厚生年金の加入条件とは? 年齢、メリット、義務化

厚生年金の加入条件は、平成28年10月から変更となりました。そのため厚生年金の適用内となる中小企業が、増加しています。ここでは厚生年金の加入条件や具体的なメリット、手続き方法について見てみましょう。

1.厚生年金の加入条件とは?

平成28年10月から厚生年金保険制度の内容が変わり、厚生年金への加入義務が適用される中小企業も増加しています。厚生年金は、事業所と従業員それぞれで加入条件が設定されており、条件適用内の事業所や従業員は厚生年金に加入しなければなりません。

厚生年金とは?

厚生年金とは、国民年金に上乗せされて給付される年金のこと。被保険対象者は一般企業に勤めるサラリーマンや公務員です。毎年4~6月の給与を元に計算した金額と、ボーナスに対して共通した保険料率をもとに計算されます。

そのうちの半分は事業主、残りの半分は加入した従業員が負担して保険料額が確定するのです。なお厚生年金保険の支給額は、加入していた期間の長さや払ってきた保険料の額によって異なります。

間違いやすい「国民年金」とは?

「国民年金」とは、20歳以上60歳未満の国民全員に加入義務のある年金で、「基礎年金」とも呼ばれます。支給開始年齢は厚生年金と変わらず65歳以上ではあるものの、保険料は年収により変動はせず一律(毎年見直しあり)です。

国民年金の支給額は加入期間に応じて決まります。加入期間が満期の40年間あり、全期間で保険料を納めた場合、老齢基礎年金が満額支給されるでしょう。

事業所側の加入条件について

厚生年金は、下記いずれかに該当すると加入義務が生じます。

  • 常時従業員を使用する株式企業や、特例有限企業などの法人の事業所または国、地方公共団体(事業内容問わず)
  • 常時5人以上の従業員を使用する個人事業所(旅館、飲食店、理容店などのサービス業は除く)

船員が乗り組む一定の条件を備えた汽船や漁船などの船舶です。

従業員側の加入条件について

厚生年金に加入できる被保険者は、4種類に分かれます。基本、臨時に使用される人や季節的業務に使用される人を除き、就業規則や労働契約などに定められた一般従業員の所定労働時間、および所定労働日数の4分の3以上ある従業員です。

労働形態により異なり、4パターンに分類されるので、それぞれの加入条件を知っておきましょう。

当然被保険者とは?

「当然被保険者」とは、国籍や性別を問わず適用事業所に常時雇用される70歳未満の人のこと。しかし以下に該当する従業員は、当然被保険者の対象外です。

  • 臨時従業員で日々雇い入れられる人
  • 臨時従業員で2カ月以内の期間を定めて使用される人
  • 事業所の所在地が一定しない企業の従業員
  • 季節的業務の臨時従業員
  • 臨時的事業の事業所の従業員

任意単独被保険者とは?

「任意単独被保険者」とは、適用事業所以外で働く70歳未満の人(適用除外者を除く)のこと。事業主の同意を得て厚生労働大臣の認可を受けると、厚生年金保険の被保険者の資格を得られます。

ただし厚生年金に任意加入すると、厚生年金保険料の半額が事業主負担となるため、事業主の同意が必要です。

高齢任意加入被保険者とは?

「高齢任意加入」は、70歳になっても老齢年金を受給できない場合に、厚生年金の被保険者になれる制度です。

老齢年金の受給資格期間(平成29年8月からは10年)適用外の人が70歳以降も事業所で働くとき、勤務している事業主を管轄する年金事務所へ書類を提出すると、高齢任意加入の被保険者となり、受給権利を得られます。

必要書類は「厚生年金保険高齢任意加入被保険者資格取得申出申請書」です。日本年金機構のホームページからダウンロードできるので、書類を用意してから事務所へ出向きましょう。

パート・アルバイトの加入条件について

フルタイムの正規従業員だけでなく、パートやアルバイトも加入対象となる場合があります。

適用事業所に常時使用されている雇用形態での「1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数」が、同事業所で同様の業務を行っている一般従業員の4分の3以上を満たしている場合、強制加入させなければなりません。

また「週の所定労働時間が20時間以上」「勤務期間1年以上またはその見込みがある」「月額賃金が8.8万円以上」「学生以外」「従業員501人以上の企業に勤務しているという短時間勤務の従業員」の要件を満たしている場合も対象となります。

社会保険の適用範囲が拡大された結果、従業員の状況に応じて申請書の様式が変わりました。法改正や特例がある際は、そのたびに様式が変更されるので、対応方法に注意しましょう

