帳簿とは? 目的、決算書との違い、付けるメリット、種類、付け方

帳簿とは、お金の流れを記録した書類のことです。ここでは帳簿の種類や帳簿を付けるメリット、付け方が分からない際の問い合わせ先などについて解説します。

1.帳簿とは?

帳簿とは、会社経営やフリーランスの事業にて必要となる帳面や台帳のこと。事業の取引や負債などのお金の流れを記録しており、正しくは「会計帳簿(会計簿)」といいます。決算書作成の基礎となるため、資産の動きを正確に記録しておかなくてはなりません。

どんな目的で導入されているのか

帳簿では日々の事業取引はもちろん、日時や取引先、財産状況などさまざまな情報を管理します。帳簿をつける目的は「日々の取引を把握し、会社の財政状況および経営状態を把握すること」。帳簿をまとめたものが試算表となり、決算書になります。

帳簿を正しく付けることが正しい決算、正しい経営状態の把握、そして正しい経営判断につながるのです。

帳簿の作成は義務化されている

商法第19条および会社法第432条では帳簿の作成を義務付けています。帳簿の作成は事業主にとって避けられない業務なのです。

帳簿には「簡易簿記」「複式簿記」2つの記帳方法があり、個人事業主やフリーランスの場合、確定申告の内容(青色申告もしくは白色申告)によって記帳方法が異なります。なお個人事業主や法人、青色申告や白色申告に関係なく帳簿の作成と保存は必要です。

決算書との違い

帳簿は会社の財政状況を把握するための書類で、同じ目的を持った書類に「決算書」があります。決算書とは帳簿にもとづいて決算期時点の数字を記した財務諸表のこと。取締役会や株主総会、監査役それぞれの承認を得て税務署に提出するのです。

帳簿(会計帳簿)は決算書を作成するために必要な書類、として区別できます。

帳簿とは会社経営やフリーランスの事業にて必要となる帳面や台帳のこと。帳簿には「簡易簿記」「複式簿記」2つの記帳方法があり、個人事業主や法人、青色申告や白色申告に関係なく帳簿の作成と保存が必要です

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2.帳簿を付けるメリット

帳簿を付けるとどのようなメリットが得られるのでしょう。ここでは帳簿を付けるメリットについて2つ解説します。

  1. お金の流れを把握
  2. 経営判断

①お金の流れを把握

請求書や領収書を放置したままでは、会社が何にどれくらいのお金を使ったのか把握できません。また万が一会社のお金を公私混同していた場合も、帳簿を付けていなければそれに気付けないのです。

持続的に会社の現預金を増やすためには、帳簿付けによるお金の流れの透明化が必要でしょう。

②経営判断

お金の流れが把握できれば、計画的な会社経営が進められます。帳簿付けができていないと、将来待っている大きな支払いに対応しきれず資金繰りに苦しむ恐れもあるでしょう。

また会社に利益が出ていれば多額の税金を支払わなければなりません。その際資金に余裕がなければ最悪の場合、倒産してしまいます。きちんと帳簿を付け、会社にかかわる数字を把握しておくことは経営において必要不可欠なのです。

帳簿を付けるメリットは、「お金の流れを把握」「経営判断」の2つです。帳簿を付けると適切な会社経営が可能になります

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3.帳簿の種類

事業の取引やお金の流れを記録する帳簿には、複式簿記を行ううえで必要不可欠な「主要簿」と、主要簿の記録を補うための「補助簿」があります。ここではそれぞれに含まれる具体的な帳簿の種類と、その特徴について説明します。

主要簿とその種類

主要簿は日々の取引すべてを記帳する帳簿です。スムーズな会計処理のため記帳が望ましいとされている「日記帳」と、会社法976条で作成が義務付けられている「仕訳帳」、「総勘定元帳」の3種類があります。

