ファシリテーション(スキル)とは?【意味とやり方を簡単に】

ファシリテーションとは、議論が円滑に進むよう舵取りするスキルのこと。さまざまな考えや価値観をもつ人が集まるなかでひとつの結論や合意を導き出すためには、ファシリテーションの役割が欠かせません。

今回はファシリテーションについて、その目的や役割、必要なスキルや進め方などを詳しく解説します。

1.ファシリテーションとは?

ファシリテーション(facilitation)とは、会議やミーティングを円滑に進むよう舵取りすること。もともとは「容易にすること」「促進すること」といった意味を持つ言葉です。

集団での問題解決や教育、学習などあらゆる活動を支援して促進する働きを包括的にファシリテーションといいます。

会議やミーティングでいえば、メンバーの発言を促して議論を広げ、意見や発言を整理して議論を収束させる一連の行動です。ファシリテーションは、よい議論やよい結果へ導くための役割を担います。

ファシリテーターとは?

ファシリテーションする人のことで、会議やミーティングがうまく進行するよう仕切る人。

会議やミーティングの段取りを行う司会進行役と異なり、ファシリテーターは一歩踏み込み、参加者の心情や意見を察知しながら全体の合意形成を促すなど、議論に深く踏み込んで舵取りする役割を持ちます。

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2.ファシリテーションの目的

ファシリテーションの目的は、さまざまな価値観、意見をもつ人をひとつの目標達成や合意形成に導くこと。これがファシリテーションの本質であり、重要な目的です。

さまざまな価値観を持つ人が集まる組織が活性化するには、異なる意見を持つ他者が相互に理解を繰り返して、新たな考えや答えに辿り着くことが必要といえます。

それぞれが活発に意見をだし、新たな考えや合意にたどり着くには、メンバー一人ひとりが当事者意識を持って主体的に会議・ミーティングに参加できる状態が理想でしょう。

一方的な指示や命令、個人の演説を聞いている状態では、主体的な議論は行われません。ファシリテーションが正しく機能すると、個々が活発に意見を出せるようになります。相互理解が促されれば組織としての意思決定力や問題解決力も向上するでしょう。

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3.ファシリテーションのメリット

ファシリテーションにより、以下のようなメリットが期待できます。

議論の生産性が向上する

人数が多く発言が活発な場であるほど、話の脱線や論点のズレが生じやすいです。反対に、発言が活発でない、参加者が消極的な場では意見が出ずに議論が進まず、議論の目的が達成されません。

ファシリテーションがあると、議論が適切に軌道修正され、効率的に目的に到達できます。意見が出ない場合も、ファシリテーションが発言を促すと、議論を意図した方向に進められるでしょう。

時間をかけたのに何の結論も出なかった、会議の時間を設けたのに有効な意見が出なかったなど時間の無駄を回避でき、生産性を高めて有意義な議論ができます。

参加者が意見を出しやすくなる

ファシリテーターは、中立の立場を貫いて議論の舵取りをします。ただ舵取りするだけでなく、参加者が話しやすい雰囲気や流れを作り、意見を引き出すのもファシリテーションの重要な役割です。

役職者がいる会議など、状況的に発言しにくい場もあるでしょう。こうした状況でもファシリテーターという中立の立場の人がいると、心理的安全性も高まり発言しやすくなります。

意見が出しやすい雰囲気では意見交換が活発となり、新たなアイデアが出やすくなるでしょう。価値観の共有・相互理解が進めばイノベーションの源泉がうまれ、企業の成長や発展に貢献します。

結論や合意に導かれやすい

さまざまな意見が出ても、情報が整理されていないとなかなか結論や合意には辿りつけません。ファシリテーションがあると、さまざまな意見が整理され、整理した情報をもとに時間内に結論や合意に導きやすくなります。

ただ結論や合意に導くだけでなく、その内容を全員が理解・納得しているかを確認することもファシリテーションに含まれる役割です。結論や合意に導けると今後のアクションも明確となり、効率的に行動を起こせます。

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4.ファシリテーションの役割

ファシリテーションには、「外面的なプロセス」と「内面的なプロセス」の2面的な役割があります。ファシリテーションの役割を詳しくみていきましょう。

外面的なプロセス

外面的なプロセスには、段取りや進行、プログラムなど目的を達成するための役割があります。活動や会議を円滑に進める目的を果たすためには、外面的なプロセスが重要です。

時間内に会議を結論や合意に着地させるには、適切なプログラムや段取り、進行が欠かせません。全体を俯瞰し、タイムマネジメントしながら目的達成に向けて議論を進めていく役割を持ちます。

