IRとは? 業務、PRとの関係、事例

IRとは、企業が投資家や株主に向けて行う広報活動全般のこと。ここではIRにおける具体的な業務内容やPRとの関係、積極的なIR活動を行っている企業の実例などについて解説します。

1.IRとは?

IRとは、企業が株主や投資家に向けて自社の経営状態や財務状況、今後の見通しなど、投資判断に必要な情報を提供する活動のこと。

近年、自社ホームページで情報を開示するのが一般的です。それ以外にも決算説明会や各種説明会の実施、ディスクロージャー資料の提示や施設見学会など、独自のIR活動を実施している企業もあります。

IR活動を積極的に行っている企業は、投資家にとって信頼できる企業です。そのためIR活動に積極的ではない企業に比べて株価が高くなる傾向にあります。

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2.IRにおける6つの業務

IRの具体的な業務は、次の6つにわかれます。いずれも株主や投資家、顧客との相互理解を深め、信頼関係を構築するために欠かせない業務です。

  1. 対外的な開示資料作成
  2. CSRへの取り組み
  3. 機関投資家との個別面談
  4. ダイバーシティマネジメント
  5. 決算説明会の準備、運営
  6. 社内ミーティングや情報収集

①対外的な開示資料作成

開示資料は都度開示するものと、四半期ごとに開示するものの2種類です。証券取引所の規則にもとづいて、都度開示することを「適時開示」といいます。企業は、会社の重要情報を株主や投資家に対して広くかつタイムリーに開示しなければなりません。

一方、四半期ごとに開示しなければならない資料は以下の2つです。

  • 有価証券報告書:会社の概要や事業内容、キャッシュフロー状況などを記載したもの
  • 決算短信:経営成績や財政状態など、決算発表の内容を共通形式の決算書としてまとめたもの

②CSRへの取り組み

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業活動に社会的公正や環境などへの配慮を組み込んで、責任ある行動をとるとともに、説明責任を求める考え方のこと。直訳すると「企業の社会的責任」という意味になります。

株主や投資家だけでなく顧客や取引先、自治体や社員など、企業の活動にかかわるすべての人に向けた活動でIR業務の一環です。地域活動への参加やボランティア、社会のニーズに合ったサービスの提供や環境問題に対する取り組みなどが含まれます。

③機関投資家との個別面談

機関投資家たとえば生命保険会社や普通銀行など大口投資家との個別面談を指して、1on1ミーティングと呼ぶ場合もあります。面談での対話はその後の売買にも影響するため、非常に重要な業務です。

面談の目的は自社と投資家のギャップを埋め、相互理解を深めること。担当者は日頃から投資家の投資スタイル、最近の保有状況や関心は何か、どのような運用方針なのかなどの情報を集め、機関投資家について理解しておかなければなりません。

機関投資家を理解するための情報収集には、「投資家自身からプロファイルを事前にもらう」「IR支援会社から投資家のプロファイルを入手する」などの方法があります。

④ダイバーシティマネジメント

ダイバーシティマネジメントとは、社員の国籍や性別、労働条件などの違いを受け入れ、多様性をいかしながら組織力を強化する経営管理方法のこと。かつて日本企業といえば、日本人の正社員男性が運営するものでした。

しかしビジネスのグローバル化や労働人口の減少により、企業が安定して経営し続けるためには、社員の多様な個性を受け入れ、活用する必要があります。

IR業務で自社のダイバーシティマネジメントをアピールできれば、他社との差別化や優秀な人材からの注目が期待できるでしょう。

⑤決算説明会の準備、運営

上場企業の多くは、アナリストや機関投資者に向けた決算説明会(当該期の決算状況の報告や中長期計画の達成状況、今後の経営戦略などを説明する場)を第2四半期決算と第2四半期決算に実施します。

決算説明会ではアナリストからの鋭い質問内容が多いです。よってIR担当はこれらをどのように説明するのか、また説明のためにどのような資料が必要なのかを調査、準備しなければなりません。

⑥社内ミーティングや情報収集

株主や投資家からの質疑応答で適切に答えるためにも、自社の最新状況を把握しておかなければなりません。

そのため担当者と打ち合わせをしたり、必要な社内ミーティングに参加したりするのです。また新商品のニュースリリースや関連情報について、広報やPR担当と連携しながら進める場合も多くあります。

一方、株主や投資家からの意見や要望を社内の担当者、担当部署に伝えるのもIR業務の一環です。IR業務には株主や投資家と社内の各部署をつなぐ橋渡しとしての役割もあります。

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3.IRとPRの関係

IRは企業が投資家や株主に向けて行う広報活動を意味します。ではPRとは何でしょうか。ここではIRとPRの関係について説明します。

PRとは?

