アウティングとは?【意味をわかりやすく】事件、法律

アウティングとは、本人の意に反し、性的指向を第三者が暴露することです。ここでは、アウティングについて解説します。

1.アウティングとは?

アウティングとは、本人から了解を得ずに、性的指向や性自認を第三者が公に暴露すること。アウティングは、「本人から了解を得ず、秘密を言い広めること」といった意味を持つ英単語 “outing”のカタカナ語です。

アウティングはsogiハラスメントのひとつとして、決して許されてはならない行為とされています。

アウティングとカミングアウトとの違い

アウティングと類似する言葉に「カミングアウト」があります。2つの違いは下記のとおりです。

  • アウティング:本人の了解を得ず性的指向などの秘密を暴露すること
  • カミングアウト:これまで秘密にしていたことを自ら他者に打ち明けること

性的マイノリティは差別や偏見に日頃から辛い思いをしています。カミングアウトされた内容をアウティングするのは人権侵害です。

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2.アウティングに関する事件や訴訟

アウティングに関する事件や訴訟は全国で発生しています。ここでは3つの事件について解説しましょう。

一橋大学で起きた事件

一橋大学大学院のロースクールに通う大学院生Aが同性の同級生に告白したことをきっかけとした事件です。Aは同級生に恋愛感情を伝えましたが恋は実らず、ふたりは友達でいると約束しました。

しかし数か月後、その同級生がAの同意を得ずにAがゲイであると暴露。その結果、Aはパニック障害を発症し、校舎から転落死してしまったのです。Aの遺族が同級生や大学を提訴したため、全国から注目が集まりました。

豊島区の企業で起きた事件

職場で上司が本人の許可を得ず、性的指向を暴露した事件です。

Aが営業職として入社した会社では、緊急連絡先の欄に同性パートナーの氏名を記載する必要がありました。そのためAは上司に性的指向を打ち明け、同僚には自分が伝えることを申し入れたのです。

しかし上司が、Aの性的指向を同僚へ暴露してしまいます。結果、Aは不安からの精神疾患を発症し、休職。労災申請も行う予定であるという事件です。

勤務先を提訴した事件

過去に男性から女性へ性別変更していたことを、勤務先の病院で暴露された事件です。

その女性は、過去に性同一性障害特例法にもとづき戸籍上の性別を男性から女性に改めました。また家裁に申し立てて氏名を変更した経歴もあったのです。

しかし新たに勤務を始めた病院によってその事実を同僚に暴露され、飛び降り自殺をするまで追い詰められました。女性は同僚らの言動により精神的苦痛を受けたと、医療法人に慰謝料を求める訴訟を起こしたのです。

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3.アウティングに関する法律

アウティングに関する法律は、パワハラ防止法です。パワハラ防止法の正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」。2019年に雇用対策法が改正され、明確化されました。

ここでは下記について解説します。

  1. 名誉毀損罪
  2. 侮辱罪
  3. 強要罪
  4. 恐喝罪

①名誉毀損罪

名誉毀損罪には、下記のような構成要件があります。

  • 不特定または多数の者が認識しうる状態である「公然」
  • 人の社会的評価を害するに足りる「事実の摘示」
  • 社会的評価を害するおそれのある状態を生じさせた「人の名誉を毀損」

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処されます。

②侮辱罪

事実を摘示せず、公然と人を侮辱した際に成立する罪のこと。侮辱罪は、法人に対しても成立し、法定刑は拘留または科料です。構成要件は下記のようになっています。

  • 多数、または少数に対して他に広まる可能性がある、もしくは不特定に対して知らせる「公然」
  • 具体的事実を伴わない「事実を摘示しない」

③強要罪

強要罪が適用される条件は下記のとおりで罰則は3年以下の懲役です。

  • 生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害をくわえる旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した
  • 親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対し害をくわえる旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した

