MOT(技術経営)とは?【特徴をわかりやすく】メリット、事例

「MOT」は、新しいビジネスモデルや経営戦略の実現を目指す企業が注目している経営手法です。ここではMOTについて解説します。

1.MOT(技術経営)とは?

科学や工学などのあらゆる技術や知識を生かし、市場ニーズに合った製品やサービスを開発していく経営手法のこと。Management of Technologyの略で、日本語では「技術経営」といいます。

技術進化や市場の移り変わりが高速化し、MOT視点が企業の成長戦略において重視されるようになってきました。

MOTの目的

経営の観点から技術力や研究成果を具体的な事業として実用化し、経済的価値を生み出すこと。技術や知見の所有だけでなく、市場ニーズに合った形にて製品・サービスを創造するのは、成長に不可欠です。

そのためMOTでは、先端技術による高スペックな製品をつくるのではなく、市場や需要に応じた適切な製品に落とし込む点がポイントとなります。

「MBA」との違い

MBAはMaster of Business Administrationの略で、「経営学修士」という学位のこと。MBAでは経営に必要な知識や技術、コンセプトや方法論、リーダーとしての姿勢などを学びます。

一方のMOTは、技術を活用して新しく経済的価値をつくり出す点に重きを置いた経営手法。適切なマーケティング方法やビジネスモデルの組み立て方、知的財産権やリスクの管理などを専門的に学ぶのです。

MOTも経営学の専門領域のひとつなので近年、MBAでも扱われるようになりました。

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2.MOTが求められるようになった背景

MOTが求められるようになった背景には、国内におけるビジネスや雇用の変化が挙げられます。デジタル化や新しい技術の普及によるビジネスモデルの多様化が見られ、企業は従来の経営では成長しにくくなったのです。

キャッチアップ型ビジネスモデルの崩壊

MOTが注目される背景のひとつが、キャッチアップ型ビジネスモデルの崩壊です。従来の日本的経営はキャッチアップ型が主流でした。キャッチアップ型とは、欧米の技術やアイデアを追随して生産効率を上げ、低価格で品質を磨きあげること。

世界では技術革新が起こり、イノベーションを前提にした新しい価値創造のビジネスモデル構築が進みました。しかし日本は方針転換しきれず、国際競争力が低下しています。そこで日本企業は、技術を経済的価値につなげるMOTを注視するようになったのです。

欧米型経営への関心

欧米型経営へ関心が高まった点もMOTが注目される理由のひとつです。欧米型経営では、労働力不足の解消や生産性向上を目的としてさまざまな取り組みが行われています。

たとえば成果主義やジョブ型雇用、MBO(目標管理)など。欧米型経営手法を取り入れた日本企業は、さらに国際競争力を高める企業経営手法としてMOTに注目しました。

グローバル化の進展

グローバル化の進展もMOTの推進に関係しています。企業は世界に通用するビジネスモデルの創造を目指すようになり、経営方針を刷新する企業が見られるようになりました。

世界の市場に参画するには、高い技術知識を経済価値にしていくMOTの手法が必要となるのです。実際にプロセスイノベーションからプロダクトイノベーションへ方針を転向し、市場で大きなシェアを獲得した企業も多数見られています。

技術革新の速さ

技術革新の速さもMOTが注目される理由です。技術革新が市場ニーズよりも早くなってしまい、製品やサービスの認知や普及が遅れる場合もあります。

業界で革新的な高性能な製品が市場に浸透せず、企業あるいは業界全体のイノベーションを遅らせてしまいかねません。そのため企業は市場の成長に合わせて技術開発を進めていこうと、研究開発部門と市場価値をマッチングさせるMOTに注目しているのです。

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3.MOTのメリット

MOTの手腕が適切な形で発揮されると、さまざまなメリットが生じます。企業の競争力が高まり、市場に求められる新製品は企業に利益をもたらすでしょう。新規事業の創出や研究開発力の向上、外部との連携強化など広義の意味で企業の発展につながるのです。

