知的財産権とは? 種類、取得のメリット、取得手順、海外展開、相談窓口

知的財産権とは、形のない「無体物」を財産として保護する権利のことです。ここでは、知的財産権の目的や種類、取得のメリットなどについて解説します。

1.知的財産権とは?

知的財産権とは、人間の幅広い知的創造活動の成果に対し、それを創作した人に一定の期間、権利保護を与えるもの。知的財産権はさまざまな法律や知的財産権制度によって保護されています。

知的財産基本法第2条2によると、「知的財産」とは、「発明や考案、植物の新品種、意匠、著作物、人間の創造的活動によって生み出されたもの、商標や商号、事業活動に用いられる商品や役務を表示するもの、あるいは事業活動に有用な技術や営業に関する情報」のことです。

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2.知的財産権の目的

知的財産は形のない「無体物」ゆえ、他人から模倣されやすいです。自身のアイデアを勝手に使用されたり、それによって利益を得る人が出てきたりする可能性もあります。

知的財産権によって、このようなアイデアや技術などの知的財産を権利として保護。そして創作意欲を向上させたり、使用者の信用を維持したりして、産業の発展を図っていくのです。

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3.知的財産権が重視される理由

近年、知的財産権が重視されている理由に、発明の価値に対する意識の高まりがあります。引き金となったのが、青色発光ダイオードに関わる裁判です。

それを発明した元社員に対し、会社側に200億円の報酬を払うよう命じた東京地裁による2021年の判決後、「正当な対価」を求める訴訟が相次ぎ、企業は知的財産権について慎重に対処するようになりました。

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4.知的財産権の主な種類

知的財産権は、「知的創造物についての権利」と「営業標識についての権利」に大別されます。また「絶対的独占権」と「相対的独占権」という分け方もあります。

そして知的財産権には4つからなる産業財産権が含まれているのです。これらはすべて特許庁が所管しています。それぞれについて解説しましょう。

  1. 特許権
  2. 実用新案権
  3. 意匠権
  4. 商標権

①特許権

発明(自然の法則を利用した技術的な思想の高度な創作)の保護を目的とする権利。

特許権の取得によって発明者は特許発明を独占して実施でき、無断で他人が特許発明を実施しようとするのを防げます。たとえばカメラが自動で焦点を合わせる機能といったものです。

②実用新案権

小発明に関する権利。何かを新しく発明すれば、実用新案の対象になります。たとえば、布団たたきといった生活用品です。

特許権における発明は高度である点が求められました。しかし実用新案権における考案の場合、高度である必要はありません。実用新案権は、早期の権利化が可能なので、ライフサイクルの短い技術に関して有効です。

③意匠権

新しく創作された意匠(物品の形状や模様、色彩、あるいはこれらの結合)を保護するための権利。令和2年4月から、物品に記録および表示されていない画像や建築物、内装デザインについても、新たに保護対象となりました。

意匠制度では、創作者によって新しく創作された意匠を財産と位置づけて、その財産を保護し利用するための規則を定めています。それによって、意匠の創作を奨励し、産業の発展に寄与しようとしているのです。

④商標権

商標(自社の扱う商品やサービスを他社のものと区別する目的で使うマークやネーミング)を財産として保護するための権利。

商標には、文字や図形、記号や立体的な形、あるいはこれらを組み合わせたものなどがあります。商標権は、商品やサービスの顔を守るため重要な役割を果たしているのです。

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5.知的財産権を取得するメリット

知的財産権を取得するとどのようなメリットを得られるのでしょうか。それぞれについて解説します。

  1. 自社技術の模倣防止
  2. 自社ブランドの構築による販売力アップ
  3. 技術開発力の強化
  4. 事業展開における優位性

①自社技術の模倣防止

知的財産権を取得しない場合、他社にまねをされてしまえば、技術への投資が無駄になってしまうでしょう。また他社に模倣されると、技術者のモチベーションが低下し、新しい技術が生み出されないおそれもあるのです。

②自社ブランドの構築による販売力アップ

特許権を取得すると自社ブランドを構築できるため、販売力のアップにつながります。特許の表示は義務ではないものの、特許権取得を表示すれば、高い技術力によって作り出された製品だと顧客にアピールできるため、購買意欲を高める効果も期待できるのです。

新しい会社では、特許の取得によって、対外的に自社の技術力を示せます。

③技術開発力の強化

知的財産権を取得すると自社の技術をアピールでき、競合間における自社の競争力を強化できます。

基本技術をはじめ、周辺技術あるいは改良技術に関する権利の取得によって特許網を構築できれば、競合他社による市場への参入を難しいものにできるでしょう。結果、さらに自社の競争力が高まるのです。

