アカハラ / アカデミックハラスメントとは? 意味、対策

アカハラとは、学術機関内部で権力を乱用したために生じる人格権侵害のことです。ここでは、アカハラについて詳しく解説します。

1.アカハラとは?

アカハラとは、大学など学術機関内部で優位な力関係のもと権力を乱用したり、構成員に対して不適切な言動を行ったりして、「教育研究上の不利益」「教育研究の職務遂行を妨げるような精神的、身体的損害」を生じさせること

主に「教授から教員」「指導教員から大学院生」といった形で行われます。具体的な内容は、下記のとおりです。

  • 学位不認定
  • 留年勧奨
  • 研究妨害
  • 退職勧奨
  • 昇任差別

アカデミックハラスメントの略

アカハラは、アカデミックハラスメントを略した言葉です。ハラスメント(Harassment)には、嫌がらせ・いじめといった意味があります。

つまりアカハラは、大学など教育研究を行う学術機関にて、教育研究上の優位な力関係を利用し、構成員に対して精神的・身体的な不利益を与えることを意味しているのです。

現代の三大ハラスメント

現代の三大ハラスメントは、「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」「マタニティハラスメント」の3つでそれぞれの意味は、下記のとおりです。

  • パワーハラスメント…職場内の優位性を利用した人格権侵害
  • セクシャルハラスメント…相手の意に反して性的な言動により、仕事上の不利益を与える人格権侵害
  • マタニティハラスメント…妊娠、出産、子育てをきっかけとした、不利益な取り扱いに関する人格権侵害

このほかにも、エイジハラスメント・エレクトロニックハラスメント・オンラインハラスメントなど、さまざまなハラスメントがあります。

アカハラは、大学などの学術機関の中で権力を乱用した人格権侵害です。アカハラ以外にも、さまざまなハラスメントがあります

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは?

・1on1の進め方がわかる
・部下と何を話せばいいのかわかる
・質の高いフィードバックのコツがわかる

効果的に行うための1on1シート付き解説資料をダウンロード⇒こちらから


【評価業務の「めんどうくさい」「時間がかかる」を一気に解決!】

評価システム「カオナビ」を使って評価業務の時間を1/10以下にした実績多数!!

●評価シートが自在につくれる
●相手によって見えてはいけないところは隠せる
●誰がどこまで進んだか一覧で見れる
●一度流れをつくれば半自動で運用できる
●全体のバランスを見て甘辛調整も可能

カオナビの資料を見てみたい

2.アカハラになりうる行動とは?

アカハラはハラスメントのひとつで、学術機関にて権力を乱用したために生じる人格権侵害を指します。アカハラがどのような行為に当たるのかを正しく理解すると、アカハラの回避につながるのです。

ここでは、下記2点について具体的な事例を交えながら解説します。

  1. アカハラには種類があった
  2. アカハラになるかもしれない言動

①アカハラには種類があった

アカハラは、5種類に分類できます。5つのアカハラはの具体的事例を取り上げ、アカハラになりうる行為について解説します。

  • 学習、研究活動の直接的、間接的な妨害
  • 卒業、進級妨害
  • 進学、就職妨害による選択権の侵害
  • 研究成果の盗用
  • 暴言などの叱責

学習・研究活動を直接的・間接的な妨害

学習・研究活動の直接的・間接的な妨害とは、学習や研究活用そのものを妨害すること。具体的な事例は、下記のとおりです。

  • 学習や研究に必要な文献や実験機器を、使用できないようにする
  • 学習や研究に使用する部屋への入退室を禁じる
  • 本人が希望していないにもかかわらず、特定の研究テーマを押し付ける
  • 実験機器や研究データを廃棄する
  • 緊急性が低い、もしくは緊急性がないにもかかわらず深夜や早朝などに連絡を入れる

卒業・進級妨害

卒業・進級妨害とは、学生や院生などが卒業や進級できないようにすること。具体的な事例は、下記のとおりです。

  • 「一度だけ講義を遅刻した」など正当な理由ではないのに、単位を与えない
  • 「気に入らない」など正当な理由ではないのに、留年や退学を強要する
  • 「教授に対して意見をした」など正当な理由ではないのに、不当な評価をする
  • 正当な理由なく、私的感情で選考基準を変更する
  • 論文のチェックなど本来行わなければならないことに対し、金銭を要求する

進学・就職妨害による選択権の侵害

進学・就職妨害による選択権の侵害とは、学生や院生の進学もしくは就職できないようにする人格権侵害のこと。具体的な事例は、下記のとおりです。

  • 推薦状を書くに値する人物でありながら、理由をつけて推薦状を書かない
  • 推薦状により内定を得た企業に対し、内定辞退や選考辞退をさせないように教職員から圧力をかける
  • 進学や就職に関する情報を得ていながら、故意に学生へ情報提供しない
  • 進学や就職に関し、職務上知りえた相手の不利益になる情報を口外する

