ビジネスキャリア検定とは? メリット、対策、注意点、事例

ビジネスキャリア検定とは、職務遂行に必要な実務能力を評価する検定のこと。受験すると具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。試験の難易度や対策について、注意点を交え、解説します。

1. ビジネスキャリア検定とは?

ビジネスキャリア検定とは、ホワイトカラーに必要な専門知識について職業能力を評価する検定のこと。中央職業能力開発協会が運営しており、厚生労働省が定める「職業能力評価基準」に準拠しています。延べ受験者数は60万人を超えるといわれています。

受験料は難易度によって下記のように異なるのです。すべて税込価格となります。

  • BASIC級:3,300円
  • 3級:6,200円
  • 2級:7,700円
  • 1級:1万1,000円

全国47都府県で1年に2回実施されており、前期は10月・後期は2月に行われています。

「ビジネス能力検定試験ジョブパス」との違い

ビジネス能力検定試験ジョブパス(B検)とは、一般財団法人職業教育キャリア教育財団が運営している民間資格の試験のこと。

試験内容は、ビジネスマナーやマネジメント、マーケティングなどで、新入社員から入社5年目程度の従業員が身につけるべきビジネス全般の基本知識に関するものになります。

ビジネスキャリア検定がB検と違う点は、ビジネスキャリア検定は公的資格が与えられる試験という点。また試験の目的が「専門分野のスキルアップ」という点も違いのひとつになります。

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2.ビジネスキャリア検定創設の背景

ビジネスキャリア検定は、1993年に創設された「ビジネスキャリア制度」を2007年8月にリニューアルしたもの。創設の背景には、労働者に求められる能力の多様化および高度化による、労働者の意識向上があります。

総務省が発表した「令和2年 労働力調査」によると、2019年の時点で転職者数は351万人と過去最多を記録。転職者が自分の能力を客観的に証明するひとつの手段として、こういった資格が求められるようになったのです。

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3.ビジネスキャリア検定のメリット

ビジネスキャリア検定は、優秀な人材の育成・評価を目的とした公的資格試験です。現在、ビジネスに関する資格が数多くあるなか、なぜビジネスキャリア検定が選ばれているのでしょうか。ビジネスキャリア検定のメリットについて見ていきます。

  1. 体系的なスキル習得
  2. 人材育成に活用
  3. 就職・転職の際のアピールポイント

①体系的なスキル習得

業務のなかで覚える知識には多少なりとも偏りが出てしまうもの。しかしビジネスキャリア検定を受ければ、体系的に職務スキルを習得できます。また自分の実務能力を客観的に測れるのもメリットのひとつでしょう。

さらに「標準テキスト」「過去問題解説集」などのテキストが発刊されています。それによりビジネスキャリア検定試験に対応した認定講座が学べるのです。

②人材育成に活用

幅広い職務を網羅しているビジネスキャリア検定。

試験基準やガイドラインには、各職務で求められる専門知識が3級・2級・1級とレベル別に体系化されています。従業員の実務能力や専門知識がどの程度のものか客観的に評価できるため、人材開発や育成に活用できるのです。

また新人研修に取り入れれば、基本知識を効率的に覚えられます。プランに取り入れるのもよいでしょう。

③就職・転職の際のアピールポイント

ビジネスキャリア検定は人材を育成し、適正に評価するための唯一の公的資格試験です。しかしこの資格を取得すれば就職や転職ができるわけではありません。

ただし2級以上をもっていれば、管理職としてしっかり仕事ができる証明になるため、求人採用においてひとつの検討材料になり得るでしょう。ビジネスキャリア検定を導入している企業は多く、そうした企業への就職や転職をめざす求職者も多いのです。

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4.ビジネスキャリア検定の分野

ビジネスキャリア検定は8分野・4段階の級・44試験区分で実施されており、検定基準は厚生労働省が定める「職業能力評価基準」(ナショナルスタンダード)に準拠しています。まずは自社の業種にマッチした分野を把握しておきましょう。

