【源泉徴収票の書き方】人事労務担当者必見!基本から訂正・再発行まで

年末が近づくと人事労務担当者を待ち受けるのは、源泉徴収票の作成と年末調整という大きな業務です。特に初めて担当する方にとって、正確な作成方法や効率的なスケジュール管理は大きな悩みとなります。令和6年は定額減税対応など様式にも変更があり、従来の知識だけでは対応できない部分も出てきました。

本記事では、源泉徴収票の基本的な役割から具体的な記入方法、効率的な作成プロセス、そして従業員への配布まで、人事労務担当者が知っておくべき実践的なノウハウを解説します。

源泉徴収票の基本と令和6年分の振り返り

女性に向かって説明する女性ビジネスパーソン
源泉徴収票に関する基本知識と最新の制度変更を理解しておくことは、人事労務担当者にとって必須のスキルです。特に令和6年分では定額減税への対応など重要な変更点があり、正確な作成が求められました。

ここからは、源泉徴収票の法的位置づけや役割、令和6年分の様式変更点とその対応ポイント、さらに雇用形態別の発行ルールについて解説します。正確な源泉徴収票作成のための基礎知識を身につけていきましょう。

源泉徴収票の役割と法的位置づけ

源泉徴収票は、従業員の1年間の給与所得と納めた所得税額を証明する重要な法定書類です。所得税法第226条に基づき、給与を支払う事業者(源泉徴収義務者)には従業員への交付義務があります。この書類は確定申告や住民税の計算基礎となるだけでなく、住宅ローン審査や各種補助金申請時の収入証明としても活用されます。

特に注目すべきは、源泉徴収票の発行対象が正社員だけでなくパート・アルバイトなどすべての従業員を含む点です。退職者に対しては、退職後1か月以内に交付しなければなりません。

法定書類であるため記載内容の正確性が求められ、不適切な記載は税務上の問題を引き起こす可能性があります。

令和6年分の様式変更点と定額減税対応のポイント

令和6年分の源泉徴収票における最も重要な変更点は定額減税への対応です。

源泉徴収票の摘要欄には「源泉徴収時所得税減税控除済額×××円」と実際に控除した金額を記載します。控除しきれなかった場合は「控除外額×××円」の記載も必要です。また、合計所得金額が1,000万円超の居住者の同一生計配偶者分を減税計算に含めた場合は「非控除対象配偶者減税有」という文言も記入します。

源泉徴収税額欄には、年調所得税額から減税額を控除した残額に102.1%(復興特別所得税分)を乗じた金額を記入します。これらの変更点を正確に理解して源泉徴収票を作成することが重要です。

項目 記載内容
摘要欄 「源泉徴収時所得税減税控除済額×××円」
「控除外額×××円」(控除しきれない場合)
「非控除対象配偶者減税有」(該当する場合)
源泉徴収税額欄 (年調所得税額-年調減税額)×102.1%
対象者 扶養控除等申告書を提出している給与所得者

雇用形態別の源泉徴収票発行ルール

源泉徴収票は雇用形態に関わらず発行する法的義務があります。正社員だけでなく、パート・アルバイト従業員にも年末調整後、翌年1月31日までに交付が必要です。重要なのは、年間収入が103万円以下で所得税が課税されない場合でも発行義務があることです。これは給与総額を証明する重要書類だからです。

退職者には特別なルールがあり、退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付しなければなりません。年の途中で退職した場合は、その時点での給与・所得税額を記載します。この書類は転職先での年末調整に不可欠です。

派遣社員の源泉徴収票は雇用主である派遣会社が発行責任を負います。年末調整の有無は「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出状況によって決まりますが、申告書未提出でも源泉徴収票自体は発行されます。

雇用形態 発行タイミング 特記事項
正社員 年末調整後〜翌年1月31日 年末調整実施が原則
パート・アルバイト 正社員と同様 所得税額が0円でも発行必要
退職者 退職日から1か月以内 転職先での年末調整に必要
派遣社員 正社員と同様 派遣会社が発行義務を負う

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源泉徴収票の正確な記入方法と実例

給与所得の源泉徴収票と印鑑、朱肉、ボールペン
源泉徴収票を正確に作成するには、各項目の記入ルールを理解することが重要です。これから説明する「基本情報と支払金額欄」「所得控除欄」「住宅ローン控除と扶養控除」は、源泉徴収票の書き方において特に注意が必要な部分です。

