【解説】ギャップイヤーとは? 学生が休学する理由、歴史、メリット・デメリット

ギャップイヤー(Gap Year)はもともと「人生の節目の空いた期間を使って旅をする」という意味で使用されていた言葉です。ここではギャップイヤーの現状やメリット、デメリットなどについて解説します。

1.ギャップイヤー(Gap Year)とは?

ギャップイヤーとは、学生が入学前や卒業後などに社会体験活動を行う猶予期間のこと。

近年のイギリスやオーストラリア、カナダにて「大学入学許可証を持った高校卒業者がすぐ大学に入学せず、およそ1年間の人生経験を積んだあとに改めて入学する」という意味で用いられています。

ギャップイヤーの過ごし方

「ギャップイヤーの期間中にこれをしなければならない」という決まりはありません。

「年齢制限があるコンテストに参加する人」や「映画制作や聖地巡礼などの趣味を突き詰める人」「まとまった時間が必要な活動をする人」など、過ごし方はそれぞれ。

ギャップイヤーは単なるスキルアップのためだけに取得する期間ではないのです。

ギャップイヤーは「人生の節目の空いた期間を使って旅をする」という意味で使用されていました。過ごし方は人それぞれです

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2.ギャップイヤーの現状

日本では3月の卒業から9月の入学までの期間を指す場合が多いです。そのため「ギャップターム」とも呼ばれるギャップイヤーはまだ日本においてなじみが薄いといえます。ここではイギリスやオーストラリア、ドイツなど海外の現状について説明しましょう。

ギャップイヤーの海外の現状

Gap Year Associationの調査によれば、新型コロナウイルスの世界的拡大が始まる以前、年間3万人から4万人もの人がギャップイヤーを取得していたそうです。年間の増加割合は約23%。

アメリカのハーバード大学では、新入生の5人に1人がギャップイヤーを利用していることでも話題になりました。

イギリス

ギャップイヤー発祥の地イギリスでは、全学生の6%がギャップイヤーを利用。

利用する学生の割合が増えないのは経済的負担の大きさのほかに、そもそもギャップイヤーを「商品やサービス」として捉えているという理由があります。そのため消費者としての保護や安心に寄与する認証が必要という考え方が根付いているのです。

そんななか、ケンブリッジ大学ではギャップイヤーの取得を推奨。また英国王室のウィリアム王子が1年間のギャップイヤーを使って世界各国で職業体験を行ったため、認知度が高まっています。

オーストラリア

オーストラリアには日本の受験勉強のような文化がありません。大学入学前に自由な時間を作れるため、ギャップイヤーの取得を考えている学生に対して比較的寛容な社会となっています。

また日本の私立大学に見られる「休学費用」の制度もありません。オーストラリアでは「学費は自ら工面するもの」と考える人が多いです。そのためギャップイヤーの期間中にアルバイトする学生もいます。

デンマーク

デンマークではギャップイヤーの期間中に北欧独自の教育機関「フォルケホイスコーレ」に通うのが一般的です。「民主主義的思考を育て、知の欲求を満たす場である」ことを目的としたフォルケホイスコーレには試験や成績の概念がありません。

デンマークにとってギャップイヤーとは、自由な学習環境下で自分自身の内側にある幸せや関心にしたがって考え、学ぶための期間なのです。

ドイツ

ドイツもギャップイヤーを活用する学生が比較的多い国のひとつです。4割以上もの学生が高校卒業から大学入学までの1年間をギャップイヤーとして利用しています。

期間中の過ごし方もさまざまで、FDJと呼ばれる社会奉仕活動に参加する人もいれば、どのように過ごすか具体的に決めていないが一旦休みたいと考えている学生も存在するのです。

ギャップイヤーの日本国内の現状

近年、急速なグローバル化が進んでいるものの、日本国内にギャップイヤーはあまり浸透していません。

なかには数か月から1年程度、自主的な体験活動の期間を設ける大学もありますが、就職活動で不利になるのではないかという考えも根強く残っているのが現状です。

ギャップイヤーは海外で広く浸透し、期間中に活動する学生が増えているものの、日本ではまだ認知度が低いです

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3.ギャップイヤーのメリット

2015年に海外留学サイトのEFが実施した調査によれば、ギャップイヤーという言葉の認知度はわずか2割程度に留まっています。日本国内ではまだまだ浸透していないギャップイヤーには、どのようなメリットが存在するのでしょうか。

  1. 自分の将来を考えるきっかけになる
  2. 社会に出る前、貴重なキャリア経験ができる
  3. 入学後、目的意識をもって勉強できる
  4. 大学院進学や就職時にアピールできる
  5. 人脈が広がる