研究成果の盗用

研究成果の盗用とは、学生や院生が書いた研究結果や学術論文を、教授や指導員といった強い立場を利用して横取りする人格権侵害のこと。具体的な事例は、下記のとおりです。

  • 院生に「単位が欲しければ、論文の第一著者に私の名前を入れろ」と強要する
  • 学生が書いた未発表の論文を一部またはすべて盗作し、自身の論文として発表する
  • 院生に研究を押し付けていたにもかかわらず、研究結果については教授自身の手柄として発表させる

暴言などの叱責

暴言などの叱責とは、学術機関内での力関係を利用して、相手の人格権が侵害されるような言動を取ること。具体的な事例は、下記のとおりです。

  • 講義中または研究室内などで、大勢の前で学生を罵倒する
  • 学生が書いた論文の内容に対し「小学生以下だ」と言う
  • 院生の身体的な特徴を取り上げ、誹謗中傷する
  • 怒りや苛立ちなどのはけ口として、院生に対して物などを投げる
  • 机や黒板をドンドンたたくなど、相手を威嚇する

②アカハラになるかもしれない言動

教育・研究などの場面で、相手の意に反して不快な発言や不当な行為などをすると、アカハラになる可能性があります。仮に悪意がなかったとしても、相手がそうした言動を不快または不当と受け止めた場合、アカハラになるかもしれません。

アカハラになるかもしれない言動の具体例は、下記のとおりです。

  • 「こんなことも知らないなんて、研究者としての資質がない。早く退学した方がいいよ」などと発言する
  • 研究時間外に、教授の私用の買い物に付き合わせる
  • 「コンパで俺を笑わせられない学生には単位をやらない」など、理不尽な要求をする

発言や行為に悪意がなくても相手が不快・不当と感じた場合、アカハラつまり人格権侵害になる可能性があります

Excel、紙の評価シートを豊富なテンプレートで楽々クラウド化。
人事評価システム「カオナビ」で時間が掛かっていた人事業務を解決!
【公式】https://www.kanavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

3.アカハラが起こりうる場面とは?

アカハラが起こりうる場面は、学術研究機関内に多く潜んでいます。なぜなら学術研究機関は、「教授と院生」「指導教員と学生」といった上下の力関係の存在が、構造上の特徴として挙げられるからです。

学術研究機関ではどのような関係でアカハラが行われているのでしょうか。具体例を交えて解説します。

教員から生徒だけでなく教員から教員というケースも

アカハラは、上下の力関係が構造上の特徴となっている学術研究機関において発生します。代表的な力関係は、以下の3つです。

  1. 教授から院生に対する「研究妨害」「指導義務の放棄」「退職勧奨」「研究成果の収奪」など
  2. 指導教員から学生に対する「退学勧奨」「留年勧奨」「指導拒否」「学位不認定」「進学の妨害」など
  3. 教員から教員に対する「暴言」「過度の叱責」「プライバシーの侵害」など

教員から生徒だけでなく教員から教員というケースもある点に、注意が必要です。

アカハラには、「教授から院生」「指導教員から学生」「教員から教員」などの関係性における人格権侵害があります

Excel、紙の評価シートを豊富なテンプレートで楽々クラウド化。
人事評価システム「カオナビ」で時間が掛かっていた人事業務を解決!
【公式】https://www.kanavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

4.アカデミック・ハラスメントがなくならない理由

アカハラ、すなわちアカデミック・ハラスメントがなくならない理由は、なんでしょうか。そもそもアカハラとは、「教育研究上、優位な力関係による権力の乱用」「組織の構成員に対する不適切な言動」などのこと。

組織である以上、常に立場上優位な力関係にある者が存在するため、アカハラに対するリスクが伴うのです。そのほかにもアカハラがなくならない理由はあります。ここでは、被害者であるにもかかわらず被害を訴えることが難しい点について解説しましょう。

  1. 被害を訴えにくい
  2. 外から目が届きにくい場所でアカハラが行われる
  3. 人権侵害が黙認され、深刻な状態へと陥る
  4. 権力の行使かどうか、判断が難しい

①被害を訴えにくい

被害者である学生や院生は、「アカハラを訴えても組織に理解されない」「アカハラを訴えることで、さらなる不利益を被る」点に恐怖を感じています。

しかし学術機関によっては、ハラスメントに対応してくれる相談室を設置しているところも。被害を訴えにくいと感じる場合は、相談室などの利用を考えるとよいでしょう。

②外から目が届きにくい場所でアカハラが行われる

アカハラが行われている場所は、主に教室や研究室です。これらは閉鎖的空間で、外部からの目が届きにくい環境下にあります。

こうした空間でアカハラが行われた場合、問題が表面化しにくいだけでなく、以下のような外部の偏見によって、よりアカハラを深刻な問題へと発展させてしまう場合があります。

