつその活用対象をピボットによって変更したという一例です。

ビジネスモデルを変更する場面でも、ピボットが有効に取り入れられ、活用されていることがよく分かります

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7.何をピボットすればいいのか?|ピボットピラミッド

ピボットピラミッドとは、何をピボットすればいいのかを視覚的にガイドしてくれるもの。

たとえば、

  • 起業家がグロースさせるために新たな変化を起こす
  • 異なったビジネスの領域で試みの実験を行う

といった場合に、視覚的にピボットを成功へと導く手助けをしてくれます。ピボットピラミッドは5つのピボットステージに分かれており、それぞれのステージには特徴があるのです。

  1. 顧客(Customers)のピボット
  2. 課題(Problem)のピボット
  3. ソリューション(Solution)のピボット
  4. テクノロジー(Tech)のピボット
  5. グロース(Growth)のピボット

①顧客(Customers)のピボット

顧客(Customers)のピボットは、ピボットピラミッドの土台部分に当たる最下層に位置するもの。顧客を変えるピボットは可能ですが、それをいつやるのかというタイミングによってピボットピラミッドそのものの再評価が必要になります。

②課題(Problem)のピボット

顧客(Customers)の上に位置するピボットは、課題(Problem)のピボット。課題をピボットすると、それより上の階にあるソリューションやテクノロジー、グロースといった3つのピボットに関して評価し直す必要が生じます。

③ソリューション(Solution)のピボット

ソリューション(Solution)のピボットは、ピボットピラミッドの中間層に位置するもの。ピボットピラミッドの他を変更するのと同じで、プロダクトの変更はあくまで定量的なグロースを目指すべきであることに変わりはありません。

④テクノロジー(Tech)のピボット

テクノロジー(Tech)のピボットは、それより下層に位置するピボットがうまく変更できたとしても、テクノロジーの課題の選択次第で、グロースやリテンション達成の妨げになる可能性があります。

⑤グロース(Growth)のピボット

ピボットピラミッドの頂点に位置するのが、グロース(Growth)ピボットです。このピボットは、グロースするためのチャンネルが飽和状態である、時間の経過とともにコストがかかりすぎる可能性があります。

ピボットピラミッドとは、何をピボットすればいいのかを視覚的にガイドしてくれるもので、5つのピボットから構成されています

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8.ピボットの注意点

ピボットは、過去の失敗を未来の成功へと導くための鍵として注目されています。

しかし、ピボットを実施する際には、

  • ピボットを実行しても、変えてはならないビジョンやピボットの対象にならないミッションを守り抜く
  • 顧客や市場が求めるサービスや製品とのすり合わせを行い、ニーズに合わせて変化していく

この相反する部分を両立させなければならないのです。

ピボットするタイミングの見極め方

ピボットとは、自らの仮説の崩れが事業展開の中で証明されたことにより生じる究極の選択肢のこと。そのため、事業がうまくいかないからといって安易にピボットするような発想は危険といえます。

仮説を立てる、実行する、仮説と実行の結果を検証する、この3つのプロセスが追求できたときに初めて、ピボットの必要性が認められるのです。安易にピボットを行えば、同じ過ちを繰り返すだけで終わってしまうでしょう。

安易にピボットしてはいけない理由・問題点

安易なピボットは、建設的ではなく、目前の障壁から逃避するだけになってしまうことも。本当の意味で有意義なピボットが必要でしょう。

どうして失敗したのか、できることは他にないのか、どのように展開すべきだったか、仮説に無理はなかったかなどについて徹底的に検証しましょう。逃避でない建設的なピボットが可能となります。

ピボットは、失敗の原因を徹底的に検証したうえで、苦渋の選択、あるいは最終手段として実施すべきものだと理解しましょう