MBAは、Master of Business Administrationの略で、日本では経営学修士と呼ばれています。経営学の大学院修士課程を修了すると与えられる学位のことです。
目次
1.MBAとは?
MBAとは、「弁護士」や「会計士」のような資格ではなく、経営学に関する学位です。
世界中にMBA教育機関(ビジネススクール)がたくさんあり、国際的な第三者機関が教育プログラムの評価・認証を行っています。ビジネススクール各校は国際認証を受けることで、教育の質の高さを証明しているのです。
年間のMBA取得者数は、本場アメリカでは10万人、日本では2,500人程度とされています。
MBAは何の略?
MBAとは、Master of Business Administrationの略で、日本では経営学修士と呼ばれています。
2.MBAの歴史
歴史をたどってみると、アメリカで1881年に設立されたウォートン・スクールが世界初のビジネススクールだとされています。その後、1908年に設立されたハーバード・ビジネス・スクールで、現在のMBAの基礎がつくられたといわれているのです。
ウォートン・スクール設立から35年後の1916年、MBAプログラムの認証を行う国際機関ができ、現在の発展につながりました。
3.MBAは資格なのか?
MBAは「弁護士」や「会計士」のような国家資格や業務独占資格ではなく、経営学の修士課程を修了すると授与される学位です。教育プログラムは、経営者や経営をサポートする管理職の育成を重視した内容となっています。
アメリカでは、上場企業の部長職の6割がMBA以上の学位を持っているといわれており、海外では実質的に「管理職資格」と見なされているようです。
4.MBAプログラムの概要や特徴、タイプ
MBAプログラムはそれぞれ、学費総額、履修期間、言語、通学かオンラインか、キャリアの中断の有無などで違いがあります。それぞれの概要や特徴を見ていきましょう。
MBAプログラムのタイプ
MBAプログラムは、4つのタイプに分かれます。
- 海外でのフルタイム
- 国内でのフルタイム
- 国内でのパートタイム
- オンラインでの受講
①海外でのフルタイム
企業から派遣される、もしくは退職や休職など仕事をしていない状況にて、海外でフルタイムで学ぶため、英語での授業についていける語学力を要します。授業の合計時間は4つのタイプの中で最も長いです。
- 履修期間:1~2年
- 修了までの学費総額:700万~2,000万円
- 言語:主に英語
②国内でのフルタイム
企業から派遣される、もしくは仕事をしていない状況で、日本国内のビジネススクールにて平日の昼夜間に全日制で学ぶものです。
その間に、留学やインターンシップの機会もあり実践的な経験ができるので、社会人にはキャリアの中断が必要になりますが、20代のうちであればメリットが大きくなります。
- 履修期間:1~2年
- 学費:120万~400万円
- 言語:主に日本語
③国内でのパートタイム
仕事を続けながら、国内のビジネススクールで土日や夜間に学ぶスタイルです。キャリアの中断、再開のリスクがありません。
近年、日本国内でMBA取得プログラムに在籍する人は、パートタイムが多くを占めるといわれており、世界的に見てもフルタイムの割合は減っています。
- 履修期間:最短で1~2年
- 学費:130万~340万円
- 言語:主に日本語
④オンライン
インターネットや通信機器を用いて、ビジネススクールに通学せずに自宅などで学ぶスタイルです。世界では、100以上のオンラインMBAが存在しており、受講者や取得者が今後、増加していくと予想されます。
国際認証機関もこの動きに対し、オンラインMBAプログラムには「最低120時間の対面授業」といった専用の認証基準を設けているのです。
- 履修期間:最短で1~2年
- 学費:100万~300万円
- 言語:提供元による
MBAプログラムで学ぶ内容、カリキュラム
MBAのカリキュラムは、優秀なマネジメント層を育成する目的を持ちます。マネジメント教育に求められる13のコンピテンシー開発に対応しており、「ヒト・モノ・カネ」の3要素からなります。
ビジネススクールによっては、テクノロジーといった要素を取り入れているところも。講義形式で知識をインプットする授業もありますが、企業事例を読んで分析・解決策を考える実践的な授業も多くなっているのです。
MBAで取得できる学位
ビジネススクールにはMBAに関連する学位のプログラムがあり、育成する人材の目安は以下の通りです。
- Executive MBA (EMBA):中核人材
- MBA:次世代リーダー
- Specialized MBA:特定産業リーダー
- Global MBA:グローバル人材
- MSc:専門家人材
EMBAとMBAの違い
EMBA(Executive MBA)は、MBAよりも実務経験豊富な社会人を対象とするプログラムです。入学時点で10年の実務経験を要します。MBAは独立志向が高い将来の起業家向け、EMBAは企業の中核を担う管理職候補向けという位置付けです。
PreMBAとは?