  1. 新規事業を生み出す
  2. 研究開発体制の向上
  3. 収益の拡大
  4. 外部ネットワークとの提携強化

①新規事業を生み出す

MOT視点での新製品開発は、自社技術と市場ニーズがマッチする形で行われます。

戦略的かつ横断的なマーケティングを実施したり、新規事業のための専門組織を立ち上げたり、知見や経験が積み上がっていくにつれ、継続的に新規事業を興せる環境が整っていくのです。

自社技術を消費者の必要と結びつけて事業化し、収益を生む可能性や確度も高くなっていくでしょう。

②研究開発体制の向上

近年、技術やアイデアのコモディティ化が加速し、市場で先発優位性をとれる期間が短くなっています。研究開発にスピード感を求めた結果、多くの企業がM&Aで外部の知見が取り込める解決策を取りました。

MOTではアイデアと社会課題を結びつけ、分析や検証など自社におけるすべての研究開発プロセスをマネジメントできます。自社技術をビジネス化する研究開発体制も管理できるため、研究開発の効率化や費用対効果も向上するでしょう。

③収益の拡大

MOTでは、技術やアイデアのテーマ化や事業性の検証や分析など、効率的に研究開発を進めるための手法を学びます。研究開発から事業化まですべての工程で経営視点を伴うため、事業化までのスピードも向上しやすくなるのです。

早期の事業化に成功すれば市場で大きなシェアを得られ、収益拡大の可能性が高まるでしょう。

④外部ネットワークとの提携強化

MOTでは、技術力の将来性や有用性について適切な判断が求められます。判断に必要となる幅広い知見の取得には、大学などの研究機関やベンチャー企業などの外部組織と連携や協働が有効です。

MOTで自社の研究開発力を維持しながら新しい技術開発や可能性を探求すれば、新事業の創出にもつながるでしょう。MOTは外部ネットワークとの提携強化にも役立ちます。

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4.MOT人材に必要な能力

MOT人材にはさまざまな能力が求められます。一体どのような能力なのか、見ていきましょう。

  1. 課題解決力
  2. 実践力
  3. 先導力

①課題解決力

MOTでは技術の研究開発から実用化まで一貫してマネジメントします。「自社技術を活用して新しい価値をいかに創造し社会に提供していくのか」「ビジネスとして収益を生み出していくのか」をつねに考えなければなりません。

技術と経営を結びつけるには、みずから課題を見つけて設定し、解決の道筋をたてて実行する課題解決力が求められるのです。

②実践力

技術を実用化しビジネスとして発展させるためには、客観的かつ論理的な実証や裏付けが求められるのです。技術と経営の両方に精通した総合的な学際性が必要となり、分析や研究を通じた効果検証では学術性も問われます。

しかしそれだけでなくビジネスに応用や転換する実践力が必要なのです。

③先導力

MOT人材には「コミュニケーション力」「リーダーシップ」「レジリエンス」など、他者を先導して目標を達成する先導力が求められます。事業推進のうえでは「目標管理力」「チームビルディング」「職務遂行力」なども大切でしょう。

しかしこれらを実行して横断的な開発体制を構築するには、部署や外部ネットワークとの提携が必須となります。MOT人材には企業のイノベーションを先導する力が求められるのです。

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5.MOTの成功事例

欧米では1980年代から、MOTが重視されてきました。品質向上と価格競争を軸に置いたプロセスイノベーションから脱却し、つくるものと付加価値に主軸を置いたプロダクトイノベーションを推進しています。

そして2000年代に入り、GAFAを代表する世界的企業が台頭してきました。ここでは国内外のMOT成功事例を紹介します。

国外

MOTの国外成功事例として挙げられるのは、GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon.com)。欧米では1980年代からMOTに取り組んできました。そして多くの企業が自社技術を市場ニーズにマッチさせた製品やサービスをつくって、成長を遂げてきたのです。

なかでもGAFAの成功は目を見張るものがあり、世界中の先進企業が目指す経営モデルとなっています。

国内

MOT導入による国内成功企業のひとつが富士フイルムでしょう。従来の成長を支えてきたアナログ写真事業が大きく縮小する一方、強みを生かした術開発と市場開拓を進めました。

