アファーマティブアクションとは?【意味を簡単に】日本の例

さまざまな人の格差を小さくするための措置の一つに、アファーマティブアクションがあります。ポジティブアクションともいわれるこの措置は、日本において企業の男女の雇用や仕事内容など、男女の格差の是正において使用されているのです。

社会的に差別されている人たちを救うための措置なのですが、アメリカでは逆差別ではないかという疑問も投げかけられていることもあります。

  • アファーマティブアクションの目的
  • 必要性
  • 日本ではどのような措置として活用されているか

などについて解説しましょう。

1.アファーマティブアクションとは? わかりやすく簡単に説明

アファーマティブアクション(Affirmative Action)は、性別や人種等の理由で差別を受けている人たちに対する、格差是正のための取り組みです。具体的には、教育や就業などで優遇(=肯定的・積極的な差別)するなどといった方法が採られていますが、一方では逆に差別されることになるといった問題も含んでいます。

日本では、特に雇用における男女格差をなくすための優遇措置が取られています。

日本語訳「積極的格差是正措置」

日本ではアファーマティブアクションを「積極的格差是正措置」と訳しています。差別という直訳は、日本国憲法第14条に違反するという意見があり、法の下の平等を重んじたことで、「積極的格差是正措置」と訳されているのです。

現在では男女の雇用に関して、女性が能力を発揮できる環境づくりをしようという働きが進められています。

海外諸国での別名

アファーマティブアクションは海外諸国ではそれぞれ以下のような名称で使用されています。

  1. アファーマティブアクション(Affirmative Action)…アメリカ、カナダなど
  2. ポジティブアクション(Positive Action)…EU諸国、日本など
  3. ポジティブディスクリミネーション(Positive Discrimination)…イギリス、非合法の場合
  4. ディスクリミナシオンポジティーヴ(Discrimination Positive)…フランス、AAの訳語

①アファーマティブアクション(AA)

アメリカ、カナダなどではアファーマティブアクションと呼ばれ「積極的格差是正措置」「積極的差別是正措置」を意味します。

②ポジティブアクション(PA)

EU諸国、日本などではポジティブアクションと呼ばれ「積極的改善措置」を意味します。

③ポジティブディスクリミネーション

イギリスでは非合法の場合でポジティブディスクリミネーションと呼ばれています。

④ディスクリミナシオン・ポジティーヴ

フランスではディスクリミナシオン・ポジティーヴと呼ばれ積極的差別を意味します。AAの訳語です。

国連での使われ方:Temporary Special Measures

国連では、女性差別撤廃条約 4 条 1 項「暫定的特別措置」とされています。締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的措置として差別とせず、待遇が改善されたときには廃止されること、と定義しています。

目的

  • 男女の事実上の平等
  • 実質的平等を促進することで男女の差別なく自らの能力を発揮できる
  • それによって評価される社会を形成する

古い慣習にとらわれず、男女が平等になることを目的としています。

背景にいる思想家:ジョン・ロールズ

アファーマティブアクションを考える際に知っておきたいのが、思想家であるジョン・ロールズの考え方でしょう。

ロールズは、努力をした際に報酬を与えるかどうかは努力の価値ではなく「努力すれば報酬がある」というルールの有無に依存する、と言っています。大学の合格理由を例に見てみましょう。学業成績が高いからではなく「学業成績の高い人が合格する」というルールの有無に依存します。

これがロールズの考えで努力や学業成績といった価値と分配の正義や権利を切り離すことで中立的な立場になれるといったものです。この考え方はアファーマティブアクションに通じるものがあるといわれています。

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2.アファーマティブアクションの歴史的経緯と問題点

アメリカでは人種や性別、民族などによって社会的差別が行われており、それを改善すべく雇用や教育などにおいて優遇措置を取るという政策・アファーマティブアクションを導入しました。

しかし特別の優遇措置に対して今度は白人が逆差別をされるという問題も浮上したのです。さらに黒人からは人種的侮辱という声があがるといった問題が生じました。

入試時のマイノリティ優遇措置に合憲性

人種や性別、民族などによる社会的差別を改善し、雇用や教育などにおいて優遇措置を取るアファーマティブアクションでしたが、特別措置によって白人が大学に入学できないという訴訟が出始めるようになりました。

