企業型確定拠出年金とは? 個人型との違いや利用するメリット・デメリットについて

企業型確定拠出年金とは、年金資産運用制度のひとつです。ここでは、メリットやデメリットも含めて解説します。

目次

1.企業型確定拠出年金とは?

企業型確定拠出年金とは、「企業が毎月掛金を積み立てる」「従業員は加入者となり、自ら掛金をもとに、運用商品の選択を行う」「定年退職を迎える60歳以降、積み立てた年金資産を一時金や年金の形式で受け取る」といった特徴を持つ年金資産運用制度のこと

将来受け取れる金額は運用成果によって異なる

企業型確定拠出年金制度では、将来受け取れる金額は運用成果によって異なります。

企業が拠出した掛金を従業員自身が運用するため、運用商品の組み合わせによって将来受け取れる金額が変わるのです。従業員は、インターネットやコールセンターなどを活用し、世の中の動向に応じて適宜運用を見直す必要があります。

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2.企業型確定拠出年金の税制優遇措置について

企業型確定拠出年金には、税制優遇措置があります。下記3点について解説しましょう。

  1. マッチング拠出の税制優遇措置
  2. 運用で得た利益は非課税に
  3. 退職所得控除・公的年金等控除が受けられる

①マッチング拠出の税制優遇措置

マッチング拠出とは、従業員が一定の範囲内で掛金に上乗せ拠出できる制度のこと。利用した場合、従業員自身の拠出する掛金分が全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されるのです。

②運用で得た利益は非課税となる

一般的な金融商品を活用して資産運用する場合、運用益に対し約20%が課税されます。しかし企業型確定拠出年金を運用して得た運用益は、全額が非課税となるのです。

③退職所得控除・公的年金等控除が受けられる

積み立てた年金資産は60歳以降、一時金か年金のどちらかで受け取ります。このとき、「一時金であれば、退職所得控除」「年金であれば、公的年金等控除」といったように税制優遇措置を受けられるのです。

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3.個人型確定拠出年金と企業型確定拠出年金の違い

個人型確定拠出年金と企業型確定拠出年金は、どう違うのでしょうか。下記2つから解説します。

  1. 個人型確定拠出年金は、自ら年金資産の運用を行う制度
  2. 企業型確定拠出年金は、企業が掛金を積み立て従業員が年金資産の運用する制度

①個人型確定拠出年金は、自ら年金資産の運用を行う制度

個人型確定拠出年金は自ら年金資産を拠出し、国民年金基金連合会が運用を行う私的年金制度です。個人型確定拠出年金には、以下の特徴があります。

  • 「個人型DC」とも呼ばれ、iDeCo(イデコ)という愛称で呼ばれている
  • 掛金全額が所得控除の対象となり、確定申告や年末調整で税金が還付される
  • 自営業者や専業主婦(夫)、定年退職者以外にも、企業型確定拠出年金や、確定給付企業に加入している会社員や公務員などが利用できる場合も

②企業型確定拠出年金は、企業が掛金を積み立て従業員が年金資産の運用する制度

企業型確定拠出年金は、企業が掛金を積み立て従業員が年金資産を運用する制度です。企業型確定拠出年金には、以下の特徴があります。

  • 通称は「企業型DC」
  • 企業がルールにもとづき掛金を拠出するが、マッチング拠出など従業員が掛金を一部負担するケースもある
  • 従業員が自ら資産運用を行う
  • 掛金は、企業側の損金として処理する
  • 従業員は、マッチング拠出や運用益、退職所得控除や公的年金等控除で税制上の優遇措置を受けられる

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4.確定拠出年金のメリット・デメリットをきちんと知っておこう

企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金、2つにはそれぞれメリットとデメリットがあります。確定拠出年金を正しく理解するためにも、それぞれのメリットとデメリットについて知っておきましょう。

