衛生管理者とは? 必要な資格・条件、実務経験について

衛生管理者とは、労働安全衛生法で定められた国家資格を持っている人のこと。ここでは、衛生管理者に必要な資格と条件や業務の種類などについて紹介します。

1.衛生管理者とは?

衛生管理者とは、労働者の健康障害や労働災害を防止するために、労働安全衛生法で定められた国家資格を持っている人のこと。常時50人以上の労働者を雇用する事業者は、その事業場専属における衛生管理者を選任する必要があります。

労働安全衛生法

労働安全衛生法とは労働者を守ることを目的とした法律で、事業者による健全な労働環境の提供と、労働災害を防止することが定められています。

事業場を一つの単位として業種や規模などに応じて適用されるもので、事業場の適用範囲は労働基準法と考え方と同様です。

さらに規模や業種の区分に応じて「衛生管理者」を選任し、衛生に関係する技術的事項を管理させます。常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任する必要があるのです。

衛生管理者の選任

労働法によって、一定の規模の事業場ごとに衛生管理者の選任が義務付けられています。衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任を行い、衛生管理者の選任後には「選任報告書」を速やかに所轄労働基準監督署長に届け出ます。

また衛生管理者には「第一種衛生管理者免許を有する者」「第二種衛生管理者免許を有する者」「衛生工学衛生管理者免許を有する者」の区分があり、事業場の業種に応じて選任しなければなりません。

衛生管理者は、「常時50人以上」の労働者を使用するすべての事業場で選任する必要があります

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2.安全衛生業務とは?

労働衛生管理を進めるにあたっては、「健康管理」「作業環境管理」「作業管理」という3つの面から考査するとよいでしょう。労働衛生管理体制の構築だけでなく、衛生教育の徹底や上記の3つの管理についても非常に重要となってくるのです。

  1. 労働者の健康管理
  2. 作業環境の衛生調査
  3. 衛生事項の管理
  4. 事業場の巡視
  5. 衛生日誌ヘの記載
  6. 衛生教育や健康に関する相談
  7. 労働衛生保護具、救急用具等の点検および整備
  8. 衛生面で問題がないか調査

①労働者の健康管理

衛生管理者の業務として極めて大切なのが、労働者の健康管理です。健康面で問題がないかどうか把握するためにも、できるだけ労働者全員が健康診断を受診できるようにスケジュールを調整し、受診率を向上させることも衛生管理者の役割となっています。

なぜなら厚生労働省の発表においては、予定が合わず健康診断を受けられていないという労働者が少なくないからです。

②作業環境の衛生調査

労働者が良好な衛生環境の中で業務を行っているかどうかを調査します。事業場内の照明の明るさや作業場所の騒音、や換気状況、温度、湿度はもちろんのこと、有害物質が労働者の健康に悪い影響を及ぼしていないかどうかについても調査します。

業務の種別によっては作業場所に設置されている照明の明るさが規定されているケースもあるのです。

③衛生事項の管理

衛生管理者の仕事は、その事業場内で業務にあたる労働者のみが安全で就労できるようにすることではありません。一般的に事業場内には、企業に直接雇用される労働者だけではなく派遣や出向という雇用形態で業務にあたる人もいます。

また一つの場所に複数の企業から労働者が出向いてきている場合も少なくありません。そのためたくさんの人が作業する場所での衛生事項についての管理も衛生管理者の仕事となっているのです。

④事業場の巡視

衛生管理者の業務として不可欠なのが事業場の巡視です。これは、週に1回事業場を巡視してで、事業場内の環境や労働者の作業のやり方などに衛生状態の危険性がないかなどをチェックするものです。

問題が生じれば、速やかに改善を進める必要があります。また事業主は労働者の健康障害を防ぐために、衛生管理者に事業場の巡視を行う権限を与えると決められているのです。

⑤衛生日誌ヘの記載

労働者の健康や安全を把握するためには、衛生日誌の記録が有効です。代表的な内容として病欠者の名前や人数や労働時間中のアクシデント、健康診断のスケジュールや実施結果などがあります。

日誌への記録を続けると事業場が抱える問題がさらに可視化されたり、解決手段を探しやすくなったりするでしょう。

⑥衛生教育や健康に関する相談

労働者に向けた衛生教育や健康にまつわる相談など、労働者自身の健康を保持するために求められるサポートも行います。労働者にとって、プロフェッショナルな知識にもとづいたアドバイスは、大変心強いもの。

定期的に衛生管理者と相談できる機会を設けることで、直接の上司には伝えづらい悩みも解決しやすくなるでしょう。

⑦労働衛生保護具、救急用具等の点検および整備

たとえ万全の注意を払っていても、どんな人にも「万が一のアクシデント」はあるもの。思いがけない事故や急病、また業務中に具合が悪化した場合に備えて、労働衛生保護具や救急グッズを日頃から整備しておくことも衛生管理者の重要な任務です。