しかし、連邦最高裁で2003年6月23日に判決が下されたグラッター裁判に対するオコナー判事の法廷意見は「人種を判断基準のひとつとして入学選考時に考慮することは可能」というものでした。

アファーマティブアクションの違憲性(人種差別)が問題に

就職や就学で不利な立場に置かれる黒人ら少数派を優遇するアファーマティブアクションは、公平な社会の実現を目指した政策です。しかしその政策が「逆差別だ」として、違憲性を問う裁判がアメリカで起きています。

  • 特定の人種や民族が優遇されて大学に入学できる政策を問題視する主張
  • 人種差別をなくすものではなくむしろ人種差別を助長するものと批判され始めた

このような意見が増えたのです。

日本における課題

日本においては特に男女格差を平等にする働きがありますが、以下のような課題もあります。

  1. 国会議員数の男女差
  2. 国家公務員管理職数の男女差
  3. 上場企業の役員数の男女差

こういった課題に対して、どのような働きを進めているのでしょうか?

①国会議員数の男女差

日本は国会議員における男女格差の度合いが世界144カ国のうち110位以下で、主要7カ国のうちでは最下位です。

  • 衆議院議員における女性議員の割合 11.3%(2011 年 1 月末現在で世界187カ国中125位、IPU)
  • 参議院議員における女性議員の割合 18.2%
  • 両院で 13.6%(54+44 人/ 722 人)

という数字からも男女の差が大きいと分かります。女性議員の数の少なさは、少子化や介護、企業における男女格差といった各種問題の解決につながりません。国会議員数の改善は課題の一つです。

女性候補者比率を拡大するには?

女性候補者比率を拡大する方法の一つにクオータ制があります。比例代表選挙候補者数の男女比率に一定の割合を女性に設けることで、女性候補者の数は確実に増えるでしょう。

しかし一定数を女性に割り当てるクオータ制は、女性というだけで優遇されるという意味において反対意見も出ているのです。公職選挙法などの改正を伴う場合には、衆参の比例代表選挙への候補者クオータ制導入が最も有効と考えられています。

②国家公務員管理職数の男女差

国家公務員管理職数にも男女格差が見られます。社会のさまざまな分野において2020年までに指導的地位の女性が占める割合を3割以上にするという目標がありながら、現在の数値はまだまだ低いのです。

  • 古い慣習が依然として残っている
  • 対策の実現が進んでいない

という現状がうかがえます。

女性国家公務員の採用・登用を促進するには?

女性国家公務員の採用・登用を促すには、

  • 省庁別の採用・登用の具体的数値目標を設定
  • 中途採用・人事交流の促進
  • 女性人材情報バンク
  • メンター制度の導入
  • 各省庁内に男女共同参画担当官を設置
  • 両立支援体制の強化
  • 短時間勤務制度の導入
  • 男性育休取得促進などを進める

などの実行が必要です。目標の提示も重要ですが、具体的な施策の実施をしなければ男女格差はなくならないでしょう。

③上場企業の役員数の男女差

女性の社会進出が広がり女性も男性と肩を並べて働いているといわれている半面、上場企業の役員数には明らかな男女差があります。

平成24(2012)年から平成29(2017)年の5年間で上場企業の女性役員数は約2.4倍以上に増加と着実に成果が上がっていますが、その割合は依然として3.7%(2017年)にとどまっているのです。

この数値を改善しない限り、多様な価値観を踏まえた企業躍進は望めないでしょう。それは、諸外国の女性役員の割合が増えていることからも分かります。

女性役員を増やすには?