個人型確定拠出年金のメリット

個人型確定拠出年金のメリットとして、以下のものが挙げられます。

  • 掛金は、一部例外を除き全額所得控除の対象になる
  • 運用益も、20.315%の税金が復興特別税も含み非課税となる
  • 受取方法は、「一時金として受け取る」「5年~20年かけて年金として受け取る」「一時金と年金を組み合わせる」といった3つから選べる
  • 一時金の場合は退職所得控除、年金の場合は公的年金等控除の対象となる
  • 自身の判断で拠出を止めて運用のみにする「運用指図者」への変更も可能

個人型確定拠出年金のデメリット

個人型確定拠出年金のデメリットとして、以下のものが挙げられます。

  • 自分自身で拠出金の運用を行うため、投資の知識や経験が必要
  • 老後の資産形成を目的としており原則、60歳になるまで資産を引き出せない
  • 通算加入者等期間に応じ、受給できる年齢が変動する
  • もともと所得がない専業主婦(夫)には、iDeCo(イデコ)の所得控除が適用されない

企業型確定拠出年金のメリット

企業型確定拠出年金のメリットとして、以下のものが挙げられます。

  • 従業員による運用成績が良好な場合、受け取る年金額が増える
  • 従業員ごとに運用状況を把握でき、自分自身で資産状況を管理しやすい
  • 転職や独立による離職時に掛けていた年金資産を持ち出し、引き続き転職先の確定拠出年金で運用できる
  • 通算加入者等期間に応じ、年金受給開始年齢を引き上げられる

企業型確定拠出年金のデメリット

企業型確定拠出年金のデメリットとして、以下のものが挙げられます。

  • 将来の年金額が資産運用の成績に左右され、確定しない
  • 自分で運用しているという意識が薄くなる
  • 運用をミスした場合、年金資金が元本割れする可能性も
  • 対象は会社員のみで、扶養する配偶者は加入できない
  • 自分の会社が確定拠出年金制度を導入していないと、加入できない

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5.企業型確定拠出年金導入の流れ

企業型確定拠出年金導入の流れについて、以下に挙げる項目から解説します。

  1. 労使合意と確定拠出年金規約の作成
  2. 確定拠出年金規約の承認申請
  3. 資産管理機関と運営管理機関の選任
  4. 運用商品の選定
  5. 従業員に対する投資教育

①労使合意と確定拠出年金規約の作成

企業型確定拠出年金導入では、労使合意と確定拠出年金規約の作成を行います。確定拠出年金制度を導入する際、「労使が合意する」「確定拠出年金規約を作成する」必要があるからです。

企業内に労働組合がある場合は労働組合の合意を取り、労働組内がない場合は従業員代表の同意を取って規約を作成します。

②確定拠出年金規約の承認申請

労使で合意して確定拠出年金規約を作成したら、確定拠出年金規約の承認申請を行います。作成した確定拠出年金規約の承認は、厚生労働大臣へ申請するのです。

そのほか厚生労働大臣への承認申請を要する事項には、「一部例外を除く規約変更」「事業主事業所の増加」「加入者資格の変更」「掛金額算定方法の変更」「運営管理業務委託契約の変更」などがあります。

③資産管理機関と運営管理機関を選任する

規約の承認が終わったら、事業主は制度を運営していくため資産管理機関と運営管理機関を選任しなければなりません。両機関は、それぞれ次のようなものになります。

  • 運営管理機関…銀行といった、確定拠出年金制度の運営や管理を行う窓口機関
  • 資産管理機関…信託銀行や保険会社など、年金資産の管理や保全を行う機関

④運用商品を選定する

資産管理機関と運営管理機関を選任し終わったら、いよいよ運用商品を選定します。

企業型確定拠出年金は、従業員が運用商品を決定するのです。そのため従業員に提示するための具体的な運用商品は、リスクとリターンの両面から考慮します。そしてタイプが異なる3つ以上から商品を選定するのです。

⑤従業員に対して投資教育を行う

運用商品を選定したら、従業員に対して投資教育を行います。運用商品を従業員自ら賢く選択できるよう、「企業型確定拠出年金制度の説明」「投資や運用について、知っておくべき基礎的な知識や情報の提供」といった従業員向けの説明会を開催します。