またいざという時に慌てないためにも、日頃から点検しておく必要もあるでしょう。

⑧衛生面で問題がないか調査

労働者の作業条件や衛生面での問題がないか考査し、その改善を進めることも衛生管理者の重要な役割の一つです。調査を行って、衛生上の問題が発見された際は、然るべき対策を図って状況改善に努めます。

労働者が快適に業務できる環境に整えれば、生産性の向上も狙えるでしょう。

安全衛生業務には、事業場の衛生環境の調査はもちろん、労働者の健康診断や労働衛生保護具の整備などさまざまなものがあります

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3.労働衛生保護具、救急用具に含まれるもの

労働衛生保護具には、「呼吸用保護具」「化学防護手袋」「化学防護服」「保護めがね」などがあります。これらの労働衛生保護具適切に使い管理するためには、事業場の特徴に合わせて労働者が正しく理解していることが求められるのです。

呼吸用保護具

化学物質が体内に侵入すると、健康障害を引き起こしてしまう可能性があります。これを防止するために使われるのが「呼吸用保護具」です。場合によっては、「防毒マスク」「防じんマスク」を用います。

化学防護服

有害性が高いと考えられる物質や皮膚から吸収しやすい物質を取り扱う業務にあたっては、「化学防護服(オーバーオール)を使います。化学物質の浸透性や浮遊状態を考慮することが望ましく、化学物質が透過しにくい素材で業務が行いやすいものを選びましょう。

保護めがね

危険な化学物質などを扱う業務の場合、薬品が目に入って失明などの重篤な障害を発生させる場合があります。取扱作業内容や顔の大きさなどに応じて、最適な保護メガネを使用しましょう。

保護メガネには上部、側面からの混入を防ぐ「スペクタクル型」、ガスや蒸気状物質を取り扱う際に適切な「ゴグル型」などがあります。

労働衛生保護具には、「呼吸用保護具」「化学防護服」「保護めがね」などがあります。作業内容に合わせて適切に使用しましょう

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4.衛生管理者に必要な資格とは

衛生管理者の免許には「第一種衛生管理者免許」「第二種衛生管理者免許」「衛生工学衛生管理者免許」があります。このうち第一種衛生管理者、第二種衛生管理者免許を取得するには、厚生労働大臣が指定する試験機関が実施する試験への合格が不可欠です。

第一種衛生管理者

常時50人以上の労働者を雇用する事業場では、衛生管理者免許を有する者の中から労働者数に応じて一定数以上の衛生管理者を選び、衛生面での技術的な分野を管理させる必要があります。

「第一種衛生管理者免許」を所有する人は、農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業などすべての業種の事業場において衛生管理者になれます。

第二種衛生管理者

「第二種衛生管理者免許」を所有する人は、有害作業と関係性が少ない情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業、サービス業など一定の業種で衛生管理者になれます。

主な職務は、労働者の健康障害を防ぐための作業環境管理は労働衛生教育の実施、健康の保持増進など。第二種衛生管理者免許の場合、有害業務に係る作業場で衛生管理者にはなれません。

衛生工学衛生管理者

「衛生工学衛生管理者免許」を所有している人であれば、「第二種衛生管理者免許」と同じ業種(情報通信業や金融、小売、サービス業など)にて衛生管理者になれます。

「衛生工学衛生管理者免許」の試験は行われておらず、一定の受講資格を有する人が厚生労働大臣の定める講習を受けて、修了試験に合格すると取得できるのです。

衛生管理者の免許には「第一種衛生管理者免許」「第二種衛生管理者免許」「衛生工学衛生管理者免許」があり、免許によって衛生管理者になれる業種が異なります

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5.衛生管理者試験を受けるための条件とは

「第一種衛生管理者免許」「第二種衛生管理者免許」の試験を受験するには、学歴とそれに応じた労働衛生の実務経験が必要です。ここでは、受験するにあたって求められる代表的な条件について詳しく説明しましょう。

学校教育法による大学又は高等専門学校を卒業している者

受験の条件は、学校教育法にもとづいた大学高等専門学校(専修学校・各種学校などを除く)を卒業した人で、その後1年以上労働衛生の実務に従事した経験があることです。

添付書類として、卒業証明書(原本)、または学位が記された卒業証書の写し、事業者証明書などの準備も合わせて必要になります。卒業証書の写しには「原本と相違ないことを証明する」との事業者の原本証明も必要です。

