スキルトランスファーとは? メリット、属人化の予防、進め方、事例

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スキルトランスファーとは、特定の個人が持つ知識・技術・ノウハウを他のメンバーや組織全体に移転・共有することです。属人化によるリスクを防ぎ、組織力の底上げを図る手法として、人材育成や事業継続の観点から重要視されています。本記事では、スキルトランスファーの意味やメリット、5つの移転手法、実践のポイント、活用できるツールを解説します。

1.スキルトランスファーとは?

スキルトランスファーとは、個人が保有する専門知識・技術・暗黙知を組織内の他者へ計画的に移転するプロセスのことです。

項目 内容
定義 業務や技術を引き継ぎ、蓄積した技術や知識を教えること
語源 skill(技能・技術)+ transfer(移す・移動させる)
類語 ナレッジトランスファー(knowledge transfer)
適用場面 大規模な技術伝承から、ちょっとしたノウハウの共有まで幅広い

スキルトランスファーとは、業務や技術を引き継ぎ、蓄積した技術や知識を教えること。「技能や技術」を意味するskillと「動かす、移す、移動させる」を意味するtransfer
を組み合わせた言葉です。

スキルトランスファーは、ちょっとしたノウハウを同僚に教えるといった軽微な場面で用いる場合もあります。

スキルトランスファーの類語

スキルトランスファーの類語は、「知識」を意味するknowledgeと「移動させる、移転」を意味するtransferを組み合わせたナレッジトランスファーです。2つはほぼ同じ意味で、用いられています。


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2.スキルトランスファーのメリット

スキルトランスファーのメリットとは、業務の属人化解消・組織全体のスキル底上げ・人材の流動性向上など、経営リスクを軽減しながら組織力を強化できることです。

スキルトランスファーのメリットは、スキルを伝える側・受け継ぐ側・スキルトランスファーを実施する組織、すべてに良い影響を与えること。良い影響とは、下記のとおりです。

  • 知識や技術を伝える側は、伝えることで知識や技術を整理できる
  • 知識や技術を受け継ぐ側は、新たな知識や技術を習得し、キャリアアップできる
  • 蓄積した技術やノウハウを伝承し、組織のメンバーが共有すると、組織全体の生産性が向上する
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3.スキルトランスファーで属人化を予防

スキルトランスファーによる属人化予防とは、特定の社員しか対応できない業務を減らし、誰が担当しても一定の品質を維持できる体制を構築することです。

観点 内容
課題 少子高齢化で労働人口が不足し、特定の人に業務が集中する属人化が発生
解決策 スキルトランスファーにより知識・技術を組織全体で共有する
効果 特定の人がいなくても業務が進められる体制を構築できる
実施の視点 長期的かつ組織的に取り組むことが必要

スキルトランスファーにて知識や技術を伝えると、特定の人でないと業務が進められない状態、すなわち属人化を予防できます。

少子高齢化で労働人口が不足し、知識や技術を引き継ぐ人材を確保できず、特定の人を頼らざるを得ない状況が発生している昨今。長期的かつ組織的にスキルトランスファーを実施すれば、組織全体で仕事をしていく体制が構築できます。

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4.スキルトランスファーの進め方

スキルトランスファーの進め方とは、連続移転・近接移転・専門知移転・遠隔移転・戦略移転の5つの手法を、移転する知識の性質に応じて使い分けるアプローチのことです。

進め方 対象スキル 移転先 特徴
連続移転 暗黙知 同じ組織・同じ業務 定期ミーティングで暗黙知を収集・伝承する
近接移転 形式知 別の組織・類似する定型業務 情報共有ツールを活用し、対象範囲を限定して移転
専門知移転 専門的な形式知 個人・組織内 電子フォーラム等で専門メンバーを招集して移転
遠隔移転 暗黙知 別の組織・非定型業務 近接移転と異なり、暗黙知かつ非定型業務が対象
戦略移転 暗黙知 非定型・低頻度業務 M&A等の稀な案件。スペシャリストに頼る形で移転

スキルトランスファーの進め方は5つです。それぞれについて解説しましょう。

①連続移転

組織が担った業務から得た知見を同じ組織・同じ業務で活用する方法のこと。個人に蓄積されている暗黙知を組織で集め、改善や修正を加えて伝承すべきスキルとするのです。連続移転では下記のポイントを押さえるとよいでしょう。

  • 暗黙知を共有するためのミーティングを定期的に開催する
  • 批判や非難を避ける
  • 議事録を作成する
  • 強固なチームワークを発揮する

②近接移転

組織内で構築してきた知見を、別の組織や定型業務で活用する方法のこと。ただし別組織であるスキル移転先の業務が、移転元の業務に類似していることが前提になります。成功のポイントは、下記のとおりです。

