人事発令とは? 人事発令の目的・時期・内示を受けたときの注意点などについて

人事発令には、どのような目的があるのでしょう。人事発令の種類や時期、従業員と会社が気を付ける点などについて、解説します。

1.人事発令とは?

人事発令とは、企業側が労働者に向けて発令するもの。人事異動や転勤、昇給や昇進などの任命を従業員へ公式に伝えることを辞令といい、この辞令を出すことを発令というのです。採用辞令を「発令」、出向を「発令」などのように使われます。

人事発令は企業経営の重要課題

会社が従業員に対して人事異動などを任命する人事発令は、経営の重要課題でもあるのです。

人事異動は、企業の経営資源・財産である人材を適材適所に配置して、「組織全体の業務効率化」「経営戦略の実行」といった企業活動を向上させる目的のために実施されます。

また「業務や作業のマンネリ化を解消」「人材構成の適正化やアンバランスの解消」などを目的に、人事異動・採用活動などが実施される場合もあるのです。

人事発令とは、人事異動や転勤、昇給や昇進、採用などの任命を従業員へ公式に発令することで、企業経営の重要課題となっています

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは?

・1on1の進め方がわかる
・部下と何を話せばいいのかわかる
・質の高いフィードバックのコツがわかる

効果的に行うための1on1シート付き解説資料をダウンロード⇒こちらから


【人事労務業務を効率化し、担当者の負担をグッと減らす】

カオナビならコストを抑えて労務管理・タレントマネジメントを効率化!

●紙やExcelの帳票をテンプレートでペーパーレス化
給与明細の発行や配布がシステム上で完結できる
年末調整の記入や書類回収もクラウドで簡単に
●人材情報の一元化・見える化で人材データを活用できる
●ワークフローで人事評価の運用を半自動化できる

詳しくはこちらから

2.人事発令の種類

人事発令には、多くの種類があるのです。さまざまな発令について、詳しく説明しましょう。

  1. 配置転換
  2. 転勤・転任
  3. 昇進・昇格
  4. 任命・解任
  5. 降格・降職
  6. 出向
  7. 新規採用
  8. 定年退職・勧奨退職
  9. 解雇
  10. 免職

①配置転換

配置転換は、同一企業内で業務内容や勤務地を変更すること。目的は、「人材の適材適所に配置」「組織の活性化・変革」「療養・育児・介護」などです。

配属先を一定期間ごとに変えて、さまざまな部署を経験させる企業も多く見られます。経験として実施する場合のほか、従業員を退職に追い込むことを目的とした配置転換もあるのです。

②転勤・転任

転勤・転任は、従業員の勤務地を継続的に変更すること。

「大阪支社から東京本社へ勤務場所を変えるといったように引っ越しが伴い、単身赴任または家族一緒に移動する」「新宿営業所から渋谷営業所へといった、生活に影響を与えない程度の転勤」などがあります。

業務内容にかかわらず、勤務地自体そのものが変わることを転勤と呼ぶのです。

③昇進・昇格

昇進とは、企業内での位置付けが下位職階から上位所職階に異動すること。たとえば、平社員から係長に上がることは昇進といえます。

昇格は、職能資格制度などで自分の評価が上がることを意味するもので、社内だけで運用されるシステムです。職能資格制度で定められた等級は、会社における自分の資格のようなもので、人事考課や試験などの結果をもとに与えられます。

④任命・解任

任命と解任は、それぞれ次のような意味になるのです。

  • 任命…任務に就くことを意味するもので、「役職に任命する」などと使われる
  • 解任…「任務を解く」「職務を辞めさせる」という意味があり、主に会社役員以上の任務を解く際に用いられる

解任は、本人の意思に関係なく辞めさせられることを指しますが、役職を解くだけなので「退職させる」「クビにする」わけではありません。

⑤降格・降職

降職とは、役職をもっている人が下の役職に異動させられること。たとえば、「部長から課長へ」「上位職階から下位職階に役職が落とされた」場合、降格ではなく降職と表現します。

降格は「役職の身分を落とされる」「格を落とされる」こと。会社には勤続年数や業績などに応じて変動する等級があり、この等級を落とされる場合は降格と表現します。

⑥出向

出向は、あくまでも自社に在籍したまま一時的に一定期間、他社に在籍するというもの。自社との雇用関係はそのままで、「関連時会社や他社に雇用される」「関連会社や他社の事業所で勤務する」という状況になるのです。