①自分の将来を考えるきっかけになる

多くの場合、高校までの経験は勉強や部活動など非常に限られた範囲になりますが、ギャップイヤーの期間中はどんな過ごし方をしても自由です。

留学やボランティア活動、インターンシップなど学校生活では得られない経験をするなかで、自分は将来何をしたいのか、どんな人間になりたいのかを見つめ直せます。

②社会に出る前、貴重なキャリア経験ができる

人生の新たな選択肢を見つけ出すこと自体は社会人になってからももちろん可能です。しかし社会人になればどうしてもまとまった時間を取るのが難しくなります。ギャップイヤーを利用すると、社会に出る前、貴重な経験を積めるのです。

教育的な要素を取り入れたギャップイヤープログラムも多く存在しています。利用目的を明確にしたうえでギャップイヤープログラムを利用すれば、実りある期間を過ごせるでしょう。

③入学後、目的意識をもって勉強できる

一般社団法人日本ワーキング・ホリデー協会の調査によれば、近年の大学平均中退率は20%ほど。しかしギャップイヤーを利用した学生の中退率は3~4%程度という結果が報告されているのです。

このことからギャップイヤーを利用した学生は、明確な目的意識を持って勉強に励んでいると分かります。普段の生活で味わえないギャップイヤー期間中の経験が、大学で何を学びたいのかを考えるきっかけになっているのです。

④大学院進学や就職時にアピールできる

ギャップイヤー期間中の経験は、大学院進学や就職時のアピールポイントにもなります。

世界の一面について、本やドキュメンタリーなどからも学べますが、実際の経験に勝るものはありません。「期間中に何をしたのか」「どんな視点を持てたか」がアピールできれば、ほかの学生との差別化を図れるでしょう。

⑤人脈が広がる

社会人になってから人脈を広げるのは案外難しいもの。ギャップイヤーによって生まれたつながりは国内に留まらず、その後一生付き合える海外とのつながりになるかもしれません。

ギャップイヤーのメリットは「自分の将来を考えるきっかけになる」「社会に出る前貴重なキャリア経験ができる」「入学後、目的意識をもって勉強できる」「大学院進学や就職時にアピールできる」「人脈が広がる」の5つです

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4.ギャップイヤーのデメリット

自分の将来を考えなおすきっかけになったり、人脈を広げられたりとさまざまなメリットの存在するギャップイヤーですが、同時にいくつかのデメリットも存在します。ここではギャップイヤーのデメリットを以下3つの視点から説明します。

  1. 予想以上にお金がかかる場合も
  2. 目的意識を持たないと時間が無駄に
  3. 就職で不利になるケースも

①予想以上にお金がかかる場合も

ギャップイヤーのデメリットとして挙げられるのが、金銭的な問題です。ある程度まとまった貯蓄があれば問題はないもののそうでない場合、自分の過ごしたいスタイルに合わせてお金を用意しなければなりません。

特に海外での生活を考えている場合、滞在費や渡航費、保険料など想像以上にお金がかかるため、計画的に管理する必要があります。

②目的意識を持たないと時間が無駄に

ギャップイヤー期間中には必ずこれをしなければならない、という明確な決まりがありません。裏を返せば、「何をしたいのか」「何ができるのか」などを明確にしておかなければ無駄に時間を過ごして終わってしまうのです。

ギャップイヤーは義務ではありません。具体的な目標ややりたいことが思いつかなければ、「ギャップイヤーを利用しない」という考えも決して間違いではないのです。

③就職で不利になるケースも

人事評価ではギャップイヤーを単なる休暇取得ではなく、どのような目的で取得し、どのような経験をしたかをポジティブに評価します。

しかし和を重んじる日本では、「人と違った行動を取る」「ギャップイヤーの取得」がキャリアの命取りと考える人も少なくありません。就職で不利にならないためにも、ギャップイヤー取得の目的やそこで得た経験をはっきりアピールする必要があります。

ギャップイヤーのデメリットは、「予想以上にお金がかかる場合も」「目的意識を持たないと時間が無駄に」「就職で不利になるケースも」の3つです

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5.ギャップイヤーを有効的に活用するための過ごし方

ギャップイヤーの期間中はダラダラと休暇を過ごすのではなく、何かしら目的をもって有意義に過ごすことが大切です。ここではギャップイヤーを有効的に活用するための過ごし方について説明します。

海外留学

以下のような人であれば海外留学を考えてみるのもいいでしょう。

  • 海外の大学やカレッジに興味はあるが、卒業と同時に進学するのはハードルが高くて不安
  • 海外の大学やカレッジに興味があるため、短期間でためしに経験してみたい
  • 語学学校の内容だけでは物足りない。実際の講義を体験してみたい

海外留学のなかには「規定のプログラムを利用すれば、現地の大学で講義を受けられる」「語学スキル取得のための語学学校に通える」ものも。グローバルな見聞を広めるには海外留学が最適です。

ボランティア

海外の学生の多くは、社会の一員としてボランティアを経験しています。環境保護活動に参加したり、地域のコミュニティに参加して地域貢献活動を行ったりと、学校に通うだけでは体験できないたくさんの経験ができます。