  • 「権威のある者がアカハラをするわけがない」と、加害者側が容認される
  • 周囲が、権限を持つ者の判断や解釈を受け入れてしまう

③人権侵害が黙認され、深刻な状態へと陥る

アカハラには、周囲が人権侵害を黙認した結果、以下のような深刻な状態へと陥るケースもあります。

  • 権限のある者に迎合するかのように、周囲も一緒に嫌がらせをする
  • 事なかれ主義によってアカハラを黙認する
  • 周囲が被害者に対して新たに別のハラスメントを始める

アカハラという人格権侵害は不当なものです。しかしそれを忘れ、「周囲が人権侵害を黙認する」「新たなアカハラを始める」場合も多々あります。そのため被害者が、声を上げにくくなっているのです。

④権力の行使かどうか、判断が難しい

アカハラには、「教授や指導教員から学生への指導」などのように、権力の行使か否かの判断が難しいケースもあります。

ある言動が上位の立場にある者による権利の行使、すなわちアカハラかどうかについては、「個々の状況を正しく把握する」「言動の全体像をさまざまな角度から考察する」などから、適切に見極める必要があるのです。

閉鎖的空間で起きるアカハラは、表面化しづらいという特徴を持ちます。また権力の行使か否かを適切に把握する必要もあるのです

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

5.アカハラの防止策は?

アカハラは、教室や研究室など閉鎖的空間の中で行われるため、周囲はその状況をつかみにくいといえます。そこで「アカハラの発見が遅れたために生じる問題の深刻化を防ぐ」「アカハラそのものの根絶」を目指して、さまざまな対策が講じられているのです。

ここでは、下記5つのアカハラ防止策について解説します。

  1. アカハラ防止運動を積極的に行う
  2. アカハラを正しく理解してもらう
  3. 被害者の人権を保護する組織作り
  4. 意思表示で、速やかな解決を
  5. 外部機関と連携する

①アカハラ防止運動を積極的に行う

アカハラ防止運動を広げるには、「お互いに対等な人間であることを認識する」「相手の人格を尊重し、相手の立場に立って行動する」など、社会生活を営む上で守らなければならない基本的なルールを積極的に啓蒙していくことが大切です。

「権力を振りかざす」「精神的圧迫を加える」「身体にダメージを与える」などは人間として断じて許されない行為である、という認識を広げる必要があります。

②アカハラを正しく理解してもらう

アカハラを正しく理解してもらうには、「どのような言動がアカハラに該当する可能性があるのか」「アカハラを受けた人が被る身体的・精神的ダメージ」「アカハラが問題となる理由」などを正しく伝える必要があります。

アカハラへの理解が進めば、相手の立場や人格を尊重した言動を心がける人も徐々に増えていくでしょう。

③被害者の人権を保護する組織作り

被害者の人権を保護するには、アカハラに対する相談窓口といった組織作りが必要です。
アカハラは、閉鎖的空間における人格権の侵害行為ですので、「被害者はアカハラを言い出しにくい」「周囲はアカハラの実態をつかみにくい」といった問題点があります。

こうした観点から人権保護組織や窓口の設置が急務になるのです。しかし「窓口があっても機能していない」という実態もあります。早急な解決が必要でしょう。

④意思表示で、速やかな解決を

アカハラだと感じたその場で意思表示ができると、速やかな解決につながります。しかしアカハラを受けたと感じても、「アカハラだと言えない」「アカハラかどうか判断ができない」などの理由で、意思を伝えないケースもあるのです。

可能であれば、「不快と感じた」「不当な扱いを受けた」と思ったそのときその場で、相手に意思表示をしましょう。

しかし「言い出したために新たな被害を被る」「無理をしたために疲れ果ててしまう」可能性も考えられます。自分の状態を見極めたうえで、「まずは自分の身を守るために休む」「適切な機関に相談する」など、無理のない方法を選びましょう。

⑤外部機関と連携する

外部機関と連携して、アカハラ防止対策を講じる方法もあります。たとえば下記のようなものです。

  • 相談サービスコンサルタント会社と契約し、電話で専門相談員が相談に応じる窓口を設置する
  • 学外の弁護士事務所と契約し、大学を通さずに電話などで直接相談に応じる窓口を設置する
  • 学外のNPO法人と契約し、専門の相談員を配置する

アカハラの防止策は、「アカハラ防止運動を積極的に行う」「アカハラを正しく理解してもらう」「被害者の人権を保護する組織作り」「意思表示で、速やかな解決を」「外部機関と連携する」の5つです