OD / Organization Developmentとは? 組織開発の流れ

「OD(組織開発)」とは、組織をより良い方向へ改革する働きや支援のことで、人材開発と混合される場合もあります。しかしODは組織全体の成長を目指す、人材開発は個人の成長を目指すと分かれているのです。ここではODについて解説しましょう。

1.OD(Organization Development)とは?

ODとは、組織全体をより良くするため、組織内の当事者たちが問題点や欠点を洗い出し、改善策を画策する働きのこと。「Organization Development」の略称で、「組織開発」の意味合いを持ちます。

ODの目的

組織開発の目的は、組織全体の「効果性・自己革新力・健全性」の向上。社員自らがよりよい組織作りを考えて取り組み、発展や改革を目指すのです。

それにより組織としての健全性や協調性が高まり、目標達成力も身に付きます。組織開発が成功すれば、「社員の主体性やモチベーションのアップ・業績向上・組織の優良化」につながるでしょう。

ODが注目されている背景

ODが注目されている背景にあるのは、「定年退職の延長・終身雇用制度や年功序列制度の崩壊」といった働き方の変化。昨今、働き方改革が推奨され、フリーランスや個人事業、テレワークなどさまざまな働きが広がりました。

組織は多様な働き方に対応すべく、成長や変革を遂げる必要があるのです。

O(組織)の定義

アメリカの心理学者エドガー・ヘンリー・シャインは、ODを「各部署や各役割の人々がそれぞれの役割を果たして協働し、組織全体で共通の目的達成をすること」と定義しています。

組織を構成しているのは社員一人ひとり。社員が集まってチームができ、課や部署になり、その課や部署が集まって組織ができているのです。

人事課や代表だけが動くのではなく、それぞれの社員レベルで目的達成に取り組むのが組織開発を成功に導く要因でしょう。

ODのメリット

ODを行うと、組織の人間的な課題の解決に近付きます。組織開発の取り組みをとおして社員が組織へ愛着を持てるようになると、離職の回避が期待できるのです。

また組織全体のモラルや風土が浸透するため、社員が一体感を持てます。チームで能力を発揮できなかった優秀な人材が、力を発揮して組織に貢献する機会にもなるでしょう。

人材開発との違い

人材開発は「個人一人ひとりの開発」を目的としています。教育指導や研修、部署異動などで個人の能力を向上させて、生産性を向上するのです。

対して組織開発では、人と人のつながりによって組織が運営されていると意識します。そのうえで、部署全体での研修やミーティング、ほか部署との連携、オリエンテーリングを行ってチームとしての成長を促すのです。

ODとは、組織の発展や改革のためにチーム全体で目標達成のために協働すること。人材開発と違い、個人の成長ではなく組織全体としての成長を目指します

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2.ODを実現するステップ

ODに取り組む際、何から始めればよいのでしょう。ここではODを実現する5つのステップについて解説します。

  1. 目的を明確にする
  2. 現状を把握する
  3. 小規模でスタート
  4. 効果を検証する
  5. 企業全体に展開する

①目的を明確にする

まずはODの目的を明確にしましょう。どのような組織にしたいのかを明確にしなければアクションを決められないからです。

たとえば「ほかの部署との連携をスムーズにし、協働しやすい環境を整える・新しい課題に挑戦するため組織を改革する・社員の離職率を低下させる」などがあるでしょう。

②.現状を把握する

推測や想像ではなく事実にもとづいて現状を把握します。社員に直接課題を尋ねるインタビューや社員アンケートなどのサーベイを活用すれば、現場でどのような課題があるのか、把握しやすくなるでしょう。

「職場全体の意欲が最近低下している・雰囲気が悪い」といった不明確な課題は、適切ではありません。

③小規模でスタート

実際に改善案に対する行動を起こす場合、小規模な単位でスタートしましょう。いきなり組織全体でODを行うと、細かい点まで配慮ができず失敗する恐れもあります。

またスモールスタートのほうがODの効果を把握しやすくなり、改善点が出てきた際に修正しやすいです。まずはチーム全体次に部署全体、最後に事業所全体へと広げましょう。

④効果を検証する

アンケートやインタビューなどで意識調査を行い、ODの効果を検証しましょう。

ODでは社員へのフィードバックも重視しています。アメリカの社会心理学者のレンシス・リッカートが考案した「サーベイ・フィードバック」がODの手法として用いられているのです。

サーベイ・フィードバックとは?

