黒字リストラとは? 意味、背景、対象者と企業、影響、整理雇用として認められる要件について

赤字=リストラのイメージがあるなか、少し矛盾して見える黒字リストラとは一体何でしょう。黒字リストラの背景や理由、企業に及ぼす影響について解説します。

1.黒字リストラとは?

黒字リストラとは、将来を見据えた企業構造の再構築を目的として行われるリストラのこと。業績不振で赤字の企業が行うリストラの目的は、人員削減・整理。しかし赤字企業だけがリストラを行うわけではありません。

黒字リストラによって、日本企業に根付く年功序列の文化や賃金形態を見直し、若い世代を中心とした健全な組織風土を醸成させるのです。年功序列から実力主義に変わるため、自律型従業員が育ち、将来的に企業へよい影響をもたらすといわれています。

赤字企業だけがリストラを行うとは限らず、赤字だからといってリストラを実行するとも限りません。リストラは基本的に不採算部門からの撤退や縮小、有望な事業への経営手段を集中させるための合併や事業の売却、従業員の人員削減を手段として実行します。

最近では人員削減に踏み切る「先行型」企業も。製薬企業では増収増益にもかかわらず、薬価引き下げなどによる事業環境の悪化を想定し、構造改革を急ぐ動きが見られるのです。

リストラと聞くとマイナスなイメージが先行してしまうでしょう。しかし業績良好のなか、企業の将来を見据えたリストラも存在するのです。企業が生き残る有効な手段とも捉えられるでしょう

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2.国内におけるリストラの状況

誰もが予想できなかった新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、早期や希望退職の募集といった人員削減が行われ始めています。世界的に景気悪化が広がり、国内でも上場企業の業績下方修正が相次いだためです。

新型コロナウイルス感染拡大前に、多くのBtoC企業は外出自粛や緊急事態宣言の影響を受け、店舗や工場の閉鎖で人手減らしを迫られました。先行型の黒字リストラではなく、業績不振を要因とした赤字リストラが蔓延しています。

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3.黒字リストラが行われる背景

黒字リストラは、企業を取り巻くさまざまな背景が要因となって進みます。大企業を中心に根付く年功序列型賃金体系は、バブル大量入社組を中心とするシニア従業員の賃金がもっとも高くなる傾向にあり、ボリュームコストになっているのです。

この大きな要因を中心としてさまざまな問題を解消するため、黒字リストラに踏み出す企業が多いとされています。

  1. 企業の体質改善
  2. 退職年齢の引き上げ
  3. 年齢構成の解消
  4. 業務の効率化
  5. グローバル化への対応

①企業の体質改善

業績良好だとしても、今後の競争に打ち勝つには「効果的に利益を生み出す事業構造」「コストの大部分を占める年功序列による人件費の見直し」が必要です。事業変容に必要な人材資源の育成や確保を背景に、リストラという手段を利用する場合もあります。

②退職年齢の引き上げ

退職年齢の引き上げも、黒字リストラが行われる背景の一つです。「70歳定年法」を政府が主導している関係から、5年後の2025年には労働者人口の6割が45歳以上になるという統計もあります。

企業内で最も大きな固定費となる人件費が大きくかさむと予想され、割り増し分を上乗せしてでも、業績が良好なうちに希望退職や早期退職を進めるのが得策と判断する企業が増えているのです。

③年齢構成の解消

黒字リストラによって年功序列文化が薄れ、企業内における年齢構成の解消が進んでいる点も背景にあります。企業内にはさまざまな年齢層の従業員が同時に存在しているため、年齢に伴う問題が生じるのです。

しかし改正高年齢者雇用安定法の施行により、非正規雇用の増加に伴う年齢にとらわれない働き方という考えも広がり始めました。年功序列で給与があがる企業は、こうした背景を前向きに捉え、黒字リストラを実行している場合があります。

