アクションラーニングとは、個人や組織の学習能力向上のプロセスです。ここでは、効果やメリット、進め方や導入方法などについて解説します。
目次
1.アクションラーニングとは?
アクションラーニングとは、個人と組織の学習能力を高めるプロセスのことです。参加者が小グループを組み、組織が現実に直面している問題に対しディスカッションで解決策を考え、解決策を実行するというステップを踏みます。
実務上の問題解決や課題達成、リフレクションをとおして、学習能力を高められるのです。
アクティブラーニングとの違い
アクションラーニングに類似する言葉にアクティブラーニング、日本語訳で能動的学習型授業と呼ばれる形式があります。2つの違いは、下記のとおりです。
- アクションラーニング:小グループで現実の課題の解決を進め学習プロセス
- アクティブラーニング:アクティブラーニング講師の指導のもとで行うケーススタディを取り入れた学習形式
2.アクションラーニングの効果・メリット
アクションラーニングの導入は、組織や個人に働きかけ、企業に大きなメリットをもたらします。ここではアクションラーニングの効果・メリットを4つ解説しましょう。
- 組織の問題解決
- 学習する組織の構築
- リーダーシップの育成
- 個人の能力開発
①組織の問題解決
アクションラーニングは、組織が実際に直面している現実課題を取り上げて、チームやグループで取り組むもの。そのためアクションラーニングをとおして新鮮な視点で現実課題を解決に導けます。
つまりアクションラーニングを導入すれば、学習能力を高めながら課題の解決を図っていけるのです。
②学習する組織の構築
アクションラーニングでは、グループ・チームといった小組織をつくり、現実の問題について解決策を議論・実行・リフレクションするという手法を採用しています。
そのため意見交換をとおして、組織内のコミュニケーションが円滑になったり組織で団結力を高めたりといった、高い意識を持って学習する組織が構築されるのです。
③リーダーシップの育成
アクションラーニングでは、小チームを組んでリーダーを中心として現実における課題解決に取り組みます。
アクションラーニングを導入すれば、「リーダーに必要とされるコミュニケーション能力」「経営陣のリーダーシップ育成」にも大きな影響を与えるのです。
④個人の能力開発
アクションラーニングでは、小チームを組んで問題解決を探ります。このプロセスをとおして、団結力といった組織の力を強化できるのです。
アクションラーニングは組織力を高めるだけではありません。チームを構成する個人についても、「理解力・思考力・学習能力・問題解決力・高いモチベーション」といったさまざまな能力を育成できます。
3.アクションラーニングの進め方
アクションラーニングの神髄は「質問」にあります。アクションラーニングでは、現場の問題や課題に対し、「質問・行動と実践・内省」の3つを繰り返す点が鍵になるのです。
「質問」は、問題や課題に対する問いかけとして、非常に重要な意味があります。アクションラーニングの進め方について、下記4つから解説しましょう。
- チームの作成
- 課題・目標の設定
- セッションをスタート
- セッション全体の振り返り(リフレクション)
①チームの作成
チームの作成時におさえておくべきポイントは、以下のとおりです。
- 全員に質問の機会を与えられるよう、4~8名程度の小グループにする
- 職種や環境が近いメンバーで固める
- 質問とリフレクションのサイクルを適切に回すため、コントロールを担うコーチをつける
②課題・目標の設定
セカンドステップでは、「メンバーがそれぞれの立場で抱えている問題や悩みなどをチームに投げかける」「メンバー相互で現実の課題や目標について共通認識を持つ」などに取り組みます。
③セッションをスタート
セッションは、質問の投げかけやリフレクションを中心に構成します。具体的には、下記のとおりです。
- 1時間~1時間半をかけ、質問を繰り返す中で問題の本質をとらえていく
- セッション時間のうち40分程度を使って、チームで問題を再定義していく
「発言が少ない・話題からズレてしまった」場合、アクションラーニングコーチがチーム内で発生している個々の感情や、組織全体の感覚などに配慮しながらセッションを促します。
④セッション全体の振り返り(リフレクション)
最後に、セッション全体の振り返りとして5~10分程度のリフレクションを行うのです。セッションをとおして、問題や課題に対する成果や反省点などをかんたんに振り返ります。
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4.アクションラーニングを導入する方法
