住民税とは? 種類、納付方法、非課税対象者、控除、退職や転職時の対応について

住民税とは地方公共団体に納める税金のこと。住民税の種類や納付方法、非課税対象者、控除、退職や転職時の対応について紹介します。

1.住民税とは?

住民税とは、都道府県に納める都道府県民税と、市町村に納める市町村民税(東京23区の場合は特別区民税)を合わせたものです。住民税は住んでいる地域によって収める金額が違うほか、収入によっても異なります。

具体的には、前年1年間の所得に対して、1月1日時点での居住地において自治体から課税される地方税です。住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割」と、所得金額にかかわらず個人に等しく課税される「均等割」から成り立っています。

住民税とは、都道府県民税と市町村民税を合わせたもので、前年1年間の所得に対して、1月1日時点での居住地で課税される地方税です

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2.住民税の種類

住民税は個人住民税と法人住民税に区分できます。個人住民税は自身が居住する地方自治体に納める税金で、行政のサービスに必要な経費をそれぞれの担税力に応じて、広く住民で負担しているのです。

対して法人住民税とは、事務所の所在地にある地方自治体が法人に対して課税する税金となります。ここからは、住民税の種類について詳しく見ていきましょう。

市町村民税

市町村民税とは、市町村内に住所や事務所を有する個人と法人に課せられる税金のことで、東京23区は特別区民税です。定額課税である「均等割」と前年の所得に応じて課税される「所得割」からなります。

個人の場合、均等割は3,000円ですが、平成26年から令和5年までは3,500円に引き上げられました。所得割は、前年の所得の6%ですが指定都市に住所を有する場合、8%となります。

所得割は、所得金額から所得控除を差し引き、税率を掛けてさらに税率控除を差し引いて計算するのです。

道府県民税

道府県民税とは、道府県に住所や事務所を有する個人と法人に対して課せられる税金で、東京都は都民税です。市町村民税と同じく均等割と所得割からなります。

個人の場合、均等割は1,000円ですが、平成26年から令和5年までは1,500円に引き上げられました。所得割は、前年度所得の4%ですが、指定都市に住所を有する場合は2%です。個人住民税は、上記の市町村民税と道府県民税を合わせたものとなります。

法人住民税

法人住民税は、法人の事務所がある地方自治体から課税されます。法人住民税にも市町村民税と道府県民税があり、それぞれ均等割と法人税割からなっているのです。

道府県民税と市町村民税の均等割は、資本金などの額によって納付額が異なります。また市町村民税の法人税割は、市町村民税と道府県民税で標準税率が異なり、令和元年10月1日以降に開始される事業年度に適用される税率も異なっているのです。

住民税は個人住民税と法人住民税があり、どちらも市町村民税と道府県民税を合算したものが地方自治体から課税されます

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3.住民税の納付方法

住民税の納付方法には、特別徴収と普通徴収の2種類あります。これら2つについて解説しましょう。

特別徴収

特別徴収とは、毎月の給与から月割りの住民税が天引きされるもの。会社員の場合、この特別徴収によって住民税を納める方法が一般的です。事業主が従業員に毎月払う給与から市町村民税と道府県民税を合わせた個人住民税を差し引き、納めます。

所得税の源泉徴収義務を持つ事業者が特別徴収義務者となり、法人・個人を問わず、個人住民税を特別徴収で納めると義務付けられているのです。事務処理の煩雑さなどを理由に普通徴収に変更することはできません。

入社2年目より課税される

特別徴収は、入社2年目の6月から前年の所得に応じて課税・特別徴収されるのが一般的です。前年に給与支払いを受けており、さらに当年の4月1日時点でも給与の支払いを受けている従業員が対象となります。

ただしアルバイト・パートの場合、所得が一定額を超えた場合に住民税の支払いが必要です。また学生の場合、勤労学生として認められれば勤労学生控除を受けられるので覚えておきましょう。

普通徴収

普通徴収とは、毎年6月に自治体から送られてくる税額通知書によって住民税を納める方法です。個人事業主や自営業者、無職の人が対象で、役所や金融機関の窓口をはじめ、口座振替などで納付します。

自治体によってはクレジットカード払いなどに対応しているため、カードのポイントなどを貯められるのです。しかし普通徴収は納付期限があるため滞納すると督促されますし、督促を受けたにも関わらず完納できない場合、財産が差し押さえられます。

退職した場合はケースバイケース

退職時期や次の就職先が決まっている場合、ケースに応じて普通徴収や一括徴収、特別徴収の継続などで住民税を納めます。年の途中で退職した場合、天引きできなかった分の住民税は個人で納付する必要があるのです。

個人で納付する場合は、普通徴収の納期に合わせます。退職後、ほかの会社に転職し、そこで給与から天引きされる場合、個人で納付する必要はありません。また退職後、残りの住民税を退職金から一括して徴収した場合も個人で納付する必要はないのです。

会社員の場合、特別徴収によって住民税を納付し、個人事業主や自営業者である場合、普通徴収によって納付します

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4.住民税が非課税の対象者とは

住民税は原則としてすべての人に支払い義務があります。しかし一定の要件を満たす場合、免除されたり減額されたりするのです。

非課税対象として、生活保護受給者や障がい者、未成年者、寡婦(夫)で前年中の合計所得金額が125万円以下の場合などが該当します。非課税対象となる要件について詳しく紹介しましょう。

生活保護を受けている

その年の1月1日現在、生活保護法による生活扶助を受けている場合、住民税が非課税となります。住民税は就労によって課税されますので、生活保護受給者は対象となりません。つまり、生活保護受給者は住民税の均等割と所得割の両方が非課税となるのです。

