ピープルアナリティクスとは?【わかりやすく解説】事例

ピープルアナリティクスとは社員のデータを分析して組織の問題解決に導く手法のことです。ここではピープルアナリティクスが注目される理由や実施のメリット、活用するデータや課題などについて解説します。

1.ピープルアナリティクスとは?

ピープルアナリティクス(People Analytics)とは、社員の人事データや行動データ、属性データなどを集めて分析し、組織の課題解決につなげる手法のこと。

採用活動や従業員満足度の向上、教育評価制度など活用範囲は多岐にわたります。米グーグル社も「人事に関するすべての意思決定は、データと分析にもとづいて行われるべき」と述べています。世界規模で需要が高まっている手法です。

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2.ピープルアナリティクスが注目される理由

企業はなぜピープルアナリティクスに注目するのでしょうか。その主な理由は、判断や決定を行う際の透明性と公平性を担保するためです。

社会構造の変化

現代の社会構造は日々変化しています。かつて主流だった、同じ会社で定年まで勤めあげる意識はもはやありません。当時の解決方法で現在の会社環境を改善するのは不可能です。

会社は社会構造の変化に合わせて社員に成長を促すチャンスを与え、積極的に職場環境を改善する必要があります。そこで重要視されているのがピープルアナリティクスです。

ビックデータやAIの発展

ビッグデータやAIの発展も、ピープルアナリティクスの重要性を後押ししています。従来の人事課題解決方法といえば、心理学や科学的知見を取り入れたり、担当者同士が話し合ったりして主観的に判断するのが一般的でした。

これがビッグデータやAIの発展により、定量的な分析が可能になりました。膨大なデータを客観的に、かつ公平に分析できるようになったのです。

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3.ピープルアナリティクスを実施するメリット

ピープルアナリティクスの実施によって、企業も社員もメリットが得られます。代表的なメリットが以下の3つです。

  1. 採用力の強化
  2. 人材育成の効率化
  3. 離職率の低下

①採用力の強化

ピープルアナリティクスを導入すると、精度の高い採用活動が行えます。これまで採用活動といえば人事担当者の経験や価値観によって行われてきました。そこではどうしても、感情的なバイアスが生じていたのです。

ピープルアナリティクスを用いれば、自社で活躍している人材のタイプを分析できます。このデータを応募者と照合して、適合度を客観的に判断可能です。経験や価値観だけで採用する方法と比べても、精度が高く公平性のある採用活動が行えます。

②人材育成の効率化

ピープルアナリティクスでは社員のスキルや個性をデータとして可視化します。昇格スピードや昇給率、研修活用率などから成長の度合いを測定して、効率的な人事育成が行えます。

行動データや人材データなどを活用すれば、仕事上のどこに悩みを抱えているかも見つけられるでしょう。先回りして教育できるため、効率のよい人材育成が可能です。

③離職率の低下

離職率の低下にもピープルアナリティクスは有効です。適切な人事評価や人事配置は社員のモチベーションを高めます。ピープルアナリティクスで社員の行動データを分析すれば、次のような状態も把握可能です。

  • 過去と比較して意欲的に働けているか
  • 現在の部署にいるのがつらいと感じていないか

データ面から社員をモニタリングして事前にフォローできるのも、ピープルアナリティクス実施のメリットです。

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4.ピープルアナリティクスの活用方法

ピープルアナリティクスは人事分野におけるさまざまな場面で活用されているのです。ここでは具体的なピープルアナリティクスの活用方法について説明します。

  1. 社員データの分析
  2. 配属先の決定
  3. 人事制度の構築

①社員データの分析

たとえば採用活動には次のようなデータを活用します。

  • 年齢や性別、勤務年数や学歴などの属性データを分析する→現在の会社にはどのような属性が所属しているのか、不足している属性は何かなどが分析できる
  • 入社後のパフォーマンスや評価を分析する→向上傾向にあるスキルや不足スキルなどを特定できる

