面談とは、双方の立場が平等に近い状態で情報を共有し、相互に理解を深めるためのもの。ここでは面接との違いや、面談を効率的に進めるポイントなどを解説します。
目次
1.面談とは?
面談とは、面会して直接話をすることで、「面」には向かい合う、「談」には語る、話すという意味があります。
人材マネジメントの分野において、面談は人事担当者と従業員が相互に情報を共有し、成長促進のための動機づけを行うものと位置付けているのです。
これまでの「上司の指導を部下が忠実に遂行する」関係は変化しています。面談を通して双方が強みや弱みに気付き、それをスキルアップやキャリア形成に役立ててもらうことが面談を行う目的といえるのです。
2.面談を行う意味と面接との違い
相互の理解を深める面談は、ビジネスシーンにおいて幅広く用いられています。また類似した言葉に「面接」がありますが、面談と面接はどう違うのでしょうか。ここでは、面談を行う意味と面談と面接の違いについて見ていきます。
面談はビジネスシーンで広く行われている
ビジネスシーンにおける面談は、採用前や採用後など幅揃い場面で行われています。
社外においては企業から採用候補者に向けての採用戦略プロセスとして、また社内においては内定者や従業員に対するフォローアップや育成方針のすり合わせとして行われる、非常に自由度の高い手法です。
概念があいまいで自由度の高い面談ですが、効率的に活用すると新たな人材の確保に結び付いたり、既存人材の早期離職を防ぐ役割を果たしたりします。
面接との違い
面談とよく似た言葉に「面接」があります。面談と面接は混同されやすい手法ですが、実施する目的がそれぞれ異なるのです。そもそも面接とは、どのような意味合いで使われるのでしょうか。
「面談」のときにも説明したとおりですが「面」は向かい合う、「接」には近づく、
交わるといった意味があります。一般的に人材マネジメントの分野では、「相手を評価するために接触すること」を指すのです。
まとめると下記のようになります。
- 面接:応募者の中から人材を選ぶために行うもの、選考の一部
- 面談:相手の相互理解を目的とする、話し合い
面談が持つ基本的な特徴
面談の目的は、自社と相手の情報を共有して、お互いの理解を深めること。面談は面接に比べ、相手の本音を引き出しやすいといった特徴があります。
人材を採用する企業側が、どれだけ面接の場で本音を語りたいという意思を示しても、内定を得るために就職活動している志望者と対等な立場に立って意見を交わすのは難しいもの。
志望者が内定を得るために企業側の様子を伺い、無難な回答を選ぶことは容易に想像できるでしょう。その点、面談では対等な立場にて話ができます。お互いがリラックスした気持ちで向き合えるのが面談の特徴なのです。
3.面談は4種類ある
面談には、優秀な人材を新規に獲得する目的で行われる社外活用と、採用後のフォローアップや育成方針のすり合わせとして行われる社内活用、2つの側面があります。
また一言に面談といってもさまざまな種類があるため、それぞれの特徴を理解し、場面に応じて使い分ける必要があるのです。そんな面談を4種類から紹介しましょう。
- スキルアップと早期離職を予防する社内面談
- 採用候補者との接触を目的としたカジュアル面談
- OBやOGを中心としたリクルーター面談
- 採用予定者に対する内定者面談
①スキルアップと早期離職を予防する社内面談
社内面談の目的は、従業員のパフォーマンスを最大化すること。また社内面談は、一部の役員や新入社員だけでなくすべての従業員が対象となるのです。
社内面談の実施タイミングは大きく2つあります。上司が部下に対して面談の必要を感じたときに随時実施される「不定期型」と、人事制度の構築やチーム力の向上など経営戦略に基づいて行われる「定期型(計画型)」の2種類です。
それぞれ目的が異なるため、担当者や経営者がそれらの効果と必要性を正しく理解して使い分ける必要があります。うまく活用すると、企業と従業員が一体となり、支え合いながら目標達成に向けて進めるでしょう。
②採用候補者との接触を目的としたカジュアル面談
社外向けの手法として使われるのがカジュアル面談。その名のとおり、企業の担当者と採用候補者がより対等に近い立場になり、和やかな雰囲気のなかでやり取りできます。
カジュアル面談は選考活動における面接よりも前の段階で行われ、一般的に選考への直接的な影響はありません。企業はあらかじめこの面談が採用とは一切関係ないと、候補者に伝えておく必要があります。
採用候補者はこの機会を利用して、肩肘張らずに仕事内容や社風、キャリアなどをヒアリングできるのです。
③OBやOGを中心としたリクルーター面談
リクルーター面談は、特に新卒採用の場で用いられる手法です。OBやOGを中心としたリクルーターと呼ばれる従業員が、自身の出身大学や後輩に対してアプローチを取り、採用につなげていきます。
特徴は、社内より社外、カフェや公共の場で行われる場合が多い点。会社で行うよりもリラックスした雰囲気のなかで自社をアピールしたり、就業意欲の確認を行ったりできるのです。
一方でリクルーター面接という言葉も生まれています。企業はリクルーターとなる社員に面接と面談の違いを正しく理解させ、面接に比べて自由な場である点を説明できるようにしておきましょう。
④採用予定者に対する内定者面談
内定後の面談も気を抜かないようにしましょう。入社試験をクリアして内定となった相手に対しては、詳しい勤務条件や入社後の流れ、実際の業務に関する情報を伝えるための内定者面談を行います。