  • 情報共有ツールを利用してスキルを伝達する
  • 移転スキルを活用する対象者や対象業務の範囲を限定する

③専門知移転

業務に関する専門的な形式知を、個人や組織の中で移転させる方法のこと。専門知移転の場合、題材ごとに区分けして電子フォーラムを開催すると、該当する専門業務に従事しているメンバーの招集・参加を促せます。

ただし専門知移転で取り上げられるスキルは経営上重要なスキルも多いです。よって、何を移転させるか、誰に移転するかについて、検討が必要となります。

④遠隔移転

組織が蓄積したスキルを別の組織や類似した業務に移転させる方法のこと。このような性質を持つスキルトランスファーの進め方に、近接移転があります。

この遠隔移転が近接移転と異なるのは、「移転するスキル」「業務の質」の2点。「移転するスキルが暗黙知である」「業務が非定型的である」という条件に合致するのが、遠隔移転です。

⑤戦略移転

まれにしか発生しないような頻度の低い非定型業務に関するスキルを移転する方法のこと。代表的な事例は、M&Aに代表されるような企業を買収する案件です。

業務が発生する頻度の低さから、スキルを持っている社員が限られます。よってスキルの収集や解釈、整理や伝承などは、その道のスペシャリストに頼る形になるのです。

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5.スキルトランスファーのポイント

スキルトランスファーのポイントとは、移転しやすい環境整備や経営主導での推進など、組織的に取り組むことで移転の成功率を高めるための要点のことです。

ポイント 概要
移転しやすい環境の整備 手順書作成・ルール設定・情報共有ツールの導入で準備する
経営主導での進行 小単位では重要性が共有されにくいため、経営主導で開始する
担当者と移転範囲の決定 専任担当者を設け、本当に必要なスキルだけを選定する
時間と心理的コストの削減 ツールやテンプレートを活用し、社員の負担を軽減する
研修の実施 トランスファー技術に不慣れな専門職向けに手順やポイントを研修する

スキルトランスファーに関して押さえておきたいポイントがあります。

①移転しやすい環境の整備

スキルトランスファーは、個々の社員が持つ暗黙知としてのスキルを組織間で移転します。よって社員がスキルを公言できるうえ、組織間でスキルを授受しやすい環境を整備しなければなりません。

そこで手順書の作成やルールの設定、情報共有できるツールの導入などで準備します。

②経営主導での進行

スキルトランスファーを実際に導入する際、最初は経営主導で行うとよいでしょう。プロジェクトやチームといった小単位で試験的にスキルトランスファーを取り入れても、その重要性を社員で共有できないからです。

経営主導ならスキルトランスファーの重要性を社員も認識できます。よって社員自身も当事者意識を持って取り組めるのです。

③担当者と移転範囲の決定

スキルトランスファーは、まだ社会に浸透していません。そこでスキルトランスファーについて知識を有する専任の担当者を決め、スキルトランスファーを確実に進めるのです。

移転させるスキルについて内容や範囲、レベルを適切に見極め、本当に移転・伝承する必要のあるスキルだけを選定して移転させます。

④時間と心理的コストの削減

なかには、個人が持つ暗黙知を組織で共有することに抵抗を持つ社員もいるでしょう。組織間でスキルの移転をスムーズに行うには、社員の心理的負担を減らす必要があります。

またスキルの移転に時間を割かれる点も問題です。手間をかけずにスキルの移転を実現させるためにも、ツールやテンプレートなどを積極的に活用しましょう。

⑤研修の実施

高いスキルを持つ専門職の中には、トランスファーの技術に精通していないケースも少なくありません。そのような場合には、スキルトランスファーに関する研修を実施します。

研修でスキルトランスファーについて手順や押さえるポイント、数値化など伝承・移転方法を伝えれば、より高い専門性のスキルを移転できるでしょう。

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6.スキルトランスファーの事例

スキルトランスファーの事例とは、実際の企業が知識・技術の移転に取り組み、属人化の解消や組織力向上を実現した実践例のことです。

ホワイトプラスでは、ネット宅配クリーニング「リネット」でスキルトランスファーに取り組んでいます。目的はチームメンバーが増える点に対応するためです。下記のような事柄を進め、スキルトランスファーに対する共通認識を構築しました。

  • スキルトランスファーの対象外のスキルを含めたスキルマップの作成
  • トランスファーするスキルとしないスキルの境界線の明確化
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7.スキルトランスファーに使えるツール

スキルトランスファーに使えるツールとは、ナレッジの蓄積・検索・共有を効率化し、移転プロセスを支援するITサービスのことです。

スキルトランスファーに使えるツールがあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. Stock
  2. NotePM
  3. esa