生活保護が決定したら、居住地がある自治体の納付課に行き、納税免除の手続きを行ってください。納税期限前かつ納付前に申請手続きをする必要があります。納付期限後または納付後は減免対象とならないので十分注意しましょう。

障がい者、未成年者、寡婦(夫)で、前年中の合計所得金額が125万円以下の場合

障がい者、未成年者、寡婦(寡夫)で、前年中の合計所得金額が125万円以下の場合、住民税が非課税となります。ここでいう障がい者および寡婦(寡夫)は一定要件を満たす必要があります。給与所得者は、204万4,000円未満が対象です。

前年中の合計所得金額が35万円以下

控除対象配偶者や扶養家族がいない、前年中の合計所得金額が35万円以下の人は、住民税が非課税となります。この場合も、住民税の均等割と所得割の両方が非課税となるのです。

扶養親族がいる場合

控除対象配偶者や扶養家族がいる、前年中の合計所得金額が下記の金額以下の人は、住民税が非課税となります。

35万円×(控除対象配偶者+扶養親族数+1)+21万円以下

この場合、均等割と所得割の両方が非課税となります。

非課税対象となる要件については各自治体で異なる場合も多いです。詳細については居住地の自治体に確認しましょう

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5.住民税の主な控除

住民税には各種控除があります。基礎控除のようにすべての納税義務者が一律に受けられるものと、配偶者控除や障がい者控除などのように一定要件を満たせば受けられるものがあるのです。

住民税には均等割と所得割があります。ここでは、住民税の所得割に認められる主な所得控除の種類について紹介しましょう。

基礎控除

基礎控除は、すべての納税義務者が一律に受けられる控除で、確定申告や年末調整をする場合に、総所得金額などから差し引けます。

基礎控除の金額は、33万円。たとえば給与がパート所得のみの場合、33万円に給与所得控除65万円を足した98万円以降の部分が住民税の計算対象となります。

ただし住民税には非課税控除額があり、これが35万円ですのでパート収入の場合、35万円に65万円を足した100万円までは非課税となるのです。

配偶者控除

控除を受ける納税者本人の所得金額と配偶者の所得によって最大38万円の控除が受けられます。配偶者が70歳以上(老人控除対象配偶者)である場合は、最高48万円が控除されるのです。

平成30年度までは納税者本人の所得に関わらず控除を受けられましたが、令和元年度より納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下でないと、配偶者控除は受けられません。

配偶者特別控除

控除対象となる配偶者の所得が高いために配偶者控除を受けられない場合でも、要件に当てはまる場合、所得に応じて最高38万円が控除されます。

障がい者控除

  • 本人が障がい者である、または控除対象配偶者や扶養親族が障がい者である場合:27万円が控除
  • その人が特別障がい者の場合:40万円の控除
  • 特別障がい者と同居している場合:75万円が控除

寡婦(夫)控除

夫(妻)と死別した人、あるいは夫(妻)と離婚した後婚姻をしていない人などのうち、扶養親族がいるまたは生計を一にする子どもがいる人は、27万円が控除されます。

また扶養親族となる子どもがいて、かつ合計所得金額が500万円以下など要件を満たすと35万円が控除されます。

医療費控除

納税者本人が、自身の医療費や控除対象配偶者、扶養親族などの医療費を支払った場合、医療費控除が受けられます。具体的な計算式は下記のとおりです。

(支払った医療費の額)-(保険などで補填される金額+10万円)=医療費控除額(最高限度額200万円)

住民税の所得控除の多くは自分で申告する必要があります。該当する人は節税のためにも忘れずに申告しましょう

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6.退職・転職時の住民税

最後に退職・転職時の住民税について紹介します。住民税の金額は前年の所得で決まりますので退職・転職によって収入が減少しても、それが住民税に反映されるのは翌年以降です。この点に注意しておかないと、退職・転職時に思わぬ負担となります。

また納付方法は、状況によって異なるのです。

退職月で異なる

退職後、他の会社に転職する場合、住民税はその転職先から引き続き特別徴収で納付できます。しかし純粋に退職する場合は、普通徴収で納付しなければいけません。この場合、納付を一括で行うのか、分割で行うのかは自身で選べます。

ただし純粋に退職する場合、退職する時期で納付や手続きの方法が変わるのです。具体的には、1月~5月に退職した場合と6月~12月に退職した場合で細かい部分が異なってきます。

1月~5月に退職した場合

1月~5月に退職した場合は、最後の給与から残りの金額を一括で天引きします。一括で徴収されるため、退職する月の給与と退職金の合計より課税される住民税が多くなる場合も。

その月の給与が減り生活に支障が出てしまうかもしれません。そのような場合は普通徴収への変更を検討してみてください。

ただし普通徴収に変更する場合、退職前に会社に切り替え手続きをしてもらわなくてはなりません。そして退職後に自治体から送られてくる納税通知書を使って、残りの住民税を支払うといった流れになるのです。

6月~12月までに退職した場合

6月~12月に退職した場合、退職する月の住民税は給与から天引きしてもらい、退職する月以降に支払う予定の住民税は、普通徴収によって納付します。

また、退職する月から翌年5月までの住民税を退職する月の給与や退職金から一括で支払う方法も可能です。そして6月1日から退職する月までの退職金を含めた所得は、翌年以降に納付する住民税の額に反映されるといった流れになります。

退職後の収入が少ない場合、翌年の住民税が大きな負担になりやすいです。あらかじめ備えておきましょう。

在職中であれば給与から天引きされる住民税も、退職月によっては自分で手続きを行う必要があります