ここではアクションラーニングを導入する方法について、下記3点から解説しましょう。
- アクションラーニングを導入するための研修プログラム
- アクションラーニングコーチの養成
- 研修を導入する際の注意点
①アクションラーニングを導入するための研修プログラム
研修プログラムとは、会社や所属部署などが現実に直面している問題や課題をテーマとして、具体的な解決策を議論・検討するといったもの。
プログラムにアクションラーニングを導入すれば、「現実に解決策を実践して検証する」「、実践に対する反応や現場対応などをリアルに学ぶ」「現実の問題を解決に導く」などができます。
②アクションラーニングコーチの養成
アクションラーニングコーチの質問スキル・リフレクションスキルの質により、結果に大きな差が生じます。そこでアクションラーニングコーチを養成し、これらスキルを獲得させるのです。
このほかチームビルディング・チーム学習の促進スキルといったスキルの養成も必要となります。
③研修を導入する際の注意点
アクションラーニングでは、現実に起きている問題や課題を取扱います。そのため実際に直面しているトラブルの原因やトラブルがだれの責任で起こったのかについて深堀りし、追求してしまう場合があるのです。
アクションラーニングを研修プログラムとして行う際は、原因や責任の追求に終始しないよう注意しましょう。
5.アクションラーニング導入事例
アクションラーニングは、多くの企業や大学で導入されているのです。ここでは、導入事例を3つ解説します。
- 日立情報通信エンジニアリング
- キヤノン
- 立教大学経営学部
- 野村証券
①日立情報通信エンジニアリング
日立情報通信エンジニアリングは、エンジニアリングとソリューションの世界で先進のITプラットフォームを創造している企業です。
シナジーの発揮を目的として、各グループにコーチを加え、現状の問題認識の共有とアクションラーニングによるセッションを行いました。
結果、チーム内で課題の共有化・多様な視点や価値観の再認識を実現。今後はアクションラーニングを、マネージャー研修や若手社員向け施策に取り入れていく予定です。
②キヤノン
キヤノンは、映像機器や事務機器、デジタルマルチメディア機器などの大手精密機械メーカーです。CKIと呼ばれている組織の課題解決を行う活動にアクションラーニングを取り入れました。
管理職経験者で構成した専任の組織開発コンサルタントを設置し、争点のあぶりだしやフィードバックを行いました。その結果管理職自身の組織に対するマインドチェンジ・現場の問題意識向上を実現できたのです。
③立教大学経営学部
立教大学経営学部では、リーダーシップとスキル開発を目指すプログラムを運営する「教員・スチューデントアシスタント」のスキル向上のため、アクションラーニングを導入しました。
まず「ボランティアアクションラーニングコーチの派遣」「問題提示者が学生の場合は、コーチが事前に問題を吟味」といった方法で実施したのです。
その結果、「思考の整理」「他人の問題を自分の問題として認識」「論理的な質問をとおして物事の解決を図る」といった力が育成できました。
④野村証券
野村証券は、大手証券会社です。「自立型人材の育成」「社内コミュニケーションの改善」などを目的として、国内営業部門の支店長対象の研修に、アクションラーニングを導入しました。
質疑応答を繰り返しながら自然と問題を掘り下げていくなかで、「支店長が抱えている問題は、個人の能力開発で解決しない」という発見があったのです。
その結果、支店長自身で自己のマネジメントスタイルを再構築。支店内コミュニケーションが活性化実現しました。
6.アクションラーニングを学べる書籍
最後にアクションラーニングについて学べる書籍を2つお伝えします。
- 『アクション・ラーニング-Harvard-business-school-press』
- 『実践―アクションラーニング入門―』
①『アクション・ラーニング-Harvard-business-school-press』
『アクション・ラーニング-Harvard-business-school-press』(デービッド・A. ガービン著、 David A. Garvin 原著、沢崎冬日翻訳)は、アクションラーニングについて実践的方法論を学べる書籍です。
組織の成長に関する課題やプロセスがケーススタディを交えて、専門的見地から解説されています。
②『実践―アクションラーニング入門―』
『実践―アクションラーニング入門―』(マイケル・J・マーコード著、清宮普美代、堀本麻由子翻訳)は、アクションラーニングの基本を学ぶのにピッタリの書籍です。
アクションラーニングの基本ルールや効果、具体的手法やコーチの役割、注意点などが詳しく書かれています。分かりやすい解説で初心者にもおすすめです。