8分野44区分の試験

ビジネスキャリア検定は下記8分野、44試験区分で実施されています。

  1. 人事/人材開発/労務管理
  2. 経理/財務管理
  3. 営業/マーケティング
  4. 生産管理
  5. 企業法務/総務
  6. ロジスティクス
  7. 経営情報システム
  8. 経営戦略

たとえば「1.人事/人材開発/労務管理」の1級では、経営資源やリスク管理を行う基本のマネジメント能力を評価します。2級と3級では、人事や福利厚生の担当者を対象とした問題など、それぞれの専門分野に特化した区分が設けられているのです。

分野の選び方

8分野44試験区分すべてに合格しなければならないわけではありません。自分が担当している仕事内容や、将来的に転職や異動を実現したいと考えている部署の仕事にマッチした検定を選び、挑戦するとよいでしょう。

分野や区分から選択して、効率よく学習や習得を進められるのが、ビジネスキャリア検定の特徴です。

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5.ビジネスキャリア検定の難易度(等級)

試験には4段階の等級が設定されています。たとえばBASICは新入社員、2級は課長やマネージャーを目指す人、1級はディレクターを目指す人向けです。ただしBASICと1級が存在しない分野もあるので、事前に確認しておきましょう。

BASIC

仕事における基本知識にもとづく全体像の把握や、職場でのコミュニケーションの円滑化を目的としたものです。対象は、学生や内定者、新入社員になります。中央職業能力開発協会によると、新人社員研修としての活用も推奨されています。

たとえば、次のような効果が期待できるでしょう。

  • 業務の基礎知識を効果的に身につけられる
  • 仕事の理解がスムーズになり、意欲向上を図れる
  • 低コストで即戦力の育成を目指せる

3級

職務全般に関する専門知識をもとに、上司の指示や助言を踏まえ、つねに問題意識を持って任務遂行できる人材を目指します。実務経験が3年程度の係長やリーダー相当のレベルが対象です。たとえば、次のような効果が期待できるでしょう。

  • 企業をけん引する幹部が育成できる
  • 従業員のスキルが向上する
  • 従業員の意欲が向上する

2級

職務に関連する総合的な専門知識をもとに創意工夫し、自主的な判断・改善・提案を行いながら業務を遂行できる人材として活躍できることを目的としています。実務経験5年程度の課長や部門長などが対象です。たとえば次のような効果が期待できるでしょう。

  • インセンティブの判断材料になる
  • ほか部署の知識を学び、相手の立場や背景、認識の共有を図れる

1級

企業全体の戦略実現のため、専門知識を応用して資源を統合し、調整できる人材を目指します。1級は実務経験10年以上の部門長、ディレクター相当の職が対象です。たとえば次のような効果が期待できるでしょう。

  • 総合的な知識の棚卸しと整理ができる
  • 基本をおさえつつ、客観的な施策の立案ができる
  • 専門知識を深掘りでき、スキルアップを目指せる

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6.ビジネスキャリア検定の導入事例

現在、さまざまな企業がビジネスキャリア検定を導入しています。自己啓発を目的としたものは多いものの、「人材教育」や「昇格要件」にしている企業もあるようです。どのような例があるのか、導入事例を確認しましょう。

キリングループロジスティクス

キリングループロジスティクス(KGL)は、2020年2月に資格取得者が全社員の3割を突破。今後について、「将来的に全社員の7割以上を目指す」と発表しています。

おもにロジスティクス分野の受験を推奨しており、一般的な物流知識を幅広く得ることが狙いです。さらに検定で得た物流知識の高度化を目指し、上位資格にステップアップできる研修体系を構築。従業員が個人のスキルアップに挑戦しやすい環境が整っています。

