ホーソン効果とは?【ピグマリオン効果との違い】具体例

ホーソン効果とは、他者からの注目に応えようとして力を発揮し、よい結果につながる現象のこと。ピグマリオン効果やプラセボ効果との違い、ビジネスでの活用例、注意点などを解説します。

1.ホーソン効果とは?

ホーソン効果とは、他者から注目が集まったときに、期待に応えようとして行動が変化した結果、よい結果につながる現象のこと。

たとえば注目されているスポーツ選手が試合で大活躍をしたとき、ホーソン効果が発動している可能性もあります。ビジネスシーンでは「表彰を受けて周りから注目が寄せられた従業員は、普段以上に仕事の効率が上がってよい成果が出る」といったものです。

相手の期待に応えたいという気持ちがよい成績や結果を生み出し、次回も期待が寄せられてまたホーソン効果が発動する、という好循環を生み出す可能性があります。

ホーソン効果の語源

ホーソンの語源は、ホーソン効果の発見につながる実験が行われた工場名にあります。実証実験でわかったのは「従業員が他者に注目されていると生産性が向上すること」です。こちらについて詳しくは後述します。

その実験結果から見られた効果をホーソン効果と呼ぶようになりました。

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2.ホーソン効果とピグマリオン効果、プラセボ効果との違い

ホーソン効果に意味が似ている効果に「ピグマリオン効果」と「プラセボ効果」があり、これらもよい結果をもたらす効果です。ホーソン効果との違いを解説します。

ピグマリオン効果とは

他者からの期待を受けると、よい成果を出す現象のこと。ホーソン効果との違いは2点あります。

ひとつはピグマリオン効果をもたらすのは「期待」、ホーソン効果がもたらすのは「注目」である点です。もうひとつはピグマリオン効果には上司と部下のような上下関係が存在するのに対し、ホーソン効果には上下関係がありません。

どちらも期待に応えようとして力を発揮する点は共通しているものの、お互いの立場や視点が異なります。

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プラセボ効果とは

本人の思い込みによって身体的または精神的な改善が見られる現象のこと。プラセボとは偽薬を意味し、有効成分が含まれていない偽薬であっても、「効く」と信じて服用すると症状が改善することを指します。

そのためプラセボ効果は医学や心理学の分野の研究対象とされている効果です。

ホーソン効果との違いは、効果が発動するきっかけにあります。プラセボ効果は自分自身の心理状態ですが、ホーソン効果は他者の関与で起こるのです。

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3.ホーソン効果をビジネスで活用する方法

ビジネスシーンでホーソン効果を活用するには、制度や仕組みづくりなどの環境整備が必要です。具体的な方法を解説します。

  1. 表彰制度の設置
  2. 個人の目標を社内に共有
  3. 優れた従業員に部下を配置
  4. 成果を発表する場を提供
  5. 大規模なプロジェクトチームの作成
  6. チームビルディングの実施
  7. コミュニケーションの活性化
  8. ピグマリオン効果と併用

①表彰制度の設置

表彰制度を設けて優秀な従業員に注目を集め、ホーソン効果を起こしやすくする方法です。表彰された従業員は他者から注目を浴びてホーソン効果が働き、さらによい成果を上げようと努力します。その結果ホーソン効果が継続されるのです。

②個人の目標を社内に共有

社内で個人の目標を共有すると他者からの注目を浴びる機会が増え、ホーソン効果が働きやすくなります。

公の場で目標を発表する「パブリックコミットメント」を利用した方法で、公の場で自らの目標を示すと人々の注目が集まり、達成へのモチベーションが高まって目標達成率が上がるのです。

③優れた従業員に部下を配置

優れた従業員に部下を配置すると、ホーソン効果が発生しやすくなります。優秀な上司から注目されるため、部下は期待に応えようとする気持ちが高まり、高い成果を出しやすくなるからです。

そのため優秀なメンバーを入れたチーム編成を実施するとホーソン効果が発動しやすくなり、全メンバーのパフォーマンスを高められます。

④成果を発表する場を提供

成果を発表する場を設けると、従業員は自分の業績や取り組みに注目が集まるため、ホーソン効果によるモチベーションアップしやすくなります。また他者からの評価やフィードバックもホーソン効果を促進。

定期的にプレゼンテーションの機会を作るとよいでしょう。

⑤大規模なプロジェクトチームの作成

大規模なプロジェクトチームを作成すると、ホーソン効果を活用して従業員のモチベーションアップを狙えます。社内中が注目するようなプロジェクトに選抜されたいと考える従業員は、業務への意欲が高まるからです。

⑥チームビルディングの実施

チームビルディングを実施すると、従業員にホーソン効果が発動しやすくなります。

チームビルディングとは、個々のスキルを活かして目標達成を実現するチームにしていくこと。チームビルディングでメンバー同士の信頼関係が築かれると、チームに貢献するようなよい働きをしたいと思うようになり、ホーソン効果が促進されるのです。

⑦コミュニケーションの活性化

コミュニケーションを活性化すると、ホーソン効果を起こせます。会話をとおして周囲が自分に注目していることに気づけるからです。またホーソン効果によって人間関係を良好に保ちやすくなり、さらにコミュニケーションが促進されるでしょう。

⑧ピグマリオン効果と併用

ホーソン効果とピグマリオン効果を併用すると、従業員のパフォーマンスをさらに向上できます。期待と注目を得た部下は、自身の能力を最大限に発揮しようという意欲が高まるからです。

