パートとアルバイトの違いは何?【時間?責任?扶養?】

パートとアルバイトはそもそもどのような違いがあるのかご存じでしょうか?

2つに漠然と違いがあることは想像できても明確な説明を求められると難しいという人も多いでしょう。知っているようで知らなかった両者の違い、パートタイム労働法や、パート・アルバイト労働者が企業に求めていることなどについて、詳しく解説します。

1.パートとアルバイトの違いとは?

法律的にはアルバイトもパートも同じ労働者で、名称による区別はなく雇用形態や働き方の違いなどについても明確に定義されていないのです。労働基準法では、アルバイトやパートはもちろん、正社員、契約社員、臨時社員などの区別がなく、すべてを労働者と呼んでいます。

そのため、労働時間や労働日数等の条件を満たしていれば、有給休暇の取得や社会保険の加入も可能ですし、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法といった労働関係の法律も同様に適用されます。

なお、契約期間や勤務時間、日数、勤務条件、職責などは、正社員よりも緩く定められていることが多いようです。

一般的なパート

パートは結婚している女性で、比較的長期で働くことができる人材を指していることが多いです。正社員より労働時間が少ないものの、業種や職種によっては正社員と類似の業務内容を任されたり正社員と同様の活躍が期待されたりすることも多いです。

一般的なアルバイト

アルバイトは、高校生や短大生、大学生などの学生が短期で働くというイメージが一般的でしょう。繁忙期や土日、夜間などのスポットで働ける人材が求められているケースも多くあります。アルバイトの場合、正社員とは異なる仕事を任されることが多いです。

法律上の区別はないものの、雇用する側の企業は異なる働き方として使い分けています。曖昧な募集をしているところもあるので、面接時に待遇面などをしっかり確認しましょう

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2.パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)

一週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者と比べて短いパートタイム労働者を対象にした労働法についてご紹介します。

パートタイム労働法の目的

仕事や責任、人事管理が正社員と同様なのにもかかわらず、賃金や待遇が見合わないパートタイム労働者の存在や、パートから正社員になることの難しさなど、パートタイム労働者の働く意欲を失わせるような状況が続いています。

こうした現状を鑑みて、パートタイム労働者が能力を発揮できる雇用環境の整備や貢献に応じた待遇の実現を目的に、平成5年12月に施行されたパートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が、平成26年に改正されました。

施行は平成27年4月1日となっています。さらに、平成30年の働き方改革関連法の成立により、有期雇用労働者もこの法律の対象になりました。

改正されたパートタイム労働法

平成27年4月に施行された新しいパートタイム労働法は、どのような内容か見ていきましょう。

差別してはいけない対象

改正前は、職務内容が正社員と同じである、または人材活用の仕組み(人事異動などの有無や範囲)が正社員と同じである、さらに無期限で労働契約を結んでいる労働者の場合、その扱いを正社員と差別してはならないとされていました。

改正後は、無期限だけでなく期限付きで労働契約を結んでいるパートタイム労働者に対しても正社員との差別があってはならないという基準に変更となったのです。つまり、対象となる範囲が拡大したといえます。

短時間労働者への待遇

事業主が、パートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を異なるものにする場合、職務の内容や人材活用の仕組み、その他の事情を考慮に入れて不合理と考えられるようなものにしてはいけません。

これを形態化した、広くすべての短期労働者が対象の、待遇原則の規定が新たに設定されたのです。雇用側である企業は、こうした待遇の原則規定といった考え方を常に念頭に置いて、パートタイム労働者の雇用環境の改善を図っていく必要があります。

パートタイム労働者への説明

賃金制度や教育訓練、福利厚生、正社員への転換制度といった、実施される雇用管理の改善措置について、事業主がパートタイム労働者にしっかりと説明するといった義務も新しく設定されました。

また、こうした説明を求めたことを理由にパートタイム労働者を解雇したり懲戒処分にしたりといった不利益な取り扱いをすることも禁止されています。親族の葬儀などやむを得ない欠勤を理由とした解雇も禁止です。