内面的なプロセス

内面的なプロセスは、参加者一人ひとりの考えを尊重する、感情を読み取るなど、参加者の考えや心情に着目した思考的・心理的なプロセスです。

納得のいく結論や合意に導くためには、さまざまな考えを持つ参加者が意見をぶつけ合い、相互理解する過程が必要でしょう。

ファシリテーターは中立の立場を貫き、それぞれの意見や感情に寄り添いながら結論や合意に導けるよう情報を整理する役割を持ちます。また、発言しやすい雰囲気・環境づくりや参加者同士のコミュニケーションを促進することも重要な役割です。

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5.ファシリテーションに必要なスキル

特別非営利活動法人 日本ファシリテーション協会によると、ファシリテーションには以下4つのスキルが必要とされています。

  1. 場のデザインスキル
  2. 対人関係のスキル
  3. 構造化のスキル
  4. 合意形成のスキル

これら4つのスキルが相互に作用した結果、円滑な会議が実現します。それぞれどういったスキルなのかを具体的にみていきましょう。

①場のデザインスキル

何を目的に誰を収集し、どういったやり方で議論していくかの話し合いの段取りを行うスキルです。適切な議論時間を設定し、参加者の関係性を適切に把握したうえでアサインし、話しやすい場を用意することもファシリテーションの重要な役目です。

いきなり会議を始めても、段取りができていないため、生産性の高い議論は行えません。

会議の目的と目標を確認し、それを参加者に共有すること、アジェンダを作成して段取りを明確にしてこそ生産性の高い議論ができ、目的・目標を達成できる会議・ミーティングを実施できます。

②対人関係スキル

対人関係スキルには、傾聴力や質問力、観察力などのスキルが該当します。議論では多くの意見や考えを出し、相互の理解・共感を深めながらアイデアを広げていく「発散」が重要です。

良質な発散があってこそ納得のいく結論や合意が導き出せ、その発散を導き出すのがファシリテーションの役割といえます。

ファシリテーターは、参加者が発言しやすい雰囲気・環境を作り、それぞれの意見や考えを中立の立場で受け止め、理解・共感を深めることが求められるのです。

よい発散を促すには傾聴力や質問力、観察力をもって議論と参加者の状況を見極めながら議論の舵を取っていくことが大切でしょう。

③構造化スキル

構造化スキルとは、発散によりでた考えやアイデア、議論の内容を整理して共有し、論点を明確にするスキルです。整理力や理解力、論理的思考力が該当します。

活発な発散が行われると情報が乱立するため、そのまま議論を進めると論点がズレる恐れもあります。構造化スキルは、議論の方向性を適切に軌道修正し、最終的な目標に到達するために必要なスキル。結論や合意に導くには、構造化スキルが欠かせません。

④合意形成スキル

合意形成スキルは、議論の内容をゴールに着地させるスキルです。合意形成のスキルは「コンセンサス」とも呼ばれ、決定に対する同意を得るスキルともいえます。異なる意見や考えを融合させ、着地させるためには合意形成スキルが必要です。

合意を得る過程で意見の対立が起こることも多いものの、こうした対立をうまく収拾するのも合意形成スキルのひとつ。これを「コンフリクトマネジメントスキル」といいます。意見の対立に適切に対処できれば、チームの結束力向上にも有効です。

合意形成は議論の目的・目標を達成するために欠かせず、ファシリテーターの力量が問われます。なお、合意形成スキルにはただ合意を得るだけでなく、その後具体的なアクションに移すための整理と確認が含まれる場合もあるのです。

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6.ファシリテーションの進め方

ファシリテーションの進め方を会議前・会議中・合意形成の3点から解説していきます。

会議前

会議前は、会議の段取りを行います。

  • 出発点、到達点の明確化
  • 会議の日時、場所、参加者の決定
  • 参加者の把握

まずは、5W1Hに沿って情報を整理するとよいでしょう。

  • 何についての会議なのか(What)
  • どこで行われるか(Where)
  • いつ行われるか(When)
  • 誰が参加するか(Who)
  • なぜ行われるか(Why)
  • どのように行うか(How)

会議の段取りがある程度まとまったら、どこから議論を始めるかの出発点とどこまで結論を出すかの到着点を明確にします。最終ゴールは合意形成であるため、合意形成までのプロセスを分解するとわかりやすくなるでしょう。