PreMBAとは、高卒以上から受講できるプログラムとなっています。一定時間(日本では120時間)以上修めると、履修証明が受けられるため、履歴書の学歴欄に記載できるのです。
MBA単科とは?
2年間学ぶのは難しい、専門の領域を深く学びたいといった要望に合った、学位ではないプログラムで、海外ではExecutive Educationといいます。社会人教育の一環や、企業の社員研修として普及しているのです。
5.MBAを取得するには?
MBAを取得するためには、カリキュラムが受けられるビジネススクールへの入学が必要です。
ビジネススクールの入試
海外のビジネススクールですと、英語の授業についていける語学力が必須となります。その上で、下記試験を受け、ある程度のスコアを出さなくてはなりません。
- 作文力、語彙力、数的能力を測る試験「GMAT」
- 英語力を測る「TOEFL」や「IELTS」
日本のビジネススクールですと、面接・書類審査・小論文・筆記試験といった入試になります。
MBAと言語
「自分は日本国内のビジネススクールだから、英語は不要」と考えていてははいけません。今後のビジネスは世界規模に広がっていくと容易に想像されます。
MBAを取得しても「英語が苦手」という意識から、グローバルな人材交流やビジネスチャンスから遠ざかってしまう可能性も。英語力は必須と考え、習得しておきましょう。
MBA取得にかかる費用
それぞれのタイプにおけるプログラム修了までの費用は、以下の通りです。
- 海外フルタイム:700万~2,000万円
- 国内フルタイム:120万~400万円
- 国内パートタイム:130万~340万円
- オンラインでの受講:100~300万円
このほか、さまざまな費用が発生します。たとえば、企業からの派遣ではなく海外で学ぶ場合には、渡航費用や生活費が必要となりますし、就業しておらずフルタイムの場合は、その間の生活のための費用などを考慮しなくてはなりません。
6.MBAと国際機関
MBAプログラムの品質を評価・認証する国際機関は、3つあります。
- AACSB
- AMBA
- EFMD
3つすべての認証を得ることを「トリプルクラウン(3冠)」と呼びます。世界には30校程度が存在し、ビジネス界の期待に応えられる教育・研究・運営が行われているかが問われているのです。
認証校同士のネットワークや、国際的な人材交流も盛んになっており、MBA教育の歴史が浅い日本でも、次第にその価値は注目されてきています。
7.MBAを取れば安泰ではない、知っておきたいMBAの注意点
日本国内でも、MBAを取得できるビジネススクールが増え、「憧れのMBA取得」も身近なものになってきました。しかし努力して勉強し、費用と時間をかけてMBAを取得しても、成果を出せない人も存在するのです。
それはなぜなのか、失敗してしまう人の4つの特徴を挙げていきます。
- MBAの学びが表面的な理解に終わる
- MBAさえ取れば成功できると思っている
- MBAでの学びを現代に合わせられていない
- MBAさえ持っていればいいリーダーになれると思っている
①MBAの学びが表面的な理解に終わる
表面的な理解に終わり、実際の場で発揮できないケースがあります。たとえば、分析の際に本来知りたいポイントを引き出せないという状況です。こうした状況を避けるには、多くの事例に触れたり分析を多く手掛ける人から学んだりするとよいでしょう。
②MBAさえ取れば成功できると思っている
著名な経営者や起業家には、多くのMBA取得者がいます。その人たちは常に向上心を持ち、努力をしており、人徳があり、社会貢献にも熱心です。
しかし、MBAプログラムを学ぶだけで、誰でもそのようになれるわけではありません。平素の心掛けや習慣化が重要なのです。
③MBAでの学びを現代に合わせられていない
現代社会は、日々変化しており、「自分が学んだ時は……」ということが通用しなくなる状況も多々。常に新しい知識や手法を吸収する姿勢が必要です。
また、IT技術も進化して調査や分析の方法も変わります。AIやIoTの視点も取り入れて、学びをつねにブラッシュアップしていきましょう。
④MBAさえ持っていればいいリーダーになれると思っている
プログラムを学んでMBAを取得すれば、「出世ができて収入が上がる」と思いがちですが、そうとは限りません。周囲に気を配り、俯瞰して物事を見て、適切に手段を講じられる人がリーダーシップを発揮できるのです。
MBAを取得する過程で、「ふさわしい人格と能力」を身に付けられるようにしていきましょう。