女性役員を増やすには、

  • 取組事例の公表
  • 優良企業の表彰
  • 企業別採用情報などの公開
  • 人材育成システムの開発・提供
  • ロールモデル情報の提供

などがあるでしょう。

しかし、

  • 女性社員が役員になりたいという希望を持っていない
  • 理由はお手本となるリーダーがいない

といった点もあります。女性役員の増加に努める企業は、取組事例を公表するなどの情報提供をしながら女性役員を増やすことが必要でしょう。

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3.日本のアファーマティブアクションに関する取り組み

日本の大きな問題は男女格差です。そのためアファーマティブアクションとしては、雇用における男女格差の改善を進めています。

企業において女性の管理職が増えているとはいえ、

  • 環境が整っていない
  • 企業によっては風土に問題

などがあり、女性が管理職として能力を発揮できない現状がまだ存在します。管理職をはじめ、女性が社会で男性と同様に能力を発揮できる環境が必要でしょう。

男女共同参画基本計画

日本のアファーマティブアクションの取り組みの一つが男女共同参画基本計画です。閣議決定により「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする」という目標が掲げられました。

取組内容としては、

  • 再就職や起業など女性の働き方に関する環境づくり
  • 女性に対するあらゆる暴力の根絶
  • 女性の健康支援

などがあります。また、男女共同参画推進のための教育を充実させるという点も取組内容の一つです。

取り組み事例

取り組み事例の一つに大学入試があります。女子特別枠入試など、入学において女性が優遇されるという例があるのです。また男女雇用機会均等法では男女の違いによる差別的な募集、採用、昇給などが禁止されています。

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4.男女差別に関するアファーマティブアクションが規定されている条約や法律例

日本国内では、アファーマティブアクションの実践に向けた取り決めが作成されています。

  • 男女共同参画2000年プラン
  • 女子差別撤廃条約

などです。男女差別に関するアファーマティブアクションが規定されている条約や法律例を解説します。

男女共同参画2000年プラン

1996年12月に決定された男女共同参画2000年プランは、男女共同参画社会づくりを促進するために作成されました。

2000(平成12)年度までに政府が取り組むべき施策を総合的、体系的に整備するための行動計画で、1995年9月の第4回世界女性会議(北京)の「北京宣言及び行動綱領」による国際社会の要請に対応したものといえるでしょう。

女性の人権、女性の健康、女性とメディアなどについて取り組むべき課題を踏まえて作成されました。

女子差別撤廃条約

1979年の国連総会で採択され、1981年に発効した女子差別撤廃条約は、女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃するために必要な措置を取ることが目的です。

女子に対する差別は、

  • 権利の平等
  • 人間の尊厳を尊重

という原則に反するものに当たります。

また、社会や家族の繁栄を阻害、女子の潜在能力開発を一層困難にするものともしています。内容には、

  • 固定的性別役割の変更が男女の完全な平等に不可欠
  • 男女の社会・文化的行動様式の修正

などが言及されています。

ナイロビ将来戦略の勧告及び結論

国連は指導的地位に就く女性の割合を、1995年までに少なくとも30%までに増やすという数値目標を設定しました。

  • 参画すべき女性の比率や数を定めて割り当てるクオータ制
  • 女性の能力に対する意識啓発
  • 情報の優先的提供

など女性の参画を促す取り組みが諸外国で行われています。日本では、男女共同参画社会基本法において推進されている男女共同参画基本計画や男女雇用機会均等法などがそ、の取り組みの一つです。

男女共同参画社会基本法

「男女共同参画社会基本法」は、男女共同参画審議会(会長 岩男寿美子慶応義塾大学教授)の答申「男女共同参画社会基本法について─男女共同参画社会を形成するための基礎的条件づくり─」(1998年11月)を受け、1999年6月に制定されました。

男女共同参画社会の形成のための施策について方針を明らかにするとともに社会のあらゆる分野において男女が均等に政治的、経済的、社会的、文化的利益を受けられる社会にすることを定めています。

男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法(正式名称:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、雇用における男女の均等な機会と待遇の確保を図るとともに、女性の労働者が妊娠中および出産後の健康の確保を図るための措置を推進することを目的として制定されました。

具体的に言うと募集、採用、昇給、昇進、解雇などにおいて男女の差別なく、また女性が社会で差別をされることなく出産・育児を尊重しながら仕事ができる環境づくりを進めるということです。