PBRとは? 意味、計算方法、目安、PER・ROE

PBRとは、企業の成長性を分析する指標のひとつです。ここではPBRの計算方法や目安の数値、PBRとともに用いられる指標について解説します。

1.PBRとは?

PBRとは、会社の純資産に対して株価が適切な水準であるか、判断するために用いる指標のこと。Price Book value Ratioの略称で、日本語では「株価純資産倍率」と訳します。

一般的に、株価だけを見てもそれが高いのか低いのか判断できません。PBRや後述するPERを利用すると、株価が割安か割高か、判断できるのです。

PBRの数値が大きければ割高、小さければ割安という意味になります。従来は「PBR=1倍」が株価底値の目安でしたが近年、長期にわたって1倍を下回ったままの銘柄もめずらしくありません。

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2.PBRの計算方法

企業の純資産と株価の関係をあらわすPBRは、どのように計算するのでしょう。なおPBRは会社四季報や企業のWebサイトでも確認できます。

PBRと株価との関係性

PBRを求める計算式は「株価÷BPS(一株あたりの純資産)」。たとえば株価が2,000円、一株あたりの純資産が1,500円の場合、PBRは2,000円÷1,500円=1.33倍になります。

一般的にPBRがもっとも有効に働くのは、市場全体が大きく変動しているなかで、普段はPBRの高い銘柄が1倍以下になっている場合といえます。その銘柄のブランド力や営業力が何らかの原因で実際よりも低く評価されているのです。

ただしその原因が赤字であったり倒産の噂だったりする場合もあるため、PBRが1倍=必ずしも割安とは限りません。

PBRを知りたいときにおすすめのサイト

PBRは株価を一株あたりの純資産で割って計算できます。しかし純資産の算出に予測値を使うか実績値を使うか、また発行会社が有する株式を引くか引かないかなど、計算式にどの数値を使うかによって異なるのです。

各銘柄のPBRを確認する際は「Yahoo!ファイナンス」や「モーニングスター」など、複数のサイトを確認しておくとよいでしょう。これらでは銘柄の証券コードを入力するだけでかんたんにPBRを確認できます。

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3.PBRの目安の数値とPERの高い企業、低い企業ランキング

PBRを見れば、会社の資産に対して株価が安いか高いか、判断できます。PBRの目安やPBRの高い企業、低い企業について説明しましょう。

PBRの目安

前述のとおり、PBRの一般的な目安は1倍です。PBRが1倍以上の場合は割高、1割を割る場合は割安と考えられます。

PBRが1倍なら、BPRと株価が等しいです。よって万が一投資段階で会社が解散した場合、理論上は投資額がそのまま戻ってくると計算できます。

ただし1倍未満の銘柄には財務的不安を抱える企業も多いです。PBRが低い=割安で買いどきと一概に判断するのはできません。

PBRの平均水準

2022年3月に日本経済新聞が発表したデータによると、国内の株式指標、純資産倍率は以下のとおりです。

  • 日経平均:1.22倍
  • 東証1部全銘柄:1.22倍
  • 東証2部全銘柄:0.80倍
  • JPX日経400:1.41倍
  • 日経300:1.28倍
  • 日経500平均:1.25倍
  • ジャスダック:1.21倍

ここから国内企業のPBR平均水準は1.2倍から1.5倍だとわかります。一般的にPBRの1倍は定価、1倍未満は割安、1倍超えで普通といわれているのです。

「PBRが1以上」の意味すること

PBRが1倍以上なら、株価は一株あたりの純資産よりも高くなります。純資産や解散価値と単純にイコールでないのは、株価には純資産だけでなくブランド力や技術力など決算書に表せない付加価値が加算されているためです。

