セルフハンディキャッピングとは? 原因と克服方法、具体例

セルフハンディキャッピングとは、自己防衛機能のひとつです。ここではセルフハンディキャッピングのメリットとデメリット、原因や克服方法などについて解説します。

1.セルフハンディキャッピングとは?

セルフハンディキャッピングとは、失敗が予測されるときにその言い訳になるような外的条件を準備して、自尊心を保とうとすること。1978年、アメリカの心理学者エドワード・ジョーンズとスティーブン・ベルグラスにより提唱されました。

現実逃避との違い

セルフハンディキャッピングと混同しやすいものに「現実逃避」があります。現実逃避とは現実的に何かを求められたり、何かしなければならなくなったりした際、意図的に意識をそらす行為や心理状態のこと。

どちらも自分自身の問題という意味では同じです。しかしセルフハンディキャッピングにはプライドや自尊心を守る自己防衛機能があります。

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2.2種類のセルフハンディキャッピングとその例

セルフハンディキャッピングには2種類あり、どちらも自己防衛のメカニズムが働いたうえでの行為です。ここでは2種類のセルフハンディキャッピングとその具体例について説明します。

  1. 獲得的セルフハンディキャッピング
  2. 主張的セルフハンディキャッピング

①獲得的セルフハンディキャッピング

獲得的セルフハンディキャップとは、あらかじめできない要因を自分に課す行為のこと。試験の前に「勉強を放棄する」「前日に徹夜する」など、全力を出せない条件を自ら負い「合格できなくても万全の状態ではなかったのだから仕方ない」と受け入れて、自尊心や自信を守るのです。

運よく成功したときは「全然勉強しなかったのに合格できた」と自己評価を高められます。

具体例

ビジネスシーンにて、自分ひとりでさばききれない業務を抱え込み「ほかの業務が慌ただしく期日に間に合わせられなかった」と言い訳する人がいます。典型的な獲得的セルフハンディキャッピングの行動です。

②主張的セルフハンディキャッピング


主張的セルフハンディキャッピングとは、周囲に対して事前に「今回全然勉強していなくて」「昨日から体調が悪くて」と主張する行為のこと。
「別の困難に立ち向かったせいで達成できなかった」「つまり失敗したのは自分のせいではない」と主張して自尊心や自信を守ります。

獲得的セルフハンディキャッピングが自己完結するものであるのに対し、主張的セルフハンディキャッピングは周囲を巻き込みます。

具体例

具体的には「昨日から体調が悪くて全然勉強できなかった」や「寝不足でそれどころじゃなかった」などの言い訳が主張的セルフハンディキャッピングにあたります。

「新しい業務を次々と振られていて」「前任者からの引継ぎが不十分だったせいで」のように、ハンディキャップが外部にあると主張するケースもあるのです。

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3.セルフハンディキャッピングのメリット

ネガティブな印象の強いセルフハンディキャッピングですが、メリットもあります。セルフハンディキャッピングのメリットを3つに絞って説明しましょう。

  1. 自分に誇りが持てる
  2. 自信を保てる
  3. 心が安定する

①自分に誇りが持てる

セルフハンディキャッピングによって失敗した際のダメージをおさえられます。これは自尊心を守るための自己防衛本能です。

たとえばセルフハンディキャッピングがないと「どうせ自分には何もできない」「自分は結局何をしても駄目なやつなんだ」というネガティブな思考が強くなり、心のバランスを崩してしまいます。

②自信を保てる

失敗した際のダメージを減らして自信を保てるのも、セルフハンディキャッピングのメリット。

「失敗したのは必要な設備がそろっていなかったからだ。環境がもっと整っていれば成功したはず」と考えられれば失敗のダメージは軽減されるため、自信が削がれません。

成功した際、「やはり環境が整っていれば自分はできる人間なんだ」と自己評価を高めるのも可能です。

③心が安定する

誰にとっても失敗したときの心理的ダメージは辛いものでしょう。しかしセルフハンディキャッピングによってこのダメージを減らし、心の安定を保てるのです。

もし成功すれば「自分はがつがつ努力しなくてもできるタイプなんだ」と自己評価を高められます。さらにセルフハンディキャッピングをうまく活用できれば、自分を落ち着かせて本来の力を発揮させるのも可能です。

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4.セルフハンディキャッピングのデメリット

セルフハンディキャッピングが持つのはメリットだけではありません。「周囲からの印象ダウン」や「言い訳が増す」などのデメリットも当然潜んでいるのです。ここではセルフハンディキャッピングが持つ4つのデメリットについて説明します。

  1. 周囲からの印象が悪くなる
  2. 成功率を下げる
  3. 言い訳が増す
  4. 向上心が減る

①周囲からの印象が悪くなる

セルフハンディキャッピングに対する周囲の評価は決して高くありません。言い訳が多く、成長するための努力を怠っている人物と評価され、結果として周囲からの期待が下がる可能性も高いです。

事実、セルフハンディキャッピングを行う主人公と行わない主人公が登場するシナリオを読ませた際、セルフハンディキャッピングを行う主人公に「嫌い」「将来成功しなさそう」などの印象を持ったという実験結果もあります。

②成功率を下げる

セルフハンディキャッピングではたとえ失敗しても、また成功しても本人のダメージを軽減できます。しかし本来の目標を達成することよりも自己防衛に意識が向いてしまうため、挑戦回数が減り、結果として成功率を下げる恐れもあるのです。

