モラハラとは、言動などのモラルにより相手に精神的苦痛を与えることです。ここでは、モラハラについて解説します。
目次
1.モラハラ(モラルハラスメント)とは?
モラハラとはモラルハラスメントの略で「言動や態度などによって相手に精神的苦痛を与えること」を意味します。「モラル=道徳・倫理」、「ハラスメント=嫌がらせ」の組み合わせで、道徳や倫理に反した嫌がらせと言えます。
モラハラの特徴は、
- 物理的な暴力行為ではない
- 陰湿やいじめや嫌がらせなどの精神面で相手を追い詰める行為
です。
具体的には、
- 無視をする
- 理由なく不機嫌な態度を示す
- 暴言を浴びせる
などがあります。
課題と現状
ハラスメント防止法が
- 大企業は2020年6月
- 中小企業は2022年4月
から義務付けられていますが、現状ではモラハラは表面化しにくく放置されがちです。
厚生労働省による「令和2年度 個別労働紛争解決制度の施工状況」でも、企業のいじめや嫌がらせに関する相談件数は79,190件と増加しています。

2.その他のハラスメント
モラハラのほかにもさまざまなハラスメントがあり、現在では30種類を超えるハラスメントが存在すると言われています。
ここでは、
- セクハラ
- パワハラ
の2つを挙げて解説します。
セクハラ(セクシャルハラスメント)
セクハラ(セクシャルハラスメント)は「性的嫌がらせ」を指します。
セクハラには、
- 体を触るなどの「対価型セクハラ」
- 性的画像を公の場で示すなどの「環境型セクハラ」

モラルハラスメント / モラハラとは?【意味・定義・何】職場
モラハラとは、言動などのモラルにより相手に精神的苦痛を与えることです。ここでは、モラハラについて解説します。
1.モラハラ(モラルハラスメント)とは?
モラハラとはモラルハラスメントの略で「言動や態度...
があります。
パワハラ(パワーハラスメント)
パワハラ(パワーハラスメント)とは、
- 職場上の優越的立場を利用した言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
- 被害者の就業環境が害される言動
です。