またPBRが1倍以上という点から、「企業として株主から一定の評価がされている」と判断できます。

高PBR企業のランキング

同じく2022年3月に日本経済新聞が発表したデータによると、実績PBR高位ランキング(東証一部)は以下のとおりです。

  • DDHD 288.13倍
  • 日本通信 53.37倍
  • ラクス 32.97倍
  • レーザーテク 28.53倍
  • MSOL 24.81倍

ランキング上位にはIT関連の企業が多くなっています。設備投資や資産がない状態から十分な利益を出して株価が上がっている企業=高PBR=IT関連企業であるためです。

「PBRが1以下」の意味すること

PBRが1倍よりも小さい場合、株価が一株あたりの純資産よりも安くなります。株価は割安であり、場合によっては買いのチャンスともとらえられるでしょう。

なかには赤字や業績悪化によってPBRが1倍以下になっている銘柄もあります。もちろん新しいビジネスモデルの開発によって一時的に赤字になっている銘柄もあるため、一概に買い控えであるとはいえません。

市場全体の様子や過去水準、同業他社などと比較した十分な検討が必要です。

低PBR企業のランキング

2022年3月、日本経済新聞は実績PBR低位ランキング(東証一部)を次のとおりに発表しています。

  • 高知銀 0.13倍
  • 栃木銀 0.13倍
  • 千葉興 0.14倍
  • 山梨銀 0.14倍
  • 大分銀 0.15倍

低PBR企業ランキングでは以下10位まで地方銀行が並んでいます。いずれもPBRは0.13倍から0.17倍と非常に低い数値。これは銀行の持つ純資産はリスクが高く、資産としての確実性が低いからという理由があります。

低PBR企業に銀行が多い理由

2018年、邦銀株(外国にある日本籍銀行の株)はTOPIXを大きく超えて下落しました。先に触れた低PBR企業ランキングでも地銀株が下位を独占しています。銀行の持つ純資産は、多くの場合企業に融資した債権であるためです。

ほかの業界なら、清算時に資産を売却すれば簿価程度は回収できると考えますが、銀行の場合こうはいきません。不景気になれば債権は不良債権化するリスクが高く、資産としての確実性が薄いのです。

業種ごとに異なるPBRの平均

銀行や食品、精密機器や医薬品など、PBRの平均は業種ごとに異なります。将来性の高い業界はPBRの平均が高くなり、将来性の低い業界はPBRが低くなるのです。

そのためPBRで企業を評価する際は、表面上の数値だけでなく業界の成長性、安定性を考えたうえで業界水準と比較しましょう。そして銘柄が割高なのか割安なのか、判断します。

業種ごとのPBRの例

世界最大級の投資信託評価会社「モーニングスター」では、業種ごとのPBRを以下のように予想しています(2022年3月時点の東証一部)。

  • 農林水産 1.10倍
  • 鉱業 0.57倍
  • 食料品 1.52倍
  • 医薬品 1.99倍
  • 銀行 0.30倍

このとおり医薬費や食料品などの生活に欠かせない業種は平均PBRも高くなっています。会社の規模や成長によっても異なるものの、PBRだけを見て割安、割高を判断するのは危険です。

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4.PBRに関するよくある疑問

PBRに関する質問のなかで多いのが「PBRは低ければ低いほどよいのか」。ここではPBRをさらに深く知るためのポイントを解説します。

PBRは低いほうがいい?

PBRの基本的な考えは「高ければ割高、低ければ割安、適切な株価水準は1倍」。ただしすべてにおいて「PBRが低ければ割安なので買いどき」とは判断できません。なかには今後成長が見込めない企業や、業績が悪く赤字だらけの企業もあるからです。

もちろん市場全体が暴落するような局面で業績好調な優良企業に売りが集中し、一時的に株価が下がってPBRが低くなるケースもあるでしょう。なぜその銘柄のPBRが低いのか、複数の視点から探ることが重要です。

PBRが高い企業は割高?

PBRが1倍以上の場合、一般的に「割高」と判断されます。しかしこちらも「PBRが高い=すべて割高」とはなりません。

前述のとおり、PBRの平均値は業界によって異なります。ある銘柄のPBRが20倍だったとしても、それがIT企業のように利益率の高い業界なのか、銀行のように利益率の低い業界なのかによって意味合いがまったく変わってくるからです。

PBRが高い銘柄には、経営効率のよさや従業員の技術力、確立したブランドなど数字では表しきれない付加価値が隠されているため、これを見極める必要があります。

創業期にPBRは高くなる?