自身では「失敗しそうだからやめておこう」、周囲からは「言い訳が多いから任せるのをやめよう」と評価されるため、成長する機会が得られなくなってしまいます。

③言い訳が増す

言い訳がましい人間になってしまうことも、セルフハンディキャッピングがもたらすデメリットのひとつ。

「失敗する前に予防線を張る」と聞けば効率的に見えるでしょう。しかし実際そこにあるのは「本来はもっとできるはず」「挑戦しないのは寝不足だから」「コンディションがよいときに実施したほうがクオリティはよくなる」などの言い訳です。

④向上心が減る

失敗のダメージを避けるセルフハンディキャッピングでは、挑戦する気持ちや向上心が失われます。「最初から駄目だと思っていた」という気持ちの挑戦で、向上心が高まるでしょうか。

セルフハンディキャッピングを主張するスポーツ選手と主張しないスポーツ選手を比較した際、前者の練習は大会前でも増加せず、後者の練習量は増えたという調査も報告されています。

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5.セルフハンディキャッピングの原因

言い訳が増す、周囲からの印象を下げるなどのデメリットがあると理解していながら、なぜセルフハンディキャッピングをしてしまうのでしょうか。そこにある原因について、見ていきます。

  1. 自己防衛
  2. 自信への不安
  3. 過去の経験

①自己防衛

セルフハンディキャッピングの最たる原因は自己防衛、つまりストレスからの防衛機制です。

防衛機制とは、不安や葛藤など受け入れたくない状況を避けるため無意識に起こるメカニズムのことで、精神分析の用語です。つまりセルフハンディキャッピングは単なる怠けや逃避ではなく、自分を守るための心理作用といえます。

②自信への不安

自信がないと人の心は不安定になります。

「以前はトラブルなく成功したけれど、次も同じように成功するだろうか」「得意分野だからと請け負ってしまったけれど、失敗したらどうしよう」といったストレスを避けるために、セルフハンディキャッピングが作用します。

「成功しなかったら悔しいから先に言い訳をしておこう」「悪い結果になったら情けないから挑戦するのをやめよう」これらの思考は自信に対する不安から生じたものです。

③過去の経験

過去の失敗経験がトラウマになり、そこからセルフハンディキャッピングが生じる場合もあります。

「あのとき遠慮なく意見をいえばよかった」「あんな挑戦をしなければ恥をかかなかった」このような思考から言い訳が立ち、新たな挑戦を避けてしまう状態です。

過去経験の反芻は心理的負担を増やし、モチベーションや向上心を低下させます。どこかで「以前はだめだったけれど次は成功するかもしれない」と開き直る必要があるのです。

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6.セルフハンディキャッピングの克服方法

セルフハンディキャッピングはさまざまな方法で克服できます。セルフハンディキャッピングを乗り越えられれば、自身の潜在的な能力を引き出してさまざまな可能性を広げられるでしょう。

ここではセルフハンディキャッピングを克服する5つの方法について説明します。

  1. 自分の言動を見つめ直す
  2. 成功体験を増やして書き残す
  3. 失敗を恐れない
  4. 逃げ道をなくす
  5. できる宣言をする

①自分の言動を見つめ直す

まずはセルフハンディキャッピングがどういう状態を指しているのか正しく理解して、自身の言動を振り返るところからはじめます。自分がどのような状態なのか、何を改善しなければならないのかを理解できなければ克服できません。

「無意識に新たな挑戦を避けていたけれど、あれはセルフハンディキャッピングだったのかもしれない」「最近言い訳が増えている」と自分の言動を見つめ直して認めることが大切です。

②成功体験を増やして書き残す

人は成功より失敗のほうが記憶に残りやすいといわれています。これは何かを得るよりも何かを失う影響のほうが大きく、その出来事を鮮明に記憶してしまうという人間の心理システムが働くためです。

失敗が続くと自信を喪失し、さらなるセルフハンディキャッピングを課してしまいます。その悪循環を断ち切るために必要なのが、成功体験を積み重ねて記録に残し、自信をつけることなのです。

③失敗を恐れない

セルフハンディキャッピングの克服方法として効果的ではあるものの、難易度も高いのが「失敗を恐れず挑戦する」こと。

失敗は周囲からの評価を下げ、自尊心を傷つけます。そのダメージから自身を守るのがセルフハンディキャッピングです。しかし実のところ、本人が思うほど周囲は自分を見ていません。「誰も自分に興味はない」と考えれば失敗も挑戦もしやすくなります。

④逃げ道をなくす

逃げ道をなくして言い訳できない環境をつくるのも有効です。

たとえば「近くに本棚があるから読書して夜更かししてしまう」とき「近くに本がなければ夜更かししない」「本棚を移動させよう」と考えて行動に移します。逃げ道をなくすのは難しいものの、それゆえに効果の高い方法です。

⑤できる宣言をする

失敗を恐れず、あえて周囲に成功を宣言する方法もあります。いわゆる「有言実行」の考えです。

はじめのうちは誰かに話すほどでもない小さな目標からで構いません。失敗を恐れず挑戦を宣言すれば、自分自身の成長だけでなく「あの人は有言実行の人だ」と周囲からの評価を改めることにもつながります。