パートタイム労働者からの相談に対応

パートタイム労働者からの相談に対して、適切に対応する体制を整えることも義務化されました。

具体的には、

  • 相談窓口となる担当者を置く
  • 事業主自身が相談担当者になって対応する

など。これには、事業主が責任者を決めて相談実務を外部委託するということも含まれています。パートタイム労働者を雇った際は、事業主は相談窓口があることを文書の交付によって、分かりやすく知らせなければなりません。

これまでも存在していたパートタイム労働法ですが、改正によってさらにパートタイム労働者に寄り添う法律に変わりました

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3.パートタイム労働法にある職務内容と人材活用の基準

パートタイム労働法にある職務内容と人材活用の基準はどのようなものでしょうか。詳しく紹介していきましょう。

職務内容とは?

職務の内容は、実際に従事している業務とその業務に伴う責任の程度までまとめて考えます。

パートタイム労働者と通常の労働者の職務内容が同じかどうかを判断する際は、

  • その労働者に与えられた職務に不可欠な業務
  • 業務の成果が事業所の業績や評価に大きな影響を与える業務
  • 労働者の職務全体に占める時間や頻度において割合が大きい業務

といった中核的業務の同一性を比較するのです。

また、責任の程度は、与えられている権限の範囲、業務の成果について求められている役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマ等の成果への期待度などを総合的に比較して、通常の労働者と大きな違いがないかを判断します。

人材活用の仕組みと運用

人材活用の仕組みと運用などは、人事異動の有無や範囲を意味しています。

これらがパートタイム労働者と通常の労働者の間で大きな違いがないかを判断する際は、実際に配置転換や昇進をしたかどうかだけでなく、将来にわたって配置転換や昇進をする見込みがあるかどうかまでを、該当事業所の就業規則や慣行などをもとにします。

また、パートタイム労働者が配置転換や昇進をする場合は、通常の労働者と範囲が同じかどうかを比較するのです。

たとえば、通常の労働者は全国転勤なのに対して、パートタイム労働者はエリア限定の転勤というのでは範囲が異なるため、人材活用の仕組みや運用などが異なると判断できます。そのほか、職務経験の範囲の差もこれに該当します。

職務の内容、人材活用の仕組みや運用などは、基本、通常の労働者とパートタイム労働者の間で差があってはいけないとされています

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4.パートタイム労働法に基づいて企業が行うこと

パートタイム労働者を1人でも雇っている事業主は以下のことを行う必要があります。

  • 雇い入れの際、労働条件を文書などで明示してください(第6条)
  • パートタイム労働者から通常の労働者へ転換するチャンスを整えてください(第13条)
  • 雇い入れの際、雇用管理の改善措置の内容を説明してください(第14条第1項)
  • 雇い入れ後、待遇の決定にあたって考慮した事項を説明してください(第14条第2項)
  • パートタイム労働者からの相談に対応するための体制を整えてください(第16条)

労働条件の明示

パートタイム労働は短時間の勤務ということから多様な働き方があり、雇い入れ後に労働条件について疑問が生じてトラブルになることも少なくありません。

このため、パートタイム労働法第6条では雇い入れの際に特にトラブルになりやすい、

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口

といった4つの項目について、文書の交付などで明示することが義務付けられているのです。

労働基準法には、パートタイム労働者も含めて労働者との労働契約の締結に際して労働条件を明示することが事業主に義務付けられているとあります。

  • 契約期間
  • 有期労働契約を更新する場合の基準
  • 仕事をする場所と仕事の内容
  • 始業・終業の時刻
  • 所定時間外労働の有無
  • 休憩・休日・休暇、賃金、退職に関する事項

などについて明示することが義務付けられており、これに違反すると罰せられるのです。

就業規則を作る・変更の際は?

