給与明細の電子化とは?メリットや導入手順・システムの選び方を解説

給与明細を紙で配布している企業も、業務効率やコスト削減の観点から電子化を検討するケースが増えています。
しかし「法的に問題はないのか?」「どうやって始めればいいのか?」といった疑問を持つ人事担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、給与明細電子化の基礎知識から導入メリット・具体的な方法・システム選びのポイントまで、わかりやすく解説します。よくある疑問もチェックして、事前の不安要素をなくしておきましょう。

給与明細の電子化とは?

住所明細とスマートフォン
給与明細の電子化とは、従業員に対して紙で渡していた給与明細を、クラウドサービスやPDFなどの電子形式で配信・保存する方法です。

近年では業務効率化やコスト削減を目的に、多くの企業が電子化を導入しています。まずは給与明細における紙と電子それぞれの違いや、導入が進む背景を見ていきましょう。

紙の給与明細と電子化の違い

従来の紙の給与明細では、印刷や封入・配布といった業務が発生します。これには時間も人手もかかり、郵送が必要な場合はさらにコストが増加します。紛失や誤配といったトラブルが発生するリスクもゼロではありません。

一方、電子化された給与明細は、従業員がいつでもパソコンやスマートフォンでいつでも確認でき、配布する側としても配信や保管の手間を大幅に削減できます。

担当者が従業員ごとに配布する必要がなくなるため、人的ミスの予防にもつながります。また、過去の明細を検索・再発行することも簡単にできるのが特徴です。

このように業務の効率化とセキュリティの観点からも、給与明細の電子化は現代の働き方にマッチした選択肢といえるでしょう。

どのような企業が電子化を進めているのか

給与明細の電子化は、特定の業界や企業規模に限らず、幅広い企業で導入が進んでいます。特に従業員数が多く、拠点が複数ある企業では、配布や管理にかかる手間とコストが大きくなるため、電子化が進みやすい傾向にあります。

また、テレワークの浸透やペーパーレス化促進の流れを受けて、中小企業でも導入を検討するケースが増えてきました。近年では給与計算ソフトや労務管理ツールとの連携がしやすい電子明細システムも登場しており、専門知識がなくても導入しやすくなっています。

業界を問わず、IT化・業務効率化を進めたい企業にとって、給与明細の電子化はスタンダードになりつつあるといってよいでしょう。

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給与明細を電子化するメリット

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給与明細の電子化には、業務効率やコスト削減といった実務的な利点だけでなく、従業員にとっての利便性向上など多くのメリットがあります。

紙の明細を使用していたときには見えにくかった課題が、電子化によって一気に解決することも少なくありません。代表的な4つのメリットを紹介します。

業務効率の向上(配布・保管・再発行の手間削減)

紙の給与明細では、印刷・封入・手渡し・郵送といった一連の作業が必要です。特に従業員数が多い企業では、これだけで毎月かなりの時間と労力がかかります。また、過去の明細を探して再発行するのも、書類保管や管理に手間がかかる作業です。

電子化された給与明細なら、ワンクリックで配信が完了し、従業員もクラウド上で必要なときに確認できます。再発行の手間もほぼゼロになり、人事担当者の作業時間を大幅に削減できます。こうした業務のスリム化が、日常の負担軽減につながります。

コスト削減(用紙・封筒・郵送費など)

紙の明細を発行・配布するには、用紙代・封筒代・印刷コスト、さらに郵送費や人件費といったさまざまなコストがかかります。従業員数が増えるほど、月ごとの負担も無視できない規模になってくるはずです。

一方、電子明細であれば印刷や郵送が不要になり、物理的なコストはほとんど発生しません。システムの初期費用や月額利用料は発生しますが、それらを差し引いても中長期的にはコスト削減につながるケースが多いです。。

特に在宅勤務が増えている昨今では、郵送コストの削減効果は目に見えて大きく現れるでしょう。

従業員の利便性向上(スマートフォンやパソコンでの閲覧)

給与明細の電子化は、従業員にとっても大きな利点があります。紙の明細では受け取りのタイミングが限られたり、紛失のリスクがあったりと不便さを感じる場面も少なくありません。

電子化されていれば、スマートフォンやパソコンから時間や場所を問わず確認が可能です。通帳記帳のタイミングに合わせて明細をチェックしたり、住宅ローンなどで提出が必要なときすぐにダウンロードできたりといったメリットがあります。

セキュリティ強化と情報管理の効率化

紙の給与明細では、誤って別の従業員に渡してしまう・社内で紛失するといったリスクが常に存在します。内容には個人情報が含まれるため、取り扱いには細心の注意が必要です。

電子明細を導入すれば、個人ごとのアカウント管理やアクセス制限・履歴の記録といったセキュリティ対策を講じられ、情報漏れのリスク軽減が可能です。また、ペーパーレス化によって紙資料の管理スペースや処分手続きも不要になります。人事情報の管理をよりスマートにしたい企業にとって、電子化は有効な手段です。

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給与明細の電子化に関する法的なポイント

六法全書
給与明細の電子化を進めるうえで気になるのが、法的に問題がないかどうかです。実際には一定の条件を満たした場合、給与明細の電子交付は法律上認められています。ただし、従業員への対応や保存方法などで注意すべきポイントもあるため、事前に確認しておきましょう。

法律で認められている?

