一般社団法人とは?【わかりやすく】略、設立方法、給料

一般社団法人とはある目的を持って設立された非営利法人のことです。ここでは一般社団法人の特徴やメリット、設立の流れや注意点などについて解説します。

1.一般社団法人とは?

一般社団法人とは、「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」にもとづいて設立された法人格のこと。一般的な企業と違い、余剰金の分配ができない非営利法人として事業を営みます。

原則、具体的な事業内容について制限はありません。また資本金も必要なく、法務局への登記のみで設立できるのです。

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2.一般社団法人はどう略すのか?

たとえば「株式会社〇〇建設」という名称の場合、略称は「(株)〇〇建設」となります。一般社団法人を省略する際も同じです。基本、「一般社団法人〇〇協会」という名称は「(一社)〇〇協会」と表記されます。

なお「(社)」のみでは一般社団法人のほか公益社団法人や社団法人などを表す場合もあるため注意が必要です。

一般社団法人の敬称

一般的に、先方の会社を呼ぶ際、「御社」「貴社」を使います。一般社団法人の場合、先方が協会なら「貴協会」、委員会なら「貴委員会」になるのです。また会長や理事長など役員の宛名に対しては、一般的に「貴職」を用います。

銀行で表記する際の略語

銀行で一般社団法人を表記する際の略称は、各金融機関によって異なります。たとえば三井住友銀行は先頭に「シヤ)」とつけますが、常陽銀行では先頭に「シヤ)」のほか中間に「(シヤ)」、末尾に「(シヤ」とつけることもあるのです。

英語で表記する際の略語

一般社団法人を英語で表記すると「General Incorporated Foundation」。しかし「一般社団法人○○協会」を「General Incorporated Association 〇〇」とそのまま訳すより一般社団法人の部分を省いて「○○association」とするのが一般的です。

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3.一般社団法人と一般財団法人の違い

一般社団法人と混同しやすい「一般財団法人」。2つにはどのような違いがあるのでしょう。目的や出資金、期間設計などから説明します。

目的

一般社団法人のおもな設立目的は社会貢献で、その対象は「人」です。「人」の団体に法人格を与えるのに対し、一般財団法人は「財」を基盤として運営されます。

一般財団法人はお金や美術品などを長期にわたって管理、維持するための団体です。なおどちらも収益事業を行えるものの、利益は分配できません。

出資金や設立方法

一般社団法人は「人」が中心であるため、設立時に出資金を用意する必要はありません。ただし「財産(物)」を中心とした一般財団法人は、設立時に300万円以上のまとまった資金が必要です。

なお資産の内容は現金以外でも可能となります。よって絵画や彫刻などの美術品でも可能ですが、拠出された財産は一般財団法人に寄与されたものと考えられるため返還されません。

機関設計

一般社団法人と一般財団法人とでは機関設計、つまり事業活動の中で意思決定を下す機関の設計も異なります。具体的な違いは以下のとおりです。

  • 一般社団法人:社員総会2名以上、監事1名以上、理事会3名以上
  • 一般財団法人:評議員会3名以上、理事1名以上、理事会3名以上

このほか一般社団法人が大規模法人(最終事業年度の貸借対照表負債計上額が200億円以上)の場合、会計士または監査法人から選任した会計監査人を置く必要があります。

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4.一般社団法人の特徴

一般社団法人の特徴は下記の3つです。

  1. 設立は登記のみでOK
  2. 最低2名から設立可能
  3. 社員総会の決議で定款変更が可能

①設立は登記のみでOK

一般社団法人の設立には、法務局で設立登記の手続きが必要です。主たる事務所を管轄する法務局で手続きする必要があるため、管轄の法務局は法人の拠点をどこに置くかによって異なります。

さらに設立時の社員が作成した定款を公証人が認証すれば、設立完了です。早ければ数週間程度で設立できます。一般社団法人に資本金の概念はないため、財産拠出は不要です。

②最低2名から設立可能

一般社団法人の設立は最低2名から可能です。設立時社員のうち1名が理事になれば、一般社団法人を設立できます。

ここでいう社員とは従業員や職員ではなく、一般社団法人の最高意思決定機関である社員総会で議決権をもつ人のこと。株式会社にとっての株主のような存在ですが、株主のように配当権や余剰利益、残余財産の分配などは受けられません。

③社員総会の決議で定款変更が可能

一般社団法人の場合、社員総会の決議によって定款変更が可能になります。定時社員総会、臨時社員総会どちらでも決議は可能です。

定款変更の社員総会決議には、総社員の半数以上、かつ総社員議決権の3分の2以上の多数をもって特別決議を行う必要があります。決議方法は社員総会の出席以外に書面表決や表決委任、メールなど電磁的方法による表決でも可能です。

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5.一般社団法人になるメリット

一般社団法人を設立するメリットは下記の3つです。

  1. 社会的信用
  2. 所得の一部が非課税
  3. 公益社団法人に変更可能

①社会的信用

一般社団法人は法務局で登記されるため、事業内容は登記簿謄本から確認可能です。また行政との関係構築が有利になったり、人材や寄付金が集めやすくなったりするのもメリットとして挙げられます。