②配属先の決定

社員それぞれの実績や面談結果、アンケート結果などを分析します。そこから個々の能力を把握して、適性にマッチした配属先を決めるのです。

配属先決定におけるピープルアナリティクスの活用は、社員の納得感も得やすくなります。明確な基準があるため、高い客観性を持って意思決定ができるのです。

③人事制度の構築

ピープルアナリティクスを人事制度の構築に活用する場合もあります。従来の評価制度は、判断基準があいまいで、人柄や上司との相性で判断される部分もありました。

しかしピープルアナリティクスを活用すれば、公平で納得感のある評価が行えます。客観的なデータを裏づけとして使うため、評価する側もされる側も納得度の高い公正な人事評価ができるのです。

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5.ピープルアナリティクスで活用するデータ

ピープルアナリティクスではおもに以下4つのデータを活用します。

  1. 人材データ
  2. デジタルデータ
  3. オフィスデータ
  4. 行動データ

①人材データ

ピープルアナリティクスの基礎となるデータです。具体的には以下の項目が含まれます。

  • 年齢や性別
  • 所属部署や職位
  • 給与
  • 評価歴
  • 勤怠
  • 保有スキル

人材データを確認すれば、解決したい課題に適切な人材が誰なのかがわかります。たとえば下記のような流れです。

  • システム上の問題を解決したい
  • 機械学習スキルを持つ社員を探す
  • スキルを保有しているのは社員Aさんだとわかる
  • 課題解決のプロジェクトにAさんをアサインする

②デジタルデータ

個人または組織のパフォーマンスを高めるきっかけとして活用できるデータです。具体的には以下の情報がデジタルデータとなります。

  • 社用パソコンの稼働状況
  • 電子メールの送受信先および履歴
  • インターネットサイトの閲覧履歴
  • 電話の通話履歴

デジタルデータをピープルアナリティクスに活用すれば、社員の業務効率が分析できます。ここからパフォーマンス改善に役立てるのも可能です。

③オフィスデータ

会社の設備に関するデータ。会議室や休憩所の使用頻度、エレベーターの稼働率などをチェックするためのデータです。

ピープルアナリティクスでオフィスデータを分析すれば、社員の行動やコミュニケーションが間接的に把握できます。季節や時間帯ごとに分析すれば、過不足のない設備配置、ひいては労働環境の最適化が実現できるのです。

④行動データ

社員が社内でどのような行動をしているのか把握するためのデータ。具体的には以下の情報を指します。

  • 対面コミュニケーションを行った時間
  • 自分のデスクから離席した回数や時間帯
  • 会議に参加した時間帯や時間数

行動データからは社員一人ひとりの仕事量と、会社に対する貢献度がわかります。パフォーマンス向上やモチベーションアップにつなげられるデータです。

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6.ピープルアナリティクスの進め方

ピープルアナリティクスは以下4つのステップで進めます。ただし1度行って終わりとせず、4つ目を実施したら再び最初のステップに戻ってPDCAサイクルを回すのです。

STEP.1
データの収集
はじめに社員に関する各種データを集めます。すべてのデータを集める必要はありません。次に設定する目的と合わせて、人材データや勤務データなど収集しやすいデータから蓄積していきます。

必要なデータが一元管理されているとは限りません。人事部だけでなく部署や部門をまたいで協力を仰ぎましょう。

STEP.2
目的の設定
闇雲にデータを集めても具体的な施策にはつながりません。「なんのためにデータを集めるのか」「どのような課題を解決したいのか」などを明確にしておきましょう。

たとえば下記のようなものです。

  • 社員の定着率を向上させる
  • 戦略的な人材採用を実現する
  • パフォーマンス向上のために研修プログラムをアップデートする
STEP.3
データ分析
目的を設定したら、いよいよ分析の開始です。分析を難しくとらえる必要はありません。専門的な知識がなくても、年代別や役職別などわかりやすい切り口から比較すれば傾向が見えてきます。

はじめから細かい分析をしようとせず、「大まかにどのような傾向があるか」を把握するところからはじめるとよいでしょう。

STEP.4
施策の計画と実行
分析で見えてきた傾向に対して、具体的な解決策を導き出します。施策を実行に移して終わりではありません。その施策がどのような結果になったのかを考察して、新たなアクションを重ねていきます。