既存と新規の事業を掛け合わせた相乗効果をもとに、3分野6事業領域を展開しています。

「化粧品や医薬品を扱うヘルスケア分野」「ディスプレイ材料といった高機能な材料を手掛けるマテリアル分野」「撮影から出力までを一貫してサポートするイメージング分野」、いずれも自社技術の研究開発と発展による成功例です。

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6.MOTを導入する際に必要な検討事項

MOTを導入する際、事前に確認や見直すポイントがあります。一体どのような内容なのか、見ていきましょう。

  1. 人材の確保
  2. 外部育成プログラムの活用
  3. 社内体制の見直し

①人材の確保

まず技術経営を体現する人材の確保です。現場で適任者を探す、あるいは新しく採用する方法があります。もしそれでも不足するなら外部からアウトソーシングするとよいでしょう。

明確な階層がある大企業では、開発プロジェクトの技術管理へ密接にかかわるプロジェクトリーダー格が相当します。人的リソースが少ない中小企業では社長以外のほぼ全員が候補です。全社的な人材採用・教育の一環としてMOTをとらえる必要があるでしょう。

②外部育成プログラムの活用

MOTの適任者は大学院やビジネススクールなどの外部機関を活用して学びます。専門的かつ実践的知識が学べるだけでなく、さまざまな背景を持つ社外の学生と学びあうため、新鮮な視点や知見も得られるでしょう。

MOT人材の適任者が多い場合、MOT教育プログラムのあるスクールに依頼し、自社で企業研修を実施する方法もあります。

③社内体制の見直し

人材確保や教育を進めるかたわら、MOT前提の事業開発ができる社内環境を整えます。MOTのメリットを十分役立てるには、イノベーションに対する企業全体の意識改革が必要です。

企業ビジョンや理念、事業や上層部の権限、職務の見直しなどをとおしてMOTに取り組む社内体制を構築しましょう。

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7.MOTが学べる外部プログラム

日本でMOTを学ぶ際、大学院やビジネススクールが利用できます。経営学やMBAのカリキュラムにMOTが組み込まれているコースや、MOTを専門的に学ぶコースなどです。自分が描くキャリアや身に着けたいスキルなどを考慮したうえで選ぶとよいでしょう。

東京工業大学 環境・社会工学院 技術経営専門職学位課程

科学研究や研究開発に強みを持つ東京工業大学の理工学院が開催するプログラムです。技術経営を実践する総合型リーダーの育成を目的としています。

イノベーションにかかわる戦略的、創造的な経営手法を学ぶだけでなく、イノベーション人材として企業を主導していくリーダーシップや行動力を身につけられるでしょう。卒業生は、官民問わず幅広い業界や組織で活躍しています。

東京理科大学大学院 イノベーション研究科 MOT技術経営専攻

MOT技術経営を専門としたプログラムです。国際的視野と職業倫理感を兼ね備え、科学技術と経営を実践的に組み合わせられる起業家やCxO人材の育成と輩出を目標としています。

修了すれば、技術革新や社会の変化に迅速かつ柔軟に対応し、経済的価値に還元する形でリーダーシップを取れる人材となるでしょう。

他者の視点や知見に差異がある点を理解し、多様性をいかにイノベーションに取り込むかを重視している点もカリキュラムの特徴です。

北陸先端科学技術大学院(JAIST) 技術経営コース

技術経営や関連分野の専門的学修です。知識科学的イノベーションデザイン教育と、創出力の強化、キーコンピテンシーを養う人間力強化プログラムなどを学べます。

特徴はそれぞれのキャリア目標を明確化し、目標や学修歴に応じたきめ細かい研究指導。本学は石川県にあるものの、社会人学生に向けて東京サテライトが開設されています。それによって地方と都市部の生きた知見交換や学生間交流も行われているのです。

九州大学 ビジネス・スクール

九州大学ビジネス・スクールでは、MBAの選択分野のひとつとしてMOTが提供されています。組織マネジメントやマーケティング、財務知識など経営基礎が必須科目となっており、選択科目でMOTに関する総合的な知識やスキルを学べるのです。

「企業が利益を出して永続的に発展していく」「技術をベースにイノベーションを起こして新しい価値をつくる」それぞれの手法を、横断的かつ実践的に学べるでしょう。