④業務の効率化

IT化に伴い、パターン化された定型業務(非知識業務)を、人工知能(AI)によって自動化する動きもあります。

これによりホワイトカラーの働き方に、大きな影響をもたらしたのです。黒字リストラを行い、捻出された費用でさらなる業務化を目指しているケースもあります。

⑤グローバル化への対応

急速なグローバル化の影響を受けている昨今、上場企業を中心に必要なのは、急激な時代や環境の変化に対応できる柔軟性や、新たな発想力を持つ人財といわれています。

「利益を生まない」「高い給与対象者のコスト」で予算を圧迫していては、グローバル競争に打ち勝てません。黒字リストラを実行し、激しい競争に勝つための手段を選択しなければいけないという環境も、背景のひとつといえるでしょう。

企業を取り巻くさまざまな背景により、業績良好の中で実行される黒字リストラ。新陳代謝や企業を安定的に存続させるための先行投資という考えで判断される、重要な経営方針といえます

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4.黒字リストラの対象者と企業

企業の損益が黒字状態にもかかわらず、黒字リストラに踏み切る企業、またリストラの対象者となる人材にも特徴があります。実力主義の企業を中心に、単純に早期退職や自主退職者を募るのではなく戦略的な経営計画にのっとり、人選されている傾向にあるのです。

リストラの対象者

年齢だけでリストラの対象者を決めている企業もありますが、一概にそうとは限りません。

年功序列から実力主義の企業文化が浸透しつつある今、激しく変化するマーケットに柔軟かつ迅速に対応できなければ、成果を生み出せず評価対象になれないのです。

現在、人件費を圧迫している可能性も高いとされる中高年がリストラの対象になる可能性は高いでしょう。

黒字リストラを行う企業

黒字リストラを遂行する企業の多くは、先進的な大企業です。これまで大量採用し、量で賄ってきた業務を見直しています。

中高年層への手厚い賃金を、デジタルやグローバル人材といった若年層の人材配置の適正化に充てるという方針転換をし、黒字リストラを手段として選ぶ大企業が増えているのです。

人材配置を見直すと同時に評価軸も改定し、実力主義の方針を取り入れている企業が増加しています。

リストラ方法は希望退職が中心

リストラの手段は、「希望退職」「退職勧奨」「整理解雇」の3つで、大手企業のリストラは法的なリスクが少ない希望退職を中心としています。

希望退職では、企業が割増された退職金の支給などの、従業員側に利益のある措置を提示するのです。そして社内で退職者を募集し、従業員との合意があれば、雇用関係を終了させられます。

ただし対象者の人数によっては費用がかさむ場合も。しかしあくまでも合意のうえで退職するため、法的なリスクが小さくなる点は大きなメリットでしょう。

通常のリストラと違い、黒字リストラをする企業にもリストラ対象者の選び方に特徴があります。両者とも合意のうえ、リスクの少ない形で実行するとよいでしょう

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5.黒字リストラがもたらす影響

黒字リストラと政府が主導する「70歳定年法」の導入により、中高年の転職市場が拡大しているため、副次効果が期待できる可能性も高いです。経験豊富な中高年は即戦力として中小企業からの需要が高いため、人手不足の解消に貢献できるかもしれません。

中小企業における人材不足解消

大企業を中心に大規模な黒字リストラが行われると、転職市場に人材が流入します。建設土木関係の現場や、介護事業といった身体的に負担の大きい業務に従事してくれる労働力など、特定分野は慢性的な人手不足に悩まされているもの。

大企業のリストラをきっかけに、中小企業を中心に人手不足解消の問題解決に貢献できる可能性も高いでしょう。

大手企業のノウハウ継承

黒字リストラが大企業で行われている点に着眼し、大企業でつちかった能力などを求める企業が中小企業を中心に増えているのです。

採用時点で企業規模によって重視される点が異なります。たとえば「大企業でつちかった新たな課題や価値を創り出すスキルがある人材を探している」などです。そのため大企業のノウハウが継承されているといえます。

起業数の増加

リストラ対象となり次のキャリアを検討する際、起業する手段があります。黒字リストラの加速により起業を選び、被雇用者から経営者を選択する人が増える可能性もあるのです。

しかし逆境の脱却を目的として起業に踏み切る場合、うまくいかない場合も多くなります。時間をかけて事業を選択し、十分な勝算を持って起業するとセカンドキャリアもうまくいくでしょう。