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4.ホーソン効果を活用する際の注意点

ホーソン効果にはメリットが多いものの、活用の際にはいくつかの注意点が挙げられます。主な注意点を3つ解説しましょう。

  1. 人材の選び方
  2. 公平感を意識
  3. 適度なプレッシャー

①人材の選び方

ホーソン効果を活用する際は、人材の選び方が重要です。対象となる従業員は、高いモチベーションを持ち、プレッシャーに強い人材がよいでしょう。

②公平感を意識

ホーソン効果を活用する際は、評価や対応などの公平感を意識することが重要です。自分と他者の評価や対応に差があると、「自分は注目されていない」と感じてしまうでしょう。

適切に評価されていないと感じた従業員は、注目されていないと考えてモチベーションが下がり、ホーソン効果が起こりにくくなります。

③適度なプレッシャー

適度な注目によるプレッシャーは、ホーソン効果どころか従業員に負荷をかけてしまいます。その結果パフォーマンスが低下してしまうかもしれません。

とくにピグマリオン効果と併用すると期待もかけてしまうため、プレッシャーを与えすぎないよう注意しましょう。

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5.ホーソン効果を活用した企業の具体例

人事制度や研修に内容などにおける取り組みにおいてホーソン効果を活用している事例があります。ここでは4社の事例を解説しましょう。

  1. 東京ディズニーリゾート
  2. ローソン
  3. サイバーエージェント
  4. 楽天

①東京ディズニーリゾート

オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾートでは、「スピリット・アワード」という表彰制度を活用しています。

これはキャスト同士が互いに素晴らしい業務を評価し合い、カードにメッセージを書いて送る取り組み。受賞者は表彰されて栄誉を讃えられます。

「スピリット・アワード」により、キャストは他者から見られている意識を持ち、自分を高める意欲が向上したといわれているのです。

②ローソン

ローソンは、ホーソン効果を活用した人事制度や取り組みを実践しており、そのひとつに社内表彰制度「LAWSON AWARD」があります。

「LAWSON AWARD」は、革新的なアイデアや売り上げ向上に貢献した従業員を表彰し、その功績が社内で共有される制度。従業員同士のよい競争を促してモチベーションを高め、自発的な取り組みを促します。

また同時に企業全体の業績アップにもつながる制度です。ほかにも「社長賞」や「部門グッジョブ賞」などの表彰制度も設けています。

③サイバーエージェント

サイバーエージェントは、ホーソン効果を活用した「月イチ面談」という取り組みを実施しました。これは部下と上司が定期的に目標への進捗と成果について話し合うもの。面談のテーマは、前月の振り返りやキャリア形成、フィードバックなどです。

上司と部下の信頼関係を構築し、上司からの注目をモチベーションにつなげるホーソン効果を活用しました。上司からのフィードバックを受けた部下は目標達成に向けた行動が定まり、仕事へのモチベーションが向上。離職率も減ったのです。

④楽天

楽天では、ホーソン効果を活用した「楽天新人賞」を活用。入社1年目の新入社員に限定した賞で、自社に貢献した社員を表彰します。

表彰は月に1回行われ、受賞者は世界中の従業員が参加する朝会で発表。全従業員から賞賛と注目を受ける状況を作り出し、本人のやる気をアップさせる仕組みです。

実際に受賞者からは「仕事への意欲が向上した」といった前向きな意見が見られており、高いホーソン効果を得られた事例といえます。

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6.ホーソン効果の元となった実験

ホーソン効果のもとになったのは、ホーソン工場で行われた生産性に関する4つの実験です。ここではこの実験について解説します。

  1. 照明実験
  2. 組立実験
  3. 面談実験
  4. バンク配線作業実験

①照明実験

労働環境が生産性に影響するかどうかを調べるために行われた照明実験です。「照明が暗い状態で作業すると生産性が下がり、明るい状態だと生産性が上がる」という仮説をもとに行われました。

実験では、照明の明るさを変えながら、作業者の生産性を測定。その結果照明の明るさにかかわらず、一定時間が経過すると生産性が落ちることが実証されました。むしろ照明を暗くするほど生産性が上がったのです。

照明の明るさと生産性や作業効率に因果関係はないと結論づけました。

②組立実験

従業員の作業能率を計測するために行われた実験です。

この実験では、5名の作業員と1名の世話役から構成されたチームでリレーの組み立て作業を行い、監督が賃金や休憩時間、部屋の温度などの環境要因を変化させながら生産性を確認しました。

賃金や休憩時間といった条件を改善すると作業効率が向上し、のちに労働条件をもとに戻しても効率は下がらなかったのです。作業者が自分たちの働きを評価されていると感じると、環境要因に関係なく生産性が向上することが証明されました。

③面談実験

「賃金や就業時間よりも、管理体制の方が作業効率に影響するのではないか」という仮説のもとで行われた実験です。

そこで2万人の従業員に対して個別面談を行い、従業員の満足度を調査したところ、まったく同じ労働条件であっても不満を持つ従業員と持たない従業員がいたのです。

この結果から、従業員の満足度は賃金や就業時間などの労働条件より、好みや感情に左右されやすいことが判明しました。仕事に対する満足度は、従業員の心情が大いに影響するのです。

④バンク配線作業実験

「現場に小グループができると、集団での作業に影響を与えるのではないか」という仮説から行われた実験です。そこで発生した小グループの生産性を調査すると、小グループ内では、意図的に労働量を一定以下に下げていることを発見しました。

実験結果から、非公式組織であるグループであっても、その人間関係が従業員へおよぼす影響力は大きいことが判明。そのため従業員同士の関係性や集団の心理によっては、作業効率や生産性を下げてしまうのです。