PBRの高低は、会社の成長フェーズにも影響されるのです。たとえば会社が創業期の場合、PBRは比較的高くなる傾向にあります。これは創業期の会社は借り入れが多くなり、負債比率が高くなるためです。

長期借入金といった金額が大きくなればそれに応じて純資産比率は低くなり、結果的にPBRは高くなります。

PBRの高い銘柄は、新興企業ではないか、会社の成長フェーズが長期借入金の高くなるタイミングではないか、などチェックしてみるとよいでしょう。

極端にPBRが低い企業には注意が必要

近年、長期間にわたってPBRが1倍を下回ったままの企業も増えてきました。PBRが低いのに買われないのはなぜなのでしょう。

バランスシートではわからない資産もある

中小企業のPBRを見る際、貸借対照表(バランスシート)に隠れた資産に注意するとよいでしょう。貸借対照表(バランスシート)には土地や建物、設備や工場などが資産として計上されるのです。

これらを時価換算したときに資産価値が目減りしたり、簿外負債が存在していたりするとPBRは低くなります。多くの設備投資を必要とする製造業と、設備投資を多く必要としないサービス業のPBR目安が異なるのはこのためです。

赤字企業には要注意

PBRが極端に低い場合、会社の将来性や倒産の危険性を疑う必要があります。特に長期投資には慎重にならなければなりません。収益力がなく、将来的に純資産が減る可能性も織り込んで低PBRのまま放置されているケースもあるためです。

赤字が続くと現在の資産から穴埋めするため、結果としてPBRが悪くなると想定できます。将来赤字で苦しみそうな企業はPBRが低くても割安とはいえません。投資する際は過去の実績ではなく将来のPBRを予測した判断が重要です。

経営への信頼感がないことも

創業期ではなく、負債が極端に多いわけでもないのにPBRが1倍を下回った状態が続いているというケースで特に多いのが、いわゆる「万年割安株」と呼ばれるもの。

一般的に経営者は株主の利益となるよう効率的に資産を使うものの、万年割安株の会社では株主の利益をさほど重視していません。

このような場合、会社を解散させるのに莫大な清算コストがかかると判断され、PBRも1倍未満のままです。投資家はリスクに見合ったリターンが得にくいと考え、避ける傾向にあります。

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5.PBRとともにも強いられる指標

企業の成長性を示す指標には、PBRのほかに「PER」や「ROE」などがあります。ここでは「PER」と「ROE」の意味、またPBRとの違いについて説明します。

  1. PER
  2. ROE

①PER

株価がEPS(Earnings Per Share、一株あたりの純利益)の何倍まで買われているかを表す数値のこと。Price Earnings Ratioの略で、日本語では「株価収益率」と訳します。

PERによって、現在の株価が企業の利益水準に対して割高か割安、判断できるのです。PERを求める計算式は「PER=株価÷一株あたりの当期純利益」です。一般的に、利益成長の高い企業ほどPERは高くなる傾向にあります。

PBRとPERの違い

PBRもPERも株価の妥当性を表す指標です。どちらも数値が大きければ株価は割高に、小さければ株価は割安になります。それぞれの特徴は下記のとおりです。

  • PBRでは「純資産」が基準
  • PERでは「純利益」が基準

OBRは、純資産から見た株価の算定価格が割高なのか割安なのかをはかる物差しです。対するPERでは、企業の出す利益に対して株価の算定価格が割高なのか割安なのかをはかります。

②ROE

自己資本に対してどの程度利益を生み出せたのかを示す指標のこと。Return on Equityの頭文字をとった略称で、日本語では「自己資本利益率」あるいは「株主資本利益率」となります。

ROEの計算式は「当期純利益÷自己資本」です。ROEにて経営者は、株主の出した資本をどの程度効率的に使い、どれだけの利益を生み出せたのか、確認できます。

PBRとPER、ROE、3つの関係

PBRとPER、ROEの3つは「PBR=ROE×PER」の関係にあります。またこの数式は「PER=PBR÷ROE」にも置き換えられます。つまりROEが高くなればPERは低くなるのです。

一般的に高ROEの株価は上昇しやすい傾向にあるといわれています。ROEが高くてPERが低い場合、企業として稼ぐ力があり、かつ株価の上昇が期待できます。3つの指標は各々が独立しておらず、それぞれがかかわって作用しているのです。