身元保証人とは? 重要性、いない場合の内定取り消し、注意点

身元保証人とは、保証される人の素性や経歴に問題がないと保証する人のこと。採用活動で身元保証人が重視される理由、いない場合の対処などについて解説します。

1.身元保証人とは?

身元保証人とは、その人の素性や経歴などが信用できると保証する人。賃貸契約、入院や手術などの書類にて必要です。

なお企業の採用活動においても、採用した従業員に対して身元保証人の選定を求めることがあります。その目的は、主に以下の3つです。

  1. 従業員が社会的に信用できる人物であることを、他人(身元保証人)に証明させるため
  2. 従業員が自社へ損害を与えたが自分で補償しきれない場合に、身元保証人へ補償させるため
  3. 従業員が身元保証人に対して「まじめに働くこと」を約束させるため

このうちふたつめに関しては、「身元保証に関する法律」で身元保証契約の存続期間や保証責任の限度などを定めています。

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2.なぜ企業にとって身元保証人が重要なのか

企業が従業員の身元保証人を確保できると、従業員と信頼関係を構築しやすくなり、トラブルの抑止や対処などに役立ちます。そのため身元保証人を重視する企業も多いのです。ここでは身元保証人が重要な理由を4つ解説します。

  1. 身元保証のため
  2. 損害賠償が発生したときに連帯責任者になってもらうため
  3. 不正防止のために責任を自覚させるため
  4. 緊急連絡先を確保するため

①身元保証のため

従業員の身元を他人が保証するため、従業員に対する企業の信頼度が高まります。

企業側も採用試験や面接などを経て内定や雇用を決めています。数回の面談で従業員が本当に信用できる人かどうかを判断するのは難しいもの。

従業員が身元保証人を立てれば他人から「この人は誠実に働くと保証する」という太鼓判を得られるため、企業は安心して採用できるのです。身元保証人の存在は、企業にとってメリットが大きいといえます。

②損害賠償が発生したときに連帯責任者になってもらうため

民法第415条において、従業員の故意または過失によって企業に損害を与え、それが労働契約に違反するものであった場合、企業は本人および身元保証人へ賠償を求められるのです。

面接でよい印象を持った従業員でも、入社してみたら不正を働いたり怠けたりして、社内外を巻き込んだトラブルを起こす可能性はあります。

そのようなトラブルで自社へ損害が出たとき、その従業員へ責任を取らせる、つまり損害賠償請求を行えるのです。もし本人が責任を取り切れない場合、不足分を身元保証人に請求できます。

従業員から受ける損害リスクをできる限り無くす意味でも、身元保証人は必要といえます。

③不正防止のために責任を自覚させるため

従業員へ「自分が自社に損害を与えたとき、身元保証人へ迷惑がかかる」という意識を持たせ、自身の言動に対する責任を自覚させられます。

身元保証人には近親者や親しい友人などを選定できるため、従業員はこのような人々へ「迷惑をかけたくない」と考えるようになるからです。

自社に損失を与えるような言動を慎むようになり、横領といった重大な犯罪はもちろん、個人情報の流出やSNSへの不適切な投稿、遅刻や無断欠勤といった職務怠慢などの防止効果も期待できます。

④緊急連絡先を確保するため

従業員本人と連絡が取れなくなった際、身元保証人がいれば安否や欠勤理由の確認を依頼できます。身元保証人を立てたときに提出する「身元保証書」という書類で、その従業員の緊急連絡先を身元保証人としている場合が多いからです。

従業員が無断欠勤した場合、事故や病気などが発生した可能性もあります。また退職したくてあえて連絡を取らずに欠勤しているのかもしれません。

いずれにせよ無断欠勤が生じると業務が滞り、ほかのメンバーや顧客に迷惑をかけてしまうかもしれません。速やかに身元保証人へ連絡しましょう。

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3.身元保証人と連帯保証人の違い

身元保証人と連帯保証人の違いは、保証する場面と責任範囲の広さ。

連帯保証人とは借金をする際に求められる保証人で、主債務者が借金を返済できなくなったときに、主債務者に代わって残りの借金を返済する人です。

一方身元保証人は、従業員本人が起こした損害全般の賠償を補償する根保証契約(将来発生するさまざまな債務に対する保証)です。

身元保証人になった時点で債務は発生していないため賠償金額は未定になります。ただし損害に対する責任の度合いや事情を考慮したうえで賠償額が決まるので、100%の補償を求められる場合はほとんどありません。

なお2020年4月1日の民法改正で、連帯保証契約や身元保証を含む根保証契約において、「極度額(保証限度額)」を定めることが義務づけられました。そのため保証限度額が明記されていない身元保証書は無効とされます。