④事業展開における優位性

事業の展開にて優位性を確保できる点も、知的財産権を取得するメリットです。知的財産権によって競合他社の市場への参入に障壁を作れるため、製品の価格低下を防げます。

またその期間に新たな技術開発を実施するのも可能です。結果、市場にて事業展開の優位性を保てるでしょう。

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6.知的財産権取得の際に知っておきたいこと

スムーズな知的財産権取得のためには、事前の準備が大切です。ここでは知っておきたい注意点を説明していきます。

事前チェックできるサービス

知的財産権取得の出願をする前、すでに同じような技術が公開されていないか検索サービスを使用して事前にチェックしましょう。同じような技術が公開されている場合、特許を受けられません。

無料検索サービス

事前チェックで使える、無料の特許情報検索サービスとして「JPP」、商標検索サービスとして「Cotobox」「nomyne」「ToreruSeach」の4つがあります。知的財産権取得のため、使い勝手のよいものを選びましょう。

有料検索サービス

主な有料の商標検索サービスは、「TM-SONAR」「クラリベイト・アナリティクス」「BrandMarkSearch」「InterMark類似商標検索システム」など。費用について調べ、合ったものを選びましょう。

特許権取得について中小企業は料金が軽減される

中小企業や個人、大学などは、一定の要件を満たした場合、審査請求料と10年間の特許料の減免措置を受けられます。ただし審査請求日によって減免を受けるための要件や手続きなど、適用される減免制度が異なるため、事前のチェックが必要です。

必ず審査請求日を確認してから、該当する減免制度を活用しましょう。

早期審査が可能

特許権と意匠権、商標権については、一定の要件を満たせば通常の審査や審判に比べて、早期にその結果を得られます。

早期審査を申請した出願の場合、2017年実績での審査順番待ち期間は、申請から平均で3カ月以下。早期審理を申請した場合、申請後、審理可能から平均4カ月以下で結果が発送されています。

審査官に説明が可能

出願の審査では、審査官と出願の審査に関して意思疎通する目的で面接ができるのです。面接には、以下の3種類があります。

  • 特許庁庁舎で行う面接(特許権・意匠権・商標権)
  • 審査官が出願人の所在地付近の会場で行う出張面接(特許権・意匠権)
  • インターネット回線を利用したテレビ面接(特許権・意匠権・商標権)

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7.知的財産権取得の手順

ここからは知的財産権取得の手順について解説します。

STEP.1
特許権の取得
必要書類を作成し、特許庁長官に提出します。書類は、「願書」「請求範囲」「明細書」「要約書」、必要ならば「図面」を準備。特許権の出願は、ほかの知的財産権とは違って出願審査請求書の提出が必要です。

出願後、様式のチェック(方式審査)と、特許審査官による審査(実体審査)が実施されます。審査を通過すると、特許査定を受けられるのです。なお出願や登録の際に、所定料金の納付が必要になります。

STEP.2
実用新案権の取得
「実用新案登録願」に実用新案登録請求の範囲や図面などを添付し、特許庁長官に提出します。また出願と同時に第1年から第3年分の登録料を納付する必要がある点を覚えておきましょう。

提出書類に不備があった場合、出願人に訂正命令が出され、それに応答しないと出願が却下されます。提出書類や要件に不備のない場合は、設定登録されるのです。

STEP.3
意匠権の取得
「意匠登録願」を作成し特許庁長官に提出します。その際、デザインを示した図面を添付しなければなりません。

次に提出書類に不備がないか方式審査が行われ、その後に所定の登録用件を満たしているか、実例審査が行われます。登録要件を満たした場合、「登録査定謄本」が送付されますので、登録料を納付しましょう。登録設定されたのち、意匠権が発生します。

STEP.4
商標権の取得
「商標登録願」を作成し特許庁に提出します。その際、指定商品と指定役務の区分を記載しなければなりません。指定商品・指定役務は正しい区分のもとで、適正な表示を記載する必要があります。

不明確であると拒絶の理由となるので注意しましょう。指定商品・指定役務の正確な区分や適正な表示の事例については、J-PlatPatで調べられます。

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8.知的財産権を利用した海外展開について

事業を海外展開する際、知的財産権の利用が必須となります。特許庁による補助金や関連する条約について説明しましょう。

特許庁がさまざまな費用を補助

事業の海外展開をサポートするため、特許庁が知的財産権に関して行っているさまざまな補助について解説します。

  1. 出願費用
  2. 係争費用
  3. 模倣品対策費用

①出願費用

事業の海外展開を計画している中小企業に対し、特許庁では知的財産権の外国出願にかかる費用の半額を助成して、海外出願を促進しているのです。日本貿易振興機構(ジェトロ)と各都道府県等中小企業支援センターなどが窓口となっています。