10年以上の実務

10年以上にわたって労働衛生の実務に従事した経験があれば、衛生管理者試験を受けるための条件を満たしていることになりますので、添付書類として「事業者証明書」を準備しましょう。

「事業者証明」は現在勤めている会社で証明してもらうだけでなく、過去に勤めていた会社に証明してもらうことも可能です。会社によっては発行に時間がかかるケースもあるので、できるだけ早めに問い合わせましょう。

省庁大学校を卒業している者

防衛大学校や防衛医科大学校、水産大学校、海上保安大学校、気象大学校などの省庁大学校を卒業した人で、その後1年以上労働衛生の実務に従事した経験がある場合でも衛生管理者試験を受けられます。

その際、添付書類として必要なのは、卒業証明書の原本、卒業証書の写しまたは修了証明書の原本、単位修得証明書、事業者証明書です。

高等学校卒業程度認定試験に合格した者

高等学校卒業程度認定試験に合格した人、外国で学校教育における12年の課程を修了した人など「学校教育法施行規則第150条に規定する人」で、その後3年以上労働衛生の実務に従事した経験を持つ人も衛生管理試験を受験できます。

その際、添付書類として「高等学校卒業程度認定試験の合格証の写し」や「事業者証明書」が必要です。

学校教育法による高等学校又は中高一貫教育学校を卒業している者

学校教育法にもとづく高等学校、または中高一貫教育学校を卒業した人で、その後3年以上労働衛生の実務に従事した経験がある場合も、衛生管理試験受験の対象となります。

なお中等教育学校とは中高一貫教育の学校を指すものであり、中学校を意味するものではありません。添付書類として卒業証明書の原本、または卒業証書の写し、事業者証明書が必要です。

衛生管理者免許を受験する際は、しかるべき学歴と労働衛生の実務経験が必要となります。また卒業証明書や事業者証明書などの書類の準備も必須です

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6.労働衛生の実務経験にあたる業務とは

衛生管理者の受験資格条件として「実務経験」がありますが、これは事業場代表者に証明してもらって初めて受験資格として認められるもので、10年以上、労働衛生の実務に従事した経験が必要です。

ここでは衛生管理者受験するにあたって求められる実務経験を紹介しましょう。

試験研究機関における業務

衛生管理者資格の受験条件にある実務経験の一つが、「労働衛生に関する試験研究機関における業務」と「作業主任者としての業務」です。

これには、「高圧室内作業主任者の免許所有者」や「特定化学物質等作業主任者の技能講習修了者」、「鉛作業主任者の技能講習修了者」「酸素欠乏危険作業主任者の技能講習修了者」なども該当します。

衛生上の調査や改善業務

「作業環境の測定、作業環境の衛生上の調査の業務」や「事業所の作業条件や施設の衛生上の改善の業務」も実務経験に含まれます。

言葉から専門的な業務を連想しがちですが、一般的なオフィスの清掃やデスク周辺の整理整頓などについても十分当てはまるのです。また給湯室やロッカールームの掃除なども該当するでしょう。

統計作成や労働衛生保護具等の整備

「労働衛生の統計作成に関する業務」「労働衛生保護具、救急用具などの点検や整備の業務」についても実務経験に該当します。

たとえば労働者の健康や安全を記録する衛生日誌の記載は「労働衛生の統計作成に関する業務」にあたり、呼吸用保護具や化学防護手袋、化学防護服、保護メガネなどの整備は「労働衛生保護具、救急用具などの点検や整備の業務」に該当します。

公的機関での業務

公的機関の業務も衛生管理資格受験にあたって必要な実務経験になります。たとえば自衛隊で衛生担当者として従事した経験や、衛生隊員としての業務経験があれば受験資格となるのです。

また自身が自衛隊員でなくても、自衛隊における看護師や准看護師の業務としての経験があれば該当し、保健所職員のうち、試験研究に従事する人も条件に当てはまります。

建築物に関する業務

「建築物環境衛生管理技術者の業務」も、衛生管理資格受験に必要な実務経験です。建築物環境衛生管理技術者の業務とは、大規模な建築物のビルメンテナンスの統括などを行うもの。

管理業務計画の立案や管理業務の指揮監督、環境衛生上の維持管理に必要な調査の実施という職務があり、環境衛生上の維持管理における業務を全般的に監督します。

健康診断と教育に関する業務

「職場の健康診断実施」や「診断結果の処理業務」も、衛生管理者資格受験の条件を満たせます。これは一般的な企業で定期的な実施される健康診断の調整業務を意味しており、専門的な医療に関する資格を有す必要もありません。

また職場内の衛生教育の企画やその実施に関係する業務においても、実務経験となります。

衛生管理者受験の条件として労働衛生の実務は必須となっており、受験時には事業者による証明書の提示が求められます