パートタイム労働法第7条では、事業主がパートタイム労働者に関わる事項について就業規則を作成したり変更したりする際、当該事業所で雇用するパートタイム労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聞くように努めなければならない、としています。

代表者の選出は、パートタイム労働者による投票もしくは挙手などで行い、雇用側の考えで指名したり選出したりしてはいけません。つまり、雇用側に有利な体制と考えられるような状況は避けなければならないのです。

労働基準法第90条は、就業規則の作成、変更の際、労働者の過半数で組織する労働組合などの意見を聞くことを努力義務としています。

待遇の差を調整

パートタイム労働法第8条において、待遇は通常の労働者との働き方の違いに応じて、均等・均衡待遇の確保を図るための措置を講じる必要があるとしています。

  1. 職務の内容(業務の内容と責任の程度)
  2. 人材活用の仕組みと運用など(人事異動などの有無および範囲)

という2つの要件を通常の労働者と比較することで、賃金や教育訓練、福利厚生などの待遇について講ずるべき措置が定められているのです。

パートタイム労働者を理由に差別しない

パートタイム労働法第9条では、パートタイム労働者であることを理由にその待遇について差別的取り扱いをしてはならないとしています。

有期労働契約のパートタイム労働者の場合、人材活用の仕組みが通常の労働者と同じであるかは、契約の更新が未定という段階でも、更新をした際にどのような扱いとなるかという点を含めて判断します。

所定労働時間が短いことに基づく合理的な差異や勤務成績を評価して生じる待遇の差異については許容されます。

しかし、所定労働時間の長短に関係なく支給されている通勤手当や家族手当、慶弔見舞金や教育訓練の実施については、時間比例の待遇とすることに合理性がないため、通常の労働者と同様の扱いをする必要があるのです。

賃金を決定する際は

パートタイム労働法第10条では、パートタイム労働者の賃金のうち、基本給、賞与、役付き手当など職務の内容に密接に関連する賃金(職務関連賃金)の決定法について、事業主に努力義務を定義しています。

それは通常の労働者との均衡を考慮し、パートタイム労働者の職務内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して賃金を決定することです。

パートタイム労働者の賃金を、客観的な基準に基づかない事業主の主観やパートタイム労働者だからという理由で一律に決定するのではなく、職務内容や能力レベルに応じて段階的に設定するなど、働きや貢献に応じて決定するよう努めることも必要です。

複数の職種でパートタイム労働者を雇用している事業所においては、職種ごとに賃金を定めているというだけでは、職務内容を勘案して賃金を決定したことになりません。勘案する要素の程度に応じて賃金を決定することが大切です。

研修などの実施

パートタイム労働法第11条では、通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するものをパート労働者に対しても実施することが義務付けられているのです。これは、職務内容が同じパートタイム労働者が既に必要な能力を有している場合を除きます。

たとえば、経理業務に従事している通常の労働者に、職務遂行上必要な簿記の訓練を実施しているときは、同じ職務に従事しているパートタイム労働者に対しても実施しなければなりません。

時間の制約があり、教育訓練に参加ができないパートタイム労働者については、受講によって身に付けられる知識、技能などと同様の内容を習得できる教育訓練を受けられるように配慮する必要があります。

福利厚生施設の利用

パートタイム労働法第12条では、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)について、事業主が雇用するパートタイム労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮することを義務付けるとしています。

定員の関係で給食施設の利用の機会を事業所の労働者全員に与えられないような場合には、増築などをして全員に利用の機会を与えなくても構いません。

しかし施設の利用対象を正社員に限定しているとしたら、パートタイム労働者も利用できるよう、労働者ごとに利用時間を変更し、全員が利用できる環境を整えることが必要です。正社員だからパートタイム労働者だからという区別で利用制限をしてはいけません。