黒字リストラは、企業の未来も従業員の人生も変える力があると同時に、転職市場など企業を取り巻く環境にも大きく影響を及ぼす企業判断です

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6.黒字リストラが整理雇用として認められる要件

黒字リストラでは、企業との雇用契約が終了し解雇の形になります。

日本の法律は解雇に対して非常に厳しいです。労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利を濫用したものとして、無効とする」とあるため、無条件解雇はできません。

「人員整理の必要性、解雇回避努力義務の履行、人選の合理性、労働者への説明や協議」などの条件を満たしていなければ、整理解雇として認められないのです。

人員整理の必要性

経営悪化に伴ってやむを得ず人員整理を決断し、手段として解雇する方法を整理解雇と呼びます。従業員側の事由を直接の理由としないため、より厳しい制約が課されており、容易に実行できません。

不採算部門での余剰人数がどれくらいなのかなど、具体的な根拠を示す必要があるのです。企業として誠実な対応が求められるでしょう。

解雇回避の努力義務の履行

整理解雇は従業員に責任のない、やむを得ない企業側の判断として実行されるものの、できる限り整理解雇を避ける努力が必要となるのです。「企業の経営状況」「企業規模」「従業員構成」などを前提に、企業別に解雇回避努力義務が判断されます。

努力義務の具体例として一般的に挙げられるのは、「残業の削減」「勤務時間短縮の措置」「新規採用の削減や中止」「社内での配置転換」「別部署への異動」などです。

被解雇者選定の合理性

整理解雇の実行を決め、解雇の対象者を選定する際はまず、合理的かつ客観的な選定基準の設定が必要となります。

一般的な基準は「能力」「勤務成績」「勤続年数などの企業への貢献度」「年齢」「再就職の可能性など生活に与える影響」です。これらを従業員間の公平性を保ちながら設定します。判断基準を定めずに解雇者を選定した場合、権利濫用として解雇無効になるかもしれません。

手続きの妥当性

整理解雇では、手続きの妥当性が重要になります。「解雇対象者への説明」「労働組合または従業員の過半数を代表する者との協議」を進めて、整理解雇に納得してもらうための努力を尽くすといった、企業側の誠実な対応が不可欠なのです。

説明や協議、納得してもらうための手順などを無視した整理解雇は、ほかの条件を満たしていたとしても、無効になる可能性が高まります。

整理解雇の有効性をどう判断するかは、非常に難しいです。整理解雇しなければならない局面になったら、過去の裁判例などを参考に慎重な形で検討しましょう

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7.黒字リストラされないために従業員がすべきこと

終身雇用が崩れ始め、IT化・AI化も進み、大企業に勤めていてもリストラの対象になる可能性があります。現状維持するためのルーティン業務や型にはまった処理しかできない人は、年齢によらずリストラの対象になる可能性が高いでしょう。

一方、「自ら新しい知識やスキルを学ぶ」「柔軟に対応しようとする」従業員を企業は重宝するようになるのです。リストラの対象にならないためには、役立つスキルや能力を磨く必要があるでしょう。

  1. キャリアアップを図る
  2. 職場との関係性を高める
  3. 執拗な退職勧奨は断れる

①キャリアアップを図る

昨今、急速なグローバル化や技術革新、顧客ニーズや商品ニーズの高度化が進んでいます。そのなか、「〇〇さんと仕事がしたい」といった個人単位で仕事を受注するケースもあるのです。自身に必要な能力を判断し、キャリアアップを図りましょう。

②職場との関係性を高める

「上司との関係が良好かどうか」は働きやすさに大きな影響を与えます。また周りの同僚や先輩との従業員間コミュニケーションを意識して取ると、社内での孤立を避けられます。それによりリストラの対象者となりにくくなるでしょう。

③執拗な退職勧奨は断れる

退職勧奨とは、企業側が雇用関係のある従業員を自発的に退職する意思を形成させる行為のこと。「肩たたき」と呼ばれる場合もあります。

勧奨される従業員は理由にかかわらず、合意があって初めて退職となるため、企業側が一方的に契約を打ち切る解雇予告とは異なるのです。つまり退職勧奨は、断れます。

企業側もリストラを実行しないよう努力する義務があると同時に、従業員も企業へ貢献するという意思のもと自発的な能力開発に努める必要があるのです。両者が納得・合意できる最適な手段を決断しましょう