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4.身元保証人による身元保証書の提出は義務ではない

身元保証書の提出は法律で義務づけられておらず、従業員へ強制的に書かせられません。もし身元保証人を立ててもらいたい場合は、その必要性を従業員へ十分に説明する必要があります。

損害賠償規定を理解すると、従業員は「自分だけでなく、家族や親族、友人・知人などが責任を負わされる」と怖くなってしまい、身元保証書の提出を拒む場合もあるからです。

従業員への説明では、緊急連絡先の取得が目的であると強調すると理解を得やすくなります。どのような従業員でも、仕事中に倒れたり、事件や事故、災害に巻き込まれて行方不明になってしまったりする可能性があるからです。

「誰に連絡をしたらよいのかを明確するために身元保証書を提出してもらう」と説明すれば、納得性を高められるでしょう。

また身元保証書に自分以外の個人情報が記入されるため、不安を覚える従業員がいるかもしれません。身元保証書には、「個人情報を目的以外には使用しない」と必ず記載し、口頭での説明もあわせて行いましょう。

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5.身元保証人がいないという理由での内定取り消しは違法

内定後は雇用契約の成立とみなされます。よって身元保証書を提出しないことを理由に内定を取り消すと、労働基準法や労働契約法における「不当解雇」に該当し、法令違反になるのです。身元保証書の提出は義務ではないため、正当な解雇事由と認められません。

ただし身元保証書の提出を採用条件に含めていたにもかかわらず、雇用後に従業員が提出を拒否した事例では、裁判所が従業員の解雇を認めています。企業には採用の自由が認められているため、身元保証書を提出しない人を不採用にするのは可能です。

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6.身元保証人の条件

就職の際、どのような続柄の人を身元保証人として認めるかについては、企業が自由に決められます。そのためその企業がどのような意味で身元保証を必要とするかで身元保証人の条件は異なるのです。

緊急時の連絡先としての意味合いが強い場合、両親や配偶者などなるべく近い親族を身元保証人にするよう求めるでしょう。また身元保証人がひとりだと緊急時に連絡が取れるかが不安なら、身元保証人をふたり以上にしても問題ありません。

損害賠償の際の補償の意味合いが強い場合、従業員本人と別の世帯を持ち、安定した収入がある人物という条件を設定できます。ひとりの身元保証人では賠償責任を負いきれないことを想定し、ふたり以上の身元保証人を求めておくと安心です。

身元保証人にこれらふたつの役割を果たしてもらうため、

  1. 緊急時の連絡先としてなるべく近い親族からひとり
  2. 損害賠償の観点から生計を別にする人物をひとり

合計ふたりの身元保証人を求めている企業も多く見られます。

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7.身元保証人の責任範囲

従業員の身元保証人は、いつどのくらいの責任や賠償が生じるのか、または生じないのかを予測できません。しかし身元保証人がすべての責任を負わせるとなると、身元保証人にとって不利益すぎます。

そこで「身元保証ニ関スル法律」や民法で、身元保証人の責任範囲や権利を定めているのです。

責任を負う期限

身元保証契約の期限は3年または5年、更新した場合でも最大5年までです。

身元保証人への通知義務

勤務態度や業務不適合などの理由で当該従業員が自社へ損害を与える恐れが生じたら、企業は身元保証人に報告しなければなりません。

また当該従業員が重職に就いて当初よりも大きな責任が生じる場合や、当該従業員の転勤などで身元保証人と居住地が離れてしまった場合も、同様に報告が必要です。

身元保証契約の解除

身元保証人は企業から状況の変化に関する報告を受けた際、身元保証契約を解除できます。企業から連絡がなく、損害賠償の必要が生じた際に状況の変化を知った場合も、同様に解除可能です。

賠償範囲の上限

2020年の民法改正にて、身元保証書へ保証限度額の明記を義務づけました。身元保証人が負う賠償範囲に上限を設定し、無謀な賠償請求から身元保証人を守るためです。

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8.身元保証人代行サービスとは?

保証代行会社が従業員の身元保証人を請け負うサービスのこと。利用すると、応募者と企業、双方にメリットが期待できます。

たとえば身元保証書を提出できない応募者を不採用にする企業の場合、身元保証人を確保できない応募者はその企業で働く機会を得られません。身元保証人を依頼すれば、採用される可能性が高まるのです。

ただし身元保証人代行サービスを利用するには、保証代行会社による審査を通過する必要があります。申し込んだからといって、必ず身元保証人を引き受けてもらえるとは限らない点に注意しましょう。

また保障代行会社に依頼する前に、まずは企業に相談することをオススメします。事情によっては保証人がいなくても、入社を認められる可能性があるからです。

一方企業側のメリットは、「客観的にみても問題のない人材を採用できる」「万が一のときに保証代行会社へ一定の損害賠償を請求できる」のふたつになります。