ボランティア活動を通じて人間関係を広げたり、人の役に立つと実感できたりと、さまざまなメリットを受けられるのです。

インターンシップ

インターンシップとは、追求したい専門性や進路などに関連した企業で実際に就業体験できる制度のこと。ギャップイヤーを利用して長期のインターンシップに参加するのも選択肢のひとつです。

もちろん在学中でもインターンシップに参加できます。しかしギャップイヤー期間ほどのまとまった時間は取れません。ギャップイヤーを利用してじっくりと就業体験できれば、自身の将来について改めて考えられるでしょう。

ギャップイヤーを有効的に活用するための過ごし方は、「海外留学」「ボランティア」「インターンシップ」の3つです

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6.大学におけるギャップイヤーの取り組み

日本国内ではまだまだなじみの薄いギャップイヤーですが近年、取り組みを推進する大学も増えてきました。大学はどのような目的をもってギャップイヤーを推進しているのでしょうか。ここでは各大学の事例と合わせて説明します。

大学がギャップイヤーに取り組む目的

大学がギャップイヤーに取り組む目的は、下記のとおりです。

  • 大学と企業との協力が期待できる(理系や技術系に多い)
  • 就職率の向上が期待できる
  • 交換留学生の増加が期待できる
  • 国際人の育成に役立てる

実際にギャップイヤーを取得する学生は自主的な学生が多いです。そのため期間中の経験にもとづく具体的な目標を持たせられます。

各大学における擬態的な取り組み事例

愛知県にある名古屋商科大学および光陵女子短期大学では2005年から、東京大学では2013年から独自に定めたギャップイヤープログラムを実施しています。ここでは以下4つの大学で実施しているギャップイヤーの取り組み事例を説明します。

東京大学 「FLY Program」

東京大学では入学初年度に1年間の特別休学期間を取得できる自主活動プログラム、通称「FLY Program」を実施。本プログラムでは入学直後の学生が1年間の特別休学期間を自ら取得し、ボランティア活動や就業体験活動、国際交流活動などに参加します。

特別休暇中の1年間、学費はかかりません。また申請に応じて最大50万円の活動支援金も支給されます。

国際教養大学「ギャップイヤー入試」

秋田県にある国際教養大学でも9月に入学するまでの最大5カ月間、研修活動に従事してもらう「ギャップイヤー入試」を実施しています。学生の自主性を尊重しているため、活動内容に制限はありません。

海外留学やボランティア活動などさまざまな活動に参加し、実体験を通じてグローバルな知識と思考能力を身に付けるのです。

名古屋商科大学と光陵女子短期大学

愛知県にある名古屋商科大学および光陵女子短期大学では入学直後、もしくは2年次の4月から7月に海外で調査やボランティア活動などを行う「ギャップイヤープログラム」を実施。

期間中どのような活動に取り組むかは決められておらず、各自で自主的に計画を立てます。プログラム実施後は学生自身の学習意欲が向上し、将来計画へも大きな成果を生み出しました。

小樽商科大学 「ギャップイヤープログラム」

北海道の小樽商科大学が実施する「ギャップイヤープログラム」では、在学中ではなく入学前にギャップイヤーを経験できます。

2019年度には約4か月のハワイ大学派遣留学プロラムを実施。語学向上のための授業はもちろん、語学以外の専門科目を学べるプログラムとして注目を集めたのです。

大学では参加費用の一部助成や留学前の英語力強化などさまざまなサポートを実施しています。入学後に欧米・アジア圏の交換留学へ参加も可能です。

大学は、「大学と企業との協力が期待できる(理系や技術系に多い)」「就職率の向上が期待できる」「交換留学生の増加が期待できる」「国際人の育成に役立てる」といった目的のため、ギャップイヤーを実施しています

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7.ギャップイヤーが社会に浸透するために必要なこと

日本国内でギャップイヤーが浸透しない理由として、ギャップイヤーに対する大学と企業との捉え方の違いが挙げられます。ギャップイヤーが社会に浸透するには、大学だけでなく企業側の理解、そして採用制度の多様化・具体化が必要なのです。

  1. 大学および企業側の理解
  2. 多様な制度の具体化

①大学および企業側の理解

日本の学校制度では、一般入試や推薦入試などで受験をしたのちすぐ、4月から大学に入学します。事実、多くの大学が合格決定後から入学までの期間中にギャップイヤーの利用を認めていません。

また企業としてもギャップイヤーの利用を「休暇」として捉え、マイナスに評価する傾向にあります。

②多様な制度の具体化

働き方の多様化やグローバル化にともなって、かつての終身雇用制度や年功序列の制度は衰退しています。新たな採用制度が広まるなか、一部の企業では新卒通年採用を開始しました。

これにより学生はギャップイヤーを利用しても就職活動の時期を柔軟に決められます。ギャップイヤーの浸透にはこういった採用制度の多様化・具体化も必要なのです。

ギャップイヤーはまだ浸透していません。ギャップイヤーが社会に浸透するには、大学だけでなく企業側の理解、そして採用制度の多様化・具体化が必要なのです