「仕訳帳」と「総勘定元帳」から青色申告決算書は作成され、これらを正確に作成していないと100万円以下の罰金を命じられる可能性があるのです。

  1. 仕訳帳
  2. 総勘定元帳

①仕訳帳

日々の取引を「借方」と「貸方」に分け、日付順に記録した帳簿です。借方には資産が増加した際や費用が発生した際に記載し、対する貸方には負債や純資産の増加、収益の発生があった際に記載します。

後述する「総勘定元帳」は仕訳帳をもとに作成するため、仕訳帳なくして総勘定元帳は作成できません。

②総勘定元帳

仕訳帳から転記する形で勘定科目ごとに日々の取引を記録した帳簿です。会社の取引が勘定科目ごとにまとまっているため、それぞれの残高を把握したいときに役立ちます。

帳簿作成のなかでも特に手間のかかる帳簿ではあるものの、青色申告で65万円控除を受けるためには必須です。会計ソフトを利用していれば仕訳帳と総勘定元帳を同時に作成できます。

補助簿とその種類

補助簿はその名のとおり、主要簿だけでは把握しにくい情報を補足するための帳簿です。詳細な取引内容をすぐに把握したい際に役立つため「補助記入簿」とも呼ばれています。

補助補には下記のとおりさまざまな種類があり、総勘定元帳の残高と各補助簿の合計は必ず一致しなくてはなりません。ここでは代表的な補助簿について説明します。

  1. 現金出納帳
  2. 預金出納帳
  3. 売掛帳
  4. 買掛帳
  5. 固定資産台帳
  6. 得意先元帳
  7. 仕入先元帳
  8. 受取手形記入帳

①現金出納帳

現金取引が行われた際の入出金を日付順に記録した帳簿です。入金伝票や出金伝票をもとに、現金のやり取りを記録するもので、作成は事業者が任意で選択します。

しかし現金出納帳を作成し、入出金を記録するとお金の流れを可視化できるのです。「会社は毎月どのようなことに現金を使っているのか」「どんな現金収入があるのか」などを把握できるほか、社内の不正防止にも役立ちます。

②預金出納帳

預金の入出金を金融機関ごとに記録した帳簿です。預金出納帳では日付や相手科目、入出金の理由や金額、残高などを記録しています。

「預金通帳があれば預金出納帳はいらない」と考えてしまうかもしれません。しかし預金通帳には引き落とし日や振込額など一部の情報しか記載されていないため、すべての流れを把握できません。預金出納帳は、現金の流れを把握する際に欠かせない帳簿なのです。

③売掛帳

売掛金(まだ支払われていない売上金)の動きを取引先ごとに記帳した帳簿です。「売掛金元帳」や「得意先元帳」と呼ばれる場合もあります。

「ある商品は今月売れたけど代金支払いは翌月末になる」といった場合、受け取っていない代金を売掛金として売掛帳へ記帳し、残高を管理します。売掛帳の日付は請求した日ではなく実際に商品が売れた日や売上が確定した日です。

④買掛帳

まだ支払っていない買掛金が記録される帳簿を買掛帳といいます。

たとえば同一の仕入れ先から月に何度か商品を仕入れ、月末にまとめて請求書で代金を支払った場合、毎回の仕入れ時に代金の発生はなく「買掛金」が発生しているのです。

買掛帳は、代金を即日ではなく掛け払い(ツケ払い)にした取引を管理します。

⑤固定資産台帳

建物や備品などの固定資産を有している企業が作成する帳簿です。固定資産管理台帳を作成する目的は下記3つになります。

  • 資産管理:固定資産を適切に利用しているか・所在はどこにあるか、などを管理するため
  • 会計処理:固定資産に投資する必要があったのかを証明するため
  • 税務処理:減価償却費が正しく計算されているかを証明するため

⑥得意先元帳

得意先ごとの取引をまとめた帳簿です。単に前述した「売掛帳」と呼ばれる場合もあります。

得意先元帳では基本、得意先との取引内容や取引金額、売り上げや回収などの動きを発生した日付順に記入するのです。得意先元帳を見れば得意先との取引や発生した日付、金額が明確になり、売掛金の回収状態をスムーズに把握できます。