これは「中小企業より大企業のほうが安心」と同じ理由で、個人事業よりも法人に勤務、契約するほうが安心と考えるためです。

②所得の一部が非課税

一般社団法人は「普通型」と「非営利型」に分類されます。普通型の場合、株式会社と同様にすべての所得が課税対象となりますが、非営利型の場合、課税対象となるのは収益事業から生じた所得のみです。

つまり収益事業以外の事業で得た利益は非課税になります。事業が福祉や医療の場合、一般社団法人を設立したほうが税制上のメリットを多く受けられることもあるのです。

③公益社団法人に変更可能

一般社団法人は、政府の公益認定を受けると「公益社団法人(一般社団法人のなかでも公益事業をおもな目的としている法人)」になれます。

「おもな目的が公益認定対象となる23の公益事業である」「公益目的事業費率が50%以上である」など、合計18の基準項目を満たすと公益社団法人になれるのです。

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6.一般社団法人になるデメリット

一般社団法人を設立すると社会的信用を得たり税制の優遇を受けられたりします。一方、同時にいくつかのデメリットも存在するのです。

  1. 社員への利益分配
  2. 銀行からの融資
  3. 株式市場への上場

①社員への利益分配

一般社団法人と株式会社の大きな違いは余剰金の分配ができないこと。これは一般社団法人が非営利であり、余剰金の分配を目的としないことを法人格取得の条件としているためです。

もし定款に「余剰金分配を受ける権利を与える」といった規定が定められていても、効力は生じません。余剰金の分配を目的とする場合、一般社団法人ではなく株式会社や合同会社を選択する必要があります。

②銀行からの融資

一般社団法人の目的は利益を生み出すことではありません。そのため銀行はじめ金融機関といった債権者は、返済が滞るリスクを懸念します。結果、銀行からの融資を受けるのが難しくなるのです。

全国にある信用保証協会のうちほぼすべての信用保証協会が一般社団法人を融資の対象外としています。また保証協会の保証をつけずに銀行が自己資金で融資を行う「プロパー融資」も難しいのが現実です。

③株式市場への上場

一般社団法人は株式による資金調達ができず、また株式市場への上場もできません。これは一般社団法人が営利を目的としておらず、利益を出資者に分配するという概念自体存在しないためです。

上場によって全国の投資家から幅広く投資を募ったり、資金をスムーズに調達して事業を大きく拡大させたりできない点は、一般社団法人設立のデメリットでもあります。

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7.一般社団法人設立の注意点

先にも少し触れたとおり、一般社団法人は「営利型」と「非営利型」にわかれます。それぞれの違いとあわせて、一般社団法人設立の注意点を見ていきましょう。

  1. 一般社団法人の種類によって異なる会計処理
  2. 理事の任期は2年以上に延長不可
  3. 相続税や贈与税の対象

①一般社団法人の種類によって異なる会計処理

一般社団法人は「営利型」と「非営利型」で会計処理の方法が異なります。また収益事業とそれ以外の事業とで、会計処理を分けなくてはなりません。さらに補助金による収入が多い事業の場合、消費税に関する例外的な会計処理も必要です。

小規模な事業でも会計処理は必要になります。一般的な株式会社に比べ、一般社団法人の会計処理は総じて複雑になるのです。

②理事の任期は2年以上に延長不可

一般社団法人の理事任期は、一般社団法人法第66条で「理事の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする」と定められています。

任期満了によって退任になった現理事を再任する場合も、重任登記(任期満了による退任登記と就任登記を一度に行う登記のこと)が必要です。

③相続税や贈与税の対象

平成30年度の税制改正により、相続税および贈与税が見直されました。これによって一般社団法人を使った相続税対策が不可能になったのです。

これまで、出資持分という概念のない一般社団法人には相続税の課税がありませんでした。親が一般社団法人を設立して移した資産は、子が引き継いでも持分がないため課税されずに資産を継承できたのです。

改正により、半永久的に相続税課税を免れられた税金対策が不可能になりました。一般社団法人を親族で支配している場合も相続税や贈与税の課税対象です。

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8.一般社団法人設立の流れ

一般社団法人の設立手順は「定款の作成と公証人の認証」「設立時理事の選任」「設立時理事による設立手続き」「法人代表者による登記申請」の4段階にわかれます。

STEP.1
定款作成と公証人の認証
はじめに2名以上の設立時社員で「会社の憲法」とも呼ばれる「定款」を作成し、公証人の認証を受けます。

定款には「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」を記載していくのです。しかし事業内容や名称、公告方法などを定めた「絶対的記載事項」に記載漏れがあると、定款自体が無効になる可能性もあるため注意が必要です。

STEP.2
設立時理事を選任
続いて設立時理事を選任します。設立時の理事を指定できるのは、一般社団法人の設立に関する事務を行い、設立後は一般社団法人の社員となる「設立時社員」です。