記入ミスがあると税務上の問題が生じるだけでなく、従業員の収入証明としても使われるため、正確性が求められます。

基本情報と支払金額欄の記入例

源泉徴収票の基本情報と支払金額欄の記入は、正確さが求められる重要な作業です。まず基本情報では、支払を受ける者の住所は令和7年1月1日(中途退職者は退職時)現在のものを正確に記載します。住所には「○○方」や「××荘△号」などの詳細も忘れずに付記しましょう。

次に氏名欄にはフリガナを必ず振り、法人役員の場合は役職名(社長、取締役など)を、一般従業員の場合は職務名称(経理課長、営業係など)を併記します。支払金額欄には令和6年中に支払いが確定した給与等の総額を記入します。中途就職者で前職の給与を通算して年末調整を行った場合はその金額も含めてください。

給与所得控除後の金額欄には「令和6年分年末調整のしかた」の計算表で求めた金額を記載します。所得金額調整控除がある場合は、その控除後の金額となる点に注意が必要です。源泉徴収税額欄には、年末調整後の源泉所得税と復興特別所得税の合計額を記入します。

この基本部分を正確に記入することで、その後の所得控除などの計算もスムーズに進みます。

所得控除欄の計算手順と記入のコツ

所得控除欄は源泉徴収票作成の重要なポイントです。各種控除の合計額を記入することで、従業員の正確な課税所得を算出します。社会保険料控除では、給与から天引きされた健康保険料や厚生年金保険料などの合計額をそのまま記入できます。

配偶者控除は配偶者の所得に応じて最大38万円(老人控除対象配偶者は48万円)が適用されます。所得が48万円超133万円以下の場合は、配偶者特別控除として最大48万円の控除が可能です。

障害者控除や寡婦控除、ひとり親控除なども状況に応じて加算します。基礎控除は原則として38万円がすべての方に適用されます。各控除額の合計が、源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」欄に記入する金額となります。

住宅ローン控除と扶養控除の正しい記載方法

住宅ローン控除と扶養控除は源泉徴収票で正確な記載が求められる重要項目です。住宅ローン控除の場合、摘要欄には居住開始年月日と控除区分を明記します。控除額は年末ローン残高に0.7%を乗じて計算され、住宅の種類や居住開始年で上限額が異なります。例えば認定住宅なら令和4・5年は35万円、令和6年は条件により31.5万円または35万円となります。

扶養控除については、扶養親族の年齢や状況に応じて区分が変わります。摘要欄には各扶養親族ごとに「一般」「特定」「老人」などの区分と氏名を記載します。国外居住の親族を扶養に入れる場合は、令和5年からの制度変更に注意が必要で、「親族関係書類」と「送金関係書類」の提出が求められます。

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源泉徴収票作成の実務プロセスと効率化

ノートパソコンのキーボードを操作する手元
年間を通した源泉徴収票作成の準備から、記入ミスが発生した際の対処法、そして業務効率化につながるe-Tax活用まで、実務的な観点から解説します。特に初めて担当する方にとって、いつ何をすべきか明確なスケジュール把握と、ミスを未然に防ぐポイントを押さえることが大切です。

また、電子化の波は源泉徴収票作成業務にも及んでおり、適切に活用することで大幅な業務効率化が可能になります。それぞれの段階での具体的な手順と注意点を見ていきましょう。

年間スケジュールで見る源泉徴収票作成の準備と手順

源泉徴収票作成のための年間スケジュールを把握することは、計画的な準備と正確な業務遂行において重要です。

一般的な流れでは、10月中旬に従業員への申告書配布を開始し、11月には中途入社者からの源泉徴収票提出や、全従業員からの申告書・証明書を回収します。12月には従業員ごとの所得税額確定と源泉徴収税額との差額計算・精算を行い、源泉徴収票を作成します。

翌年1月は10日(納期特例適用の場合は20日)までに年末調整後の源泉徴収税額を納付し、31日までに法定調書を提出する必要があります。従業員の方々は11月に各種申告書への記入と必要な証明書の提出を行います。