地域団体商標を外国に出願する場合は、商工会議所や商工会、NPO法人なども応募できます。

②係争費用

日本企業の海外進出の増加にともない、トラブルも増えています。悪意のある外国企業から日本企業のブランドや社名について先に権利を取得されたり、日本企業が権利侵害の訴訟を起こされたりするなどの事例が挙げられているのです。

特許庁では、トラブルに巻き込まれた中小企業に対して弁理士や弁護士に相談するための訴訟前費用や訴訟費用などの一部に、助成金を支給しています。

③模倣品対策費用

特許庁では日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じて、模倣品対策費用の助成を実施しています。

海外で取得した特許権や商標権などの侵害を受けている中小企業を対象に、侵害調査や調査結果にもとづく模倣品業者への警告文作成、税関差止の申請、模倣品が販売されているWebページの削除などを実施。かかった費用の一部を補助しています。

海外展開する際に知っておきたい条約

知的財産権の海外展開を検討している場合、関連する条約についても知っておく必要があります。

  1. パリ条約
  2. TRIPS協定
  3. マドリッド条約

①パリ条約

パリ条約には、「内国民待遇の原則」「優先権制度」「各国特許独立の原則」の3大原則があります。このパリ条約にもとづき、日本で特許出願してから12カ月以内に加盟国に出願すれば、優先権が主張できるのです。

世界の加盟国でも、日本における出願日が優先されるため、有利な審査が可能となります。パリ条約の加盟国は2021年1月現在175か国。世界のほとんどの国がパリ条約に加盟していることになるのです。

②TRIPS協定

TRIPS協定の目的は、国際的な自由貿易秩序の維持を目指して、知的財産権を保護、権利行使手続の整備を加盟各国に義務づけること。1995年にWTO設立協定付属書1Cとして発効しました。

この協定は多国間協定であり、WTOの規定によって加盟各国は本協定に拘束されます。加盟各国の法律に、TRIPS協定の内容が反映されます。

③マドリッド条約

マドリッド条約は、商標権の保護を目的とする国際条約です。商標権の保護を希望する多数の国を指定し、日本の特許庁を通して国際事務局へ国際登録の出願をします。国際登録を出願すると、国際事務局に国際登録されるのです。

所定された期間内に、指定国の官庁が拒絶通告をしない限り、直接指定国に出願した場合と同じ商標権の保護を受けられます。

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9.知的財産権についての相談窓口

知的財産権に関する手続きでは、トラブルも発生します。最後に主な相談窓口や、それに関わる弁理士や弁護士の仕事について紹介しましょう。

  1. 知財総合支援窓口
  2. 独立行政法人 工業所有権情報・研修館 知的戦略相談窓口
  3. 弁理士
  4. 弁護士

①知財総合支援窓口

全国47都道府県には、知的財産権を保護するための手順や権利取得のための方法などについて、無料でサポートを受けられるINPIT知財総合支援窓口が設置されています。近くの相談窓口で相談すれば、地域に根付いたサポートを受けられるでしょう。

訪問支援も可能で秘密も厳守。オンラインや電話での相談も可能です。

②独立行政法人 工業所有権情報・研修館 知的戦略相談窓口

独立行政法人・工業所有権情報・研修館の知的戦略相談窓口では、秘密情報を適切に管理するための相談ができます。技術ノウハウや商品のアイデア、顧客に関する情報といった秘密情報を「営業秘密」として法から保護されるための支援を受けられるのです。

各会社の実情に合わせて、秘密情報を抽出したり、管理ルールを整備したりするための相談ができます。

③弁理士

知的財産権に関する専門家である弁理士は、知的財産権取得のための手続きを代理で行ってくれます。また知的財産権の取得をはじめとして知的財産に関する全般について相談に乗り、助言やコンサルティングを行っているのです。

さらに訴訟の際には補佐人として、あるいは一定の要件のもとで弁護士と共同で訴訟代理人としての役割を果たします。

④弁護士

知的財産権に関わるトラブルを防ぐ、あるいは侵害などのトラブルが発生した際、弁護士に相談できます。弁護士は、知的財産権を侵害しているかどうかの判断や侵害されていた場合の中止請求、差止請求や損害賠償請求などを行えるのです。

知的財産に関わるトラブル解決のための警告書や鑑定書の作成、訴訟手続きなども弁護士の仕事となります。