投資が初めてという従業員にも理解してもらえるよう、場合によっては外部コンサルタントの活用も考慮しましょう。

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6.マッチング拠出制度について

確定拠出年金制度には会社が拠出する掛金に従業員が掛金を上乗せして拠出できるマッチング拠出制度があります。以下についてそれぞれ解説しましょう。

  1. マッチング拠出を利用する場合の条件
  2. マッチング拠出の掛金について

①マッチング拠出を利用する場合の条件

マッチング拠出を利用する場合の条件は、2つです。

  • 企業がマッチング拠出制度導入を決定した場合のみ、従業員は制度を利用できる
  • 企業型確定拠出年金を実施する会社は、マッチング拠出が可能かどうか判断する

判断によっては、従業員にマッチング拠出を認めない場合もあります。またマッチング拠出制度は従業員の希望に沿わないケースもあるのです。

②マッチング拠出の掛金について

マッチング拠出の掛金には、金額の上限や別途規定が以下のように設けられています。

  • 企業が拠出する掛金との合計が、拠出限度額である月額55,000円、企業年金を併用している場合は月額27,500円を超えられない
  • 企業の掛金を加入者本人の掛金が上回れない
  • 支払った掛金は全額、小規模企業共済等掛金控除の対象になる

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7.確定拠出年金についてのポイント

確定拠出年金について、知っておくべきポイントがあります。下記6つについて解説しましょう。

  1. 60歳まで払い戻しができない
  2. 元本割れのリスク
  3. 運用方法の選択
  4. 給付を受ける場合の要件
  5. 加入条件と拠出限度額
  6. 離職・転職時の資産残高の扱い

①60歳まで払い戻しができない

確定拠出年金は、60歳より前にお金が必要になっても、銀行から預金を引き出せません。60歳になる前に中途退職した場合も、それまでの確定拠出年金への拠出は、転職先の確定拠出年金または個人型の確定拠出年金に移換され、引き続き運用が続きます。

②元本割れのリスク

企業型確定拠出年金は、会社が運用商品を用意し、従業員は用意された運用商品から自身で商品を選択し運用する仕組みです。しかし会社が用意した商品の中には、ハイリスク商品も含まれているため、商品の選択次第で元本割れするリスクがあります。

③さまざまな運用方法を選べる

確定拠出年金で用意される確定拠出年金の商品は、「安全性重視タイプの元本確保型商品」「収益性重視タイプの投資信託」の2種類。従業員は、これら運用商品を組み合わせて運用できるのです。

④給付を受ける場合の要件

給付を受ける要件は、給付ごとに定められています。「死亡一時金」「障害給付金」「老齢給付金」3つの要件について解説しましょう。

死亡一時金

死亡一時金は、加入者などが死亡した際に、その遺族が資産残高を受給できます。死亡一時金の受給に関するポイントは、「年金ではなく一時金の形で受給」「資産残高である金額を受給」の2つです。

障がい給付金

障がい給付金は、70歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者などが、傷病の状態で一定期間(1年6ヵ月)を経過した場合に受給できるもの。

「5年以上の有期年金」「終身年金」「規約内容によっては一時金」といった受給方法から選択します。

老齢給付金

老齢給付金は原則、60歳に到達した際に受給できるもの。60歳時点で確定拠出年金への加入者期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢が段階的に先延ばしになります。

老齢給付金も障がい給付金と同様、「5年以上の有期年金」「終身年金」「規約内容によっては一時金」の3つから選べるのです。

⑤加入条件と拠出限度額

加入条件は、以下のとおりです。

  • 実施主体が企業型年金規約の承認を受けた企業
  • 加入可能者が厚生年金に加入している従業員

拠出限度額は、厚生年金基金などの確定給付型の年金を実施していない場合は月額55,000円、実施している場合は月額27,500円となります。

⑥離職・転職した場合の資産残高の扱い

資産残高とは、掛金と運用収益の合計額のこと。転職と退職でそれぞれ扱いが異なります。

  • 転職した場合…転職先に企業型確定拠出年金が導入されていれば、転職先の企業型確定拠出年金へ移転
  • 退職して国民年金加入者となった場合…商品の売却後、個人型へ資産を移換