給与明細の交付は労働基準法では義務付けられていないものの、所得税法第231条・施行規則第54条により義務付けられている項目です。しかし、交付方法については法律上「書面でなければならない」という定めはなく、電子的に交付することも認められています。

従業員に一方的に押しつける形での電子化はできませんが、同意を得られれば法令違反にはなりません。導入時には、この法的背景を押さえておくと安心です。

参考:『所得税法 第231条|e-Gov 法令検索』

電子化にあたっては従業員の同意が必要

給与明細を電子交付に切り替える際は、原則的には従業員の同意を得る必要があります。労働者が明細の内容を自分で確認・保存できる環境があることを前提に、書面での同意またはそれに準ずる手段で承諾を得ることを推奨します。。

一斉導入の前には、説明会や案内資料を通じて、なぜ電子化するのか・どのように閲覧できるのかを丁寧に伝えることが重要です。同意を得られない従業員には紙での発行を継続するケースもあるため、柔軟な対応も求められます。

ただし、「期限までに承諾するかどうかの回答がなかった場合は承諾と見なす」という周知をしていれば、問題ありません。

参考:『1. 基本的な事項|国税庁』

保管義務・保存期間のルール

給与明細の控えについて、法律での保存は特に義務付けられていません。ただ、賃金台帳は労働基準法第109条で5年間保存しなければならないとされています(2020年4月の法改正で、保存期間が3年から5年に延長)。

一般的には、賃金台帳に合わせて5年間保管している企業が多いようです。従業員からの問い合わせに答えたり、給与に関するトラブルが起こったときの証拠としたりするためにも、控えを保管しておいたほうがよいでしょう。

クラウドシステムで電子化していれば、従業員側はもちろん、企業側も必要なときすぐに過去の明細を確認・ダウンロードできます。

参考:『労働基準法 第109条|e-Gov 法令検索』

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給与明細をシステム導入で電子化する方法

パソコンを前に考える女性
給与明細をシステムで電子化するといっても、その方法は複数あります。自社ですでに使っている給与計算ソフトと連携する、Excelデータをアップロードする、専用のクラウドサービスを利用するなどです。代表的な3つの方法と、それぞれの特徴を紹介します。

給与計算ソフトと連携する方法

すでに給与計算ソフトを利用している企業では、そのソフトに備わっている明細出力機能や、外部システムとの連携機能を活用する方法があります。多くのソフトではPDF形式やCSV形式で明細を出力できるため、それを電子配信ツールに取り込めばスムーズに電子化が実現できます。

ただし、連携するシステムによって対応フォーマットや操作方法が異なるので、導入前に確認しておくことが重要です。給与計算と明細配信を別システムで運用する場合も、データ連携のしやすさは選定基準のひとつになります。

ExcelやCSVデータをアップロードする方法

比較的小規模な企業や、給与計算ソフトに明細配信機能がない場合は、ExcelやCSVで作成したデータを専用のシステムにアップロードする方法もあります。この方式なら、既存の給与計算フローを変更せずに電子化が可能です。

たとえば「ロウムメイト」では、所定のCSVテンプレートに明細データを入力し、システム上にアップロードすることで電子明細を自動生成・配信できます。このように、手軽かつ実用的に電子化を進めたい企業には、アップロード方式が適しています。

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給与明細を電子化できるシステムの選び方

人さし指を立てるスーツのビジネスパーソン
給与明細の電子化を成功させるには、自社に合ったシステムを選ぶことが欠かせません。機能や価格だけでなく、使いやすさやサポート体制も重要な判断材料です。給与明細の電子化に使うシステムを選ぶ際に、チェックしておきたい主なポイントを紹介します。

自社のニーズを明らかにする

システムを選ぶときは、まず「自社の規模」「現在の給与業務の進め方」「将来の拡張性」といった観点から、自社に合ったサービスかどうかを見極めることが大切です。たとえば従業員数が数十名規模の企業と、数百名規模の企業では必要な機能が異なります。

また、給与計算業務を外部に委託しているか自社で対応しているかによっても、必要とする機能は変わってくるでしょう。現在の運用方法を整理し、どのように電子化させていくかを具体的にイメージすることが、失敗しないツール選びの第一歩です。

機能・コスト・セキュリティ面を比較する

給与明細の電子化システムには、さまざまな機能が用意されています。明細作成・配信はもちろん、アクセス制限やログ管理・ファイルの暗号化といったセキュリティ機能も重要な評価ポイントです。これらが標準装備かオプション扱いかも事前に確認しておきましょう。