また移籍出向の場合、自社を退職したうえで関連会社や他社に雇用され、これは「転籍」とも呼ばれます。

⑦新規採用

新規採用は、新しく人を雇用することで「新規雇用」ともいわれ、新卒採用と中途採用があります。

  • 新卒採用…学校を卒業してから働く人を採用する。多くに就労経験はない
  • 中途採用…以前に1社以上の社会人経験がある人を採用すること。採用期間は決まっておらず、企業が人材を欲するときに採用募集を行う

⑧定年退職・勧奨退職

定年退職とは、就業規則などによって定年制を設けている企業が、一定の年齢に達した従業員を退職させる仕組みのこと。退職日は一律に決められておらず、「誕生月の賃金の締め日」「誕生日当日」「誕生日に達した月の月末」など、企業によって異なります。

勧奨退職は、事業主が従業員に対して退職を申し入れることで、俗に「肩たたき」とも呼ばれているのです。

⑨解雇

解雇は、会社が一方的に従業員を辞めさせることで、3種類あります。

  • 普通解雇…従業員と事業主との間で労働契約の継続が困難な場合に行う解雇
  • 整理解雇…会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇
  • 懲戒解雇…従業員が規律違反や非行を行った際、懲戒処分として行う解雇

⑩免職

免職は、公務員に対して仕事を辞めさせること。公務員が罪を犯した場合などで、懲戒処分として解雇されるものです。

公務員の懲戒処分には「免職」「後任」「停職」「減給」「戒告(けん責)」の5種類があり、そのなかでもっとも重い処分が懲戒免職となります。一般企業の従業員に懲戒免職という言葉は使用されません。その場合は懲戒解雇です。

人事発令は、1年とおして実施します。日本の企業は3月末や事業年度末を節目に実施する場合が多いようです

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

3.人事発令の目的とは?

人事発令の目的は、4つです。それぞれについて説明しましょう。

  1. 人材育成
  2. 能力に見合った人員配置
  3. 会社の活性化
  4. 企業プロジェクトの実現

①人材育成

人材育成を目的にすると、「人事異動によってほか領域の業務にかかわり、仕事の幅が広がる」「新しい視点で物事を見られるようになる」「新しい環境が従業員の成長につながる」といったメリットが得られます。

また「優秀な人材を異動させて、異動先の人材育成や業務を底上げする」といった目的のために実施される場合もあるのです。

②能力に見合った人員配置

従業員個々の能力と適正を正確に理解して、従業員がもっとも活躍できるポジションに人材配置を行います。

現在配属されている部署では、持っている能力を発揮できていない従業員が存在するかもしれません。そうした人の実力を発揮するために行うのです。

③会社の活性化

新たな部署に配属されると、気持ちも新たになるため、従業員のモチベーションがアップします。

長期間同じ部署で同じ業務をしていると、マンネリ化により仕事への意欲や気力が低下しやすいです。これでは、気が緩みミスも多発して、生産性も低下してしまうでしょう。そうした状態を防止するために、人事異動を行います。

④企業プロジェクトの実現

「新事業開発や事業の多角化・再構築、技術革新などに必要な人材を配置」などを目的に、人事発令が実施されます。環境変化に応じて、組織を再編する人事異動が必要となるのです。

「従業員の適性や能力を考慮した人材配置」「新たな人材の確保」などにより、事業戦略をより効果的に達成できる組織を作り上げていきます。

人事発令は、「人材育成」「能力に見合った人員配置」「会社の活性化」「企業プロジェクトの実現」などを目的に実施されるのです

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

4.人事発令の時期

人事発令の時期は企業によって異なるものの、多くの企業で毎年2月・3月などの年度末や、9月や10月などに行います。なぜなら決算と関係する場合が多いからです。

大体は決算と関係した時期

ほとんどの企業は、人事発令を決算期に合わせて行います。たとえば決算時期にあたる2月、3月といった春先や、9月、10月などです。

しかしアパレル業界などはシーズン物のセールが一段落した時期に行われ、鉄道業界は新年度の混雑期が落ち着く7月に人事発令を行う場合が多く見られます。

3年ごとに配置転換があるところも

企業によっては、慣例として3年ごとに配置転換を行うケースも。従業員の能力開発を積極的に行うため、「幅広い業務を経験させる方針」のもと1〜3年周期で人事異動を実施する企業も少なくありません。公務員もおおよそ3年周期といわれています。

企業によってはその規模や方針によって、10年以上実施しないケースもあるのです。

公務員の場合は4月1日付が多い

公務員の人事異動は、4月1日付けが多いといわれています。人事異動の内示が出るのは、異動の7〜14日前。新規採用の職員も人事異動と同じ時期に入ってくるので、一斉に業務がスタートします。