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2.厚生年金保険の加入条件に該当しない人

事業所に勤める従業員全員が厚生年金の被保険者になると限りません。ここでは厚生年金保険の加入条件に該当しない人について、見ていきましょう。

  1. 日雇い労働者
  2. そのほか加入条件に該当しない人

①日雇い労働者

日雇い従業員は、日々雇用される人と、30日以内の期間を定めて雇用される人が該当します。連続した2カ月間のそれぞれの月で18日以上、同じ事業主が経営する事業所に雇用された場合も同様です。

いずれも厚生年金の対象ではありません。同じ事業主が経営する事業所で31日以上雇用された場合は、規定日から一般被保険者、または短期雇用特例被保険者として取り扱われます。

②そのほか加入条件に該当しない人

ほかにも被保険者とならない条件が4つあります。

  • 2カ月以内の期間を定めて使用される人
  • 所在地が一定しない事業所に使用される人
  • 季節的業務(4カ月以内)に使用される人
  • 臨時的事業の事業所(6カ月以内)に使用される人

所在地が一定しない事業所に使用される人は、いかなる場合も被保険者になれません。

日雇い従業員は厚生年金の被保険者にならないため、注意が必要です。また今は被保険者にならなくても、一定の条件を満たして被保険者になる場合もあります。従業員の状況と条件も把握しておきましょう。

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3.平成28年10月から厚生年金保険の加入対象拡大

平成28年10月から社会保険(厚生年金保険、健康保険)の加入範囲が拡大し、週30時間以上働く人にくわえ、従業員501人以上の事業所で週20時間以上働く人も対象になりました。

さらに平成29年4月からは、従業員500人以下の事業所で働く人も、労使の合意によって社会保険に加入できます。多くの人がこれまでより手厚い保障を受けられるようになったのです。

新たな加入対象者

以下5つの条件を満たす短時間勤務の従業員も、労使で合意がなされれば社会保険加入の対象となります。

  • 1週間あたりの労働時間が20時間以上(残業時間は含まない)
  • 1カ月あたりの賃金が88,000円以上(賞与や残業時間、通勤費は含まない)
  • 雇用期間見込みが1年以上
  • 学生ではない(夜間や通信、定時制の学生は加入対象になりうる)
  • 従業員501名以上(特定適用事業所)の事業所で働いている場合、もしくは従業員500名以下で社会保険加入について労使で合意されている場合、どちらか

厚生年金を含む社会保険加入の範囲が拡大した結果、多くの中小企業でも対応が必要となっています。従業員が安心・安全に働ける環境を生み出し、企業活動を円滑に行うためにも、労働関係法令の内容を正しく理解し、遵守しましょう

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4.厚生年金に加入するメリットとは?

厚生年金は、企業年金の一種です。厚生年金保険料の一部を代行部分として運用し、その運用益によるプラスアルファ部分を公的年金に上乗せ支給する形になっています。

企業や事業所にとっては費用の負担が大きくなるものの、企業や事業所、従業員双方にメリットが生じるのです。

企業にとってのメリット

たとえば下記のようなものです。

  • 運用益を上乗せ給付するため、退職金の資金として活用できる
  • 経費として認められるため税制面での実質負担が軽くなる

厚生年金は社会保険でもあり、従業員が働く労働環境のひとつです。きちんと加入させると社会的信頼や従業員満足度などのアップにつながるでしょう。

従業員にとってのメリット

厚生年金の保険料は労使折半のため、全額自己負担である国民年金保険よりも金銭的負担を軽減できます。

また老齢基礎年金の支給要件を満たしていなくても、加入期間が1カ月以上あれば、「厚生年金の受給開始年齢から加入従業員として掛金を納めた期間に相当する年金」が支給されます。

パート・アルバイトにとってのメリット

アルバイトやパートの従業員でも、一定条件を満たすと厚生年金の加入義務が発生します。厚生年金に加入できれば、さまざまなメリットを得られるでしょう。

たとえばケガや病気など働けなくなったときや、女性であれば出産後の休業中の手当など。国民健康保険や国民年金よりも手厚い保障を受けられます。

厚生年金の加入は、企業にとってコストがかかるもの。しかし長期的な目で見ると、企業と従業員、双方にさまざまなメリットをもたらすのです

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5.厚生年金加入で受け取れる年金の種類

公的年金である厚生年金に加入し、保険料を支払ったうえで一定の条件の適用内である人は、病気やケガ、亡くなったときや休職したときなどに基礎年金を受け取れるのです。ここではその種類について解説します。