ステークホルダーとの関係構築のため、継続的に努力するべき企業活動と戦略のこと。日本語ではシンプルに「広報」とも訳されます。

PRと聞くと、日常生活でよく耳にする「プロモーション」を浮かべるでしょう。これはすべての利害関係者とよい関係を築く「パブリックリレーションズ(Public Relations)」を指しているのです。

PRは社会の潮流を読み、個人やメディアの心理をとらえることでもあります。たとえばプレスリリースの作成やメディアとの関係づくり、取材対応やPR戦略の立案などが、具体的な業務です。

IRとPRの相違点

IRとPRの違いは、情報の提供先とそれにともなう必要知識の違い。

  • IRではInvestor(投資家)を広報活動の対象とする
  • PRではPublic(公共)とより広い相手が対象

IRでは投資家や株主が対象となるため、株に関する知識が必要です。また財務諸表や各種データを読み解く能力も求められます。

一方PRでは社員やその家族、銀行や自治体など社会のさまざまな人が対象となるため、幅広い分野の知識が必要です。IRとPRは別業務というわけではありません。相互が密接に連携すれば、いざというときもスムーズに対処できるのです。

IRとPRの共通点

「企業情報を表現する」という意味では、IRもPRも同じです。PRには顧客や社員だけでなく、IRの対象となる投資家や株主も含まれているため、IRはPRの一部とも考えられます。

従来、日本企業では、PRはステークホルダー全体に向けた広報という意味で広報部が担当し、IRは企業の経営状態を投資家に知らせるという意味で財務部や経理部が担当していました。

近年、株主や投資家に対する広報活動の重要性が叫ばれるようになり、社内に独立組織として設置している企業が増えています。これは大企業だけでなく、スタートアップなどの小規模な会社でも同様です。

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4.積極的にIR活動を行っている企業の事例

国内では具体的にどのような企業がIR活動を積極的に行っているのでしょうか。ここでは実際にIR活動に力を入れている企業の事例を紹介します。

島津製作所

分析計測機器や医用機器の分野で最先端を走る島津製作所は、IR活動における対話姿勢が高く評価されています。各事業部門のトップが定期的に実施している投資家向けミーティングでは毎回戦略をアップデートし、投資家の質疑応答にも丁寧に対応しているのです。

またバーチャル説明会やWeb情報開示も向上。事業にたいして投資家の理解を深めようとしている姿勢が高評価につながりました。積極的な社内情報の開示が、市場関係者の信頼感を高めたという事例です。

トヨタ自動車

トヨタグループの中核をなすトヨタ自動車では、自社のホームページで決算報告や有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書や統合報告書など幅広い情報を公開。株主や投資家に経営状態や財務状況などの投資判断に必要な情報を提供しています。

また決算説明会や株主総会の様子を動画で配信し、トップの想いや各部署のプレゼンテーションを共有しているのも特徴です。コロナ禍でも包み隠さず情報開示を続け、個人投資家や国内外の機関投資家に参加しやすいIR活動を行いました。

JR東日本

JR東日本では「JR東日本の株主になると何ができるのか」「株主還元を充実させるための総還元性向」などを具体的に開示して、新たな株主がイメージしやすく参加しやすい報告活動を行っています。

株主優待の詳細や株主向けのイベントなどを掲載し、株主や投資家が自社をより深く知るためのきっかけづくりを行っている事例です。

同ページではイベントでの質疑応答も数多く公開しています。子どもからの質問や専門知識を要する質問にも丁寧に解説しており、参加しやすいIR活動となっているのです。

J.フロント リテイリング

コロナ禍においても積極的に情報開示し、高水準のIRを維持しているのが、百貨店事業を核としたJ.フロントリテイリングです。

ビジネスモデルの変革が急務となった同社では、投資家の声を経営に生かすべく、経営トップと投資家の直接対話を実施。

また代表執行役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、リスクを戦略の起点と位置づけたグループの中期経営計画を更新しています。経営の透明性を高め、自社についての理解を深めてもらうための活動です。