内定者面談には、経営者が新入社員に対して期待していることを伝える目的もあります。入社直後のスタートダッシュを成功させるため、非常に重要な手法です。内定者が現時点で抱える不安や疑問を拾い上げて、入社後のミスマッチや認識齟齬を防ぎましょう。
また入社後は同じ会社で働いていくことになります。面談の時点で積極的にコミュニケーションを取り、双方にとってよい関係を築いておくといいでしょう。
4.面談を行うときの流れと注意点
面談の効果を最大限に発揮させるためには、あらかじめ面談の流れをきちんと把握しておかなくてはなりません。自由度の高い面談ですが、ただ闇雲に会話を続ければいいというわけではないのです。ここでは面談を行う際のポイントを4つ解説します。
- 緊張を解きほぐすアイスブレイク
- 自己紹介と自社の紹介を行う
- 面談相手の話に耳を傾けて質問する
- 次へのステップにつなげるクロージング
①緊張を解きほぐすアイスブレイク
アイスブレイクとは、緊張をほぐしてコミュニケーションを円滑にし、参加者の積極性を発揮させる手法で、緊張緩和とも呼ばれます。ビジネスシーンでは、チームミーティングや社員研修、グループワークなどの導入として用いられます。
アイスブレイクを行うと、相手を全面的に受け入れているという姿勢を示せるのです。その際、面談に応じてもらったことへの感謝や対等な立場で面談したい旨を伝えましょう。
②自己紹介と自社の紹介を行う
アイスブレイクによって面談者とのコミュニケーションが円滑になってきたところで、はじめて面談担当者の自己紹介と自社の紹介を行います。面接と違い、面談ではまず企業側が先行して紹介するのです。
これには面談者に安心感を与え、相手を受け入れる姿勢が整っていることを示す意味があります。一般的に、自己開示された受け手は同程度の自己開示を返すとされているのです。心理学では「自己開示の返報性」と呼ばれます。
面談の目的は、あくまでお互いの理解を深めること。先行して紹介を行い、企業側から面談相手に歩み寄って、本音で話しやすい雰囲気を作りましょう。
③面談相手の話に耳を傾けて質問する
面談では、面談相手がこれまで取り組んできた活動やキャリアなどを自由に話してもらいましょう。その際は当然ですが、しっかりと話に耳を傾けます。
話の途中で更に詳しく聞きたいことが出てきても、話を遮らず、まずは最後まで一とおりの話を聞きましょう。それにより話の組み立て方や倫理性を見極められるだけでなく、「自分の考えを理解しようとしている」といった好印象を相手に与えられます。
お互いについてある程度理解したところで、初めて質問する時間を設けるのです。質問タイムには双方の情報収集を補うだけでなく、現段階の距離感を確認する意味もあります。
④次へのステップにつなげるクロージング
初対面の緊張した状態から、一度でお互いのことを深く理解するのは困難です。そのため、次へのつながりを残すクロージングが重要になります。
クロージングでは、相手の満足度を確認しながら企業側にとってもこの面談が有意義な時間だったと伝えましょう。
面談相手との関係を継続したい場合は、次に会ってもらう社員の魅力を伝えるなどして「また来たい、もっと話を聞きたい」と思ってもらえるようにします。残念ながらこの面談で関係を終了させたい場合でも、むやみに関係が悪化しないよう十分配慮しましょう。
5.面談を実施することで得られるメリット
面談を実施すると、企業に多くのメリットがもたらされます。以下に代表される3つのメリットは、面談を実施する企業だけでなく、面談者にも好印象を与えます。面談が双方に与える影響を正しく理解して、その効果を最大限に発揮しましょう。
企業の認知度が低くても問題ない
経済産業省の発表によれば、全国には中小だけで381万社もの企業が存在しています(2014年度時点)。限られた時間のなかで企業を選ばなければならない求職者が、ネームバリューや話題性の強い企業から選ぶのも頷けるでしょう。
そこで注目されたのが面談です。面談では企業が応募者をただ待つのではなく、企業側から積極的にアプローチをかけられます。
求職者を惹きつける魅力的な制度や技術、業務環境を保有していれば、認知度の低い企業でも、面談によって十分にその魅力を伝えられるでしょう。
自社に合った人材かどうかを見極められる
採用選考に多くの応募があった場合、採用候補者の全員をじっくりと見極めるのは難しいもの。また面接時にはマッチング性が高いと判断していても、採用後にミスマッチが発生する場合もあります。
さらに早期退職を招き、結果としてコストを費やしただけで終わってしまう恐れもあるのです。
面談を活用すると双方が同等の立場になり、入社後のミスマッチが減ります。面談では質問内容や相手の表情などから、相手の考えや距離感を図れるでしょう。一人ひとり時間をかけて相手を見極められるため、結果、人材を選びやすくなるのです。
気軽にアプローチできる
手軽さは面談の大きな魅力でしょう。面接は、面接相手だけでなく受ける側にも相当な準備期間を要します。またコストをかけたところで自社に対する興味が低く、よい反応が期待できない場合も。その点、面談であれば特別な準備を必要としません。
「本当に何も準備してこないなんて!」とマイナス評価を持つ担当者もいますが、これは大きな間違いです。あくまで面談はフラットな関係から相互理解を深める場。
つまり「面談相手は余計な先入観を持って身構えていない=お互いの立場が平等に近い関係」であることを意味しているのです。