  1. 老齢年金
  2. 障がい年金
  3. 遺族年金

①老齢年金

老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合、65歳から受け取れる年金です。また20歳から60歳までの40年間、すべての期間で保険料を納めた人は、65歳から老齢基礎年金を満額受給できます。

②障がい年金

「障がい年金」は、障がいや病気によって生活に支障が出た場合に受け取れる年金です。年金という名ではあるものの、若年層にも支給され、働きながら受け取れます。

障がい年金には「障がい基礎年金」「障がい厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに厚生年金に加入していた場合、「障がい厚生年金」が請求できます。

③遺族年金

「遺族年金」は、厚生年金などの被保険者が亡くなった場合、残された家族に対して支給される年金です。細かい条件はあるものの、主に亡くなった厚生年金加入者が養っていた配偶者や子などが受給の対象となります。

受け取れる遺族年金の金額は、亡くなった人の職業や子どもの有無、給与や支払ってきた厚生年金の保険料などをもとに計算されるのです。

厚生年金にはどういった公的保障があるのか、理解しておくとよいでしょう。大切な従業員の不安を減らしたり、生活を守ったりしていけます

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6.加入条件とあわせて知っておきたい厚生年金加入の注意点

厚生年金の加入義務があっても、加入の際にはいくつかの注意点があります。ここでは、企業や事業所が厚生年金に加入する際の注意点や、加入義務を怠った場合の罰則について解説します。

  1. 金銭的な負担
  2. 厚生年金不加入による罰則
  3. 条件の拡大解釈による未加入

①金銭的な負担

厚生年金は無料で加入できるわけではありません。厚生年金は給料の18.30%を保険料として算出します。そして企業や事業所と従業員が折半して保険料を9.15%ずつ支払うのです。

資本金が多くない中小企業は、厚生年金保険料の負担によって、財政状況が圧迫される可能性も考えられるでしょう。任意加入の際は、事業の戦略や財政状況についてもよく吟味して検討する必要があります。

②厚生年金不加入による罰則

政府は社会保険に未加入の企業や事業所に対し、加入指導などの対策を講じています。加入指導に従わない場合、立入検査のうえ、加入手続きを行うのです。立入検査を拒否すると6か月以上の懲役または50万円以下の罰金といった罰則が科せられるでしょう。

また社会保険に加入する必要がある従業員を加入させていない場合、同様の罰則が発生する可能性も高いです。

③条件の拡大解釈による未加入

厚生年金適用外の条件である「2カ月以内の期間に定めて使用される従業員」を拡大解釈し、保険料を払わない事業主が増加しています。

「正規労働者での雇用にもかかわらず、最初の2カ月を試用期間と設定し非正規契約とする行為」「非正規契約の反復更新を繰り返して意図的に2カ月の労使に見せかける行為」は、従業員の権利を蔑ろにするとして認められていません。

厚生年金への加入は企業の義務です。違反すると罰則もあるため、正しく理解して運用しましょう

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7.厚生年金の新規適用の手続きについて

「新規適用」とは、企業や事業所が初めて社会保険に加入する手続きのこと。未加入の事業所や新規立ち上げ企業が新規適用の手続きをするには、必要な書類をそろえて事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出しなければなりません。

手続の内容

下記のような場合、厚生年金保険および健康保険(協会けんぽ)への加入義務があります。

  • 法人事業所で常時雇用の従業員が働く事業所
  • つねに5人以上の従業員が働く事業所
  • 工場や商店などの個人事業所

事業所が厚生年金保険および健康保険への加入手続を放置し、未加入の従業員がいる場合、「新規適用届」を提出しなければいけません。

添付しなければいけない書類

申請時に添付する資料は、事務所の形態ごとに分かれます。各形態で必要な書類は以下のとおりです。

  • 法人事業所の場合は法人(商業)登記簿謄本(コピー不可)が必要
  • 事業主が国や地方公共団体または法人である場合、法人番号指定通知書といった書面のコピーが必要
  • 強制適用となる個人事業所は事業主の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)が必要

原本の場合、直近の状態を確認するため、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものでなければいけません。

手続時期と場所および提出方法

手続きおよび必要書類の提出は、事実発生から5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所に電子申請・郵送・窓口持参の方法で対応します。

事業を行っている事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合、事業を行っている事業所の所在地を管轄する事務センター(年金事務所)へ提出しましょう。

新規適用の申請をする際には必要な書類や手続き方法が決められています。ルールを再度確認してから申請しましょう