また公務員の人事異動周期は3年とされているのです。役所は多くの部署があるため業務内容もさまざま。幅広い知識を身に付けることを目的とした周期なのでしょう。

ほとんどの企業は、決算時期に合わせて春先や9月、10月などに実施されます。公務員は4月1日といわれているのです

入社手続き、年末調整、人事評価、スキル管理など時間が掛かる人事業務を効率化。
タレントマネジメントシステム「カオナビ」でリーズナブルに問題解決!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

5.人事発令で従業員側が気を付けること

人事発令で従業員側が気を付けることは、次の2つです。

  1. 取引先や同僚などにあいさつ回り
  2. 業務の引き継ぎや身の回りの整理整頓

①取引先や同僚などにあいさつ回り

人事発令が出たら、自分がお世話になった人への感謝の気持ちを伝えるあいさつ回りを必ず行います。あいさつが必要な人は、「取引先」「社内の同僚」「業務でお世話になった方」など。

人事辞令が発表された後のタイミングで、メールやお礼回りをします。取引先へは、後任者が決まってから訪問するとよいでしょう。同僚には、メールや送別会などであいさつをします。

②業務の引き継ぎや身の回りの整理整頓

担当していた業務を引き継ぎます。ポイントは下記のとおりです。

  • 後任者が「同僚なのか」「新規採用者なのか」「ほか部署から異動してくる人なのか」確認する
  • 業務の手順書や職場独自のルールなど、後任者に合わせて作成する
  • 時間があれば、一緒に業務を行っておく

日ごろから定期的に業務内容をまとめておくと、引き継ぎも楽に進みます。

あいさつ回りと後任者への引き継ぎは必須です。それぞれスケジュールを立てると、段取りよくスムーズに行えます

社労士監修!2024年度版:人事・労務法改正対策ガイド。
社会保険適用拡大、労働条件明示ルール、障害者法定雇用率等の変更をわかりやすく解説!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

6.人事発令で企業側が気を付けること

人事発令で企業側が気を付けることは、従業員本人への伝え方と書面を交わすこと。法律上、特に規定はないものの事後のトラブルを避けるため、メール送付のみとせず書面も交付しておくとよいでしょう。

書面の一般的な様式

人事発令の書面に決まりやフォーマットはありません。一般的な様式を紹介します。必要記載事項は。「従業員の氏名(~殿)」「変更内容(変更開始日・勤務地・役職など)」「辞令作成の日付」「会社・社長名」などです。

引継書に関しても書式は自由なので、後任者が分かりやすいように作成します。引継書には、「引継ぎ日」「引継ぎ内容」「部署名および引継ぎ者双方の署名捺印」などが入っていればよいでしょう。

人事発令に法律上の規定はありません。事後のトラブルを避けるうえでも書面を交付しておくとよいでしょう

入社手続き、年末調整、人事評価、スキル管理など時間が掛かる人事業務を効率化。
タレントマネジメントシステム「カオナビ」でリーズナブルに問題解決!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

7.異動の拒否・希望について

人事異動について就業規則に規程がある場合、原則、拒否できないとされています。拒否すると懲戒の対象になる場合もあるのです。異動を受けられない事情がある場合、人事異動拒否の申し立てが認められるときもあります。

希望はあくまで希望

従業員からの人事異動に関する希望については、「対象者と希望部署における担当者との相性」「部署のキャパシティ」「希望するキャリアパス」など多面的な内容が関与するため、タイミングだけでは異動の希望はとおらないでしょう。

ただし「雇用契約書の内容と異なる」「介護や育児などやむを得ない事情がある」など、従業員側に正当な理由がある場合、希望がとおる可能性もあります。

希望どおりになる確率は低い

従業員が希望どおりの部署に行ける確率は、一般的に低いでしょう。たとえば、ある部署に希望する人が複数人いた場合、選抜します。その際、より優秀な人材または異動先の部署に必要とされる能力や技術力をもった従業員が優先的に選ばれるでしょう。

ポジションに空きがあっても適材適所によって配属されます。希望はそうかんたんにとおらないでしょう。

拒否された場合

人事異動を従業員が拒否した場合、なぜ異動を拒否するのかをヒアリングし、再検討する場をもつことが大切です。しかし優先するような個別事情がなければ、従業員は異動命令を拒否できません。

就業規則に人事異動についての記述がなくとも内容によっては、会社の命令に従う必要があります。

人事異動は、優先するような個別事情がなければ、原則的に拒否できないとされています。希望部署へ異動できる確率は低いでしょう