ニップコーポレーション

ニップコーポレーションは、労務管理や営業を中心に、3級2科目合格を昇格の要件に活用しています。

専門知識の習得と従業員のスキルレベルの底上げを狙いとしたもので、合否の結果や点数には関与せず、合格証を提示した場合に受験料を補填。それにくわえ人事部門で「スキルマップ」の記録を行っています。

検定をとおして得た知識によって、すばやく的確な初動対応が可能になり、問題を未然に防げるようになりました。

日本乳化剤

日本乳化剤は、「若くても昇格できる仕組みづくり」を目指し、ビジネスキャリア検定を導入。

「労務管理」「営業」「経営戦略」の3科目を含め、昇格要件として資格取得を設定しました。担当業務の基本的な知識はもちろん、幅広い専門知識のスキル習得を目標にしています。

ビジネスキャリア検定の導入によって、従業員のモチベーションアップにつながった、成功事例のひとつです。

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7.ビジネスキャリア検定の対策

ビジネスキャリア検定の対策については次のとおりです。ほかの資格試験と同様、標準テキストによる自主的な学習が基本となっています。また認定講座の受講や過去問題を解くなど、難易度に合わせた対策を行うとよいでしょう。

標準テキストによる自主学習

中央職業能力開発協会では、出題範囲(試験基準)にもとづくテキストを発刊しています。公的資格試験用の標準テキストのため、まずはこれを利用するとよいでしょう。テキストには次のような特徴があります。

  • 定説や通説に従った解説を重視されている
  • 各章ごとに、章のねらいや学習のポイントが解説され、全体像や要点を把握しやすい

ほかの団体が解説書を発刊しているケースもあります。合わせて確認しておくとよいでしょう。

認定講座の受講

ビジネスキャリア検定試験の試験区分に対応した教育訓練講座を受講する方法もあります。認定講座は通学制と通信制にわかれ、機関により形態はさまざまです。次のような認定講座実施機関があります(順不同)

  • エヌ・エム・アール流通総研
  • 職業訓練法人 日本技能教育開発センター
  • 公益財団法人 日本生産性本部

難易度に合わせた対策

3級はビジネスの基本事項ですので、テキストを読んで理解しておくと正解しやすくなるでしょう。しかし1級や2級になると、自主的に考える能力やより高度な知識が必要です。たとえば「労務管理」では、専門用語や国の制度についても理解しなければなりません。

1カ月から3カ月くらいの学習で合格できる人もいますが、受験級や受験者のレベルにより難易度は異なります。従業員が現在どのくらいの知識を有していて、どのスキルアップを目指したいのか、検討が必要です。

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8.ビジネスキャリア検定の注意点

ビジネスキャリア検定にはメリットだけでなく、注意点もあります。それを考慮したうえで、資格のために時間や費用をかけるべきか検討するとよいでしょう。ここではビジネスキャリア検定の注意点について解説します。

国家資格ではない

中央職業能力開発協会は、法律「職業能力開発促進法 第六章」によって規定された特別な民間団体です。職業能力の開発および向上の促進するために設けられています(第52条)

ビジネスキャリア検定は、公的資格ではあるものの国家資格ではありません。国家資格と比べると社会での有効性が劣る場合もありますので、注意しましょう。

まだ知名度は高くない

ビジネスキャリア検定を導入している企業は年々増えています。しかし「簿記検定」や「TOEIC」などのように社会人ならだれでも知っているわけではありません。

ビジネスキャリア検定は「転職するため」というより、働いている職場でさらにパフォーマンスを向上させたい人向けの試験といえます。キャリアを積み重ねるなかで体系的に実務知識を身につける手段として活用していくとよいでしょう。

就職・転職に有利という客観的なデータはない

中央職業能力開発協会によると、ビジネスキャリア検定の令和3年前期の受験者数は1万4,518人。2年間の受験者数を見ても増加しているのは明らかです。すでに導入している企業への就職や転職に対して、有利に働く可能性はあるでしょう。

しかし就職や転職活動において有利になるとは、断定できません。また裏付けとなる客観的なデータも存在していないため、注意しましょう。