⑦仕入先元帳

「買掛帳」あるいは「買掛金元帳」とも呼ばれる帳簿です。仕入れ先ごとに取引をまとめており、仕入れ先との取引内容や取引金額などの動きを、発生した日付順に記入します。
自社にとっての買掛金は、仕入れ先にとっての売掛金になるのです。

買掛金を支払い忘れると、仕入れ先は売上代金の回収漏れとなるため、信用問題にも影響しかねません。仕入れ先が多くなればなるほど仕入先元帳での管理が重要になります。

⑧受取手形記入帳

受取手形に関する取引があった際に記帳する帳簿です。手形を受け取った日付や手形の種類、手形番号などを記録します。

受取手形記入帳では「借方」の勘定科目は受取手形となるため、どういう理由で受取手形を受け取ったかを記載する摘要の欄には「貸方」の勘定科目を記入します。手形の流れを把握するために欠かせない帳簿です。

事業の取引やお金の流れを記録する帳簿には、複式簿記を行ううえで必要不可欠な「主要簿」と、主要簿の記録を補うための「補助簿」があります。それぞれの役割を知っておきましょう

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4.帳簿の付け方

「主要簿」と「補助簿」の2種類に分けられる帳簿は、どのように作成・帳簿付けを行えばよいのでしょう。ここでは帳簿の付け方について解説します。

手書き

もっともかんたんに帳簿を付けられるのは、ノートなどに手書きで記入していく方法です。実際に手を動かすため経営状態に実感が持てるでしょう。熱意のある経営者のなかには帳簿だけは自ら手書きで作成しているという人も少なくありません。

現金の出入りがその場で分かり、節税や申告手続きに関する知識が増える点も手書きのメリットです。

Excel

Excelは多くの会社で利用されている表計算ソフトです。そのためExcelで帳簿を付ければ初期コストやランニングコストを安く抑えられるでしょう。

多くのパソコンで利用されているExcelはパソコン環境による仕様の違いも少ないため、一度テンプレートを統一してしまえば複雑な業務を平準化できます。担当者や取引先に合わせたカスタマイズもかんたんです。

会計ソフト

会計業務の時短や効率化を図るなら、会計ソフトの導入を検討しましょう。手書きやExcelでの帳簿付けに比べて作業量を大幅に減らせます。

なかには各種システムとの連携に対応しているソフトや、ルール変更にともなうフォーマットの更新、修正に対応しているソフトも。操作に慣れるまで時間がかかる場合もありますが、一度慣れてしまえば経理に欠かせない正確さとスピードを確保できるでしょう。

帳簿の付け方には、「手書き」「Excel」「会計ソフト」の3つがあります。データの収集や管理、時短や効率化などから使い勝手の良いものを選びましょう

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5.帳簿の付け方が分からない場合の問い合わせ先

帳簿の付け方が分からないときは、どうしたらよいのでしょうか。最後に帳簿の付け方が分からない場合の問い合わせ先を3つ紹介します。

税務署

各都道府県にある税務署では、帳簿の付け方から決算までの流れ、確定申告手続きなどの相談を受け付けています。また税務署では「新しく事業を始めた」「帳簿の付け方が分からない」といった人に対して、会計ソフトを利用した記帳指導を無料で行っています。

帳簿の付け方に不安を抱えている人は一度税務署に相談してみるとよいでしょう。

納税協会

納税協会とは、税に関する最新情報を提供し、税知識の普及、適正な申告納税の推進を図る公益社団法人のこと。ここでは税の専門家である税理士が、簿記の基礎知識や複式簿記による帳簿の付け方を指導しているのです。

記帳のノウハウを学べるだけでなく、人材育成のためのサポートや税理士による税金のアドバイスも受けられます。

商工会議所

最寄りの商工会議所に相談する方法もあります。商工会議所では帳簿の付け方から決算、確定申告までベテランの記帳指導員と税理士が丁寧に指導してくれるのです。

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帳簿の付け方がわからない場合の問い合わせ先は、「税務署」「納税協会」「商工会議所」の3つです。困ったときは相談してみましょう