また、参加者の把握も重要なポイント。多部署での会議は保有情報の差や前提となるミッションが異なる場合もあるため、参加者の情報レベルや相互関係を把握します。それにより、円滑に進行できるでしょう。

会議中

会議中は、ファシリテーターが力量を発揮する場です。

  • 雰囲気づくり
  • 発言の促進
  • 論点の整理
  • タイムキーピング

まず行うべきは、参加者の発言を促すための雰囲気作り初めてのメンバーでの会議では、自己紹介といったアイスブレイクがオススメです。発言しやすい雰囲気ができたら、改めて議論の目的を共有し、着地できるよう議論を進めていきましょう。

このとき、ファシリテーターは中立な立場で議論を俯瞰し、適切なタイミングで質問を投げかけたり、要点を整理したりすることがポイントです。議論の状況もみつつ、必要に応じて議論の軌道修正も行いましょう。

同時に、タイムキーピングも実施します。議論の時間やまとめの時間とステップごとに所要時間を決め、進捗を確認しながら進めていきます。適切なタイムキーピングにより、時間内で生産性の高い議論を進めることが可能です。

合意形成

議論が到着点に近づいたら、論点を整理して合意形成を促します。議論が白熱し到着点に辿りつかない場合は、率先してゴールを目指して議論を舵取りしましょう。

参加者それぞれの意見を的確にとらえ、尊重しながら可能な限り全員が納得のいく結論に導くことが大切です。

あわせて「誰が」「いつまでに」「何をするか」今後のアクションを明確にできるとベストでしょう。

合意形成できなかった、あるいは具体的なアクションまで決まらなかった場合は、今回「決まったこと」「決まらなかったこと」を明確にすることで、次回会議の出発点と到着点が明確になります。

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7.ファシリテーションを成功させるポイント

ファシリテーションを成功させるためにも、以下ポイントを意識してファシリテーションを行いましょう。

適切な人材をファシリテーターに配置する

ファシリテーションはスキルのひとつ。そして、ファシリテーションを構成する具体的なスキルには場のデザインスキルや対人関係スキル、構造化スキルや合意形成スキルがあります。

ファシリテーションの目的や役割を理解し、かつこれらのスキルを持つ人材にファシリテーターを任せると議論を円滑に進行できるでしょう。

また、スキル有無だけでなく向き不向きも関係します。ファシリテーターに向いている人の特徴は、下記のとおりです。

  • オープンマインド
  • 客観的な視点を持っている
  • 論理的に物事を考えられる
  • 目的意識が高い

ファシリテーターとして適任な人材を選定することは、成功のための重要なポイントです。

中立の立場を貫く

ファシリテーターは会議の参加者ではあるものの、議論には入り込まない中立な立場です。誰かの意見に肩入れすると抑圧の原因となり、意見に反論や批判をすることは発言しにくい場を作る原因になります。

ファシリテーターは中立な立場であると理解し、議論には入り込まず冷静に俯瞰して意見や考えをまとめる役割が求められます多数派、少数派どちらの意見にも耳を傾け、論点がずれないよう軌道修正しながら情報を整理して、合意形成に導くことが大切です。

多様性を尊重する

会議には多様な価値観や考えを持つさまざまな立場の人が集まります。議論が活性化するほどさまざまな意見が出てきますが、それら全てを尊重して受け止めることが大切です。

どんな意見も傾聴して受け入れる雰囲気があると、発言が促され、よいアイデアやイノベーションも生まれ、組織の活性化につながります。意見の対立にも雰囲気が悪くならないよううまく対処し、全員が気持ちよく議論できる環境を作ることが必要です。

ファシリテーションのQ&A

ファシリテーションとは、集団で問題を解決するために、認識の一致や相互理解に向けたサポートを行い、成果を生み出す手法のことです。 ミーティングや研修など、さまざまな活動の場において良質な結果を得るために活動のプロセスをサポートする人をファシリテーターといいます。
近年、同質性から多様性、縦社会からネットワーク型へと時代が変化しています。誰かに正しい答えを教えてもらうのではなく、集団で自由にアイデアを出し合うことが求められる時代になりました。 多様な人材の意見を引き出すためにファシリテーションの重要性が拡がり、企業活動でも実践されています。
ファシリテーションには、さまざまな価値観をひとつに束ねる効果があります。議論を深め、感情のぶつかり合いなどをコントロールしながら、ミーティングの参加者一人ひとりの意見やアイデアを引き出すことができます。 目標達成に向けた話し合いにはファシリテーションの手法を用いるのが効果的でしょう。