④恐喝罪

暴行または脅迫により人を怖がらせ、財産上不法の利益を得たり他人に得させたりする罪のこと。構成要件は下記のとおりで、刑罰は10年以下の懲役です。

  • 相手方に財物を交付させる手段としての暴行または脅迫といった「恐喝」
  • 恐喝行為で相手方からお金といった財物を交付させる「財物の交付」

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4.アウティングが起きた際の企業の責任

アウティングが起きた際、企業にどのような責任が生じるのでしょうか。責任とリスクについて解説します。

  1. 損害賠償の責任
  2. 責任者の退職
  3. 法的責任を問われる
  4. 企業のイメージダウン

①損害賠償の責任

アウティングは当事者にとって大きな問題です。法律の視点から見てもプライバシーの侵害に該当します。

企業にはアウティングをした人物の使用者責任として、損害賠償責任の発生リスクがあります。企業はハラスメントを許さないという意識を高める必要があるでしょう。

②責任者の退職

社内で責任者である社長にアウティングされた女性が会社に対し、慰謝料の請求や再発防止策の徹底、社長の謝罪を求めた事件があります。

社長は責任をとる形で退職を余儀なくされました。アウティングが起これば、責任者が退職、退任するという重大な事案に発展する場合もあります。

③法的責任を問われる

たとえば、「アウティングした人物を雇用した使用者責任」「従業員の生命、身体などの安全確保措置を怠った安全配慮義務違反」「故意または過失で企業自体が他者の権利や利益を違法に侵害した場合の不法行為責任」などです。

法律上の罰則対象でなくても、このような法的責任があります。

④企業のイメージダウン

実際、アウティングに対する企業の対応のまずさにより、被害を被った社員が企業前で抗議行動をとった事件があります。このような事態に発展すれば、広く企業イメージが低下するうえ、信頼性が大きく損なわれる可能性も高いです。

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5.アウティングが発生した際の企業の対応

アウティングが発生した際、企業はどのような対応を取ればよいのでしょう。3つの対応策について、解説します。

  1. 相談内容を安易に捉えない
  2. 本人の希望を必ず確認
  3. マニュアルの見直しと完備

①相談内容を安易に捉えない

アウティングが発生した際は、アウティングに関する相談内容を安易に捉えないよう気をつけましょう。アウティングには、パワハラ防止施策として定められた措置義務の内容が適用されるのです。

もし対策を怠った場合、都道府県労働局による助言や指導、勧告などの対象になります。安易に考えず、適切な対応をとりましょう。

②本人の希望を必ず確認

本人の希望を必ず確認しなければなりません。アウティングにかかわる当事者が最も避けたいと考えるのは、自分の意思に反して自分の性的指向を第三者に知られてしまうこと。

アウティングが起こる前、企業がどこまで情報を開示していいのか、本人に事前確認します。あわせて、個人情報の管理を徹底するのも必要です。

③マニュアルの見直しと完備

  • アウティングが起こらないようにするための社内方針の明確化とルール作り
  • アウティングが起こった時の対処法の決定
  • アウティングに関する相談窓口の設置

などさまざまな視点からマニュアルを見直し、整備します。

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6.アウティング防止対策

アウティングを防止するにはどのような対策を取ればよいのでしょう。4つの対策について解説します。

  1. ハラスメントの知識を高める
  2. 企業全体でLGBTの理解を深める
  3. 個人情報の共有
  4. 加害者に対する措置を決めておく

①ハラスメントの知識を高める

アウティング行為は人権侵害のひとつ。どのような行為がアウティングに該当するのか、ハラスメントに関する知識を常に最新のものに更新しましょう。そして、認識不足によるアウティングの発生を防止できるような体制を、構築します。

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②企業全体でLGBTの理解を深める

LGBTとは、「レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー」の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティを意味します。LGBTに対する差別や偏見をなくすため企業全体でLGBTの理解を深める機会を設けるのです。

③個人情報の共有

アウティングは、本人の同意なくセクシュアリティに関する個人情報が暴露されること。本人の同意があれば、第三者に情報が公開されること自体に問題ありません。個人情報の管理や共有に関するルールを、経営者や管理職の間で徹底するとよいでしょう。

④加害者に対する措置を決めておく

アウティングした社員に対して企業が講ずる措置を事前に決定しておきます。そして決定した措置は、社員全員に周知徹底しましょう。場合によっては、周知書として、アウティング防止方針・ハラスメント対処措置などの配布を検討します。