モラルハラスメント / モラハラとは?【意味・定義・何】職場
モラハラとは、言動などのモラルにより相手に精神的苦痛を与えることです。ここでは、モラハラについて解説します。
1.モラハラ(モラルハラスメント)とは?
モラハラとはモラルハラスメントの略で「言動や態度...
3.職場で発生するモラハラの例
職場で発生するモラハラの事例があります。ここでは、主な事例を4例挙げてそれぞれ簡単にポイントを解説します。
無視
職場で発生するモラハラの事例の1例目は無視です。
例えば、
- 挨拶に対して何も返事をしない
- 話しかけに対して、返答をしない
- 質問に対して答えない
などがあります。
暴言・陰口
職場で発生するモラハラの事例の2例目は、
- 暴言
- 陰口
です。
また、
- 嫌味
- 侮辱
などもモラハラと考えられます。
例えば、業務上必要となる範囲を超えて
- バカ
- クズ
- どうせできないだろう
などといった発言をするケースです。
この場合、加害者は被害者よりも優位な立場になろうとする傾向があります。
プライベートへの介入
職場で発生するモラハラの事例の3例目は、プライベートへの介入です。
職場で不必要に、
- プライベートを暴かれる
- プライベートを侮辱される
といったことです。
加害者が被害者のプライベートに関与することで、被害者をコントロールしようといった気持ちが背景にあります。
業務妨害
職場で発生するモラハラの事例の4例目は業務妨害です。
- 仕事に必要な情報や道具などを与えられない
- こなしきれるはずのない大量の仕事を指示される
- 仕事が進まないように直接的に妨害される
といったものがあります。
- 業務への直接的な影響
- 評価への影響
があるため、加害者のダメージが大きいモラハラです。
4.モラハラをしやすい人の特徴
モラハラをしやすい人の特徴は3点あります。
ここでは、モラハラの加害者にありがちな特徴について解説します。
自分に自信がない
モラハラをしやすい人の1点目の特徴は、自分に自信がないことです。
自分に自信がない人は、他人を攻撃することで自分の優位性を保ちます。
- 無視
- 暴言
などを実行することで、加害者を自分より不利な立場に追い込みます。
他人を支配しようとする
モラハラをしやすい人の2点目の特徴は、他人を支配しようとすることです。
他人を、自分の思うように操ろうと考える人は、モラハラをしやすい傾向があります。
他人の人権を考えず、玩具やモノのように扱うのです。
自分も被害にあっている
モラハラをしやすい人の3点目の特徴は、自分も被害にあっていることです。
自分自身が過去にほかの場所でハラスメントなど、精神的な被害を受けていた場合、それを克服したいためにモラハラを行う傾向があります。
5.モラハラを受けやすい人の特徴
モラハラを受けやすい人には特徴があります。
ここでは、3点の特徴を挙げてそれぞれのポイントを簡単に解説します。
真面目で謙虚
モラハラを受けやすい人の1点目の特徴は、真面目で謙虚なことです。
例えば、
- やさしく、周囲の人に対する思いやりが強い人
- 自分自身に対する責任感が強い人
- 物事を謙虚に考える人
といった特徴を持つ人です。
場の空気を読みすぎる
モラハラを受けやすい人の2点目の特徴は、場の空気を読みすぎることです。
一般的に場の雰囲気を読むことは重要ですが、雰囲気を悪くしないように気を配るあまり、モラハラの加害者を助長させてしまう傾向があります。
自己主張ができない
モラハラを受けやすい3点目の特徴は、自己主張ができないことです。
- いいたいことを表には出さず、自分の中に閉じ込めてしまう
- 周囲の意見にすぐ賛同してしまう
このような人は、モラハラを受けやすい傾向があります。
6.モラハラが職場にもたらす悪影響
モラハラが職場にもたらす悪影響があります。ここでは5点の悪影響を取り上げてそれぞれポイントを解説します。
離職率の増加
モラハラが職場にもたらす1点目の悪影響は、離職率の増加です。モラハラの被害者は、離職を考えることがあるでしょう。
また、モラハラの当事者だけでなくモラハラのある職場環境で働くそのほかの社員も、労働環境に不満を持ち離職することも考えられます。労働者が安心して働くことのできない職場の離職率は高くなります。
職場の環境悪化
モラハラが職場にもたらす2点目の悪影響は、職場の環境悪化です。
職場でモラハラが起きると、
- 職場全体の雰囲気が悪くなる
- 労働者のモチベーションが低下する
- さらに職場の環境が悪化する
といった職場の悪循環が生じます。
モチベーションの低下は生産性にも悪影響を及ぼすため、企業にとっては大きな問題です。
被害者の体調悪化
モラハラが職場にもたらす3点目の悪影響は、被害者の体調悪化です。モラハラの被害者は、精神的に追い詰められます。精神的なストレスは身体の不調の原因にもなりかねません。
- 倦怠感
- 動悸
- 発熱
- めまい
などの身体症状が出れば、どうしても仕事を休まざるを得なくなり、被害者にとっては大きなダメージとなります。
企業イメージの低下
モラハラが職場にもたらす4点目の悪影響は、企業イメージの低下です。モラハラがある企業であることが広く社会に知られれば、企業イメージの低下になります。
その結果、
- 応募者の減少などにより採用活動がうまくいかなくなる
- 自社製品やサービスの不買が起こる
など、社会的な制裁を受ける可能性も否定できません。
法的責任
モラハラが職場にもたらす5点目の悪影響は、法的責任です。
企業は、労働契約にともなって、安全な労務提供のための安全配慮義務を負っています。
仮に企業が、職場にモラハラがあるにも関わらずそれを知っていながら放置すれば、
- 安全配慮義務違反となる
- 損害賠償責任が問われる
といったことにもなりかねません。
7.企業でのモラハラ対策
企業でのモラハラ対策として、
- ハラスメント研修の継続
- 社内報での周知
- 相談窓口の設置
- 罰則の明示
についてそれぞれ簡単にポイントを解説します。
ハラスメント研修の継続
企業ができる1点目のモラハラ対策は、ハラスメント研修の継続です。外部のモラハラに詳しい講師を呼んで、新入社員研修や管理職研修などの社員研修を継続的に実施します。
研修の中で、何をすればモラハラとなるのか具体的な事例を交えて説明する場を設けることで、モラハラについての社員一人ひとりの意識を高められます。
社内報での周知
企業ができる2点目のモラハラ対策は、社内報での周知です。社内報にモラハラに関する記事やコラムを掲載します。
これにより、
- モラハラ抑止への期待
- モラハラ発生前に企業として対応するという意思の表明
ができます。
社内報だけでなく、上司から組織全体に社内報のアナウンスをすれば、社内報を見なかったことの過失も明確にできます。
相談窓口の設置
企業ができる3点目のモラハラ対策は、相談窓口の設置です。
窓口には、
- 社内で選任した担当者を配置した内部相談窓口
- 社外のモラルハラスメントの問題を専門に扱う企業による外部相談窓口
があります。
相談窓口で受けた相談に対しては、
- 減給
- 降格
- 解雇
といった厳正な処分で望みます。
罰則の明示
企業ができる4点目のモラハラ対策は、罰則の明示です。
罰則を明示すれば、モラハラへの、
- 抑止力
- 注意喚起
になります。
企業としてモラハラを絶対に許さないという厳しい態度を従業員に示すことで、下記ができるようになります。
- 一人ひとりが自分の行動に対して注意を払う
- モラハラを認めない社内文化の形成
8.それでもモラハラが発生してしまったら
さまざまな対策を講じても、モラハラが発生することはあります。
ここでは、対策を講じた後でモラハラが発生してしまった場合における企業側の対処法として、
- 事実確認
- 加害者への処置
- 被害者へのケア
を挙げて解説します。
事実確認
それでもモラハラが発生してしまったときの1番目の対処法は、事実確認です。
加害者と被害者から、事実確認を行います。加害者と被害者、双方の言い分に食い違いがあれば、第三者である周囲の人間にも話を聞きます。
企業は、
- どのようなモラハラか
- いつどこで発生したのか
といった事実をしっかりと把握します。
加害者への処置
それでもモラハラが発生してしまったときの2番目の対処法は、加害者への処置です。
事実確認によりモラハラが発生したことが確認できた場合、モラハラの加害者に認定した者に対して、
- 出勤停止
- 自宅待機
などの処置をいい渡します。
一般的には、
- 出勤停止は賃金の支払い義務はない
- 自宅待機は賃金の支払い義務は生じる
ことになります。
被害者のケア
それでもモラハラが発生してしまった場合の3番目の対処法は、被害者のケアです。
モラハラが長期になればなるほど、被害者は大きな心の傷を負います。
自分を責めることでトラウマとなってしまうことも考えられるため、プライバシーの保護に注意しながら、被害者の心のケアを最優先で行う必要があります。