サーベイ・フィードバックとは、意識調査やアンケート結果などを、本人や関連部署と共有すること。

ODの検証で収集した回答をまとめて、実際に挙がった課題や改善されたポイントなどを社員にフィードバックするのです。それにより社員へODの意味を意識付けできます。

またサーベイ・フィードバックによって、実際に社員がどのようにODを感じたのか調査するのもおすすめです。たとえば以下のような質問をしてみましょう。

  • 課題は解決できたか
  • 組織の雰囲気は変わったか
  • 今回のODをどのように感じ取り組んだか

⑤企業全体に展開する

小規模でスタートしたODが成功したら、組織全体へと展開します。部署単位、事業所単位と段階を踏み、最終的には組織全体へ展開しましょう。組織全体に展開する際は、途中段階で改善点、施策の見直しといった洗い出しの作業が必要になります。

規模を拡大するときも、その都度検証とフィードバックを継続しましょう。

ODを実現するためには、目的の明確化と現状の把握が必要です。小規模からスタートすると失敗を防ぎやすくなり、効果の検証もスムーズに進みます

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3.ODの代表的な手法

それぞれの組織で人間関係や課題、目的などが異なるため、自社にとって最適な手法を探さなくてはなりません。ここではODでよく用いられる5つの手法について説明します。

  1. コーチング
  2. AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
  3. アクションラーニング
  4. フューチャーサーチ
  5. ワールドカフェ

①コーチング

コーチングとは、相手の自主的な変化を促すコミュニケーション手法のこと。指導や教育のように一方的に考え方や知識を与えるのではなく、あくまで個人で考え、自らの能力を開花させます。

質問や対話を繰り広げて、相手が気付きや答えに到達するよう導くのです。ODはもちろん、個々の人材開発でもよく用いられます。

②AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)は、相手の強みや能力を引き出すコミュニケーションのこと。働く意味や目的、目標や夢などそれぞれの価値観に焦点を当て、本人が新しい強みや能力に気付くよう促すのです。

それぞれの社員が新しい能力や強みを生かせるようになれば、ODの成功にも近付くでしょう。

③アクションラーニング

アクションラーニングは、グループで問題解決にあたる手法です。社員同士で課題解決にあたるグループを作って目標を設定し、目標達成に向けたアクションを開始します。

アクション実行後はリフレクション(振り返り)を行い、目標やアクションを見直す、という流れを繰り返すのです。各社員が上下関係を気にせず自由に発言できる雰囲気を作ると、それぞれの人間性を引き出しやすくなり、メンバーの協調性も高まるでしょう。

④フューチャーサーチ

フューチャーサーチは、大規模な対話によるミーティング手法です。課題を決めてその課題に関係する多数の人物を集め、議論を行います。参加する人物は社内の人間だけでなく、株主や顧客などのステークホルダーが含まれるのです。

さまざまな立場の関係者が意見を言い合えるので、課題解決のためにすべきアクションを見出しやすくなります。

⑤ワールドカフェ

ワールドカフェとは、カフェのようにリラックスできる環境で数人のグループに分かれ、対話を行う手法のこと。大人数の組織でも行える手法で、組織内の関係性を構築し、考え方の共有や人間関係の改良を図るのです。

役職や上下関係を気にせず本音で対話します。そして数名の対話で一定時間経過したあとは、メンバーを入れ替えるのです。そうしてできるだけ多くの人とかかわれるようにします。

ODにてこれらの手法を用いると、それぞれの自己を開示させられるうえ、さまざまな立場の人と意見を交換できます。お互いの価値観を共有すると組織の一体化に近付くでしょう