これらの業務を効率よく進めるためには、明確な期限設定と従業員への事前説明が重要です。特に年末の繁忙期は業務が集中するため、十分な準備時間の確保を心がけましょう。

記入ミスの防止策と訂正・再発行の正しい手続き

源泉徴収票の記入ミスは税務上の問題を引き起こす可能性があるため、正確な作成が求められます。万が一ミスが発生した場合は、速やかに訂正手続きを行いましょう。

訂正手続きの際は、提出済みの源泉徴収票の写しの右上部に「無効」と赤書きしましょう。次に、この無効とした源泉徴収票の支払金額等を記載した合計表を作成し、「調書の提出区分」欄に「4」と記入します。

続いて、正しい内容の源泉徴収票を新たに作成し、右上部に「訂正分」と赤書きします。この訂正分の源泉徴収票に対応する合計表も作成し、「調書の提出区分」欄には「3」と記入します。

従業員への対応としては、正しい内容の源泉徴収票を再作成し、摘要欄に記載誤りとなった箇所と「再交付」という文言を明記して交付します。

e-Taxと電子化対応で業務効率を高める方法

e-Taxを活用した源泉徴収票の電子的処理は、人事労務業務の効率化に大きく貢献します。e-Taxには「Web版」と「通常版」の2種類があり、Web版では給与所得の源泉徴収票など特定の法定調書を作成・提出できます。データ入力は1枚ずつ手入力する方法とCSVファイルを一括読み込む方法があるため、企業規模に応じて選択しましょう。

また、地方税ポータルシステム(eLTAX)の電子的提出一元化機能を使えば、給与支払報告書と源泉徴収票のデータを同時に作成・提出することが可能です。これにより、異なる提出先への二重作業が解消されます。

電子化のメリットは、紙の印刷・郵送コストの削減だけでなく、従業員がマイナポータル経由で自身の給与情報を取得し確定申告に活用できる点にもあります。ただし、マイナンバーや氏名などの情報が正確に入力されていない場合は情報連携ができないため、データの正確性に注意が必要です。

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源泉徴収票管理の効率化と次年度に向けた改善

封筒を差し出すビジネスパーソンの手元
源泉徴収票の管理と配布は、人事労務担当者にとって重要な業務のひとつです。効率的な管理方法を導入し、従業員に適切に配布することで、業務負担を軽減しながらコンプライアンスも確保できます。また、次年度に向けた準備を計画的に進めることで、源泉徴収票の作成プロセスをさらに効率化することが可能です。

ここでは、従業員への源泉徴収票の効果的な配布方法と質問対応のポイント、そして次年度の源泉徴収票作成を効率化するための具体的な準備と改善策について解説します。

従業員への効果的な配布方法と質問対応のポイント

源泉徴収票の配布は、年末調整後に最終給与支給日に合わせて行うのが一般的です。配布方法は、従来の紙媒体での直接手渡しや給与明細と一緒に配布する方法に加え、近年は電子化が進み、PDFなどの形式で配布することも可能です。

電子配布にはコスト削減や業務効率化、セキュリティ向上などのメリットがありますが、従業員の同意を得る必要があります。確定申告が必要な従業員には、源泉徴収票が不可欠な書類であることを伝え、大切に保管するよう促しましょう。

次年度の源泉徴収票作成を効率化する準備と改善策

次年度の源泉徴収票作成を効率化するには、年末調整手続きのデジタル化が効果的です。従業員が控除証明書データをオンラインで提出できるようにすれば、紙の取り扱いが減少し、確認作業の負担が大幅に軽減されます。

令和5年10月からは小規模企業共済等掛金の控除証明書もデータ提出が可能となり、年末調整に必要な主要証明書はすべてデータ化されました。国税庁が無償提供している年調ソフトを活用すれば、従業員は簡単に基礎控除申告書等を作成できます。

さらなる効率化には、源泉徴収票を含む労務書類をオンラインで一元管理できる労務管理クラウドサービスの導入も検討価値があります。事前準備と適切なシステム活用により、給与支払報告書とのデータ連携も可能になり、二重作業の解消につながります。

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まとめ

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源泉徴収票は法的に重要な書類であり、定額減税など令和6年分の様式変更点を理解した上で、雇用形態別の発行ルールに従い適切に作成する必要があります。基本情報から支払金額、所得控除、住宅ローン控除まで、具体的な記入例に基づいた正確な記載が求められます。

年間スケジュールを意識した計画的な準備と、記入ミス防止策の実践も重要です。e-Taxなどの電子化対応で業務効率を高めつつ、従業員への配布方法や質問対応も含めた総合的な管理体制を構築することで、次年度の源泉徴収票業務がよりスムーズになります。

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