この分析と仮説設定、施策実行を繰り返してピープルアナリティクスの精度を高めていきましょう。

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7.ピープルアナリティクスを進める上での課題

ピープルアナリティクスを進める際は、以下に注意が必要です。

  1. 個人情報の取り扱い
  2. データの分析スキル
  3. データの整理と客観性

①個人情報の取り扱い方

これまで述べてきたように、ピープルアナリティクスでは大量の個人情報を取り扱います。活用する際は必ず以下を確認しましょう。

  • 情報の利用目的を伝える
  • 収集する情報の範囲を伝える
  • 情報提供の了承を得る

個人情報の流出は大きな問題につながります。外部にピープルアナリティクスを提供する際は特に注意が必要です。

②データ分析のスキル

ピープルアナリティクスには分析担当者のスキルが問われます。良質なデータを準備できても、適切な分析ができなければ効果はあがりません。

そこで有効なのが「データサイエンティスト」や「データアナリスト」の知識。社内に適任者がいない場合、外部から新たにデータサイエンティストを採用するのもよいでしょう。データサイエンティストのスキルが学べる研修もあります。

③整理されたデータや客観性

「ピープルアナリティクスに必要なデータが一元管理されていない」「社内のあちこちに情報が散在している」場合、データの整理からはじめます。またデータの入力にルールがない場合、データの客観性は低くなり十分な効果を得られません。

属人性の強いデータはバイアスがかかる可能性もあります。データの凡例や入力基準は明確に定めましょう。

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8.ピープルアナリティクスの企業事例

国内でもさまざまな企業がピープルアナリティクスを活用し、成果を生み出しているのです。ここではピープルアナリティクス活用の企業事例とその効果について説明します。

  1. Google
  2. 日立製作所
  3. ソフトバンク
  4. ディー・エヌ・エー
  5. コニカミノルタ

①Google

Googleは世界に先駆けてピープルアナリティクスを活用し始めた企業です。ピープルアナリティクスを活用して3つの取り組みを実施しています。

  • 採用面接における手法の効率化と高度化
  • マネージャーに求める8つの要素とそれに対する取り組み
  • チームの生産性を高める心理的安全の発見

同社では人材配置に直感やエピソードをもとにした議論を行いません。ピープルアナリティクスによって公正かつ客観性の高い人材配置を行っています。

②日立製作所

日立製作所では採用活動に課題を抱えていました。事業が多岐にわたるため、適した人材像がそれぞれ異なるのです。

そこで同社はハイパフォーマーをさまざまな角度から分析し、定量化する取り組みを始めました。さらに過去の採用プロセスを確認して、採用人材の基準を整理。

これにより漠然としていた採用基準が明確になり、必要な人材や不足しているスキルなどがピンポイントでわかるようになりました。

③ソフトバンク

新卒採用時にピープルアナリティクスを活用したAIを使用しているのがソフトバンクの特徴です。主観的でバイアスのかかった選考をやめて、統一された評価軸による公平な選考を目指す取り組みです。

この活動によりエントリーシートの確認業務は大幅に削減し、その時間を求職者とのコミュニケーションにあてています。

④ディー・エヌ・エー

ディー・エヌ・エーでは2017年にピープルアナリティクスの専門チームを設置。その後2019年には人事データを収集・分析するHRTechチームを設置して、各事業部を担当する人事チームと連携した取り組みを続けています。

社内サーベイのデータにもとづいて組織状態を可視化。このほかにもウェアラブルデバイスを使った行動データの収集のように、新たな取り組みを行っています。

⑤コニカミノルタ

コニカミノルタでも新卒採用時にピープルアナリティクスを活用しています。2018年度には人事部内にデータサイエンティストを配置。適性検査やパフォーマンスデータなどを分析して求める人材を可視化しました。

その結果選考判断のスピード化が進み、さらに採用辞退や取りこぼしも低下。合否判断は13%短縮され、1次選考辞退数は24%減少しました。

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9.ピープルアナリティクスの理解を深める書籍『ピープルアナリティクスの教科書』

ピープルアナリティクスの理解を深めるには、データ分析をテーマとした書籍を読むのもよいでしょう。『ピープルアナリティクスの教科書』は、ピープルアナリティクスの活用方法や9社の事例、さらに倫理的な側面までを網羅した一冊です。

著者はピープルアナリティクスのセミナーを開催している、一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会。ピープルアナリティクスの第一人者たちが具体的な実践法を解説しています。

参考 ピープルアナリティクスの教科書 組織・人事データの実践的活用法amazon