マッチポンプとは?【ビジネスでの意味】自作自演との違い

マッチポンプとは、自分で問題を起こして自ら解決するという流れによって、利益や評価を得ること。マッチポンプの語源や意味、事例などについて解説します。

1.マッチポンプとは?

マッチポンプ(match-pump)とは、自らマッチで火をつけておいてポンプの水をかけ、火を消してヒーローになること「英語のマッチ(match」)とオランダ語の「ポンプ(pump)」というふたつの単語を組み合わせて誕生した和製英語です。

ビジネスの場では、自分でわざと問題を起こして自ら解決し、利益やまわりからの称賛を得る行為について使われます。

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2.マッチポンプの語源

マッチポンプは英語とオランダ語を組み合わせた和製外来語です。この語が広まったきっかけは、日本の国会だったといわれています。

由来は政治家の発言

マッチポンプという語が知られるようになったのは、国会議員の発言。1961年の国会で、国会議員が政府政策の矛盾をマッチとポンプにたとえた記録が残っています。

具体的には、「公共料金を値上げして物価上昇に火(マッチ)をつけておいて、物価上昇の抑制(ポンプ)が重要とみせかけている矛盾だらけの方針がおかしい」と政府を指摘した発言。

ただし実際には、いつの時代から誰が使い始めた言葉なのか、明確なデータは残されていません。

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3.マッチポンプが行われた事件

マッチポンプは、1960年代の国会での発言をきっかけに使われはじめ、のちに議員や消防団員による事件が発生しました。そして多くの人々に、マッチポンプという言葉が知られるようになったのです。

政界のマッチポンプ事件

1966年、政財の癒着関係を問題視していた田中彰治代議士によるマッチポンプ騒動です。

田中代議士は、衆議院決算委任理事の肩書を利用して、政府関係者のあらゆる癒着問題を指摘しては非難を浴びせていました。しかしその裏では、当事者へ「これ以上大事にしてほしくなければお金を払え」といった恐喝行為を行って金銭をだまし取っていたのです。

国民をあざむくような行為だと世間からは非難が殺到。事件を機に、この年は自民党を中心とした財政界から不正や不祥事が次々と明るみに出ました。そしてきっかけとなった田中代議士の恐喝事件とともにマッチポンプという語が浸透していったのです。

消防団のマッチポンプ事件

2015年には、日本の消防団に所属する男性が、建物に火をつけて自分で119番通報。自ら出動して放火現場で消化活動にあたり、感謝状をもらうという事件がたびたび発生しています。

犯人のひとりは「消防団として出動する機会が欲しかった」と供述。しかもこの犯人は、過去にも同じ容疑で2回逮捕されていたのです。

このようなマッチポンプ行為は国外でも発生しており、イタリアでも報酬目的で放火しては消火活動にあたる行為を繰り返すという事件が起きています。

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4.マッチポンプと自作自演の違い

マッチポンプの類義語に「自作自演」があります。同じような意味と捉えられがちであるものの、そこには「悪意の有無」という明確な違いがあるのです。

自作自演とは?

本来の自作自演とは、自ら計画を立てて本人が実行すること。たとえば「自分でレシピを考えて調理する」「自分で作った曲を自分で演奏する」などがあたります。

しかしSNSやインターネットが普及した昨今、自作自演という語の使い方が変わってきました。ネット上では、ひとりが複数人になりすませて活動しているようにみせかける行為を、自作自演と呼ぶようになったのです。

さらに転じて、「口コミの偽装」や「自分をよくみせるための行為」なども自作自演と呼ばれるようになり、ネガティブな意味が含まれるようになりました。

自作自演との違い

自作自演とマッチポンプの言葉の違いは、悪意があるかどうか。

自作自演とは本来、自分で計画を立て、自ら楽しんだり実行したりする様子を指し、誰にも迷惑をかけません。

しかしマッチポンプは、自分が利益を得るために、もめ事をわざと起こします。自分が得をするために他者へ迷惑をかけている点で、悪意があるとみなせるのです。

自分が起こした出来事を収拾して称賛されたとしても、事件の発端に故意や悪意がなければ、マッチポンプではありません。

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5.ビジネスにおけるマッチポンプの事例

ビジネスにおいて、マッチポンプは営業手法のひとつでもあります。たとえば相手の不安を煽るような問題をわざと提起して、その問題を解決できるような商品やサービスを提供する方法です。

ただし過度な行為は「マッチポンプ商法」とみなされ、企業にとってマイナスイメージになる場合も多いので注意が必要です。ここではマッチポンプ商法の事例を紹介します。

マッチポンプ商法の事例

マッチポンプ商法とは、何も問題がないところに自ら問題を起こしてターゲットの不安を煽り、それを自ら解決してお金を稼ぐビジネススタイルのこと。

一見営業テクニックのように感じるものの、マイナスイメージが強いためビジネスではタブーとされてきました。しかし今でもさまざまな業界で用いられるケースがあるのです。

  1. ステルスマーケティング
  2. 害虫駆除詐欺
  3. 不必要な医療行為

①ステルスマーケティング

影響力がある第三者による広告や宣伝といったマーケティング活動のこと。ステルス(stealth)は、「隠密に」「こっそり」といった意味の英語です。

たとえば芸能人やインスタグラマーなどに、さりげなく商品やサービスを紹介してもらったり、口コミを投稿してもらったりして購入者を増やす手法が該当します。

商品やサービスの広告に芸能人を起用している場合は問題ありません。

しかし宣伝と知られないように紹介してもらうステルスマーケティングは、「自分の好きな芸能人が愛用しているものであれば欲しくなる」という人の感情を悪用しているとも取れます。そのためステルスマーケティングは、マッチポンプ商法といわれるのです。