①Stock

Stockは、かんたんに情報共有できるツールです。「ノート機能を活用してテキスト情報、画像、ファイルなどの情報を残す」「タスクやメッセージ機能の利用で、ノート上にあるテーマについてコミュニケーションを図る」などができます。

特徴は「IT関連の専門知識がなくても使用できる」「シンプルな機能でかんたんに情報を残せる」点です。

Stockの料金

料金は下記のとおりで、それ以上の人数で利用できるプランもあります。

  • フリープラン(お試しプランでノートやテンプレート、メール自動転送機能が使える)は、人数制限なしで無料
  • エントリープランは5人以下の利用で月額1,980円
  • スモールプランは10人以下、月額3,480円
  • ミドルプランは20人以下、月額6,480円

プランが上がるにつれ、利用できる容量や機能が増えていきます。操作が直感的で誰にでも使いやすくなっているのです。

②NotePM

社員が技術や知識、ノウハウといったさまざまな情報を書き込んで共有すると、知りたい情報にアクセスできます。

マニュアル作成や検索機能、動画共有やマルチデバイス対応、変更履歴の記録やレポート作成、API対応や柔軟なアクセス権限なども自在にできる使い勝手のよいツールです。

NotePMの料金

料金は下記のとおりで、どのプランも「初期費用0円」「ストレージ容量追加オプションは10GB追加ごとに月額1,500円」となっています。

  • スタータープランは3ユーザー限定で容量5GB、月額1,000円(税込)
  • ベーシックプランは8ユーザー、10GB、月額3,600円(税込)
  • スタンダードプランは15ユーザー、15GB、月額5,700円(税込)
  • プレミアムプランは100ユーザー、100GB、月額3万円(税込)

③esa

esaは、「不完全でも公開する(Share)」「何度も更新して情報を育てる(Develop)」「情報が育ったらきちんと整理する(Organize)」スタイルのツールです。

履歴も残るため、最新のアップデート情報をメンバーに伝えられます。「情報を育てる」という視点から、完璧な情報を求めるあまり埋もれてしまうスキルを途中段階でも拾い、共有できるのです。

esaの料金

料金は、1ユーザー月額500円で、クレジットカードにも対応しています。

またチーム作成後の2カ月間は無料で利用できるのです。たとえば6月にチームを作成した場合、8月末まで無料でesaを利用できます。使用感を知りたい人は無料トライアルを利用するとよいでしょう。

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8.スキルトランスファーを導入(実践)するステップ

以下では、「スキルトランスファー」を実務で進める際の具体的なステップを紹介します。各段階のポイントを押さえることで、スムーズな実行につなげましょう。

STEP.1
移転対象スキルの棚卸し
業務一覧を作成し、属人化リスクの高いスキル・ナレッジを洗い出します。「この人がいなくなったら困る業務」をリストアップすることが出発点です。
STEP.2
移転手法の選定
対象スキルが暗黙知か形式知かを判別し、5つの移転手法(連続・近接・専門知・遠隔・戦略)から最適な方法を選定します。
STEP.3
ナレッジの形式知化
ベテラン社員へのヒアリングや業務観察を通じて、暗黙知をマニュアル・手順書・動画などの形式知に変換します。
STEP.4
移転計画の策定と実行
「誰が」「誰に」「いつまでに」移転するかを計画に落とし込み、OJT・研修・ペアワークなどを組み合わせて実行します。
STEP.5
定着度の確認・フォローアップ
移転先のメンバーが独力で業務を遂行できるか確認し、不足があれば追加の研修やサポートを実施します。
STEP.6
継続的な更新・改善
移転したナレッジを定期的に更新し、新たな知見を追加します。ナレッジ共有の仕組みを組織文化として定着させます。

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よくある質問

スキルトランスファーと「引き継ぎ」は何が違いますか?

引き継ぎは異動・退職時に業務を後任に渡す一時的な行為ですが、スキルトランスファーは組織全体で知識・ノウハウを継続的に共有・蓄積する仕組みです。引き継ぎはスキルトランスファーの一場面にすぎず、日常的な仕組みとして運用する点が異なります。

暗黙知のスキルトランスファーはどう進めればよいですか?

まずベテラン社員の業務を観察・録画し、判断基準や手順を言語化する「形式知化」を行います。その後、OJTやペアワークで実践的に移転し、振り返りミーティングで理解度を確認するプロセスが効果的です。

スキルトランスファーの効果をどのように測定できますか?

移転先のメンバーが独力で業務を遂行できる割合(自走率)や、業務品質の維持率、ナレッジベースの利用頻度などが代表的な指標です。移転前後で業務のリードタイムやエラー率を比較する方法もあります。


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◆資料内容抜粋 (全31ページ)
・人事評価システム「カオナビ」とは?
・人事のお悩み別 活用事例9選
・専任サポートについて   など