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4.ODに取り組む際の注意点

ODは組織にかかわる人たちすべてで取り組むため、個々の能力が上がればより成功に近付きます。そのためODだけでなく人材開発にも取り組む必要があるのです。

またかかわる人数が多いため、情報の共有やコミュニケーションが煩雑にならないよう注意しなくてはなりません。

人材開発を組み合わせる

人材開発と組織開発を組み合わせると、よりよい組織作りが進みます。なぜなら組織は人と人のつながりによって形成されているからです。組織開発だけに力を入れていると、個人それぞれの成長がおろそかになってしまう可能性もあるでしょう。

これらは社員満足度の低下や離職につながりかねません。組織開発と同時に人材開発も行い、一人ひとりの成長をフォローしていきます。

ツールを活用する

ODではツールを活用しましょう。ODは多数の人の間でコミュニケーションが発生するため、「やりとりが煩雑・立場を気にして自分の意見が言えない」状況に陥るのも懸念されます。

そこでコミュニケーションツールを活用すれば、顔を合わせるよりも意見を言いやすくなりますし、全体とコミュニケーションを取るのも容易です。ツールで情報の一斉配信や共有もできるので、情報の伝達漏れを防ぎやすくなるでしょう。

ODに取り組む際の注意点は、「組織開発を重点化しすぎず個々の人材を育成する・ツールでコミュニケーションを円滑にすること」です

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5.大企業が行ったODの取り組み

ODは日本だけでなく世界で注目されており、さまざまな業界の大企業もODに取り組んでいるのです。しかしどのような取り込みが行われているのでしょう。ここでは大企業2社が行ったODの例をご紹介します。

Yahoo! JAPAN

WebサービスプロバイダーのYahoo! JAPANは、次なる躍進のため2012年からODに取り組みました。ODではコミュニケーションの改善に取り組み、「上司と部下のコミュニケーション」を実施したのです。

このとき用いた手法は「1on1ミーティング」です。1on1ミーティングではボトムアップを重視し、部下は自分の考察をもとに目標や意見などを上司へ意見を伝え、上司は部下の成長や目的達成を支援しました。

しかもこの面談を、5,000人(当時)の社員に対して実施したのです。こうしたODによって社員一人ひとりが成長し、自主性をもって自ら考えて行動するようになりました。

味の素グループ

食品メーカーの「味の素グループ」では、「ASV(Ajinomoto Group SharedValue)」と呼ばれる取り組みを行いました。

ASVとは「創業以来一貫した社会価値、事業価値を共創する取り組み」のこと。味の素グループは食と健康に貢献する価値の創造を目指したのです。

そしてこのASVを社員へ浸透させるためワークショップ(体験型講座)を展開。ワークショップでは、過去・現在・未来の項目に分けて考察や意見交換を行い、最後に社員それぞれがASV実現に向けて今日から何をしていくかを書き出しました。

こうしたワークショップをとおして、社員一人ひとりの意識や行動を改革したのです。

企業が取り組むODでは、独創的な手法が用いられています。自社でODに取り組む際は、さまざまな企業の事例と手法を参考にしましょう

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6.ODに関するウェブセミナー

場所や時間を問わずに参加できるウェブセミナーにて、ODに関する講座が開催される場合もあります。最後に「Schoo」と「リクルートマネジメントソリューションズ」のウェブセミナーをご紹介しましょう。

Schoo

オンライン学習サービスを提供している「Schoo」では、さまざまなウェブセミナーや講座を提供しています。「マネジメントリーダーシップ」というカテゴリでは、「チームビルディング・行動改革・働きかけ」など、多くの講座が多数公開されているのです。

これらはODだけでなく人材育成においても役立つでしょう。無料会員登録をするだけで気軽に閲覧できるサイトです。

リクルートマネジメントソリューションズ

リクルートグループの「リクルートマネジメントソリューションズ」では、経営陣、人事、営業企画などの管理職を対象にした無料のオンラインセミナーを開催しています。

1on1ミーティングや社員の定着しやすい組織作りなど、経営陣や人事にとって有用なテーマのセミナーが行われているのです。ただし無料セミナーは開催日が決まっています。申し込む場合は日程を確認しておきましょう。

ODに関する、あるいはODに役立つオンラインセミナーは多数提供されています。気になるセミナーがあったら気軽に受講してみましょう