設立後の一般社団法人が理事会を設置する場合は3名以上、理事会を設置しない場合、1名または2名の理事を選任しなければなりません。

STEP.3
設立手続きの調査
次に必要なのは先に選任された設立時理事による、設立時手続きが法令や定款に違反していないかの調査です。

もし設立時手続きに法令または定款の違反、不当な事項があると認めた場合、設立時社員にその旨を通知しなければなりません。中身

STEP.4
法人代表者が登記申請
設立時手続きに不備がなければ、登記申請を行いましょう。申請は法人代表者(設立時理事や設立時代表理事)が法定期限内に行うのが一般的です。

申請先は、事業所所在地を管轄する法務局または地方法務局。一般社団法人の成立日は、法務局へ登記申請をした日です。

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9.一般社団法人設立にかかる費用

一般社団法人の設立に資本金は必要ないものの、実際いくつかの費用が発生します。

  1. 定款認証費
  2. 登録免許税
  3. 司法書士費
  4. 印鑑証明書といった雑費

①定款認証費

作成した定款に必要事項の記載漏れがないか、適法であるかを第三者に認証してもらうための費用です。料金は政令により5万円と定められています。このほか謄本手数料や収入印紙の用意などに数千円発生するのです。

②登録免許税

「一般社団法人を設立する」「事務所を移転する」際に法務局に支払う税金のこと。具体的な金額は登記内容によって異なります。

  • 一般社団法人の設立時:6万円
  • 主たる事務所移転(管轄外移転):6万円
  • 役員変更:1万円
  • 公告方法の変更:3万円

③司法書士費

一般社団法人の設立手続きを司法書士に依頼する際の費用。法律事務のスペシャリストである司法書士に依頼すれば、手続きに翻弄されずスムーズに法人を設立できます。

事務所によっては法人印鑑の相談や発注代行などを扱っているところも。費用相場は8~12万円程度です。

④印鑑証明書といった雑費

一般社団法人の設立には代表印、つまり法人を代表する印鑑の作成が必要です。代表印の相場は3~4万円ほど。さらに設立登記に必要な印鑑証明書を発行するのに一通250円程度発生します。

これと同時に銀行口座開設時に届ける「銀行印」、法人の認印として利用する「角印」、法人住所や電話番号などが入った「ゴム印」などを準備する場合もあります。

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10.一般社団法人で給料は出る?

一般社団法人は営利事業を目的としていないため、給料が支払われないと勘違いしている人も多いでしょう。一般社団法人の給料は、働く人の立場によって受け取り方が異なるものの、給料が出ないわけではありません。

役員の給料

理事や監事など、一般社団法人の役員には「給料」ではなく「役員報酬」というかたちで報酬が支払われます。この役員報酬は、定款または社員総会の決議によって定められるのです。

しかし報酬額変更のたびに定款を変更するのは、現実的といえません。よって具体的な金額ではなく報酬の上限を定めておくのが一般的です。

従業員の給料

従業員に対する給料は、株式会社の従業員と同じ考え方で決まります。一般社団法人でも法人組織に雇われている意味では同じですので、従業員に給料を支払う自体に問題はありません。給与規程や賃金規程などで、給料支給額や賞与を定めます。

社員の給料

一般社団法人における「社員」とは、株式会社における「株主」と同じ立場です。しかし株式会社の株主が配当金を受け取れるのに対し、一般社団法人の社員は配当を受け取れません。

社員が理事に就任したり、従業員として勤務したりするのは可能です。この場合は理事、または従業員としての給料を受け取れます。

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11.一般社団法人にかかる税金は?

「非営利型の一般社団法人であれば税金はかからない」、これは間違いです。一般社団法人にも法人税や消費税、法人住民税などが発生します。

法人税

法人税法では以下の2段階で課税対象を決定しています。

  1. 組織が非営利型法人に該当するか
  2. 法人税法が定める収益事業34業種を行っている場合は、その収益事業に対して課税する

つまり法人税上の「収益事業34業種」に該当する事業を行っていなければ、法人税の課税対象にはなりません。

消費税

消費税の申告義務があるのは、ほかの法人形態と同じく2期前の課税売上高が1,000万円以上の場合。一般社団法人の場合、会費や寄付金、補助金など対価性のない収入も多く計上されます。これらは「特定収入」と呼ばれ、一定の調整計算が行われるのです。

特別法人事業税

地域間の税源偏在を是正する目的で、令和元年に創設された法人事業税の一部です。法人事業税の申告納付義務がある法人に、納付義務が課せられます。「基準法人所得割額または基準法人収入割額の標準税率相当額×税率」の計算式で求められるのです。

法人住民税

法人の事業所や事務所のある自治体に納税する地方税のこと。考え方は個人が納税する住民税と同じです。資本金や従業員数などに応じて計算される「均等割」と、自治体ごとに定められた「法人税割」をあわせた金額が納税額になります。

法人事業税

法人が事業を行う際に使用する公共サービスの維持費を、法人に一部負担させる税金のこと。課税対象は、法人税がかかる収益事業です。「所得×都道府県ごとに定められている法人事業税率」の計算式で算出できます。