さらに初期費用や月額料金・利用人数による課金体系など、コスト面の比較も欠かせません。安価に見えても人数が増えるとコストがかさむ場合もあるため、将来的な費用シミュレーションも必要です。予算と自社に必要な機能のバランスを見極めながら選びましょう。

サポート体制をチェックする

導入時の初期設定や操作説明・トラブル時の対応など、サポート体制も要チェックです。専任のサポート担当が付く、チャット・電話での問い合わせができるなど、サポートの手厚さは日々の業務ストレス軽減にもつながります。

安心して運用するためには、サービス提供会社の対応力も考慮しておくとよいでしょう。自社専任のサポートが付くような手厚い体制を整えているベンダーであれば、初めてのシステム導入でも安心して臨めるでしょう。

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給与明細の電子化には「ロウムメイト」を

机を挟んで向かい合う2人のビジネスパーソン
カオナビが提供する「ロウムメイト」は、労務管理に特化したクラウドサービスです。給与計算機能は備えていないものの、給与明細の作成と電子配信には対応しており、すでにほかの給与計算ツールを利用している企業にとっても取り入れやすいでしょう。

1社につき1人の専任サポートが付き、導入後も支援する体制を整えています。

ロウムメイトの給与明細作成・配信機能

ロウムメイトには、給与明細の作成と電子配信をサポートする機能が用意されています。明細のテンプレートに沿って情報を入力することで、従業員ごとの明細が自動的に生成され、Web上での配信が可能です。

作成した明細はクラウド上で管理されるため、従業員はパソコンやスマートフォンからいつでも明細を確認できます。過去の明細の閲覧・ダウンロードも可能となっており、再発行依頼の削減にもつながります。

紙の明細にかかっていた手間を減らしたい企業にとって、いずれも実用的な機能です。

CSVから明細を作成・電子配信する流れ

ロウムメイトでは、給与計算システムなどで出力したCSVファイルを活用して明細を作成できます。提供されている専用テンプレートに従業員ごとの給与データを入力し、それをアップロードするだけで、明細が自動で生成されます。

この仕組みを活用すれば、給与計算と明細作成を切り離して運用することができ、既存のフローを大きく変えずに電子化を実現できます。アップロード後はすぐに配信予約もできるため、スムーズな業務移行が可能です。導入のハードルが比較的低い点も、多くの人事担当者にとって魅力となるでしょう。

給与計算は外部システムと組み合わせて運用可能

ロウムメイト自体に給与計算機能はありませんが、給与計算を別のシステムや社労士への外部委託などと組み合わせて運用することが可能です。CSV形式で出力できる給与計算ソフトであれば、多くのケースでスムーズに連携できます。

給与明細の配信や管理だけを効率化したい企業にとっては、余分な機能を持たずシンプルに導入できる点は大きなメリットです。すでに別の給与計算ソフトを使っている場合でも、ロウムメイトを組み合わせることで電子化に必要な環境を手軽に整えられます。

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給与明細の電子化でよくある疑問

「Q&A」の文字とノートパソコン
給与明細の電子化を検討する際、多くの担当者が「紙との併用は可能か」「過去の明細はどうするのか」といった疑問を持ちます。導入前に知っておくと安心な、よくある質問とその回答をまとめました。スムーズな移行のためにも、事前に疑問を解消しておきましょう。

紙との併用はできる?

可能です。実際、多くの企業では電子化への移行期間中に、紙と電子の両方で給与明細を交付しています。すべての従業員が電子明細に同意しているわけではない、スマートフォンやパソコンを持たない従業員がいるという場合には、併用による対応が現実的です。

ただし、併用には紙の明細を引き続き管理する手間が残ります。将来的には電子明細への一本化を視野に入れたほうがよいでしょう。労使間の合意や社内ルールの整備を進めながら、段階的に電子化を進めていくのが理想的な移行の仕方です。

電子化でトラブルになる可能性は?

大きなトラブルは考えにくいものの、導入初期にはいくつかの注意点があります。たとえば、従業員への説明不足により「明細の閲覧方法がわからない」「紙のほうがよかった」といった不満が出るケースもあります。

こうした問題を防ぐには、導入時にしっかりとしたマニュアルを用意し、社内周知を徹底することが重要です。また、サポート体制の整ったツールを選ぶことで、万が一トラブルが起こったときも安心して対応できます。

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まとめ

給与明細書と封筒・ペン・手帳
給与明細の電子化には、業務効率の向上やコスト削減・従業員の利便性向上など、多くのメリットがあります。法的にも条件を満たせば問題なく導入でき、紙との併用や段階的な移行も可能です。

自社の業務フローや従業員のIT環境に合わせて、最適な方法を検討することが大切です。導入を成功させるには、ツール選びが鍵となります。機能やコスト・サポート体制を比較しながら、無理のない形で電子化を進めていきましょう。

「ロウムメイト」のように、CSVデータのアップロードで簡単に給与明細を作成・配信できるツールも選択肢のひとつです。まずは、自社に合った方法を知ることから始めてみてください。