正社員などへの転換

パートタイム労働者の中には、通常の労働者として働くことを希望しながらやむを得ずパートタイム労働者として働いている人もいます。

パートタイム労働法第13条には、事業主は通常の労働者への転換を推進するために雇用するパートタイム労働者について措置を講じなければならないとしているのです。

  • 通常の労働者を募集する場合は募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知する
  • 通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも応募する機会を与える
  • パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける
  • その他、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずる

待遇などの説明

パートタイム労働者の中には、通常の労働者との待遇の格差の理由が分からず不満を抱く人も少なくありません。

パートタイム労働法第14条では、事業主はパートタイム労働者を雇い入れた際、

  • 実施する雇用管理の改善措置内容を速やかに説明しなければならない
  • 事業主は、その雇用するパートタイム労働者から求めがあった際は、その待遇を決定するにあたって考慮した事項を説明しなければならない

としています。「雇い入れたときに個々の労働者ごとに説明を行う」だけでなく、「雇い入れ時の説明会で複数のパートタイム労働者に同時に説明を行う」でも差し支えありません。

原則、口頭の説明となりますが、漏れなく記載されているのであれば文書の交付でも可能です。口頭の説明の際に併せて文書を交付するのが望ましいでしょう。

パートタイム労働者が相談できる体制づくり

パートタイム労働者は就業形態が多様であるため、通常の労働者と待遇が異なる理由がはっきり分からないと感じているケースも多いようです。

パートタイム労働法第16条では、事業主はパートタイム労働者の雇用管理の改善などの関して、その雇用するパートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないとしています。

対応として想定されるのは、下記の通りです。

  • 雇用する労働者の中から相談担当者を決めて、相談に対応させる
  • 短時間雇用管理者を相談担当者として定め、相談に対応させる
  • 事業主自身が相談担当者となり、相談に対応する
  • 外部専門機関に委託し、相談対応を行う

管理者を選ぶ

パートタイム法第17条では、事業主は通常10人以上のパートタイム労働者を雇用する事業所に、短時間雇用管理者を選任するように努めることを義務付けています。

パートタイム労働者は正社員とは異なった雇用形態で、正社員とは別に対応や管理をする必要があります。

そこで、

  • パートタイム労働法やパートタイム労働方針に定められた事項
  • その他のパートタイム労働者の雇用管理の改善等に関して、事業主の指示に従って必要な措置を検討して実施すること
  • 労働条件に関してパートタイム労働者の相談に応じること

などを短時間雇用管理者が実施するのです。短時間雇用管理者は事業主が選出しますが、事業所の人事労務管理について権限を持っている人物が望ましいとされています。

クレームを解決する仕組みづくり

パートタイム労働法第22条では、事業主はパートタイム労働者から苦情の申し出を受けた際は、処理機関に苦情の処理を委ねるなど、自主的な解決を図るよう努力する義務があるとしています。

日常から双方でしっかりコミュニケーションを取り、何かあれば都度話し合う場を設けるなど、苦情・紛争は事業所内で解決することが望ましいというのが本当のところです。

しかし、内部だけで処理をすると、雇用側の立場が強くなってパートタイム労働者に不利益を与えてしまうことも考えられるでしょう。不満があったが我慢した、職を離れることになったなど、泣き寝入りするケースも少なくありません。

そこでパートタイム労働法にて、事業主に義務付けられている事項の紛争について、解決の仕組みが設けられているのです。

調停になった際は?

都道府県労働局長は、紛争の当事者の双方または一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認められるときは、均衡待遇調停会議に調停を行わせるものとしています。

事業主はパートタイム労働者が調停の申請をしたことにより解雇やその他不利益な取り扱いをしてはいけません。あくまでもフラットな立ち位置で、物事を判断をする必要があります。

紛争の当事者であるパートタイム労働者、事業主の双方または一方から申請があり都道府県労働局長がその紛争解決のために必要と認めた場合は、学識経験者などの専門家で構成される第三者機関の均衡待遇調停会議による調停が設けられます。

パートタイム労働者法にはさまざまな項目が並んでいます。もう一度すべてに目を通してポイントを頭に入れましょう