②害虫駆除詐欺

実際には住み着いていない害虫を駆除業者が事前に放ち、「害虫の問題があるから早く駆除したほうがよい」と不安を煽って害虫駆除契約を結ばせる行為のこと。

本来なら生じない害虫被害を作りだしているため、悪意が存在するマッチポンプ行為です。このような手段を使うのは悪質な業者が多く、駆除料金が相場よりもかなり高額であったり、料金に不必要なアフターケアが含まれていたりする場合もあります。

③不必要な医療行為

マッチポンプ手法は、動物医療の現場で使われるケースもあります。

たとえば動物病院では必要のない薬を動物に処方し、薬が起こす副作用を軽くするためさらに薬を処方するといった事例が見られました。不必要な薬を与えて動物の健康に害をおよぼすため、悪意を持ったマッチポンプといえます。

マッチポンプ商法によるリスク

マッチポンプ行為が明らかになると、社会的信頼を失うでしょう。さらに過度な行為は詐欺罪の対象となりえるのです。

また誤解を招く行為を避ける必要もあります。言いがかりや誤解からマッチポンプだとされてしまう場合もあるからです。

近年、ネットやSNSによって短時間のうちに情報が拡散されてしまいます。一度「マッチポンプする企業」というイメージが広まってしまったら、払拭するまでに時間がかかるでしょう。

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6.マッチポンプの使い方・例文

マッチポンプという語はネガティブな意味を含むため、社外で使用するとマイナスのイメージを与える恐れもあります。ビジネスシーンでは、自社での使用にとどめておくほうが無難でしょう。ここではマッチポンプの例文を紹介します。

例文紹介

マッチポンプを使った例文は、ビジネスシーンだけではありません。日常生活での使い方も含めた例文は以下のとおりです。

  • あの取引先はマッチポンプ商法で話題になったから、取引するまえによく調べるべきだ
  • 手荒れする洗剤を売っているメーカーが、手荒れに効くハンドクリームも販売しているとマッチポンプに見えてしまう
  • ウイルスメールを送り付けて、被害者にウイルス対策ソフトの営業メールを送っている企業がある。これはマッチポンプ商法かもしれない

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7.マッチポンプの類語

マッチポンプには、同じような意味を持つ類義語がいくつかあります。正しく使い分けるためにも、それぞれの意味を理解しておきましょう。

  1. やらせ
  2. 捏造
  3. ひとり芝居
  4. 自己完結
  5. 狂言

①やらせ

過剰な演出や事実とは異なる状態を意図的に作り上げているにもかかわらず、あたかもそれが本当のようにみせること。

メディア業界にてよく使われる手法で、テレビ番組における「やらせ」と「演出」のボーダーはグレーゾーンといえます。たとえば「素人の人にインタビューをしているように見せているが、実は話す内容を事前に伝えていた」といった状況は「やらせ」です。

やらせと発覚した場合、番組の打ち切りに発展することもあります。

②捏造

本当はありもしないことを、事実として偽造すること。根も葉もないことを作り上げ、都合のよいようでっちあげる行為があたります。

論文においても捏造がたびたび発覚。研究データや性能検査などで、実際には存在しないデータを意図的に作り上げたり、改ざんしたりなどです。また過去には、ほかの論文で使用されていたデータを自分で研究したものとして発表するケースもありました。

論文が世界で認められれば、評価はもちろん製品化で大きな利益を得られます。しかし自分たちの利益や評価を目的としたでっちあげ行為であるため、捏造が発覚すれば信用を大きく失うでしょう。

③ひとり芝居

ひとりで複数の人を演じること。マッチポンプも自分で問題を提起して自ら解決するので、ひとりで複数を演じている点が類似しているといえます。

しかしひとり芝居はその行為によって利益や評価を求めません。そのためひとり芝居を、ネガティブな意味で使う場合は少ないのです。一方、マッチポンプは、悪意をもった行為とみなされます。

④自己完結

発生した問題や事柄に対して自ら行動して、自分で解決や納得すること。自分ひとりで問題を解決する点はマッチポンプと同じであるものの、自己完結は利益を得る悪意のある行為ではありません。

ただしまわりの人から見ると、何も解決していないのに自分ひとりだけ納得している状態に見えます。このような状態は「ひとりよがり」とも表せるでしょう。

⑤狂言

本来、対話を中心として人を楽しませる伝統芸能のこと。ただし「狂言誘拐」のように、ありもしないことで人をだます作り事の意味で使われる場合もあります。この場合、自作自演と同じ意味といえるでしょう。

狂言が現代のような作り事のような意味で使われるようになった由来は、定かではありません。本来の狂言は会話で人を笑わせる演劇だったため、いつしか冗談やおおげさな表現が嘘をつく行為につながり、作り事で騙すといった意味が生まれたと考えられます。